マイナビ キャリアリサーチLab

キャリアとは何か?代表的なキャリア理論や関連する用語についてわかりやすくまとめて解説!

片山久也
著者
キャリアリサーチLab編集部
HISANARI KATAYAMA
日本でキャリアという言葉が使われるようになって久しいが、キャリアというと
  • キャリア教育
  • キャリアアップ
  • キャリアモデル
  • キャリア形成
というような言葉を思い浮かべるのではないだろうか。

このコラムでは、キャリアとは何か、またキャリアに関する用語やキャリア理論とはどのようなものがあるのかをわかりやすく解説していく。

キャリアとは?

キャリアとは、厚生労働省によると「過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すもの」とされている。

よく「職業生涯」や「職務経歴」などと訳されることもあり、職業上の言葉をイメージする場合もあるかもしれないが、仕事という面だけでなく、人生全体をとらえる言葉である。

国家資格キャリアコンサルタント試験の実施やキャリアカウンセリングの啓発・普及を行っている日本キャリア開発協会によると、キャリアとは、「荷馬車や四輪の荷車の通り道、轍(わだち)を意味し、それが次第に転じて、人のたどる行路やその足跡・経路・遍歴を意味するようになったといわれています。つまり、キャリアという言葉は、人の経歴や生涯をも含む意味を持っているのです。」と表している。

キャリア理論の用語を解説

キャリアカウンセリングの発達とともにキャリアカウンセリング理論(以下、キャリア理論)も発達してきた。

キャリア理論は、調査や研究などの科学的根拠に基づいたもので、これまで職業選択の際に使用されることが多かったのだが、近年生涯を通じて自らの能力の再開発・再教育する場合など、年齢や一人ひとりの状況に合わせた新しい理論も提唱されるようになった。

ここではキャリア理論や用語に関して、マイナビキャリアリサーチLabにて紹介してきたものを一覧としてまとめている。

キャリアアンカー理論(エドガーH・シャイン)

キャリアアンカーの図
キャリアアンカー理論とは、アメリカの心理学者エドガー・ヘンリー・シャイン(Edgar Henry Schein)教授が提唱する、人がキャリア形成を行う際の「軸」を明らかにするための理論だ。

キャリアアンカーは、
  • 動機(どんな仕事がしたいのか)
  • コアコンピタンス(自分は何が得意なのか)
  • 価値観(何に価値を感じるのか)
価値観(何に価値を感じるのか) という3つの要素が重なる部分をさす。

これは、経験の蓄積を通じて、次第に形成される自己イメージを言語化した自己概念に近いものだ。

キャリアアンカーは、本人にとっては譲ることができない価値観や欲求、10年以上の経験などをベースに形成され、過去の蓄積が元になっている。そのため、時間の経過による変化はほとんど無く、学生の自己分析や適職診断に有用であるとされている。

用語解説:キャリアンカー理論

関連記事:適職発見に役に立つ、キャリアアンカー理論とは?

マイナビキャリアリサーチLabに掲載している関連するコラムを紹介する。
キャリアアンカー理論について、キャリアアンカー理論が注目されてきた背景や分類などについて解説している。

コラム:適職発見に役に立つ、キャリアアンカー理論とは?

プランド・ハプンスタンス理論(ジョン・D・クルンボルツ)

プランド・ハプンスタンス理論とは、1999年にスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ(John D. Krumboltz)教授によって提唱された、比較的新しいキャリア理論だ。

日本語では「計画された偶発性理論」などと訳され、従来の「自分自身で計画し実行する」というキャリア理論に対し、「個人のキャリアの8割は偶然の出来事によって形成され、偶然の出来事はキャリアの形成に役立つ」と考えるのが大きな特徴となっている。

偶然の出来事をキャリアにいかすためには、
  • 好奇心(Curiosity)
  • 持続性(Persistence)
  • 柔軟性(Flexibility)
  • 楽観性(Optimism)
  • 冒険心(Risk-taking)
という5つのスキルを磨き続けることが大切であると説かれている。

用語解説:プランド・ハプンスタンス理論

成人の発達理論「4S」(ナンシー・K・シュロスバーグ)

成人の発達理論とは、全米キャリア開発協会(NCDA)の会長を務めたナンシー・K・シュロスバーグ(Nancy K. Schlossberg)氏が唱える理論のひとつだ。

成人の発達を「転機(トランジション)」の視点からとらえ、キャリアは人生のさまざまな転機を乗り越える努力と工夫を通して形成されると提唱している。

転機に直面したときには、転機の影響度を測りながら、自身のリソース(資源)である
  • 状況(Situation)
  • 自己(Self)
  • 支援(Support)
  • 戦略(Strategies)
の4つの「S」を点検し、変化を受け入れることが重要とされ「4Sモデル」といわれている。

用語解説:成人の発達理論「4S」

ライフキャリアレインボー(ドナルド・E・スーパー)

ライフキャリアレインボーは、1950年代にアメリカの教育学者ドナルド・E・スーパー(Super,D.E.)教授が発表した理論だ。

キャリアは仕事だけでなく、社会や家庭でさまざまな役割を積み重ね、生涯にわたって「ライフキャリア」として形成されると提唱している。

年齢に応じて人生を以下の5つの段階(ライフステージ)に分けている。
  • 成長期(0~15歳)
  • 探索期(16~25歳)
  • 確立期(26~45歳)
  • 維持期(46~65歳)
  • 解放期(66歳~)
また、同時に以下の8つの役割(ライフロール)で分類している。
  • 子供
  • 学生
  • 余暇人
  • 市民
  • 職業人
  • 配偶者
  • 家庭人
これらの相関関係は、虹をかたどった図で説明される。

社会が急速な変化を続ける現代は、多角的な視点でキャリアを築く必要があることから、スーパーの理論に改めて関心が寄せられている。

用語解説:ライフキャリアレインボー

特性因子理論(フランク・パーソンズ)

特性因子理論は、「職業指導の父」といわれるアメリカのフランク・パーソンズ(Frank Parsons)教授が唱えた、人と職業のマッチングに関する理論だ。

個人や職業にはそれぞれ差があり、個人の能力や特性に合った職業を選択すれば仕事に対する満足度も高くなる、という仮説が基になっている。

そのうえで個人と職業を適切にマッチングさせるポイントは、以下の3要素だ。
  • 自己分析
  • 職業分析
  • 理論的推論
また、これらを補完するため、以下の7段階の支援も提唱している。
  1. 個人資料の記述
  2. 自己分析
  3. 選択と意思決定
  4. カウンセラーによる分析
  5. 職業についての概観と展望
  6. 推論とアドバイス
  7. 選択した職業への適合
発表されたのは100年以上前だが、現代にも通用する理論として職業適性検査などに取り入れられている。

用語解説:特性因子理論

プロティアン・キャリア(ダグラス・ホール)

プロティアン・キャリアとはアメリカの心理学者、ダグラス・ホール (Douglas T. Hall)教授によって提唱された、キャリア形成に関する理論だ。

プロティアンとは、予言や変身の能力を持つギリシャの神話にでてくるプロメテウスから名づけられた。

キャリアは組織ではなく個人によって自律的かつ変幻自在に形成・調整されるという考え方で、キャリアを構想するうえで個人を起点とし、「自分が満足できるか」「自分がしたいことは何か」という自身の欲求・意思(心理的成功)をもっとも重視している。

プロティアン・キャリアを築くには、
  • アイデンティティ
  • アダプタビリティ
が必要とされており、アイデンティティ(興味や価値観、能力など)への自己理解と変化する外部環境の変化へのアダプタビリティ(適応能力)の双方が必要であるとされている。

用語解説:プロティアン・キャリア

関連記事:変化し続ける自分をつくる「プロティアンキャリア」とは?

マイナビキャリアリサーチLabに掲載している関連するコラムを紹介する。
プロティアンキャリアについて、従来のキャリア観との違いやプロティアンキャリアを形成するにはどうすれば良いかなどについて解説している。

まとめ

このコラムでは、これまでマイナビキャリアリサーチLabで掲載しているキャリア理論の用語について紹介してきた。

キャリア理論は、過去に提唱されてきたものだけでなく、現代の生活様式に合わせて新しいキャリア理論も提唱されている。

今後もマイナビキャリアリサーチLabでは、新しい用語についても取り上げていく予定だ。

キャリアに関するそのほかの用語は、以下で解説している。

関連ページ:用語集

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