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AI時代の就職活動 ~ChatGPTなどの生成系AIと学生はどのように向き合っているのか~

OpenAI社が2022年11月に対話型AIチャットボット「ChatGPT」をリリースして以降、「生成系AI(※)がビジネスを変える」という記事を多く目にするようになった。リリースから半年以上が経った今でも、公開されたプラグイン「Code Interpreter」がSNSやメディアで話題となり、オフィスワークへの影響が言及されるなどしている。
※:生成系AIとは、テキスト・写真・動画・画像・音楽・コードなどを作成する人工知能の一つ。従来のAIは膨大な学習データをもとに最適解を出すのに対し、生成系AIはデータを基に新しいコンテンツやアイデアを出すのが特徴。

このように進展がめざましい生成系AIをはじめとする先端テクノロジーの登場を前に、「自分の仕事をAIで効率化するにはどうしたらいいか」、あるいは「AIと自分の仕事の未来はどうなるか」などについて関心を持っている社会人も少なくないだろう。

では、今まさに自分の将来の仕事を見定め、選び取ろうとしている就活生は、こうしたテクノロジーの登場に対してどのように感じているのか?本コラムでは、テクノロジーの進展が学生の就職観に与える影響や、ChatGPTといった生成系AIを就職活動で活用することへの考えなど学生調査の結果を元に紹介し、学生が就職活動においてAIとどのように向き合っているのかを述べたいと思う。

AIなどのテクノロジーの進展が就職観・志望先へ与える影響

まずは、テクノロジーの進展が学生の就職観にどの程度影響を与えているのかを見てみよう。「マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)」(2023年5月実施)では、5,062人の就職活動中の学生を対象に「先進的なAI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観や志望業種・志望職種・志望企業などに影響を受けたことはあるか」という質問を行った。

結果、もっとも多かったのは「(影響を受けたことは)ない」(43.6%)で、「どちらともいえない」(41.1%)、「ある」(15.3%)が続いた。「ない」「どちらともいえない」が多数派だが、「ある」と答えた学生も約6人に1人という割合で存在している。【図1】

【図1】先進的なAI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観や志望業種・志望職種・志望企業などに影響を受けたことはあるか/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)
【図1】先進的なAI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観や志望業種・志望職種・志望企業などに影響を受けたことはあるか/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)

「影響なし」派の声

「(影響は)ない」と答えた理由について学生の自由記述(【表1】)を見ると、「自分のやりたい仕事に応募するだけだから」「就職先に求めるもっとも重要なことはその会社の社風であったため、AIなどの存在は加味しなかった」のように、AIの影響よりも優先するものがあったことを理由とする声のほか、「営業職であるため対人の接客が必要不可欠であり、AIに代替されづらいと考えたため」や「研究職の仕事がAIによって行われることはしばらくないと感じていたため」のように、志望する仕事はAIの影響を受けないだろうからという理由も見られた。

回答者属性影響は「ない」と答えた理由
文系女子就職先に求めるもっとも重要なことはその会社の社風であったため、AIなどの存在は加味しなかった。
文系女子自分のやりたい仕事に応募するだけだから。それに取って代わる可能性があると思うのなら、自分にしかできないことを入社後に磨けば良いと考えるから
文系男子 営業職であるため対人の接客が必要不可欠であり、AIに代替されづらいと考えたため
理系男子研究職の仕事がAIによって行われることはしばらくないと感じていたため
理系女子ATMができたときに銀行員はもういなくなるといわれていたそうだが、現在も縮小するどころか増えている。何が縮小されて何が生まれるかなんてわからないものだから、自分がやりたいことをやろうと考えているので影響はなかった。
【表1】先進的なAI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観や志望業種・志望職種・志望企業などに影響を受けたことは「ない」と答えた理由/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)

「影響あり」派の声

一方の「(影響は)ある」と回答した理由(【表2】)についても見てみると、「AIにはできない対人の仕事をしたいと考えるようになった」や「事務職への応募を考え直した」のように、AIに代替されることのなさそうな仕事を選んだという声や、AIによってなくなるかもしれない仕事への応募を躊躇する声などが見られた。

また、昨今業務の「DX化」や「IT化」により自社の成長性をアピールする企業も多い中、逆に「人手不足対策で機械化が進むこともあり、募集人員の減少や将来のキャリアが描けないのではないか」のような不安を感じる学生もいるようだ。また後述するChatGPTについても「翻訳業を志望していたが、ChatGPTの出現で少し考え直し中」と答える学生もいた。

回答者属性影響は「ある」と答えた理由
文系女子AIではできない、対人ならではの仕事をしたいと考えるようになった
文系女子翻訳業を志望していたが、ChatGPTの出現で少し考え直し中である
理系女子AIに置き換わられない、エッセンシャルワーカーの仕事に興味を持つようになった
文系女子銀行窓口を志望し入社予定ですが、今後AIの影響を受けて必要なくなる業種ではないかと少し不安がある
文系女子AI技術の進歩により、事務など単純作業を人が行う必要が無くなる可能性があると聞き、事務職の採用は今後どんどん少なくなると考え、事務職採用で内々定を貰おうとするのは半ば諦めようという気持ちになった。そのため、他の職種の採用情報をよく見るようになった。
文系男子物流だと人手不足や24年問題でどんどんセンターの機械化が進むこともあり、募集人員の減少や将来のキャリアが描けないのではないか?と思い始めたから。
【表2】先進的なAI技術などの新しいテクノロジーの登場によって、就職観や志望業種・志望職種・志望企業などに影響を受けたことは「ある」と答えた理由/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)

同じ業界・仕事であっても見方次第で影響は変わる

影響が「ない」と答えた理由にも「ある」と答えた理由にも、ともにAIによって仕事がなくなるかどうかを考慮に入れている学生がいる点が興味深い。

さらに「銀行窓口を志望し入社予定ですが、今後AIの影響を受けて必要なくなる業種ではないかと少し不安がある」という声があった一方で、「ATMができたときに銀行員はもういなくなるといわれていたそうだが、現在も縮小するどころか増えている。

何が縮小されて何が生まれるかなんてわからないものだから、自分がやりたいことをやろうと考えている」という声もあるように、同じ業界・職種で切り取っても真逆の見方をする学生もあり、テクノロジーが学生の就職観へ与える影響が非常に多様であることがうかがえる。

ちなみに2019年に実施した「マイナビ AI推進社会におけるキャリア観に関するアンケート」では、AI推進社会で働くことについて「自分の仕事が奪われるのではないかと不安だ」(17.8%)や、AI推進社会でどのように働きたいかについて「AIに代替されない職業に就きたい」(23.2%)といった声が一定数あった。

2019年は内閣府が「AI戦略2019」を発表し、またChatGPTのご先祖にあたる「GPT-2」が公開されるなどAI関連のトピックが豊富な年でもあり、4年前の調査ながら現在のAIが急速に発展を遂げる状況と通じるような結果といえるかもしれない。

生成系AIを就職活動で使ったことがある割合

ChatGPTなど生成系AIを就職活動で「使ったことがある」という学生は約2割

もちろん、AIやテクノロジーの進展には「仕事を効率化する」などのプラスの側面も大いにあり、前述のChatGPTプラグイン「Code Interpreter」含めてそのような文脈で取り上げられているケースが目立つ。では、就職活動における生成系AIの利用はどのようになっているのだろう。

同じく「マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)」においてChatGPTなどの対話形式で生成系AIが質問に答えるサービスの利用経験を聞いたところ、利用した経験があると答えた学生は39.2%、うち就職活動で利用した経験があると答えた学生は18.4%だった。

なお「マイナビ2024年卒 学生就職モニター調査 5月の活動状況」では、より詳細に「エントリーシート作成のために対話型AIを利用したことがあるか」という質問を行っており、利用経験のある学生は9.7%であった。就職活動でのChatGPT普及率は、まだ発展途上という印象だ。

【図2】対話形式で生成系AIが質問に答えるサービス(「ChatGPT」等)の利用経験/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)
【図2】対話形式で生成系AIが質問に答えるサービス(「ChatGPT」等)の利用経験/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)

生成系AIを就職活動で利用することへの考え

生成系AIを就職活動で「使ってみたい」という学生は34.8%。一方で「使いたいと思わない」も37.8%で、意見が割れている状況

一方、生成系AIによるチャットサービスを就職活動で活用することへの考えとしては、もっとも多かったのは「どちらかというと使いたいとは思わない」(28.3%)であった。

なお「使いたい」(「積極的に使いたいと思う 」と「どちらかというと使いたいと思う」の合計)は34.8%、「使いたいと思わない」(「どちらかというと使いたいとは思わない」と「まったく使いたいと思わない」の合計)は37.8%と、ほぼ同程度となった。

生成系AIのサービスについて知っている学生を対象にしてもなお、就職活動での使用については意見が割れているのが現状だ。

【図3】生成系AIによるチャットサービス(ChatGPT等)を就職活動で活用することについての考え(サービスを知っている学生限定)/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)
【図3】生成系AIによるチャットサービス(ChatGPT等)を就職活動で活用することについての考え(サービスを知っている学生限定)/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)

「使いたい」派の声

就職活動で使いたいと答えたシーンについては、エントリーシートの作成をあげる学生が多く見られた。

文章の添削では、「大学のキャリアセンターや友人・知人に頼めないときのピンチヒッター」として活用したり、また自分で作った文章の推敲や文字量の増減といった「文章を整形する作業」、そしてたたき台となる文章を生成させるといった「ゼロから文章を起こす作業」など、さまざまな用途を想定している。

またエントリーシートを読み込ませて、面接の際に聞かれそうな質問を考えさせる、というやり方で実際の面接でも役になったと語る学生もいたが、生成系AIの弱点を理解したうえで補助的な用途を想定した回答が目立つ。

回答者属性「使いたいと思う」理由やその場面
理系女子文章の推敲や拡大(400文字から600文字にするなど)など、就職活動の補助的なものとして使いたい。
理系女子ChatGPTを使っていて文章構成を0から考えるのに長けている技術だと思うので、ESの書き始めに使いたいと思う。しかし文章の内容や訂正は自分の手でしていきたい。
文系男子ESのたたき台等に使いたい。新しい表現方法を知れるため。
理系男子実際に履歴書の添削でChatGPTを使用しました。理由は、履歴書提出までの期間が迫っており、学校の就職支援課などで添削を受けてもらう時間が取れなかったからです。ChatGPTに『次の文章を添削してください。「実際に書いた自己PRなどの文章」』と入力すると、すぐに適切かつ読みやすいような日本語表現を提案してくれたため、非常に助かりました。ただし、一部おかしな表現になったりすることもあるため、過信は禁物であるとも思いました。
文系女子エントリーシートの添削、質問に対する応答の確認に使う。添削を人に頼む場合、メールなど事前に連絡する必要があるが、AIであれば時間や場所を選ばない。不完全なものでも添削させることができるため、気軽である。
文系女子企業の情報と自身のエントリーシート記入内容を読み込ませ、面接で聞かれそうな設問を想定させている。自分では思いつかない角度からの質問は実際の面接でも役立った。
【表3】生成系AIによるチャットサービスを就職活動において使いたいと思う理由/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)

「使いたいと思わない」派の声

一方の「使いたいと思わない」と答えた理由としては、「自身でしっかりと志望動機を練った方が予想外の質問に対応できる」のように、エントリーシート提出後に控える面接での受け答えを見据えた意見や、他の就活生との差別化ができなくなるから、という声が見られた。

回答者属性「使いたいと思わない」理由
理系男子自身でしっかりと志望動機を練ったほうが予想外の方向から質問されたときに対応できると考えているから
文系女子機械的な内容で就活生が同じ内容の話を就活で使用することになり、差別化ができないと思うからです。自分だけに話せる内容を伝えたいのにAIを使うことでAI側が学習を高め、自分のネタを他の人に使い回される可能性もすくなからずあるかと思います。
理系女子他人にESを書かせているようなものだと思うので。結局のところ、ChatGPTに入力し、文章を修正していたら時間はかかるのでコスパは悪いと思う。
文系男子知人にAIを用いて、志望理由を書いている人がいますが、特別選考に進めているというわけではないので、活用しても意味は無いと感じ、自分の力でやるべきだと思ったため、まったく使いたいとは思いません。
理系男子自分のことや考えたことを自分の言葉で述べることが大事なので、あくまでAIのような第三者が考えたものをそのままパクるのは、他の就職活動者との違いが出てこないおそれがあるから。
【表3】生成系AIによるチャットサービスを就職活動において使いたいと思わない理由/マイナビ2024年卒大学生活動実態調査(5月)

エントリーシートは「出せば終わり」ではない

エントリーシートを提出することだけがゴールであれば、たしかに生成系AIに文章を任せたほうが便利かもしれない。しかし、前述の学生からのコメントにもあったように、エントリーシートを提出した先には面接という場が控えており、面接ではエントリーシートの内容をもとに質問されることが一般的だ。

「マイナビ2024年卒 学生就職モニター調査 5月の活動状況」にも「自分の言葉でエントリーシートを書くことで、面接時の自分の姿と一致して印象を正しく受け取ってもらえると思う」や「ESを書くことで自分の考えをまとめることにもなり、面接がやりやすくなる」のようなコメントが学生から寄せられているが、エントリーシートは選考における1つのコミュニケーションツールであり、そのツールを生成系AIというまた違うツールで作成することで、おかしなことが発生してしまうことがここでは懸念されているのだ。

自分とAI、それぞれの得意・不得意をかけあわせる

一方でそうしたことを見越したうえで生成系AIをあくまで補助的に使うことを考えている学生もいることがわかる。生成された文章はたたき台として過信せず、最後は自分で調整し、自身の経験に即したオリジナリティを盛り込むことなど、生成系AIの得意・不得意を十分に理解したうえで活用している学生の姿も見られた。

文章をゼロから作るのが苦手なら、生成系AIの力を借りてたたき台をつくり、それに自分のオリジナリティを盛り込む。自力で作った文章の内容が不安であれば、生成系AIの力を借りて校正などを行う。面接準備が不安であれば、生成系AIの力を借りて面接でのやり取りをリハーサルする。

もちろん、エントリーシート添削にせよ面接対策にせよ、エントリーシートを読む相手は人間であり、面接でやり取りをする相手は人間なので、そういう意味では、AIによる添削や模擬面接と、友人・知人や大学のキャリアセンターに相談して行うものとで同じクオリティが保証されているわけではない。

就職活動で生成系AIをうまく使いこなすには、そうしたクオリティ面での違いや、内容の精度を過信しすぎないこと、セキュリティ面のリテラシー(個人情報をむやみに投入してはならないこと)なども重要であるが、もっとも根本にあるのは「生成系AIにむやみに使わず、生成系AIに手伝わせる工程の意味を改めて考えてから使用すること」ことではないだろうか。

エントリーシートは出せば終わりというものではなく、コミュニケーションツールであることを念頭に置き、どの程度までならAIに手伝わせるか。自分という人材を自己PRするために必要なオリジナリティが出せているのか。AIの添削だけでなく、実際に誰かに見てもらった方がいいのではないか。

そうしたことを考えながらAIの得意をうまく取り込み自分の不得意を補強し、自分の得意をさらに増強・補完していくことが、就職活動に限らずあらゆるビジネスにおいても大切な姿勢なのだと思う。

キャリアリサーチLab 研究員 長谷川洋介

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