マイナビ キャリアリサーチLab

【IT業界】の転職市場を2022年最新調査から考える
―業界別に転職市場を徹底分析―

朝比奈あかり
著者
キャリアリサーチLab研究員
AKARI ASAHINA

目次

個人向けインターネット調査からわかること

転職は同業種?異業種?

IT業界人材の同業種への転職率は75.5%で全12業種中2位

2021年6月~2022年7月に転職した人について、前職の業種と現在の業種を比べた。
転職者全体では同業種への転職率は58.3%だったのに対し、前職IT・通信・インターネット業界だった人の同業種への転職率は75.5%と、全体に比べて15pt以上差があった。
他業種と比べると、同業種への転職率は全12業種中2位で、IT・通信・インターネット業界では同業種への転職が比較的多いことがわかる。

同業種・異業種どちらに転職したか

転職理由は?

IT業界人材の転職理由は「成長できる環境が整っていなかった」が最多

2021年6月~2022年7月に転職した人の転職理由について、全体では「会社の将来性、安定性に不安があった」がもっとも高く、次いで「仕事内容に不満があった」、「給与が低かった」が続いた。
前職の業種がIT・通信・インターネットだった人に絞ると、「成長できる環境が整っていなかった」がもっとも高く、次いで「仕事内容に不満があった」、「会社の将来性、安定性に不安があった」が続いた。
「成長できる環境が整っていなかった」が理由のトップだった業種はIT・通信・インターネット業界のみだった。成長できる環境を求めて転職をした人が多い、という背景からも同業種への転職率が高かったことが納得できる。

転職理由(複数回答・上位抜粋)

働きやすさor働き甲斐?

IT業界人材は平均よりも「働き甲斐が重要」派が多い

2021年6月~2022年7月に転職した人に「働きやすさと働き甲斐どちらが重要か」聞いたところ、全体では「働きやすさ」が67.8%、「働き甲斐」が29.8%だった。
前職がIT・通信・インターネット業界だった人に絞ると、「働きやすさ」が61.2%で、「働き甲斐」が37.8%だった。全体と同様、「働きやすさ」の方が多かったが、「働き甲斐」が全体と比べて5pt以上高いなど特徴がみられた。

働きやすさと働き甲斐どちらが重要か

どんな言葉で応募意欲が上がる?

IT業界人材は「柔軟な働き方」「WEB面接」に魅力を感じる傾向

2021年6月~2022年7月に転職した人に「求人情報にある言葉で応募意欲が上がるもの」について聞いた。
全体では、働き方については「柔軟な働き方が可能」がトップ、次いで「転勤がない・勤務地限定の採用」、「残業ほぼ無し」と続いた。
人材要件については、「人物重視の採用」がトップ、次いで「未経験者歓迎」、「年齢不問」と続いた。
前職がIT・通信・インターネット業界だった人に絞ると、働き方については「柔軟な働き方が可能」がトップ、次いで「フレックス勤務」、「在宅勤務可能」と続いた。
人材要件については、「WEB面接可能」がトップ、次いで「人物重視の採用」、「年齢不問」と続いた。

企業向けに行った調査では、IT業界の担当者が中途採用を成功させるために行っていることとして「働き方改革の推進(テレワークなど)」や「採用手法のWEB化」が高かったが、同業界への転職が多いIT・通信・インターネット業界の人材に適している施策を行っていたということがわかった。

応募意欲が下がる言葉は?

IT業界人材は仕事内容のハードルを下げる言葉で応募意欲が下がる傾向

反対に、「求人情報にある言葉で応募意欲が下がるもの」についても聞いている。
全体では、働き方については「社員旅行・懇親会が盛ん」がトップ、次いで「固定残業代制度・みなし残業代制度」、「社員平均年齢20代で若手が活躍中」と続いた。
人材要件については、「大量採用」がトップ、次いで「将来の幹部候補」、「急募」と続いた。
前職がIT・通信・インターネット業界だった人に絞ると、働き方については「社員旅行・懇親会が盛ん」がトップ、次いで「固定残業代制度・みなし残業代制度」、「社長との距離が近い」と続いた。
人材要件については、「大量採用」がトップ、次いで「正社員デビューも歓迎」、「将来の幹部候補」と続いた。
意欲が下がる言葉については全体の傾向と似ていたが、「正社員デビューも歓迎」「未経験者歓迎」など仕事内容のハードルを下げる言葉が全体と比べて上位にあがっていたのが特徴的だった。

マイナビ「転職活動における行動特性調査 2022年版」より作成

まとめ

マイナビ転職のサイトデータ・公的データからわかったこと

IT業界の求人は増加していて、未経験者の募集も他業界よりも少ないものの増加している。
初年度年収も増加しており、企業の人材獲得への積極的な姿勢がうかがえる。
公的データでもIT系の求人数は増加しているが、個人の動きは企業の動きほど活発化していない。
現在もIT系の求人の有効求人倍率は高く、初年度年収の増額など待遇の改善もすでにみられていることから、企業は今後コロナ前、もしくはそれ以上に採用難を感じる可能性がある。

インターネット調査からわかったこと

今回行ったインターネット調査では、既存事業の拡大やIT化、新規事業への進出のためにスキルある人材を求めた企業と、さらなるスキルアップを求めた個人がマッチングしていたようだとわかった。その結果、企業側の入社した人の質の満足度が全12業種中トップとなっている。
また、コロナの影響で導入が進んでいる採用手法のWEB化についても、IT業界では良い影響を及ぼしたようだ。IT業界の企業は面接前・面接後・内定の辞退対策としてもっとも効果的だったこととして「WEB面接・面談の導入」を挙げている。一方IT業界人材は求人情報に記載があると応募意欲が上がる言葉として「WEB面接」が上位となっている。

よりよい転職を成功させるために

今後さらに競争が激しくなるIT業界の中で採用を成功させるために、企業は、選考時に自社で扱う言語や技術、プロジェクトなどを具体的に提示したり、複数のキャリアプランを提示したりなど、IT業界で働く人が希望する「成長できる環境」であることをより強くアピールすることが効果的だろう。

スキルアップを望む個人は、自身がどんなスキルを身につけたいのか具体化し、幅広い視野をもって身につけたいスキルを得られる場所を探す必要がある。IT化・DXが進む昨今、幅広い業界の企業がIT人材を必要としている。自分の求める成長の場は、異業界にも存在する可能性がある。
未経験からIT業界を目指す個人については、まずはどのような仕事がしたいのか希望を棚卸することが重要だ。企画やシステム開発の要件定義など上流工程から仕事に関わりたい場合は、事前の勉強や副業での実戦経験を積むことで選考時に強みを具体的にアピールでき、理想のキャリアに近づけるのではないかと予想する。

キャリアリサーチLab研究員 朝比奈 あかり

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