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適職発見に役に立つ、キャリアアンカー理論とは?

キャリアアンカー理論とは、アメリカの心理学者エドガー・ヘンリー・シャインが「人がキャリアを形成する際の根源になるもの」として提唱した概念である。個人が何かを選択しようとしたときに、その人が最も放棄したがらない「欲求」であり、「軸」となるものだ。環境や時代の流れに左右されず変化しにくいので、キャリアアンカーを理解し、自身の核となるものを見つけることができれば、キャリアを選択する際のよりどころとなり、適職発見の役に立つ。

3つの重要な要素と重なりがキャリアアンカー

キャリアアンカーを考える際に重要な3つの要素がある。「どんな仕事がしたいのか(動機)」、「自分は何が得意なのか(コアコンピタンス)」、「何に価値を感じるのか(価値観)」。これらはキャリアを判断する上で重要な問いであり、この3つが重なる部分がキャリアアンカーと言われる。 【図1】

キャリアアンカーを明らかにするための3つの問い「動機・価値観・コアコンピタンス」
【図1】

アンカーとは船を停めておく際に下ろす「錨」を指す。個人のキャリアを船に例えたとき、それをつなぎとめる錨としての役割を果たすイメージだ。

注目されてきた背景

自分の強みや、長所と短所、やりたいことを掘り下げる自己分析はいくつかあるが、その中でなぜキャリアアンカーが注目を浴びているのか。

一般的な自己分析は「自分はこれまで何をしてきたか」「何が得意か」「これから何がしたいか」を掘り下げる傾向にある。仕事内容への興味や志向に関する問は、答えが明確でわかりやすい。しかし、変化の激しい時代においては、仕事を取り巻く環境の変化や仕事そのものがなくなる可能性もあり、本人の希望もずっと同じままとは限らない。

キャリアアンカーは仕事内容ではなく、「何を大切にし、どのように仕事に取り組んでいきたいか」といった仕事に対する姿勢を突き詰めたものである。そして、本人の学びの履歴に加え、10年以上の経験から形成される。過去の蓄積が元になっていることから、キャリアアンカーはほとんど変化しないといわれている。

変化しにくい指針を持つことは重要だ。産業・組織心理学の研究者、ブラッドフォード・D・スマートによれば能力は「変わりやすいもの」と「変わりにくいもの」に分かれるという【図2】。たとえば、コミュニケーション能力は比較的簡単に変化するといわれており、環境や努力によっていくらでも向上する。自分の能力に自信がないからといって選択の幅を狭めるのは早計だろう。

ブラッドフォードによる「変わりやすいもの」「変わりにくいもの」「非常に変わりにくいもの」の一覧
【図2】

変化が激しく予測が困難な現代では、可変的な能力や要素を元に自分のキャリアを選択するのではなく、「変わりにくい」とされるものを軸に判断することが重要である。キャリアアンカーはほとんど変化しないので、時代の流れや環境の変化に影響されない。個人のキャリアデザインにおける確固たる指標として役に立ち、納得性の高い働き方を選択できる。組織においても従業員のキャリアアンカーを把握することで、人員配置のミスマッチを防ぐことが期待できる。

キャリアアンカーの8つの分類

キャリアアンカーは以下の8つに分類される。【図3】

キャリアアンカーの8つの分類の説明
【図3】

価値の見出せないものを長く続けることは難しい。キャリアを選択していく上で何に価値を感じているのかを知り、その価値観に近いものを選択した方が良いだろう。キャリアアンカーは過去の蓄積から形成され、多くの意思決定を繰り返す中で、どうしても譲れない価値観や欲求がベースとなり形作られる。キャリアアンカーを知ることはキャリアを選択していく上でのよりどころになる。

終身雇用が崩壊し、転職が当たり前になりつつあり現代では、転職時に前職と全く違う仕事に就くこともあるかもしれない。キャリアアンカーは今後のキャリア選択の指針として、知っておいて損はないだろう。

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