マイナビ キャリアリサーチLab

コロナ禍で、大学生の「ガクチカ」はどう作るのか

こんにちは、株式会社Strobolightsの羽田と申します。

前職はマイナビで、大手企業の新卒採用営業や学生向けキャリア支援事業立ち上げなどを行った後、現在はマイナビを退社し、独立しました。現在は小学生から若手社会人に至るまでのキャリア支援企画開発や大学講師などを生業としています。

私は2020年3月に会社を辞めて独立したのですが、2020年3月というと新型コロナウイルスの猛威が本格化し始め、初の緊急事態宣言が出たタイミングでもあります。私が述べるまでもなく、その後の社会システムや価値観は大きく変わりました。そして今回取り上げる大学生も、コロナによって大きな影響を受けました。

今回のテーマは「コロナが与えた大学生活への影響」についてです。

「高校5年生」。入学した年に機会喪失した大学2年生

2021年10月現在、緊急事態宣言が解除されて大学も対面授業がようやく本格的に始まった大学も多いようです。私も先日、ある大学のキャンパスに久しぶりにお邪魔しましたが、以前ほどではないにしてもキャンパス内は活気を取り戻しているようです。

ただ、現時点(2021年)で大学1年生と2年生に関しては「久しぶりのキャンパスライフ」というよりは「初めてのキャンパスライフ」に近いものがあります。特に厳しいのが大学2年生。何せ学生たちは大学入学のタイミングが初めての緊急事態宣言発出直後。入学式も行われていなければ、社会全体が初めての体験で大混乱していた時期に大学生活がスタートしたことになります。初の前面オンライン授業となった結果、授業の進め方も定期試験の方法もまだ洗練されておらず、結果的に課題レポートの嵐となってあまりのレポートの量に学生が困窮している様を私も見ていました。

私が知っているある大学2年生がこんなことをTwitterで呟いていました。「ほぼ初めてのキャンパスライフで対面の授業や生身の大学生と接点を持つと、私たちは高校5年生なんだなと感じてしまう」

「高校5年生」とはどういうことかというと、学年は進んだけど精神年齢や大学生としての処世術などは高校生のまんまだった、ということだと思います。言い得て妙だなと思いませんか?

2020年の大学生活はほぼまるまるオンラインを余儀なくされた学生が多かったと思いますが、2021年春学期からは大学側も環境整備が進み、対面とオンラインをうまくブレンドしながら進めていった印象があります。なので、2021年入学の大学1年生はまだ被害は浅いようですが、2020年入学の大学2年生は入学直後の1年間を喪失している。これは彼らの価値観に結構大きい影響を与えるのではないかと思っています。

ある大学職員はこう言います。「大学としてもサポートをすべく、いろいろなプログラムを用意して学生に案内していますが、大学1年生は反応があっても2年生は反応が弱い。大学2年生は、一番不安な時期に何も支援してくれなかった大学側に不信感がある気がします」

24卒就活は、いったいどう考えればいいのか

実際、大学生活がまるまる1年間喪失してしまった大学2年生はこの先深刻なことが起こるのではないかと私は考えています。それは「ガクチカがない」、つまり「学生時代に力を入れたこと」がない学生が続出するのではないか、ということです。おそらく、就職活動で苦戦する学生が増えるだろうと思います。22卒23卒まではまだコロナ前にも大学生だった時代がありましたが、24卒は大学入学とコロナ禍が重なり、入学早々オンライン授業で、キャンパスに入試以降一度も行ったことがない学生も珍しくありません。そして、大学での友達もいないのです。

コロナ前の学生の活動パターンを見ていると、大学1年生の時は開放感とともに交友関係が一気に広がり、あらゆる活動に手を出してみては失敗し、その失敗と反省を生かして大学2年生をより充実した時間にして成熟させ、その過程で人間的成長を果たして就職活動に入っていきます。

ところが24卒である現在の大学2年生は経験の出発点である1年生の経験がありません。「2年生後期から対面になったんだからそこから始めればいいじゃないか」と思われる方もいるかもしれませんが、それはあくまで理屈上の話です。実際問題、大学2年生の後期から新しいサークルに入るのは精神的ハードルはかなり高い。余程の想いがないとこのタイミングでのサークル加入は厳しいでしょう。

就活では学生時代に取り組んできたことで自己PRをしますし、学生時代の経験を元に自己分析をして自分の価値観や特徴を理解していきます。しかしその題材がそもそもないのです。

サークルに入る入らない以前の問題として、上述した大学職員の話にもあるとおり大学2年生は大学1年生を喪失してしまった結果、大学(社会)に対する不信感や諦めを抱いている気がします。人の自信とは、経験をベースに成り立つものですが、その経験がない学生たちはひたすらに自己肯定感が低く、就職活動で企業から「学生時代に力を入れたことはなんですか?」という定番の質問をされても答えるものがない。でも営利団体である企業が、そうした学生事情を鑑みた上で採用基準を落とすかというとそれも違う。

24卒の就活は、いったいどうなってしまうのでしょうか?
大学生活は就職活動のためだけのものではありませんが、ガクチカについて語れる、そんな大学生活を送るヒントを後半で説明したいと思います。

大学生文化の断絶

その前に、少し話題のベクトルは変わりますが、いま、大学生の文化の断絶が起こっています。大学生活を彩るサークル活動。本来は先輩から後輩へ、サークル運営のノウハウやサークルのDNA、文化が継承されていくものですが、伝承ができる経験を持つ先輩は現在の大学4年生。つまり来年卒業します。

サークル組織が存続していればまだ良い方で、コロナによって活動ができず、消滅してしまったサークルも多いようです。

大学の春の名物イベント、「新歓活動」もこの2年間、大々的には行われていません。そしていわゆる「飲み会」もここ2年間、まともに開催されていません(問題視されていた路上飲みなどはともかく)。お酒に関する知識や「幹事」などの経験も乏しい学生がこれから社会に出ていくことになります。

大学生活で経験するこうした行事も、社会に出ていく上での重要な学びの機会であったはずです。今後、新入社員として社会に出てきた時に、これまでの新人とは考え方や立ち振る舞いが大きく違うかもしれない可能性があります。

コロナを言い訳にしない、大学生の課外活動とは

さて、コロナによって大学生の生活が分断されてしまった現状をお伝えさせていただきました。そして、日常が少しずつ戻ってきたとはいえ、コロナ以前に完全に戻ったわけではなく、また今後も新たな感染拡大の可能性もある中、大学生の課外活動*はどのように考えればいいのでしょうか。

パターンに分けて整理して解説いたします。

*なお、本稿における「課外活動」とは大学生の本分である学業以外の活動のことを指します。

1、2年生は長期インターンシップを

インターンシップ

学生の自治性が求められるサークルなどの取り組みはコロナで活動が制限されていると難しい面もありますが、企業が主体となる長期インターンシップは全く問題なく参加できるでしょう。

就活年次に行う短期間のインターンではなく、長期のインターンに大学1,2年生が取り組むことも増えてきました。社会人と机を並べ、社会人が行っている仕事を実際に担当する長期インターンはビジネスの成り立ちを体で理解したり、学生が理解しづらい「職種」の意味を理解したりする機会になると思います。リモートワークが進み、完全オンラインでインターン生を募集する企業も増えています。地域の制限を受けずに学ぶチャンスがコロナによって広がったとも言えます。

ただし、長期インターンシップを募集する企業は学生を「戦力」として捉えています。「体験させてもらえる」というような受け身の姿勢ではなく、しっかりとコミットするマインドが求められます。

個人留学という手段もある

コロナによってもっとも活動に制限がかかっているのが海外渡航に関するものでしょう。旅行はもちろん、留学のハードルはかなり上がってしまったと言えます。特に大学がアレンジしてくれる留学プログラムや交換留学などはプログラム自体が停止してしまいました。

こうしたプログラムに期待して進学先を選んだ学生にとっては悲劇的な事態と言えます。

しかし、それはあくまで大学が用意するプログラムに参加する場合の話。学生が自分でアレンジして留学に行く個人留学という選択肢はちゃんとあります。

実際、私の会社で夏まで働いていたインターン学生のうち、2名は9月から留学に旅立っていきました。まだ緊急事態宣言が明ける前、国内の感染者数が急拡大していた8月には留学の目処が立っていました。そのうちの1名は当初予定していた大学公認のプログラムが中止になり、それでも留学が諦めきれなくて自分でいろいろ動いた結果、留学斡旋をしてくれるエージェントを見つけて念願だった留学を実現しました。大学として海外渡航を禁止している大学に在籍している場合は難しいと思いますが、そうでない場合はこのような選択肢もありうるのです。

在宅で資格取得に励む

外出自粛をせざるを得ない中、「このままでは無駄な時間を過ごしてしまう」と考えてスキルアップに臨んだ学生もいます。TOEICなどの語学力や簿記、プログラミングなど社会に出た後にも役に立つであろう実践的なスキルをコツコツと学び資格取得に励むのです。
コロナによりオンラインで受講できる講座も増えています。遠方に出向かなくても学びの機会が増えていることを逆手にとり、情報収集し学びを深めるしたたかさを持つとそれは立派な「ガクチカ」になりえるのではないでしょうか。

豊富な課外プログラムを提供している大学もある

コロナによって活動が制限されている学生の現状を鑑みて、大学主催のインターンシップやキャリアに関するセミナーなど、新しいプログラムを用意して学生に提供している大学も珍しくありません。私も大学1,2年生向けのコンテンツについて企画のご依頼などをよくいただくようになりました。大学からの案内は公式のウェブサイトやイントラサイト、大学ドメインのメールアドレスで情報発信をしています。見逃している学生はこれらのチャネルをチェックしてみると良いでしょう。

本人の意思次第で、行動はいくらでも変えられる

いかがでしたでしょうか。確かにコロナによって環境に制限がかかったのは間違いないのですが、その中でも環境のせいにせず、自主的に動いて道を切り開いている学生もいます。

長期インターンや自主的な活動など複数のプロジェクトに関わるある大学2年生はこんなことを言っていました。

「大学からもいろいろな情報発信がなされているし、機会自体はいくらでもある。これだけ機会があるのに、それを利用せずにコロナのせいにして動かない学生はどうかなと思いますよ 」

「それは自主的に動ける学生だけの話だ」と思われる方もきっといらっしゃると思います。それはまさにその通りなのですが、機会を生かし、自主的に動けるようにすることこそキャリア教育だと思います。変化の激しい現代社会の中で、状況状況にあわせて一人一人が判断して自分で動いていくことの重要性が増しています。

羽田啓一郎
株式会社Strobolights
代表取締役社長

著者紹介
立命館大学卒。株式会社マイナビにて大手企業の新卒採用支援を経て、学生向けキャリア支援プロジェクト「MY FUTURE CAMPUS」「キャリア甲子園」「キャリアインカレ」「課題解決プロジェクト」「キャリア教育ラボ」等を立ち上げ、国内最大規模までグロース。2020年に独立、株式会社Strobolights設立し、小学生から若手社会人までのキャリア支援サービスを展開。早稲田大学、立命館大学、昭和女子大学、武蔵野大学などで就活やキャリア教育の講義も担当。

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