マイナビ キャリアリサーチLab

就職活動への不安を克服~先輩就活生の反省から~

井出 翔子
著者
キャリアリサーチLab主任研究員
SHOKO IDE

はじめに

早期化、オワハラ、内定ブルー、―――。

近年、企業の高い採用意欲を背景とした選考の早期化や、政府の「オワハラ」行為の防止要請などが話題となった。また、焦って入社予定先を決定してしまったことによるミスマッチや早期離職も注目されている社会問題だ。このような報道や話題から、就職活動にネガティブな印象を持つ人も多いだろう。

当事者となる学生にとってみれば、人生の一つの転機となる活動であり、大変な取り組みであることは間違いない。しかしながら就職活動は悪い面ばかりでなく良いこともあるし、世の中に間違って認識されてしまっていることもある。

本コラムは、主に就職活動の後半を迎えた学生の心情や内々定者(内定者)の振り返りに注目したものとなっている。この先、就職活動を控えている学生の方やそれを支援する大学関係者の方、就活生の保護者の方などの、就職活動に対する不安を少しでも払拭することができれば幸いだ。

やりたい仕事がない問題

いつやりたい仕事が見つかったのか

まず将来のキャリアを考えるときに、「どんな仕事をしたいのか」については多くの人がぶつかるハードルであろう。「2025年卒 学生就職モニター調査 8月の活動状況」*1によれば、「キャリア形成活動*2の開始前」からやりたい仕事が見つかっていた学生の割合は17.1%と少数派だ。

はじめはやりたい仕事がなくても、その後多くの学生が「キャリア形成活動中・就職活動中(計66.2%)」にやりたい仕事を見つけている。【図1】

やりたい仕事が見つかったのはいつか/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況
【図1】やりたい仕事が見つかったのはいつか/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況

やりたい仕事があることはもちろん素晴らしいことではあるが、無理やり見つけようとする必要はないので焦らないでほしい。企業選択の軸は必ずしも“やりたい仕事”ベースだけでなく、たとえば「これと言ってやりたい仕事があるわけではないが、何か人の役に立てる仕事がしたい」といった考え方もあるだろう。*3

*1 回答者のうち91.5%が内々定を得たことがあると回答
*2 インターンシップ、仕事体験、オープン・カンパニー、キャリア教育等の企業・大学が提供するプログラムへの参加や、自己分析・仕事研究等、キャリア開発のための活動
*3 参考:学生を追い詰める、「やりたいことを探そう」の罪深さ

やりたい仕事がみつかったきっかけ

またやりたい仕事がある人に限定して聞いた、やりたい仕事がみつかったきっかけはさまざまであったが、特に多かったのは「インターンシップ・仕事体験に参加して(26.5%)」であった。近年では大学3年生・修士1年生のみならず、大学1・2年生などの低学年時から参加できるインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムも充実している。

やりたい仕事がなくて迷っている場合は、こういったプログラムのうち単日や半日のものなど、気軽に参加できるプログラムから参加してはどうだろうか。実際に働く人の話を聞いてみたり、ビジネスモデルを知ったりすることで、少しずつ自身のキャリア志向が鮮明になっていくはずだ。【図2】

やりたい仕事が見つかったきっかけ ※上位抜粋/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況
【図2】やりたい仕事が見つかったきっかけ ※上位抜粋/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況

志望企業のインターンシップに行けなかったら?

とはいえ、インターンシップ・仕事体験というものは、すでにキャリア形成・就活準備に向けて参加することがスタンダードになってきている。「2025年卒 大学生 広報活動開始前調査」によれば、2025年卒のインターンシップ・仕事体験の参加率は85.7%と過去最高となっている。【図3】

インターンシップ応募・参加割合の推移/2025年卒 大学生 広報活動開始前調査
【図3】インターンシップ応募・参加割合の推移/2025年卒 大学生 広報活動開始前調査

早いタイミングから志望業界や志望企業を絞り込んでいる学生の中には、希望するインターンシップ・仕事体験の選考に通らなかったことや、参加したインターンシップ・仕事体験で思うような成果を出せなかったことに落胆してしまう人も多い。

しかしながら、三省合意の改正による現行の枠組みのうち、プログラムに参加した学生の情報を企業が採用選考に用いることができるのは、タイプ3(汎用的能力・専門活用型インターンシップ)、タイプ4(高度専門型インターンシップ)のみだ。「2025年卒企業新卒採用予定調査」によれば、2025年卒向けのタイプ3、タイプ4実施状況はそれぞれ14.7%、1.4%と限定的だ。【図4】

25年卒で実施した(する予定の)キャリア形成活動 ※複数回答/2025年卒企業新卒採用予定調査
【図4】2025年卒で実施した(する予定の)キャリア形成活動 ※複数回答/2025年卒企業新卒採用予定調査

また「2025年卒 学生就職モニター調査 8月の活動状況」によれば、インターンシップ・仕事体験の選考に受からなかった企業の本選考を受け、内々定を得た学生は35.6%であった。

インターンシップ・仕事体験の実施は現場にも負担がかかるため、受け入れる学生数を制限して実施している企業も多い。そのためインターンシップ・仕事体験の選考に受からなかったからと言って、本選考も同様の結果になるわけではないのだ。

必要以上に落胆せず、志望度の高い企業に対しては、本選考でのチャレンジに向けて準備してほしい。【図5】

インターンシップ・仕事体験の選考に受からなかった企業の本選考を受けた結果/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況
【図5】インターンシップ・仕事体験の選考に受からなかった企業の本選考を受けた結果/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況

ガクチカとして何を話すか

ガクチカとは

就職活動の中で多くの人が面接を経験するだろう。中途採用(経験者採用)と違い、就業経験のない学生に対する定番の質問が「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」だ。

2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)」によれば、ガクチカとして話せるエピソードは「2個(43.2%)」という学生がもっとも多いようだ。【図6】

ガクチカとして話せるエピソードはいくつか/2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)」
【図6】ガクチカとして話せるエピソードはいくつか/2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)」

ガクチカについてあてはまるものを複数選択で回答してもらった結果としては、「選考でどれくらい評価されるか不安だ(43.7%)」という回答がもっとも多かった。【図7】

ガクチカに関して当てはまるもの(複数選択) ※上位抜粋/2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)
【図7】ガクチカに関して当てはまるもの(複数選択) ※上位抜粋/2025年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(11月)

自分が頑張ってきたことが面接官の目にどう映るのか、上手くアピールできるのか、ということは不安に感じて当然だろう。

どのようなポイントをアピールするか

具体的に「ガクチカで話せることが思い浮かばない」という人に向けて、先輩就活生がどのようなことをアピールしていたかを紹介したい。「2025年卒大学生活動実態調査(3月1日)」によれば、特に多かったのは「学業・研究活動・ゼミ活動について(58.4%)」「アルバイト経験について(56.9%)」である。

エピソードに悩んでいる人は、まずは本分である学業や多くの学生が取り組むアルバイトについて振り返り、頑張ってきたことを深掘りしていくのも一つの手だ。【図8】

ガクチカでどのようなポイントをアピールできそうか(複数選択)/2025年卒大学生活動実態調査(3月1日)
【図8】ガクチカでどのようなポイントをアピールできそうか(複数選択)/2025年卒大学生活動実態調査(3月1日)

就活疲れとの向き合い方

採用選考が本格化すると、過密になるスケジュールや面接などでの緊張、選考結果に一喜一憂してしまうことなどから、就活疲れを感じてしまうこともあるだろう。「2025年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況」によれば、キャリア形成活動等の就活準備も含め、就活疲れを感じたことのある学生は8割を超えている。【図9】

就活疲れを感じたことはあるか(就活準備を含む)/マイナビ 2025年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況
【図9】就活疲れを感じたことはあるか(就活準備を含む)/マイナビ 2025年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況

「就活疲れ」への対応を聞いた自由回答では、「適度に息抜きをする」「人に相談する」「事前に準備をしておく」「人と比べない」という答えが多く寄せられた。【図10】

就活疲れに陥らないための工夫/マイナビ 2025年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況
【図10】就活疲れに陥らないための工夫/マイナビ 2025年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況

近年では積極的休養(アクティブレスト)やマインド・ワンダリングの有効性についても注目が高まっている。*4このような対策は、社会に出てから「仕事疲れ」に陥らない工夫にも活かされるはずだ。先輩就活生の工夫を参考に、ぜひ大学生のうちから自分に合ったリフレッシュ方法を見つけてほしい。

*4 より良いリラックスとキープについて~ゾーンコントロール術を考える~

就職活動を通じて成長できる

大変なことも多い就職活動だが、その過程で多くの学生が成長しているようだ。「2025年卒 学生就職モニター調査 8月の活動状況」によれば、7割を超える学生が就職活動を通じて成長できたと感じている。【図11】

就職活動を通じて自分自身が成長できたと思うか/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況
【図11】就職活動を通じて自分自身が成長できたと思うか/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況

成長できたと思う部分については、「自分自身に対する理解が深まった(48.3%)」「将来についてよく考えるようになった(47.2%)」という回答がいずれも半数程度で、特に多かった。就職活動を通じて、多くの学生が自分自身のキャリアについて深く考えた結果と言える。【図12】

成長できたと思う部分 ※上位抜粋/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況
【図12】成長できたと思う部分 ※上位抜粋/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況

先輩就活生の反省と後輩へのメッセージ

先輩就活生の反省

就職活動を振り返った先輩達の反省についてみてみたい。「2025年卒内定者意識調査」によれば、就職活動を振り返って、「もっと十分にすれば良かったと思うこと」の1位は「自己分析(37.2%)」だった。

近年ではジョブ型採用やコース別採用の浸透によってキャリアの選択肢が広がっており、その膨大な選択肢から一つのファーストキャリアを選び取ることは、より難易度が上がっている。またはじめに述べたように、採用選考も早期化しているのが実態だ。

残念ながらキャリア観が十分に醸成されないうちに焦って入社予定先を決めてしまい、内々定を辞退して就職活動を再開する学生や入社後にミスマッチを感じて早期離職をしてしまう人もいる。自分の進みたいキャリアを考えることはいくら早くても早すぎることはない。自分自身が納得できるようになるまで、じっくり自己分析を行ってほしい。【図13】

成長できたと思う部分 ※上位抜粋/2025年卒内定者意識調査
【図13】成長できたと思う部分 ※上位抜粋/2025年卒内定者意識調査

後輩へのメッセージ

最後に「2025年卒 学生就職モニター調査 8月の活動状況」より、先輩就活生から後輩へのメッセージをご紹介したい。頻出のワードは「早め」「自己分析」「行動」「自分」などで、自己分析の重要性や、周囲と比較する必要はないこと、積極的な行動を勧めるメッセージなどが印象的だ。【表1】

【表1】後輩へのアドバイスやメッセージ/マイナビ2025年卒学生就職モニター調査 8月の活動状況

まとめ

やりたい仕事が見つからない、ガクチカとして話せるエピソードがない、などの初期の悩みから、就活疲れの対処法など、先輩就活生の具体的な葛藤やそれに対する工夫を紹介してきた。就職活動を通じて、どのような壁が立ちはだかるのかといった全体像やそれを乗り越えるヒントがイメージできたのではないだろうか。

繰り返しになるが、就職活動は人生の一つの転機となる活動であり、大変な取り組みであることは間違いない。しかしながら就職活動を通じて多くの学生が自分自身の成長を感じていることからも、必要以上に就職活動に対して身構えたり、悲観的に思ったりする必要はないだろう。未来の就活生には不安ではなく希望を持って、就職活動に臨んでほしいと思う。

マイナビキャリアリサーチLab 主任研究員 井出 翔子

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