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企業人材ニーズ調査2021年版

2021年の採用実績は前年より減少。一方、2022年の採用予定は全雇用形態でいずれも増加に転じる
「70歳までの就業機会確保(改正高年齢雇用安定法)」の努力義務に関して、対応を行った企業は6割以上

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、人材採用に関して「採用実施」「手法選定」「雇用の決定」のいずれかの決裁権を持つ採用担当者(2,036名)を対象に調査した、「マイナビ 人材ニーズ調査」を発表しました。本調査は、今回で6回目となります。

調査概要

内容 マイナビ人材ニーズ調査2021年版
調査期間 2021年12月8日~12月10日
調査対象 人材採用に関して、[採用実施]][手法選定][雇用の決定]のいずれかの決裁権を持つ採用担当者
調査方法 WEB調査(アンケートモニター提供元:GMOリサーチ株式会社)
有効回答数 2,036名
(上場 601名・非上場 1,435名|製造 598名・非製造1,438名)
(300人未満 1,076名・300~999人 359名・1,000人以上 601名)

2021年の採用実績は全体的に前年より減少し、その傾向は非正社員でより顕著に。一方、2022年の採用予定はいずれも増加に転じ、採用ニーズの回復が予想される

雇用形態別に「2020年に一人でも働き始めた人がいる」と答えた割合は、「正社員(中途採用)」が最も高く81.5%、次いで「正社員(新卒採用)」が73.1%となった。2019年からの推移をみると、正社員(新卒、中途)では2019年から2021年までほぼ横ばいだったが、非正社員(契約・嘱託、パート・アルバイト、派遣社員)では減少傾向がみられた。特に、コロナ禍前(2019年)と2021年を比較すると、「契約・嘱託」では6.1pt減、「パート・アルバイト」は8.6pt減、「派遣社員」は4.1pt減となっている。

しかしながら、2022年の採用予定割合はいずれの雇用形態においても、2021年の採用実績割合より増加している。今後の新型コロナウイルスの感染状況によるが、経済活動が回復すれば、また人材ニーズも回復してくると思われる。【図1】

採用実績と採用予定の推移

正社員の採用理由は「新卒」「中途」ともに「専門能力や技術を持つ人材の獲得」が最多に

雇用形態別の採用の理由を見ると、正社員では「新卒」「中途」ともに、「専門能力や技術を持つ人材の獲得」が最多となった【図2】 【図3】

これまで「新卒(正社員)」は「事前の計画による定期的な採用」が最多で推移してきたが、徐々にその割合は低下し、2021年で「専門能力や技術を持つ人材の獲得」と逆転した。ジョブ型雇用を導入している企業はまだ少ないが、徐々に、個人の専門的なスキルや能力に注目する志向が高まっていると考えらえる。しかしながら、「採用スタンス」を聞くと、「新卒」では「ポテンシャル重視」が最多で45.3%、「中途」では「即戦力人材を重視」が最多で59.2%となっている【図4】。同じ「専門能力や技術を持つ人材」であっても、「新卒」は「将来的にそうなること」が求められ、「中途」は「今、そうである」ことが求められる点が異なるようだ。

新卒・中途の採用理由
採用(契約)のスタンス

若手へは「労働力」を、ミドル・シニア・シルバー世代には「経験値・スキル」を期待

多様な働き方の拡充や労働力の確保のために今後採用したい対象を年代等で分け、それぞれの期待点と懸念点を聞いたところ、若手世代への期待点は「労働力」が最も高く43.8% 、次いで「体力・健康(35.9%)」 「社内の活性化(33.5%)」が続く。一方で、ミドル・シニア・シルバー世代への期待点は「経験値・スキル」が共通して最も高くなった(ミドル:54.9%、シニア:48.2%、シルバー:38.4%)。ミドル世代は「労働力(33.4%)」や「技術や知識の継承(30.1%)」の項目も高くなっており、まさしく、若手世代とシニア・シルバー世代をつなぐ世代としての役割に期待されている様子がうかがえる。【図5】

世代別の期待すること

ミドル世代以降で期待される割合の高い「経験値・スキル」「技術や知識の継承」に注目して、「製造/非製造」で比較をすると、「製造」で特に高い割合になっていることがわかる。技術者の高齢化により後継者不足が課題となっており、その解決策として機械化やAI化などの対策が模索されているが、人材を獲得することで、人から人へ技術や知識の継承を試みていることが示唆される。【図6】【図7】

期待する割合「経験値・スキル」「技術や知識の継承」

2021年4月施行の「70歳までの就業機会確保(改正高年齢雇用安定法)」の努力義務に関して、なんらかの対応を行ったのは6割以上

2021年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」によって「70歳までの就業機会確保」が努力義務とされたことに関して、どのように対応しているか聞いたところ、「70歳までの継続雇用制度の導入(自社にて継続雇用、再雇用制度含む)」が19.8%で最多となり、次いで、「希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を導入」が17.3%となっている。それら以外の対応を含めると、あわせて63.1%(※1)がなんらかの対応を行ったと回答した。

特に、「製造」では「希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を導入」が最多で21.7%、次いで「70歳までの継続雇用制度の導入(自社にて継続雇用、再雇用制度含む)」が20.1%といずれも2割を超えており、それら以外の対応を含めると、約7割がなんらかの対応を行ったと回答している。【図12】

(※1)集計時の小数点以下の処理の影響で、全体で100%になっていません。

70歳までの就業機会確保への対応

改正高年齢雇用安定法(厚生労働省HP)

【調査担当者コメント】
2021年はコロナ禍で、雇用を取り巻く環境も影響を受けましたが、同時に正社員と非正社員の不合理な待遇差を是正するための「同一労働・同一賃金」のガイドラインが適用されたり、「改正高年齢者雇用安定法」によって70歳までの雇用機会確保が努力義務になったりする、多様な人がより良い環境で働き続けるための環境整備が進んでいます。一方でジョブ型雇用の導入が検討されるなど、より個人のスキル・能力に対する期待値も高まっているように感じます。今後、働く人にとっては選択肢が広がるというメリットがある一方で、その分、自律的なキャリア形成がより求められるのではないでしょうか。

 





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