AI時代の新卒面接~「調整プロセス」で見極める資質の再現性~

神谷俊
著者
株式会社エスノグラファー代表取締役 バーチャルワークプレイスラボ代表
SHUN KAMIYA

新卒採用の面接シーズンが、間もなく始まります。毎年繰り返される光景ですが、企業にとって面接は単なる選考ステップではありません。入社後の活躍可能性を左右する、極めて重要な「意思決定の場」です。

見極めが適切に行われなければ、その学生は入社後に職場へうまく適応できず、早期にモチベーションを失うケースも生じます。場合によっては、早期離職というかたちで組織にも本人にも大きな損失をもたらします。

また、面接という限られた時間の中では、どうしても第一印象や受け答えの巧みさに目を奪われがちです。その結果、「面接でうまく振る舞える学生」や「複数社から内々定を得る学生」が選抜され、内々定後の辞退率が高まるという現象も少なくありません。

私たちは、何をどのように見極めるべきなのでしょうか。本コラムでは、新卒面接に内在する構造的な難しさを改めて整理しながら、表面的な印象やエピソードに惑わされない見極めの視点について考えていきます。

なぜ学生の「見極め」はこれほど難しいのか

新卒採用の面接が難しいのはなぜか。そこには評価を歪める複数の制約やノイズがあるためです。
第一に、評価対象となる行動の観察範囲が極端に限られているという問題があります。中途採用であれば、実務実績や職務履歴という比較的客観的な「成果」が存在します。しかし新卒の場合、判断材料は主に学生時代の経験です。

しかも、それは企業活動とは明らかに異なる文脈での活動であり、職務場面への転用・応用できるのかを直接確認できるものではありません。つまり面接官は、「仕事における行動」を直接確認できないまま、「学生時代の活動」から将来のパフォーマンスを推測しなければなりません。この時点で、すでに難度はかなり高いと言えます。

第二に、その限られた材料自体が“編集済み(Faking)”であるという問題があります(※1)。現在の就職活動では、学生は事前に徹底的な準備と対策を行います。面接で語られるエピソードはAIによって何度も練り上げられ、想定問答もしっかり準備されています。彼らの「脚本」に乗せられることなく、本質を炙り出すためには面接官にも一定の戦略が求められます。

第三に、バイアスです。明るい表情、適切なアイコンタクト、流暢な話し方。そういった印象的な側面が、面接官の評価の歪みを引き起こします(※2)。あるいは、「体育会に所属していた→ヴァイタリティがある」「大規模なサークルのリーダー→マネジメント力がある」といったように、面接官自身の役割に対する勝手な思い込みから一方的に評価を決めつけてしまうケースも少なくないでしょう。

新卒面接の難しさ(3つの制約)
新卒面接の難しさ(3つの制約)

新卒採用の面接は、実はより高度な評価能力が必要とされるものと言えます。「学生を相手にしているから」「毎年一定数の面接を行っているから」難度が低いと考えてしまいがちですが、むしろ不確実性がもっとも高い対象を評価しているという意味で、新卒面接は極めて難度の高い意思決定であると言えるでしょう。

では、学生たちの資質をより良く見極めるために、どのような視点を持つことが求められるのでしょうか。

経験を掘り下げても、見極められない理由

このような難しさを乗り越えるうえで、一般的に面接では、「経験の掘り下げ」が重視され、よく「STARモデル」の活用が推奨されています。このモデルは、どのような状況(Situation)で、どんな役割(Task)を担い、どう行動(Action)し、どんな結果(Result))を出したのかを確認し、話を構造的に把握するうえで有効です。

しかし、実際にSTARモデルを使い、丁寧に経験を掘り下げていても、合否データを振り返ると、必ずしも求めていた資質を十分に評価できていないケースもします。

その理由の1つは、評価の視点がいつの間にか「経験の中身」から「語り方」に移ってしまうことにあります。私たちは無意識のうちに、「話し方がうまい」「説明が分かりやすい」「その場の切り返しが巧み」といった“面接対応力”を高く評価してしまいがちです。つまり、経験を掘り下げているつもりでも、評価しているのは内容そのものではなく、印象やコミュニケーションの巧みさになっている可能性があるのです。

ここで改めて問うべきなのは、「どの視点で経験を掘り下げるのか」という点です。いくら丁寧にヒアリングしても、「何を見極めるのか」という焦点が定まっていなければ、目立つエピソードや言葉遣いに影響を受け、本質的な評価にはつながりません。

面接で見極めるべきは「再現性」

そこで重要になるのが「再現性」をチェックするという視点です。再現性とは、学生が語る強みや資質が環境や他者に依存したものではなく、その人の内側に一定の原理として定着しているかどうかを問う概念です(※3)。学生時代に発揮された強みが、入社後にも発揮されうるのか、という視点で学生と向き合うことが大切です。

スポーツや音楽を例に挙げると分かりやすいと思います。たとえば、プロ野球選手で打者としての能力を持っている人は、いかなる相手であれ、どのような環境であれ、一定のパフォーマンス(打率)を再現することができます。あるいは、一流の演奏者は、どのような楽器や音響環境であっても、周囲を魅了する演奏をすることができます。つまり「資質や能力がある」ということは、環境や状況が変わっても高いパフォーマンスを再現できる力と言えます。

企業という新しい環境では、評価の基準も利害関係もプレッシャーの質も変わります。その中でも彼らがアピールする強みや資質は繰り返し発揮されるのか。それを検証してはじめて、見極めは意味を持ちます。

再現性を見極めるポイントは「調整プロセス」にある

では、再現性はどのように見極めればよいのでしょうか。多くの場合、私たちは「どんな経験をしたか(実績)」に目を向けがちです。過去に輝かしい実績を残していれば、未来にも実績を残す可能性が高くなる。そう判断しがちです。

しかし、再現性を判断するうえで本当に重要なのはそこではありません。見るべきなのは、その経験の中で「どのように自分の思考や行動を調整していたか」という自己調整のプロセスです(※4)。その経験の過程で、状況の変化や壁に直面したときに、本人がどのように自分の思考や行動を見直し、軌道修正していたのかという点です。

なぜ「調整プロセス」に注目することが大切なのでしょうか。先ほどのスポーツの例を再び取り上げて解説していきましょう。プロ野球の試合後のインタビューで、とある打者がこんなコメントをしていたことがあります。

「第1打席では相手投手のリリースポイントが想定より前で、少し振り遅れました。次の打席ではタイミングを少し変えたことが良かったと思います」

一流のバッターは、対戦相手、体調、天候、球場の広さ、使用するバットなど、条件が毎回異なるにもかかわらず、約3割という高い確率でヒットを再現し続けます。彼らは毎回全く同じスイングをリピートしているわけではありません。

配球傾向を読み、タイミングを微調整し、握る位置や力加減、フォームをわずかに変えながら打席に立ち、そのときにベストなスイングを創造し続けているのです。外から見れば全く同じパフォーマンスを再現しているように見えますが、実際には絶えず自分をチューニングして微妙に異なるスイングを創造し続けているのです。

再現性の本質
再現性の本質

ビジネスでも同様です。顧客も市場もチームも常に変化しています。それでも成果を出し続ける人は、自分のやり方を固定していません。状況を観察し、判断を更新し、行動を修正しながら前に進んでいます。上昇志向、問題解決力、創造性、リーダーシップ。どの資質であっても、それを安定して発揮できる人は、能力をさまざまな状況の中で十分に発揮するための調整プロセスを駆動させています。

安定した成果は、絶え間ない調整の積み重ねの中で生まれます。状況に応じて考えや行動を修正し続けているからこそ、結果がぶれにくくなり、再現可能なパフォーマンスとなるのです。その意味で、能力とは固定的な資質ではなく、変化に応じて自らを調整し続け、より高いパフォーマンスの発揮を促すプロセスが備わっていることと言えるでしょう。

面接で本当に注目すべきなのは「何を成し遂げたか」以上に、「1つの経験の中で、どれだけ自分の判断や行動を修正してきたか」でしょう。その調整プロセスの中にこそ、再現性を判断する手がかりがあります。

再現性を見極める3つの視点

このように何を見極めるのかを突き詰めていくと、自ずとどのようなポイントに注目していけば良いのかが見えてきます。面接の中では、彼らが語る経験をもとに、彼らの自己調整の軌跡を追いかけていくことが肝要になります。

つまり、学生たちが、1.その経験の中で状況をどのように見立てて(Monitoring)活動を展開し、2.どのような気づきと内省(Self-reflection)をしていたかをチェックし、3.どのように活動内容を調整していったのか(Adaptive Performance)、そのプロセスを捉えていけばよいのです(※5)。1つずつ見ていきましょう。

初期の見立て・事前分析(Monitoring)

〈再現性を見極める視点1〉初期の見立て・事前分析(Monitoring)
Check-point 1:目標・役割に対する評価 
タスクをどう定義し、どの水準を目指そうと考えたか?
Check-point 2:状況認識から導かれる計画・戦略 
どの情報を重視し、どのようなアプローチ・準備や実践が重要だと思ったか?

初期の見立て・事前分析(Monitoring)は、具体的な活動を行う初期段階に注目する視点です。本人が、その状況においてどのような見立てをしていたのかを確認します。能力や資質を有する人は、状況に対して、一端の仮説や仮定を設定することができます。

たとえば、「上昇志向(より高い目標を自ら掲げ、達成していこうとする姿勢)」があるなら、自分にとってその目標がどれくらいの難易度なのかを初期段階で見立てているでしょう。「問題解決力(問題を見定め、解決のために尽力する力)」があるならば、目の前の問題は一体どのような要因で発生したものなのかについて、自分なりの仮説を持ったり、簡単な推察をしたりしています。

このように自分なりの考えを持って、望んでいるかを確認していくことで、調整力の高さ(つまり、資質の有無)を推測していくことができます。

気づき・内省(Self-reflection)

〈再現性を見極める視点2〉気づき・内省(Self-reflection)
Check-point 1:行為中の省察 
実践する中で、どのような発見や気づきがあったか?
Check-point 2:注目したシグナル 
何を手がかりに「うまくいっていない/ズレている」と判断したのか?

2.気づき・内省(Self-reflection)は、実際に実践する中で、自分の仮説や判断と状況のズレを知覚していたかを捉える視点です。実際に動いてみると、自分が当初思っていたのと異なる状況や局面が現れます。このときに、調整力の高い人は、そのズレを的確に知覚し、修正しようとします。

「上昇志向」を有しているなら、自分と目標レベルを再度比較し、より高い目標(あるいは自分にちょうど良い目標レベル)に調整を行おうとするでしょうし、「問題解決力」が高ければ、より根本的な問題や深刻な問題に気づき、自分の見立てや考えの誤りを修正しようとするはずです。問題の真因が特定できなければ、改めて情報収集を行おうと考えるかもしれません。

このように調整プロセスが機能している人は、自分の見立てや思い込みとのズレを素早く見つけることができます。反対に、調整できない人ほど当初の自分の考えや解釈に固執し、ズレに気づけません。「ズレを見つけているか?」は再現性を見定めるうえで、重要な視点です。

適応(Adaptive Performance)

〈再現性を見極める視点3〉 再適応(Adaptive Performance)
Check-point 1:改善ポイント
実際に何を改善したか(「行動レベル」「判断基準・優先順位」「目標設定」などの調整)?
Check-point 2:改善後の省察
その結果、どのような改善効果が生まれたか?
新たに見えたズレ・リスク・問題はどのようなものか?

3.再適応(Adaptive Performance)は、行動の中でズレを知覚したのち、そのズレを解消しようとして行う新たな試みです。調整プロセスを駆動している人は、ズレを的確に分析したのち、新たに認識した状況にぴったりフィットするまで継続的な改善をしています。もし仮にフィットしていなければ、新たなズレやリスクを見出し、さらに改善を重ねようとするでしょう。改善して満足ではなく、継続的な改善のプロセスが見られるかを確認していくことがポイントです。

調整力(再現性)をチェックする際の3つの視点
調整力(再現性)をチェックする際の3つの視点

このような視点で学生の経験を深掘りしていくと、学生たちの間に明らかな差があることが見えてくるはずです。たとえば、資質を有している学生は、状況を振り返る際に因果関係や成功要因・失敗要因など「構造的」な側面を自分なりに言語化して説明することができます。

反対に、「くやしかった」「嬉しかった」というように「感情的」なトークに終始していたり、「いかにすごい実績なのか」と成果や結論ばかりをアピールしてばかりいる(プロセスを捉え、調整する視点や思考が希薄な)場合は、能力レベルとしては高くないと考えることができます。

エピソードから「プロセス」へ

面接で本当に大切なのは、「何を見極めたいのか」を明確にしたうえで、その資質や能力がどれくらい再現されうるものなのかを丁寧に観察することです。

AIの普及により、自己PRやガクチカ(学生に力を入れたこと)を精緻に整えてくる学生は確実に増えています。彼らの語る内容は、文章構成も論理展開も整っており、一見すると非常に優秀に映ることもあるでしょう。しかし、面接官が向き合うべきなのは、整えられたストーリーや経験そのものではなく、その背後にある試行錯誤のプロセスです。

人材を評価することは、単に「出来事」や「実績」の一側面を切り取って客観的に査定をすることではありません。その人がどのように世界を認識し、どのような紆余曲折を経ながら自分自身と行動・成果をつくりあげてきたのかに関心を向けていくこと。そして、それを彼らの語りを通して追体験しながら、丁寧に迫っていく営みであると言えるでしょう。


【参考文献】
※1 Levashina, J., & Campion, M. A. (2007). Measuring faking in the employment interview: development and validation of an interview faking behavior scale. Journal of applied psychology, 92(6), 1638.
※2 Barrick, M. R., Shaffer, J. A., & DeGrassi, S. W. (2009). What you see may not be what you get: relationships among self-presentation tactics and ratings of interview and job performance. Journal of applied psychology, 94(6), 1394.
※3 Janz, T. (1989). The patterned behavior description interview: The best prophet of the future is the past. In R. W. Eder & G. R. Ferris (Eds.), The employment interview: Theory, research, and practice (pp. 158–168). Sage.
※4 Carver, C. S., & Scheier, M. F. (1998). On the self-regulation of behavior. Cambridge University Press.
※5 Zimmerman, B. J. (2000). Attaining self-regulation: A social cognitive perspective. In M. Boekaerts, P. R. Pintrich, & M. Zeidner (Eds.), Handbook of self-regulation (pp. 13–39). Academic Press.

神谷俊

【著者紹介】
神谷俊(かみや しゅん)
株式会社エスノグラファー代表取締役/バーチャルワークプレイスラボ代表
企業や地域をフィールドに活動。定量調査では見出されない人間社会の様相を紐解き、多数の組織開発・製品開発プロジェクトに貢献してきた。2020年4月よりリモート環境下の「職場」を研究するバーチャルワークプレイスラボを設立。大手企業からベンチャー企業まで、数多くの企業のテレワーク移行支援を手掛け、継続的にオンライン環境における組織マネジメントの知見を蓄積している。また、面白法人カヤックやGROOVE Xなど、組織開発において革新的な試みを進める企業の「社外人事(外部アドバイザー)」に就くなど、活動は多岐にわたる。2021年7月に『遊ばせる技術 チームの成果をワンランク上げる仕組み』(日経新聞出版)を刊行。

関連記事

AI就活時代だからこそ“リアルで知りたい”というホンネ~2027年卒新卒採用・就職活動の基礎とトレンド~

コラム

AI就活時代だからこそ“リアルで知りたい”というホンネ~2027年卒新卒採用・就職活動の基礎とトレンド~

【キャリアリサーチLab研究員が検証】生成AIで学生は面接対策できるのか?  

コラム

【キャリアリサーチLab研究員が検証】生成AIで学生は面接対策できるのか?  

アルゴリズム嫌悪とは?AIと人の関係を考える

コラム

アルゴリズム嫌悪とは?AIと人の関係を考える