マイナビ キャリアリサーチLab

高校生に忍び寄る“闇バイト”とSNSでのアルバイト探し。その危険性と対策とは

三輪希実
著者
キャリアリサーチLab研究員
NOZOMI MIWA

はじめに

夏休みなどの長期休みは高校生のアルバイト就業意欲が高まるタイミングです。デジタルネイティブな高校生にとって、アルバイト探しでもSNSは重要な情報収集源となっています。一方で、簡単に高額報酬を得られる代わりに、犯罪行為をさせられる、いわゆる「闇バイト」に関連する事件がメディアでも多く報道され、社会的な問題となっています。

今回は、危険も伴うSNSでのアルバイト探しの実態から、夏休みにアルバイトをする高校生が違法性のある労働に陥らないために必要な意識・行動について考察します。

高校生の長期休みのアルバイト就業意向とSNSでのアルバイト探し

79.2%の高校生が自由に使える時間が多い”長期休み”中にアルバイトを検討
夏休みに向け、SNSでアルバイトを探す高校生が増える可能性も

これまでアルバイトをしたことがない高校生のうち、長期休み中にアルバイトをしたい割合は79.2%で、学期中※1(63.3%)を大きく上回った。

また、現在アルバイトをしていない理由は「学校生活(学業・部活など)との両立が難しい(34.6%)」が「学校で禁止されている(56.3%)」に次いで上位となった。【図1、2】

【図1】現在アルバイトをしていない高校生の就業意向/マイナビ 高校生のアルバイト調査(2024年)
【図1】現在アルバイトをしていない高校生の就業意向
【図2】高校生がアルバイトをしていない理由(複数回答/上位抜粋)/マイナビ 高校生のアルバイト調査(2024年)
【図2】高校生がアルバイトをしていない理由(複数回答/上位抜粋)

夏休みなどの長期休みは学期中より自由に使える時間が多く、時間に余裕が生まれることから、高校生のアルバイトが増えるタイミングであると考えられる。

高校生がどのようにアルバイトを探しているのかをみると、現在アルバイトをしている高校生のうちSNSでアルバイトを探したことがある割合は46.6%、実際に応募した経験がある割合は36.7%で、3人に1人以上がSNSでアルバイトに応募したことがあることがわかった。

これらは大学生よりも10pt以上高く、日本の高校生の9割以上がSNSを利用※2している中で、SNSでのアルバイト探しも身近である様子がうかがえる。このことから、高校生のアルバイト就業意向が高まる長期休みには、SNSを利用してアルバイト探しを行う高校生が増えることが考えられる。【図3】

【図3】学生のSNSでのアルバイト探し・応募・就労経験/マイナビ 高校生のアルバイト調査(2024年)、大学生のアルバイト調査(2024年)
【図3】学生のSNSでのアルバイト探し・応募・就労経験

※1 1学期や2学期に関わらず学校がある時期のこと
※2 国立青少年教育振興機構「高校生の SNS の利用に関する調査報告書」より

高校生のアルバイト先の決め手

アルバイト先の決め手は「応募後の迅速な連絡」が最多
安易に応募・就業せず、吟味することが必要

次に、高校生がアルバイト先を決めた要因についてみていきたい。現在アルバイトをしている高校生にアルバイト先を決めた要因を聞くと、「応募後にすぐに企業から連絡がきた(40.4%)」が最も多かった。

SNSでのアルバイト探しは、応募の手軽さや働き始めるまでの期間が短いことなど、効率性の観点においては学業や部活動で忙しい学生にとってメリットがあると考えられる。一方で、SNSは第三者のチェックが入らず誰でも簡単に情報を掲示できることから、トラブルに巻き込まれる危険性もある。限られた時間で応募・就業をせず、応募や就労前にしっかりと企業や仕事の情報について確認することが重要である。【図4】

【図4】高校生のアルバイトを決めた要因(複数回答/上位抜粋)/マイナビ 高校生のアルバイト調査(2024年)
【図4】高校生のアルバイトを決めた要因(複数回答/上位抜粋)

高校生がSNSでの怪しい求人の勧誘やトラブルにあった経験

約4割の高校生が怪しい求人を見たことがあると回答
実際にトラブルにあった高校生は8.6%
一方で、SNSでアルバイトを探す危険性を認知している高校生は半数にとどまる

現在アルバイトをしている高校生で、SNSで怪しい求人を見かけたことがある割合は41.3%で、SNSで怪しい求人の勧誘を受けたことがある割合は10.4%で、実際にトラブルにあった割合は8.6%だった。【図5】

【図5】SNSでの怪しい求人の勧誘やトラブルにあった経験/マイナビ 高校生のアルバイト調査(2024年)
【図5】SNSでの怪しい求人の勧誘やトラブルにあった経験

また、SNSで直接アルバイトの交渉をすると違法な労働に巻き込まれる危険性があることを知っている割合は、前年から5.2pt増加したものの、50.0%と半数にとどまった。【図6】

【図6】SNSで直接アルバイトの交渉をすると、第三者のチェックが働かず、違法な労働に巻き込まれる危険性があることを知っているか/マイナビ 高校生のアルバイト調査(2024年)
【図6】SNSで直接アルバイトの交渉をすると、第三者のチェックが働かず、違法な労働に巻き込まれる危険性があることを知っているか

アルバイトをしている高校生のうち、5人に1人が親の関与なくアルバイト先を決めている現状もあるため大人や社会が高校生をどう見守っていくかが重要となる。また、教育機関等は、高校生がSNSの正しい活用方法について改めて学び、自分の身を守る術を提供する必要がある。【図7】

【図7】アルバイト選びの際の親の関与/マイナビ 高校生のアルバイト調査(2024年)
【図7】アルバイト選びの際の親の関与

まとめ

現在アルバイトをしている高校生の半数近くがアルバイト探しでSNSの活用経験があることがわかりました。また、実際にSNS経由で怪しいアルバイトの勧誘を受けたり、トラブルに巻き込まれている高校生もいる中で、その危険性を認知している割合は5割にとどまっています。闇バイトが社会的に問題になっている中で高校生にも危険が迫っている様子がみられる調査結果となりました。

夏休みなどの長期休みは高校生のアルバイト就業意向が高まり、SNSでのアルバイト探しを行う高校生も増加する可能性が考えられますが、闇バイトに関わらないように注意を払うことが必要です。学業との両立の難しさから、応募の手軽さ・時給が高いことに惑わされて、安易に闇バイトに手を出さないように気を付け、長期休みを充実させてもらえたらと思います。

また、高校生の自由は尊重しつつ、今後一層大人や教育機関がSNSの正しい知識を啓蒙していくことに加えて、社会経験が少ない高校生がトラブルに巻き込まれないように、身近な大人や学校側から積極的にコミュニケーションを取っていくことも重要であると考えられます。

キャリアリサーチLab研究員 三輪 希実

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