マイナビ キャリアリサーチLab

新型コロナが2022年卒学生の就活に与えた影響を振り返る
~ガクチカ不足、就活WEB化の影響と入社への不安とは~

沖本麻佑
著者
キャリアリサーチLab研究員
MAYU OKIMOTO

はじめに

2022年卒の就職活動は、インターンシップの時期から内定者フォローに至るまで、新型コロナウイルス感染対策のための緊急事態宣言など、生活への制限を受ける中での活動となった。
企業はコロナ禍2年目の採用活動だったため、21年卒のときほど対処的なWEB化ではなく、WEBの利点を活かしながらの採用活動を行ったケースや、感染対策のポイントが分かってきたために対面で実施したケースも見られたが、学生は就職活動直前の1年間を大学に通わず過ごしている場合が多い上に、初めて経験する就職活動はWEB形式だったり対面形式だったりと企業によって対応が異なるなど、先輩の代のアドバイスを活かすのが難しい状況での活動となった。

そして2022年1月現在、地域によっては再びまん延防止等重点措置が適用されるなど、依然コロナ禍は収束していない。23年卒の就職活動も新型コロナウイルスの影響を受けると予測される。
そこでこの記事では、22年卒の就職活動生が受けたコロナウイルスの影響について、学生調査の結果を振り返って紹介しながら、23年卒の就職活動がどのようなものになると考えられるか考察していく。

新型コロナウイルスによる22年卒の就活生への影響

以下、就職活動で一般的に実施されるフェーズごとに、2022年卒の学生たちの就職活動が新型コロナウイルスによってどのような影響を受けたのかを、学生調査の結果を踏まえて振り返る。

就活準備:周囲との情報交換が困難に

就活準備や就活開始時の行動において、6月末の調査時点で後悔していることについて聞いたところ、調査時点で内々定を得ていた学生と未内々定の学生とで差が大きかったのが「もっと就職活動の流れを把握しておけばよかった」という回答であった。学生のコメントを詳しく見てみると、「コロナ禍の影響で大学に通うことが少なく、周りと情報交換できなかったので就職活動のスケジュールを把握できていなかった」などの意見が見られ、情報交換不足を感じた学生が多かったことが分かった【図1、2】

就職活動を振り返って「もっとこうしておけばよかった」と思うこと/2022年卒大学生活動実態調査(6月末)
【図1】<内々定状況別>自身の就職活動を振り返って「もっとこうしておけばよかった」と思うこと ※上位15項目
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (6月末)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210707_11586/
「もっとこうしておけばよかった」と思うことについてそう感じた理由/2022年卒大学生活動実態調査(6月末)
【図2】「もっとこうしておけばよかった」と思うことについて、そう感じた理由
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (6月末)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210707_11586/

実際に「マイナビ2022年卒 大学生のライフスタイル調査」では大学への登校日数は平均0.8日と前年(4.1日)と比べて半数以下になっていることが分かっており、授業時間以外での学生同士の交流が減っていることが考えられる。
また、10月中旬調査で学生に聞いた「23年卒就活生へのアドバイス」でも、「人との交流機会を持つべき」という声が挙がっており、22年卒学生の就職活動において、感染症対策のための行動制限によって周囲の学生や社会人との交流の機会が持ちづらかったことが、就職活動に関する情報収集を困難にしていたことが分かる【図3】。

23年卒の就職活動生に対するアドバイス/2022年卒大学生活動実態調査(10月中旬)
【図3】<入社先企業を決めた学生限定>
23年卒の就職活動生に対するアドバイス ※コメントを抜粋
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (10月中旬)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20211022_17947/

職場見学・工場見学:生中継での会社見学など新しい手法の出現

WEB形式での職場見学や工場見学について良い印象を抱いた内容を聞いたところ、「WEB会議ツールでオフィスの様子をその場から中継してもらえた」「自分の興味のある箇所だけ見ることができた」など、WEBならではの利点を活かした見学を実施している企業があることが分かった。また、360度カメラやVRを活用したものなど、最新の技術を使った職場見学へのコメントも見受けられる。

職場の様子をただ写真や動画にまとめて見せるのではなく、WEBでも、対面での体感となるべく近いものになるように企業がさまざまな工夫を行っていることが分かった【図4】。

WEBでの職場見学・工場見学において、良い印象だった企業の対応/2022年卒大学生活動実態調査(3月)
【図4】WEBでの職場見学・工場見学において、良い印象だった企業の対応
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (3月)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210407_6182/

面接(1):学生生活のエピソードが少なく自己PRしづらい

エントリー開始直後の3月1日調査で聞いた「採用担当者に求めること」という質問では、面接に関して「研究や実習ができていないのでそれについて聞かないでほしい」「大学生活が満足に送れていないことを踏まえて面接してほしい」というコメントが見られた【図5】。

企業の採用担当者に対して求めること/2022年卒大学生活動実態調査(3月1日)
【図5】企業の採用担当者に対して求めること
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (3月1日)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210310_1387/

また、実際に面接を経験してみてどう感じたか4月末に聞いた調査では、「コロナの影響で答えづらい質問があった」学生は約半数、特に困ったのは学業についてだったことが分かっている【図6、7】。

コロナ禍の影響で答えづらい質問があったか、また答えづらかった質問の内容/2022年卒大学生活動実態調査(4月)
【図6】コロナ禍の影響で答えづらい質問があったか/【図7】答えづらかった質問の内容
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (4月)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210512_9320/



コロナ禍で授業がオンライン化されたり課外活動が制限されたりと、学生生活を例年のように送れなかったことで、面接で話せる話題が少ないことを不安に思っていた学生が多く、実際に面接で返答に困ったことがある学生が半数を超える結果となった。

そんな中、面接で手応えを感じた話の内容を聞いてみると、課外活動・学業に関してコロナ禍で工夫したエピソードや、将来の展望について話したという学生のコメントが見られた【図8】。コロナ禍で学生生活が例年とは異なる中でも、自身がどのように考えて行動したのか、または今後どのように行動しようと考えているのかを面接官に伝えることで、自身の特性を知ってもらう手がかりになったようだ。

コロナ禍の影響で答えづらかった質問に対して、話していて手ごたえを感じた回答内容/2022年卒大学生活動実態調査(4月)
【図8】コロナ禍の影響で答えづらかった質問に対して、話していて手ごたえを感じた回答内容
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (4月)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210512_9320/

面接(2):WEB・対面それぞれの面接形式への対策が必要に

前述の「もっとこうしておけばよかったと思うこと」について、6月末時点の内々定者と未内々定者の差が大きかった項目の1つが、「もっと面接対策をしておけばよかった」というものだった。WEBと対面両方の対策が必要だったと後悔した学生が多かったようだ【図9、10】。 また、23年卒就活生へのアドバイスでも「それぞれの形式を想定した対策をしておくべき」との意見は多く、WEB・対面での雰囲気やマナーの違いへの対策に関するコメントが見られた【図11】。

自身の就職活動を振り返って「もっとこうしておけばよかった」と思うこと/2022年卒大学生活動実態調査(6月末)
【図9】<内々定状況別>自身の就職活動を振り返って「もっとこうしておけばよかった」と思うこと ※上位15項目
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (6月末)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210707_11586/
「もっとこうしておけばよかった」と思うことについて、そう感じた理由/2022年卒大学生活動実態調査(6月末)
【図10】「もっとこうしておけばよかった」と思うことについて、そう感じた理由
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (6月末)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210707_11586/
23年卒の就職活動生に対するアドバイス/2022年卒大学生活動実態調査(10月中旬)
【図11】<入社先企業を決めた学生限定>23年卒の就職活動生に対するアドバイス ※コメントを抜粋
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (10月中旬)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20211022_17947/

WEBと対面どちらの形式で面接が行われるか企業によって異なる中で、形式によって雰囲気が違うことによる緊張や、それぞれの形式でのマナーなどに悩んだ学生が多かった様子が見受けられる。

23年卒の就活生においても、企業によってWEBと対面どちらの形式の面接も実施され得るため、両方のシチュエーションを意識して準備しておくことが必要になりそうだ。

入社先決定:選考で企業を訪問していないことが不安の種に

6月15日調査において、調査時点で入社先企業を決めていた学生のうち、「企業説明会~最終面接まで全てWEBだった」学生は約4割だった。入社先企業に対する不安については、「同期にどんな人がいるのか分からない」「自分が実際に働く姿がイメージできない」などの声が見られた【図12、13】。
選考がWEB形式で行われたことで実際には企業を訪問しておらず、さらには人事担当者や内定者と対面で会う機会も少なかった学生にとっては不安の多い状況だったようだ。

入社意思の最も高い企業の選考形式/2022年卒大学生活動実態調査(6月15日調査)
【図12】<入社先企業を決めた学生限定>入社意思の最も高い企業の選考形式
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (6月15日調査)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210622_10850/
入社先について不安なことはあるか/2022年卒大学生活動実態調査(6月15日調査)
【図13】<最終面接まで全てWEBだった学生限定>入社先について不安なことはあるか
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (6月15日調査)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210622_10850/

そんな入社前の不安を解消するためにも実施されるのが内々定者フォローだが、もっとも不安が軽減されたものを聞いてみると、「面談」や「交流会」という回答が高かった【図14】。

内々定後に受けたフォローの中で最も不安が軽減されたもの/2022年卒大学生活動実態調査(6月末調査)
【図14】内々定後に受けたフォローの中で最も不安が軽減されたもの
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (6月末調査)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20210707_11586/

実際に会っていないとお互いの感情が伝わりにくいこともあるが、その分時間をしっかり確保することや機会を増やして話す回数を多くすることなどが安心感に繋がると考えられる。

内定式:WEB実施だった学生が6割。「対面がよかった」という声も

入社予定先企業で内定式が開催された学生のうち、WEB形式で参加したのは57.5%だった。参加した際の感想を見てみると、対面参加の学生は内定者や社員との交流に満足している声が多く、WEBでも十分だった等の声は少なかった。一方、WEB参加学生の3割は「対面で参加したかったと感じた」と回答しているが、内定者同士の交流においては企業の工夫に対して満足しているコメントも見られたため、やり方次第では有意義な機会にすることができそうだ【図15】。

内定式に参加した感想/2022年卒大学生活動実態調査(10月中旬)
【図15】<内定式にWEBで参加した学生限定>内定式に参加した感想
『2022年卒 大学生 活動実態調査 (10月中旬)』
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20211022_17947/

22年卒の就職活動を振り返って

コロナ禍2年目の就職活動は、対面で企業を訪問できない・他の学生との情報交換が難しくなる・大学生活のエピソードが不足するといった影響だけでなく、WEBと対面両方の形式の選考への対策が必要になるなど、さまざまな影響が見られた。
一方で、WEB化に対する企業のさまざまな工夫も見られ、そのアイデアに学生から好感の声もあがっている。21年卒の採用活動の経験を踏まえて、WEBならではの体験ができるコンテンツを考えた企業もあったことが分かった。

23年卒の就職活動について

23年卒学生においては、授業は対面形式に戻りつつあり、学生生活の制限は緩和されているものの、2年次の生活に強い制限があったことや、留学などの一部の課外活動は依然として制限があることなどから、面接で話せるエピソードの内容に全く影響が残らないとは考えにくい。ただ、面接はあくまで自身の特性を伝える機会であり、エピソードの強さの勝負ではないため、前述の22年卒学生のコメントを参考に、どうすれば自身の性質や考え方が相手に伝わるか検討して準備をしてほしい。
また、感染対策をしながら人との交流機会を持って情報交換を忘れないことや、志望企業の段階ごとの選考形式をしっかりと調べながら、どのような形式にも対応できる準備を整えておくことも重要だ。

企業においては、23年卒の採用活動はコロナ禍3年目となり、採用活動においてWEBは当たり前の手段として定着していくと考えられるため、対面の場合は「WEBでなく対面で実施する」ことに対して納得性がある説明が求められたり、WEB特有の配慮や工夫がある企業とない企業との差が目立ったりということがますます増えると予測される。そのためWEBと対面それぞれの特性を活かした採用フローを丁寧に考える必要があるといえる。
また、WEBを中心とした採用フローで選考を進める場合は、実際に企業を訪問していないことによる学生の不安を払拭するフォローや働きかけを積極的に行うことも重要そうだ。

キャリアリサーチLab研究員 沖本 麻佑

【関連コラム】
新型コロナウイルスが世界経済に与えた影響~雇用の観点から

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