2022年度(2023年卒版)新卒採用・就職戦線総括
- VUCAの時代を生きる学生は「安定性」を求める割合が増加、「安心して働けるか」が企業選択のポイントに
- 企業は学生の配属先についてのこだわりや価値観にあわせた対応が求められる
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、2023年卒業予定の学生を対象とする、企業の採用活動と学生の就職活動および、今後の展望などをまとめた『2022年度(2023年卒)新卒採用・就職戦線総括』を発表しました。概要は以下の通りです。
トピックス
採用予定数と採用充足率
- 企業の採用意欲が高まり、競争が激しくなったため、採用充足率が低下
採用予定数は「前年並み」が最多で69.3%、「増やした」が22.1%(対前年比6.1pt増)となっており、コロナ禍前の20年卒からの4ヵ年で比較すると、採用意欲が回復してきている。【図1】
その結果、企業側の競争が激しくなり、6月時点の採用充足率について経年変化をみるとやや前年よりも低下している。なかでも、インターンシップを実施していない企業は充足率0割が45.4%と厳しい状況のようだ。【図2】
内々定率の進捗と内々定保有社数
- 2023年卒の内々定率はコロナ禍前を上回る水準で推移、複数内々定保有者も増加
内々定率はコロナ禍前である2020年卒を上回る水準で推移し、5月末時点で65.5%となっていた。【図3】
また、複数内々定を持つ人の割合も増加し、内々定保有者のうち、「2社以上」内々定を保有するひとは59.6%で、この割合も20年卒を上回っている。【図4】
全体的に企業の採用意欲が高まっていることや、インターンシップ・ワンデー仕事体験といった学生と企業の接触がより早いタイミングで実現したことにより、選考解禁にあたる6月より前に採用選考や内々定出しが実施されていたためだと思われる。
企業選択と安定性を感じるポイント
- VUCAの時代を生きてきた学生は「安定性」を求める気持ちが増加、求めているのは「安心して働けるかどうか」
「企業選びのポイント」は、コロナ禍の影響を受け始めた2021年卒以降「安定している」が増加し、23年卒では43.9%に。2010年代以降は予測不可能なVUCAの時代と言われてきたが、コロナ禍でさらにその不透明さが増し、少しでも安定性を求める気持ちが高まっているようだ。【図5】
企業に対して「安定性」を感じるポイントを聞いたところ、「福利厚生が充実しているかどうか」が最多で53.3%だった。そのうち、「最もあてはまるもの」一つに限定すると「安心して働けるかどうか」が最多となった。【図6】
一般的に、「安定性」とは経営の基盤が安定していることを指すが、学生にとっては、自分自身が働く場として安心できるかを見ているようだ。
育児休業と入社後の配属先の考え
- 育休取得意思の男女差の縮小や、配属先についてのこだわり、学生の価値観にあわせた対応が求められるように
育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行されることで話題の「男性育休」だが、「育児休業をとって積極的に子育てしたい」の回答割合の男女差がこれまでで一番小さく、その差は1割未満となった。【図6】
またジョブ型雇用導入の是非が議論されているが、新卒採用においても「配属ガチャ」という言葉が使われ、学生は配属先を会社に決められるのではなく「自分で選びたい」という回答が半数を超えている。【図7】
世間的には新しい価値観であっても学生は柔軟な思考で対応しており、企業側もそうした価値観にあわせた対応が求められるだろう。
採用手法
- 逆求人型やリファラル採用など採用手法は多様化、特に「WEB面接」「職種別採用」は2023年卒で広がった
23年卒の新卒採用を実施した企業に対して採用手法として「実施したもの」「今年初めて実施したもの」「今後してみたいこと」を聞いたところ、「今後してみたいこと」として、対象者の拡大(既卒者、U・Iターン学生)や、手法の拡大(逆求人型、リファラル採用等)の回答がみられた。
コロナ禍で「WEB面接」は一般的になっているが、次いで「職種別採用」も23年卒で実施した割合が増加している。【図8】
調査担当者のコメント
コロナ禍での日常生活に慣れつつあるが、新卒採用においても3年目を迎え、ほぼ対応できている状態だといえます。コロナ禍はいまだ収束していませんが、経済活動の回復とともに企業の採用意欲は向上し、内々定率高水準で進捗、複数内々定を保有する学生も増えたのが2023年卒の特徴だといえます。
そのため、企業側の競争は激しく、内々定出しを行ったあとも「入社する1社」になるためのフォローがより求められています。WEB活用だけでなく、コミュニケーション手段が変わったことで情報提供のあり方が見直され、新卒採用においても「学生個人と企業」という関係性から「学生個人と仕事内容や職場」との関係性としてとらえていこうという動きも見られますが、最終的な意思決定の際にどれだけ透明性のある対話ができるかが鍵になると思われます。
株式会社マイナビ キャリアリサーチラボ 主任研究員 東郷こずえ
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