マイナビ キャリアリサーチLab

就職氷河期世代の実情と就労意識

就職活動当初に不利な条件で就職した氷河期世代は
現在もなお、その影響を受けている

【分析レポートの背景】
 日本において1993年~2004年頃の就職難の時期であった就職氷河期に新卒で就職活動をしていた者は、いわゆる『就職氷河期世代』と呼ばれている。1990年のバブル崩壊を機に景気が大幅に後退し、それ以前に大量採用を行っていた企業が採用数を抑制した等の理由で、氷河期世代の大学生の新規就職率は大きく低下、不本意な職業選択の結果として非正規雇用として働く者や無業状況となる者も増えていった。
 本レポートでは、まず氷河期世代が就職活動時どのような雇用市場に置かれていたのかについて説明する。次に現在の氷河期世代を取り巻く実情を、就労状況と就労意識から明らかにしていきたい。

内容 マイナビライフキャリア実態調査
調査期間 2020年9月24日(木)~9月29日(火)
調査対象 15歳以上の男女
調査方法 インターネット調査(実施機関は株式会社インテージ)
有効回答数 14,333サンプル *本レポートでは「年齢:25歳以上」かつ「2020年8月時点の就業形態:正社員」であった4,189サンプルの回答結果を利用

~就職氷河期の雇用市場~

若年層の完全失業率は、1998年以降大きく悪化

 15-24歳(若年層)の完全失業率は、男性や女性の総数と同様に1993年以降上昇に転じ、特に男性では1998年以降上昇幅が拡大した。バブル崩壊による労働需要の縮小が完全失業率の悪化に大きな影響を与えたが、終身雇用制度を前提とした既存高齢社員の賃金負担が増加する中で、その分の費用調整が若年雇用を減らすことによって行われたのだ。また、1990年代以降は、それまで厳格に運用されていた大学の定員抑制方針が緩和され、大学進学率が上昇したことから大学生数も増加しており、労働需要が縮小する中で労働供給は拡大していた背景があった。

雇用の調整弁としての非正規雇用が増加した

 1990年代後半以降は失業率の上昇とともに、非正規雇用が増加していった。バブル崩壊後の日本企業は、雇用政策の一つとして雇用調整がしやすく低賃金である非正規雇用を増やすことで厳しい環境を乗り越えようとしていた。加えて同時期に労働者派遣法が改正され派遣可能な業種が増え、非正規雇用増加を後押しした。若年層の完全失業率が上昇し、新卒で正社員としての就業を希望しても叶わなかった氷河期世代の中には、不本意ながら企業ニーズが増えていく非正規雇用として就業した者も多くいた。

特に大企業が若年層の新規採用枠を縮小していた

 従業員規模別の15-24歳の雇用者(一般常雇*)の推移を見ると、「従業員規模500人以上」の企業に勤務する者の割合が、1992年までは増加傾向にあったがそれ以降減少していったのがわかる。また、15-24歳の雇用者(一般常雇)に占める「500人以上」の構成割合を見ると、1993年以降減少し、1996年~2007年までは「1-29人」よりも低い状況が続いていた。大企業が新規採用枠を縮小したことで、就職氷河期に正社員として就業できたとしても比較的規模の小さい企業に就職する者が多かった。
*一般常雇とは、1年を超える又は雇用期間を定めない契約で雇われているもので「役員」以外の者

~現在の就職氷河期世代を取り巻く状況と就労意識~

政府主導の支援対象者は100万人程度存在すると見込まれている

 2019年に政府主導による「就職氷河期世代支援プログラム」が開始されたが、その支援対象となる者は、就職氷河期に希望する就職ができず、現在も不本意ながら不安定な仕事に就いているまたは無業の状態にあるなど、さまざまな課題に直面している者とされ、100万人程度存在すると見込まれている。(※2018年時点)

氷河期世代・非正社員の男性は5割以上が正社員を希望している

 氷河期世代の非正社員のうち、正社員としての勤務意向がある者は39.7%と、非正社員全体よりも高い傾向が見られた。氷河期世代の男性においては、意向の緊急性の違いはあるが、55.0%が正社員を希望しており現在希望する雇用形態で働けていない者が多いことがうかがえる。

氷河期世代・正社員は現在も大企業に勤める者の割合が少ない

 正社員雇用者について、大企業(従業員規模500人以上とする)に勤める者の2008年から2018年への構成割合の変化を出した。下記グラフの[男性]を見ると、2008年時点で35-44歳であった世代と比較して、氷河期世代の中心層である2018年時点で35-44歳の世代は500人以上企業に勤める者の割合がマイナスにふれており、少ない。他の世代を見ると、2008年時点で同年代であった世代と比較して大企業に勤めている割合が増加している。[女性]においては男性のように500人以上企業に勤める者の割合の減少は見られないが、他世代と比較するとその増加割合の少なさが見られる。

氷河期世代・非正社員の転職意向は特に高い

 氷河期世代・就業者の「転職意向あり」は48.4%と、就業者全体と比較して6.2pt高かった。特に氷河期世代・非正社員の転職意向は高く、現段階における活動の程度には差があるが、62.9%が「転職意向あり」となった。
 転職したい理由について、正社員全体と非正社員全体、氷河期世代・正社員と非正社員をそれぞれ比較した。どの層においても「給与に不満があるため」がもっとも高くなったが、氷河期世代の非正社員ではその割合が特に高かった。また、氷河期世代の正社員では正社員全体と比較して「会社の将来が不安ため」が高めの傾向が見られた。一方「自己成長・スキルアップ」を理由とした転職意向は、全体の正社員・非正社員と比較し、氷河期世代の正社員・非正社員ともに低めとなった。

氷河期世代の仕事「不満」層は責任や業務量に見合うやりがいが得られていない

 氷河期世代のうち、仕事に対して「満足」層と「不満」層にわけて、仕事に関する価値観の項目を比較した。仕事に対して不満層は全体的に「あてはまる」割合は低かったが、「どんなときも一所懸命に働かなければならないと感じていた」「つねに忙しく、多くの仕事を行っていた」は、氷河期世代の就業者全体と同等の基準であった。氷河期世代は年齢的にも仕事の中心層となる機会が増え、仕事への満足度に関わらず責任や仕事量が多くなると考えられる。氷河期世代の不満層は、そういった負担と負担を和らげる対価とのアンバランスさを感じている様子がうかがえた。

氷河期世代の仕事「不満」層は職場の人の支援が得られていない

 氷河期世代の仕事に対して「満足」層と「不満」層の仕事の価値観について、職場における周囲からの支援に関する項目を比較したところ、仕事に対して不満層は全体的に「あてはまる」割合が低かった。人材の売り手市場下では企業も従業員を定着させようと教育に投資する傾向が高まるが、氷河期世代の入社当初は買い手市場であり、市場全体で見ると企業からの投資が受けづらい状況であった。職場の人からの支援も同様で、若手社員を意識的にサポートしようとする姿勢は強くなかったことが想像できる。そのため氷河期世代の仕事に対して不満層は、十分なサポートを受けづらいまま職場の中心層となる年代となり、今現在も仕事において変化や転機があった際に、それを乗り越えるために有効な職場における周囲からの支援を受けられずにいる可能性が考えられる。

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