2026年卒新卒採用の「ピンポイント就活」からみる2027年卒の見通し

宮地太郎
著者
キャリアリサーチLab主任研究員
TARO MIYAJI

「ピンポイント就活」とは?

「ピンポイント就活」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

2025年の9月にキャリアリサーチLabの井出 翔子 主任研究員が提唱した言葉で、従来型の就職活動(短期のインターンシップや仕事体験に参加し、全体で20社程度の企業に広くエントリーをし、2・3社の内々定を得て、最終的な1社を選ぶ)が一般的であったことに対して、「ピンポイント就活」とは低学年向けのプログラムに参加した企業や、長期のインターンシップ・仕事体験に参加した企業を中心に数を絞って“狭く深く”エントリーをし、満足度の高い1社から内々定を得てそのまま就職活動を終了する、という動きのトレンドを示した言葉である。【図1】

【図1】ピンポイント就活のイメージ
【図1】ピンポイント就活のイメージ

これまでは複数社の内々定を得て満足度高く終了する層が、売り手市場における学生の典型的なイメージであった。しかし、2026年卒の売り手市場においては、「1社内々定×満足度高群×活動終了」のピンポイント就活の層が、ニュースタンダードとなっている。

「ピンポイント就活」という言葉は端的に現状の学生の心境や、行動を表している言葉として浸透しているが、では「2027年卒でこの傾向は続くのか?」を考察していく。

「ピンポイント就活」の傾向が一層強まりそう?

3月の企業採用広報解禁を前に、就職活動を間近に控えた学生を対象に実施した「2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査」で3月以降に企業へエントリーする予定社数を聞いたところ、全体では6.7社となり、前年から1.3社減少した。文理別では、文系で8.8社(前年比1.1社減)、理系で4.4社(前年比1.3社減)となり、いずれも2年連続で減少となった。【図2】

【図2】3月以降のエントリー予定社数(数値回答) / 2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査
【図2】3月以降のエントリー予定社数(数値回答) / 2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査

また、「2027年卒 キャリア意向調査3月1日<就職活動・進路決定>」によると、内々定保有者に、現在入社意思のもっとも高い企業の主な発見ツール(方法)でもっとも多かったのはインターンシップ(5日間以上)と仕事体験で、それぞれ16.4%だった。【図3】

【図3】】現在入社意思のもっとも高い企業の主な発見ツール / マイナビ 2027年卒 大学生キャリア意向調査3月1日<就職活動・進路決定>
【図3】】現在入社意思のもっとも高い企業の主な発見ツール / マイナビ 2027年卒 大学生キャリア意向調査3月1日<就職活動・進路決定>

また、「マイナビ2027年卒大学生広報活動開始前調査」によればインターンシップ等のキャリア形成プログラムへの参加率は85.6%と高水準を維持している。

こうした学生の活発な動きを踏まえると、2月までの就職活動準備期間にインターンシップ等を通じて、第一志望群の企業を見つけている学生が多いことが予想される。前年以上にエントリーを絞り、納得の1社を選ぶ「ピンポイント就活」の傾向は、2027年卒学生においても一層加速していく可能性が高い。

2026年卒採用のもうひとつの傾向、「部分売り手市場」にも注目

2027年卒採用を見通すにあたって、2026年卒採用では「ピンポイント就活」に加えて、「部分売り手市場」という動きがみられたことにも注目しておきたい。

2026年卒採用では、2月までのエントリー数の減少は「ピンポイント就活」という新たなトレンドが要因となったが、「マイナビ2026年卒 大学生キャリア意向調査6月<就職活動・進路決定>」の結果を見ると平均エントリー社数は近年減少傾向であったところから一転し増加となった。【図4】

【図4】平均エントリー社数・経年比較 / マイナビ2026年卒 大学生キャリア意向調査6月<就職活動・進路決定>
【図4】平均エントリー社数・経年比較 / マイナビ2026年卒 大学生キャリア意向調査6月<就職活動・進路決定>

これは内々定を保有しながらも活動を継続する学生と、内々定を保有していない学生(以下 「未内々定」)が一定数存在しており、彼らが全体のエントリー数を増加させているためである。このように売り手市場はすべての学生にあてはまるわけではなく、売り手市場であっても苦戦している学生もいることから「部分売り手市場」と呼んでいる。

現段階ではこの傾向が2027年卒学生にもみられるのかどうかはわからないが、去年は思うように内々定が得られなかった、内々定を得ても本当にその企業に入社して良いのかと決められない、といった人が後半時期になって活動が活発化する傾向もあったことには留意しておきたい。【図5】

【図5】売り手市場であっても苦戦している学生層 / マイナビ 2026年卒大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>
【図5】売り手市場であっても苦戦している学生層 / マイナビ 2026年卒大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>

さいごに

就職活動準備期間に数を絞って“狭く深く”満足度の高い1社を選ぶ「ピンポイント就活」はしっかりと準備をした上で納得できればそれは決して悪いことではないだろう。昨今指摘される就職活動の長期化という課題や、学生・企業双方のコスパ・タイパ面を踏まえれば、むしろ望ましいともいえる。

ただし、「部分売り手市場」でみられるように、未内々定者や活動継続者の動きが活発になる傾向が2026年卒にはみられたことから、2027年卒も同様になる可能性は否定できない。万が一うまくいかなかった場合、再始動に苦労するリスクもあるため、行き過ぎた絞り込みには注意が必要である。

マイナビが後援する「学生が選ぶキャリアデザインプログラムアワード」においても、インターンシップ等を通じて学生にもたらされる主な効果として「キャリアの焦点化(やりたいことが明確になる)」と合わせて、「キャリアの展望化」を挙げている。展望化とは知らなかった業界・企業・仕事内容を知り、視野や興味の範囲が広がることであり、自分の可能性を再発見し、キャリアの選択肢が増えることである。

2027年卒採用においても、売り手市場ということもありインターンシップ等の参加によって焦点化が進み過ぎてしまう、絞り込み過ぎてしまう恐れがある。学生のみなさんには焦点化だけではなく展望化も意識していただき、後悔のない納得のできる就職活動を行ってもらいたい。

キャリアリサーチLab主任研究員 宮地 太郎

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