マイナビキャリアリサーチLabでは、年に2回「ボーナスと転職に関する調査」を実施している。本コラムでは、その調査結果の中から、2023年冬季賞与から最新の2025年冬季賞与までのデータを用いて、ボーナス金額と転職意識の関係について経年的な変化を整理する。
なお、本調査は、正社員として働いている20代~50代の男女のうち、転職活動を行っている、または行う予定のある人を対象としている。そのため、ここで示す結果は、労働者全体の傾向を示すものではなく、あくまで転職意向を持つ層の意識や実態を捉えたものである点には留意が必要である。
※本コラムで経年変化の分析対象としている個人向け調査は、2023年冬季賞与以降の調査結果である。2023年夏季賞与については企業の中途採用担当者向けに調査を実施しており、調査対象が異なるため、本分析には含めていない
ボーナス(賞与)とは
ボーナスの一般的な位置づけ
ボーナス(賞与)とは、毎月支給される固定給とは別に会社から従業員に支払われる金銭のことを指す。
一般に、企業の業績や個人の勤務成績などを踏まえて支給されることが多く、支給時期や金額は企業によって異なる。日本では、夏季と冬季の年2回、賞与を支給する企業が多いとされているが、その形態は一様ではない。
ボーナスと固定給の違い
ボーナス(賞与)は、固定給とは異なり、支給の有無や金額が制度設計や運用に委ねられている側面がある。そのため、毎年必ずしも同じ水準で支給されるとは限らず、収入の一部でありながら、不確実性を伴う要素として認識されやすい。
こうした性質から、賞与は金額そのものだけでなく、働く人の意識や期待に影響を与える可能性がある。たとえば、賞与が業績や評価の結果として支給される場合、その金額は「評価の結果」として受け止められやすく、事前の期待や説明の有無によって、納得感に差が生じることも考えられる。
また、賞与は年収の一部として家計や将来設計に関わるため、その受け止め方が、現在の職場にとどまるか、転職を検討するかといった意思決定に、間接的に関係する可能性も否定できない。本コラムでは、こうした点を踏まえながら、賞与金額と転職意識の関係について整理していく。
ボーナス金額が分かる公的統計データ
マイナビデータをみていく前に、厚生労働省や国税庁などが公表している賞与金額の代表的な統計を紹介する。ここで示す公的統計データは、労働者全体や民間企業全体を対象としており、本コラムで扱う「転職意向を持つ層」を対象とした調査とは母集団が異なる点に留意したい。
毎月勤労統計調査(厚生労働省)
「毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)」は厚生労働省が毎月実施している統計調査である。
この調査では、
を調べることができる。
毎月勤労統計調査は賃金や労働時間、雇用の動向を把握することを目的としており、賞与については、夏季賞与および年末賞与として、一定期間に支給された特別給与を集計した結果が公表されている。
この調査では、事業所規模や産業別の集計結果も示されており、景気動向や賃金環境の変化を把握するための基礎資料として広く活用されている。
賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
「賃金構造基本統計調査(厚生労働省) 」は、厚生労働省が毎年実施している統計調査である。
この調査では、
を調べることができる。
賃金構造基本統計調査は労働者の賃金構造を詳細に把握することを目的としており、年間賞与だけでなくその他特別給与額についても集計されている。雇用形態や年齢、企業規模など、属性別の違いを確認できる点が特徴である。
この調査は、賞与を含めた賃金の構造的な実態を把握するための統計であり、単年度の金額水準だけでなく、属性ごとの分布や差異を理解するうえで参考になる。
民間給与実態統計調査結果(国税庁)
「民間給与実態統計調査結果(国税庁) 」は、国税庁が毎年実施している統計調査である。
この調査では、
を調べることができる。
民間給与実態統計調査は、民間企業で働く給与所得者の年間給与や賞与の実態を把握することを目的としている。
以上のように、公的統計データからは、賞与額の水準や変化について一定の傾向を読み取ることができる。次章以降は、マイナビキャリアリサーチLabの調査結果を基に、賞与金額個人の受け止め方や転職意識との関係についてみていきたい。
ボーナスと転職意識【マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」】
ボーナス(賞与)が少なくて転職したことがあるか
「賞与が少ない」ことを理由に転職した経験についてみると、2023年冬季調査では、転職理由として「ある(計)」と回答した人は62.5%であったが、2024年夏季・冬季調査では49.2%と低下した。
一方、2025年夏季調査では69.1%、冬季調査では70.1%となり、再び高い水準となっている。特に、「1番大きな転職理由だった」とする割合が2025年には3割以上となっている点が特徴的である。
このように、「賞与が少ない」ことが転職理由として意識される度合いは一定ではなく、時期によって強弱がみられる。特に2024年は賃上げ額や賃上げ率が大幅に増加(※1)したタイミングであることから、賞与への期待感が高まっていた可能性がある。
賞与は、状況によっては転職を検討する際の重要な要素となる場合があると考えられる。【図1】
(※1)令和6年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況/厚生労働省
【図1】「賞与が少ない」ことが理由で転職をした経験/マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」
ボーナス(賞与)が少なくて転職した時の賞与金額
「賞与が少ない」ことを理由に転職した際の賞与額の平均をみると、2023年冬季調査では31.1万円、2024年夏季調査では28.3万円、同年冬季調査では30.8万円となっている。2024年までは、おおむね30万円前後で推移している。
一方、2025年夏季調査では38.2万円と高い水準となったが、2025年6月は消費者の景況感が直近10年でもっとも悪く(※2)、額面としては高くても相対的な評価で不満のある金額となったようだ。【図2】
(※2)「生活意識に関するアンケート調査」(第104回)/日本銀行
【図2】「賞与が少ない」ことが理由で転職をした時の賞与金額(平均)/マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」
ボーナス(賞与)が高かったために転職を思いとどまったことがあるか
「賞与が高かった」ことを理由に転職を思いとどまった経験についてみると、その割合はおおむね3割前後で推移している。2023年冬季調査では、転職を思いとどまった経験が「ある(計)」と回答した人は30.7%であった。
2024年夏季調査では30.4%とほぼ同水準で推移し、同年冬季調査では34.1%へとやや上昇している。2025年に入ってからも、夏季調査で33.3%、冬季調査で33.6%と、おおむね同程度の割合が続いている。
内訳をみると、「転職の情報収集をしていたがやめた」「書類選考や面接などの転職活動をしていたがやめた」が中心であり、「内定を得ていたがやめた(辞退した)」とする割合はいずれの調査でも少数にとどまっている。このことから、賞与は転職の初期・検討段階において、思いとどまる要因として作用する場合がある可能性があると考えられる。【図3】
【図3】賞与が高かったために転職を思いとどまったことがあるか/マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」
ボーナス(賞与)金額について【マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」】
前年の実績・今年の予想・理想の賞与額
前年の賞与額、今年予想している賞与額、理想の賞与額を比較すると、前年実績と今年予想の水準はおおむね近い水準で推移している。一方で、理想の賞与額はいずれの年においても実績や予想を大きく上回っている。
たとえば、2023年冬季調査では前年実績が46.7万円、今年予想が46.2万円であったのに対し、理想の賞与額は89.2万円となっている。同様に、2024年、2025年の各調査においても、実績・予想と理想の間には一定の開きがみられる。
このことから、賞与については「現実的な見通し」と「望ましい水準」との間に差が存在している可能性があると考えられる。【図4】
【図4】前年の実績・今年の予想・理想の賞与額/マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」
予想と理想の賞与額の差
次に、今年想定している賞与額と理想の賞与額との差に注目すると、その差は各年で30万円台から40万円台前後で推移している。2023年冬季調査および2024年夏季調査では43.0万円の差、2024年冬季調査では36.9万円の差となっている。
2025年夏季調査では38.1万円の差、2025年冬季調査では30.5万円の差と、差はやや縮小しているものの、予想と理想の間に一定のギャップが存在している点に変わりはない。
このように、賞与額に対する期待と見通しの間には継続的な差がみられ、その受け止め方が、賞与に対する納得感や評価の感じ方に影響している可能性も考えられる。【図5】
【図5】予想と理想の賞与額の差/マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」
賞与への納得感【マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」】
各年に聴取した「前年の賞与額」に対する納得感についてみると、「納得していない(計)」と回答した割合は、各年でおおむね5割前後で推移している。2024年夏季調査では53.6%、同年冬季調査では51.3%と、過半数前後を占めていた。
その後、2025年夏季調査では47.1%とやや低下し、2025年冬季調査では48.5%となっている。このように、賞与に対して「納得していない」と感じている人の割合は年次によって変動しており、一時的に改善がみられる時期もあるものの、一定の割合で存在していることが分かる。賃上げが積極的に行われている一方で、価格高騰の影響も大きい可能性がうかがえる。【図6】
【図6】賞与金額への納得感/マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」
年次トピック【マイナビ「ボーナスと転職に関する調査」】
「賞与支給日」と転職のタイミング(2023年冬)
2023年冬季調査では、『「賞与支給日」と転職のタイミング』について調査した。賞与を踏まえて転職時期を判断している人は約半数(50.4%)となっている。
自由回答では、賞与をこれまでの労働の対価として捉えていることや、転職活動期間中の生活への影響を考慮している様子がうかがえる。このことから、賞与は金額の多寡だけでなく、受け取るタイミングという観点でも転職行動と関係している可能性があると考えられた。【図7】
【図7】転職タイミングを調整した経験/
賞与の金額で転職者は増えるのか?【ボーナスと転職の関係性を紐解く】 | マイナビキャリアリサーチLab
賞与と評価の関係性(2024年夏)
2024年夏季調査では、賞与への納得感と評価への納得感の関係について調査した。前年夏の賞与額について「納得していない」と回答した人は半数を超えており、賞与に対する納得感が十分に得られていない状況がうかがえる。
また、直近の自身の評価に対しても、「納得していない」とする回答が半数以上を占めていた。賞与への納得感と評価への納得感を比較すると、両者の間には強い相関がみられ、賞与に納得していない人ほど、評価にも納得していない傾向が示されている。【図8】
【図8】前年夏の賞与額、直近の評価に納得感があるか/
夏のボーナスの理想と現実企業が知るべき従業員の本音【2024年夏ボーナス調査】 | マイナビキャリアリサーチLab
賞与の納得感とフィードバック有無の関係性(2024年冬)
2024年冬季調査では、「賞与の納得感」と「フィードバックの有無」の関係について調査した。賞与額に対して「フィードバックがない」と回答した人は半数を超えており、賞与に関する説明や振り返りの機会が十分に設けられていない状況がうかがえた。
また、賞与の納得感と各要素の関係をみると、賞与額そのものよりも、フィードバックの有無との間に相関がみられた。一方で、賞与額と納得感の関係は限定的であり、金額が高ければ必ずしも納得感が高まるわけではないことが示されている。【図9】
【図9】前年冬の賞与額の納得感と、賞与額に対するフィードバック有無、前年冬の賞与額の相関関係/
【2024年冬ボーナス調査】冬ボーナスの理想と現実 ~フィードバックの重要性~ | マイナビキャリアリサーチLab
転職活動における賞与の情報の重要性(2025年夏)
2025年夏季調査では、転職活動における賞与情報の重要性について調査した。転職先を選ぶ際に賞与金額を「重要な情報」と捉えている人は約7割にのぼっており、賞与が意思決定において重視されていることが分かる。
一方で、選考時に賞与について「質問しづらい」と感じている人も7割を超えており、重要度の高さと情報取得のしづらさとの間にギャップがみられた。このことから、賞与は転職希望者にとって重要な判断材料である一方、自ら確認することが難しい情報である可能性があると考えられた。【図10】
【図10】賞与の情報と転職活動/
【2025年夏ボーナス調査】夏ボーナスと転職の関係性について | マイナビキャリアリサーチLab
福利厚生の重要性(2025年冬)
2025年冬季調査では、福利厚生の充実が転職意欲に与える影響について調査した。その結果、転職を検討している正社員の約8割(79.6%)が、給与や賞与の増額がなくても、転職を思いとどまる可能性のある福利厚生制度があると回答している。
具体的な内容としては、「有給休暇の取得促進」や「通勤・住環境の支援」など、生活の負担軽減につながる制度が上位に挙げられた。賃上げや賞与増額への期待が高まる一方で、継続的な金額引き上げには限界がある企業も少なくない。
そのような中で、福利厚生の充実は、実質的な賃上げとして働く人の満足度や定着に寄与する施策の一つとして重要性を増している可能性があると考えられる。【図11】
【図11】転職を思いとどまる福利厚生制度があるか/
【2025年冬ボーナス調査】冬ボーナスと転職の関係性について | マイナビキャリアリサーチLab
最後に
本コラムでは、2023年冬季賞与から2025年冬季賞与までの調査結果を基に、賞与金額と転職意識の関係について整理してきた。調査結果からは、賞与は「少ないこと」が転職のきっかけになる場合がある一方で、「高いこと」が転職を思いとどまる要因となる場合もあり、転職行動と一定の関係を持つ可能性があることが示唆された。
また、賞与額そのものだけでなく、理想と現実のギャップ、納得感、評価やフィードバックの有無、さらには賞与に関する情報の伝わり方など、賞与をどのように受け止めているかが、働く人の意識に影響している可能性もうかがえた。
賃上げや賞与増額への期待が高まる中で、金額の引き上げだけで対応することには限界がある企業も少なくない。そのような状況においては、評価やフィードバックを丁寧に実施したり、給与や賞与の計算を明示したり、福利厚生の充実による「実質的な賃上げ」を行ったりなど総合的な処遇設計が、働く人の納得感や定着に関係してくる可能性があると考えられる。
賞与は、固定給とは異なり不確実性を伴うものである一方、働く人にとっては年収や生活設計、評価の受け止め方に関わる重要な要素である。だからこそ、賞与をめぐる意識や行動の変化を継続的に捉えていくことには意義がある。マイナビ キャリアリサーチLabでは、今後も「ボーナスと転職に関する調査」を通じて、働く人の実態や意識の変化を丁寧に追い、企業と個人双方にとっての示唆を提供していきたい。
過去のボーナスに関する調査・コラム一覧