マイナビ キャリアリサーチLab

入社半年後→1年半後にかけて新入社員に起こる変化とは
2020年卒入社「1年半」後調査

石田 力
著者
キャリアリサーチLab研究員
CHIKARA ISHIDA

 
この調査の主な目的は「就職活動をした人の『その後』の状況」を知ることにある。もともとの発想は「就職活動がうまくいったかどうかは『入社して良かった』と思えたかどうかで決まるのではないか」というものだ。つまり「良い就職活動とはどういうものか」を知るためには「入社後」を調査する必要があると考えたのである。

今回は、就職活動時、入社半年後、そしてさらに1年が経過した入社「1年半」後で、勤務先(就職活動時は入社予定先)に対する満足度がどのように変化したのかを調査し、その変化の原因について考察を試みた。

調査概要

内容 マイナビ 2020年卒 入社「1年半」後調査
調査期間 2021年10月25日(月)~2021年11月1日(月)
※入社半年後のデータの調査期間 「マイナビ 2020年卒 入社半年後調査」
2020年10月12日(月)~2020年10月18日(日)
※就職活動時のデータの調査期間 「マイナビ 2020年卒 学生就職モニター調査 7月の活動状況」
2019年7月25日(木)~2019年7月31日(水)
調査対象 2020年卒業予定として就職活動を行い、その状況をモニター調査で回答した方を対象とした追跡調査
(マイナビ 2020年卒 学生就職モニター調査 7月の活動状況」回答時点で大学4年生及び院2年生だった方)
調査方法 Web上のアンケートフォームより入力
分析対象数 363名(今回の分析対象:現在、企業勤務または公務員で、かつ、就職活動時、入社半年後、今回の3つの調査にすべて回答した方)
[内訳:文系 152名 理系 211名(理系内訳:就活時理系学部生 106名 就活時理系院生 105名)]

目次

就職活動時から入社半年後にかけて下がった勤務先に対する満足度は、入社1年半後にさらに下がった

今回のレポートでは、20年卒入社「1年半」後調査に回答した人のうち、現在、企業勤務または公務員で、就職活動時の入社予定先に現在も勤務し、さらにちょうど1年前に実施した20年卒入社半年後調査に回答していた363人を対象に、勤務先(=就職活動時の入社予定先)に対する満足度の変化について分析する。

全体で見ると、満足度が最高の人の割合が減り、満足度が低い人の割合が増えた

入社1年半後の時点で、現在の勤務先に対する総合的な満足度を5段階で聞いたところ【図1】、満足度5(満足度が5段階の最高)と回答した人の割合は17.1%だった。就職活動時は満足度5が52.0%だったのが、入社半年後は27.1%と約半減し、今回そこからさらに減ったことになる。

一方、満足度が2以下(満足度が低い)と回答した人の割合は、就職活動時はわずか2.3%だったのに対し、入社半年後は6.1%と3倍弱に増加し、入社1年半後では11.1%とさらに増加した。満足度が高い人の割合が減り、満足度が低い人の割合が増えているので、明らかに満足度が下がっているといえる。

図1 就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較
<全体> n=366
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<全体>/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<全体>/2020年卒入社「1年半」後調査
 

文理別で見ると、いずれも入社半年後から1年半後にかけて満足度が下がった

勤務先満足度の変化を文理別で見ると【図2】、満足度5の<就職活動時→入社半年後→入社1年半後>の変化は以下の通りで、やや減り方に違いはあるものの、いずれも就職活動時から入社半年後にかけて満足度が下がったように、入社半年後から入社1年半後にかけても満足度が下がっていた。

【満足度5(最高)の割合の、就職活動時 → 入社半年後 → 入社1年半後 の変化】
文系 50.1% → 23.4% → 15.8%
理系 54.9% → 32.6% → 19.1%

図2 就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較
【文理別】

<文系> n=152
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<文系>/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<文系>/2020年卒入社「1年半」後調査
<理系> n=211
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<理系>/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<理系>/2020年卒入社「1年半」後調査
 

理系院生より、理系学部生のほうが満足度の下がり方が大きい

また、理系について、就職活動時に学部生だった人と院生だった人で比較すると【図3】、学部生のほうが満足度の下がり方が大きくなっている。

図3 就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較
【理系・学部生院生別】

<理系学部生> n=106
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<理系学部生>/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化の比較<理系学部生>/2020年卒入社「1年半」後調査
<理系院生> n=105
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較<理系院生>/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化の比較<理系院生>/2020年卒入社「1年半」後調査


ここまで見てきたように、就職活動時から入社半年後にかけて、勤務先(=入社予定先)に対する満足度が下がったように、入社半年後から入社1年半後にかけても勤務先の満足度が下がっていることが分かった。また、この変化は文系か理系かに関わらず起こっていた。そこで次にこの変化の原因についてアプローチしていく。

入社半年後から1年半後にかけて満足度が下がる変化は、
勤務先の従業員規模に関わらず起こった

入社半年後から入社1年半後にかけて勤務先満足度が下がることに、企業規模は関係しているのだろうか。もし企業規模が小さいほど満足度が下がる傾向が強ければ、入社から時間が経つにつれて、給与が比較的低い(※1)、福利厚生が比較的充実していない(※2)といったことに不満が出てきたということも考えられる。

※1 賃金構造基本統計調査(令和3年)によると、新規学卒者(大卒)の所定内給与額は従業員規模1,000人以上のほうが従業員規模100~999人よりもやや多い
※2 就労条件総合調査(令和3年)によると、福利厚生に充てられる法定外福利費は、従業員規模1,000人以上のほうが従業員規模300~999人よりも多い

従業員規模300人未満と5,000人以上で満足度の下がり方に大きな差はない

そこで勤務先の企業規模で4つに分けて、それぞれ勤務先満足度の変化を出してみた。【図4】すると下がり方にはやや差はあるが、いずれの企業規模でも同じように満足度が下がっていることが分かった。

もっとも企業規模が小さい「300人未満」ともっとも企業規模が大きい「5,000人以上」を比べても、満足度の下がり方にそれほど大きな差はなかった。

【満足度5(最高)の割合の入社半年後→1年半後の変化量】
「300人未満」  12.5pt減
「5,000人以上」 11.3pt減

 よって、満足度が下がる原因に企業規模はあまり関係ないといえそうだ。

図4 就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較
【勤務先従業員規模別】

<従業員数 300人未満> n=56
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・従業員300人未満/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・従業員300人未満/2020年卒入社「1年半」後調査
<従業員数 300人~999人> n=73
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・従業員300~999人/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・従業員300~999人/2020年卒入社「1年半」後調査
<従業員数 1,000人~4,999人> n=102
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・従業員1,000~4,999人/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・1000~4999人/2020年卒入社「1年半」後調査
<従業員数 5,000人以上> n=132
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・従業員5,000人以上/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・従業員5000人以上/2020年卒入社「1年半」後調査
 

勤務先のインターンシップの満足度が5だった場合、
入社1年半後の勤務先満足度は比較的高いが、他と同様に下がる

20年卒入社半年後調査における分析では「勤務先のインターンシップに参加してその満足度が5(最高)だった場合、勤務先の満足度が高く保たれる割合が高い」という結果が出ていた。入社1年半後についても同様のことがいえるのだろうか。

勤務先のインターンシップの満足度により、
就職活動時→入社半年後の勤務先満足度変化に差が出ていたが、
入社半年後→入社1年半後で満足度が下がることに変わりはない

今回の回答者のうち、「勤務先のインターンシップの満足度が3以下」だった人は21名と少ないので、「勤務先のインターンシップ満足度4(n=66)」と「勤務先のインターンシップ満足度5(n=51)」で比較した。【図5】

すると、「勤務先のインターンシップ満足度4」では「就職活動時から入社半年後にかけて大きく勤務先満足度が下がり、入社1年半後にはそこからさらに少し下がる」という結果だったが、「勤務先のインターンシップ満足度5」では「就職活動時から入社半年後にかけての勤務先満足度の下がり方は比較的小さいが、入社1年半後にもさらに同じくらい満足度が下がる」という結果となった。

特に「勤務先のインターンシップ満足度5」で、満足度が低い「勤務先満足度が2以下」の割合は、入社半年後は0.0%だったのに、入社1年半後では13.8%になっていた。

【満足度2以下(低い)の割合の、就職活動時 → 入社半年後 → 入社1年半後 の変化】
勤務先のインターンシップ満足度4 3.0% → 1.5% → 6.1%
勤務先のインターンシップ満足度5 0.0% → 0.0% → 13.8%

このことから、入社半年後から1年半後にかけて満足度が下がる原因は、「勤務先のインターンシップ満足度が5だったこと」とはあまり関係ないところにあるのでは、と推察される。

図5 就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較
【勤務先のインターンシップの満足度別】

<インターンシップ満足度 3以下> n=21 ※回答数が少ないため参考値
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・勤務先のインターンシップ満足度3以下/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・IS満足度3以下/2020年卒入社「1年半」後調査
<インターンシップ満足度 4> n=66
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・勤務先のインターンシップ満足度4/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・IS満足度4/2020年卒入社「1年半」後調査
<インターンシップ満足度 5> n=51
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・勤務先のインターンシップ満足度5/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・IS満足度5/2020年卒入社「1年半」後調査
 

就職活動時にインターンシップの満足度が5(最高)だった場合、
入社1年半後になっても勤務先満足度が高い

とはいえ、「インターンシップ満足度が5(最高)」だった場合、入社1年半後になっても「勤務先満足度が比較的高い」ということに変わりはない。

【入社1年半後に勤務先満足度が5(最高)である割合】
勤務先のインターンシップ満足度4 9.1%
勤務先のインターンシップ満足度5 33.3%

よって、「入社後も満足度が高い企業に就職したいなら、インターンシップ満足度が5の企業を探すべし」ということは引き続きいえるだろう。

なお、「勤務先のインターンシップに不参加」の場合の満足度の変化【図6】は、「勤務先のインターンシップ満足度4」と「勤務先のインターンシップ満足度5」の中間くらいだった。

図6 就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先総合満足度の変化の比較
<勤務先のインターンシップに不参加> n=226
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・勤務先のインターンシップに不参加/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先満足度の変化・IS不参加/2020年卒入社「1年半」後調査
 

入社半年後から入社1年半後にかけて、
理想のキャリア実現への展望の指標が下がる傾向あり

最後に、勤務先満足度が入社半年後から入社1年半後にかけて下がった原因にアプローチするため、勤務先満足度に相関する5つの側面 < 労働条件満足度【図7】、能力を活かせるか【図8】、社員の印象と帰属感【図9】、経営者の印象【図10】、将来のキャリア展望【図11】> について、各5段階のレベルの変化を見ていく。

なお、これらの5つの側面は、19年卒の入社半年後調査における分析で「それぞれのレベルの高さと総合満足度の高さは正の相関がある(レベルが低ければ総合満足度は低く、レベルが高ければ総合満足度も高い)」という結果が出ている。

各指標の変化については、5段階のうち「レベル5(最高)」の減少幅、「レベル2以下(低い)」の増加幅の2点に着目した。

図7 【労働条件満足度】の変化の比較(就職活動時→入社半年後→入社1年半)
<給与、福利厚生、休日休暇等についてどの程度満足しているか> n=363
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先労働条件満足度の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先労働条件満足度の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
 
図8 【能力を活かせるか】の変化の比較(就職活動時→入社半年後→入社1年半後)
<大学、大学院で学んだこと、資格など、能力を活かせそうか> n=363
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先で能力を活かせるかの変化/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先で能力を活かせるかの変化/2020年卒入社「1年半」後調査
 
図9 【社員の印象と帰属感】の変化の比較(就職活動時→入社半年後→入社1年半後)
<社員(同僚等)の印象からその企業が自分に合っていると思えるか> n=363
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先の社員の印象と帰属感の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先の社員の印象と帰属感の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
 
図10 【経営者の印象】の変化の比較(就職活動時→入社半年後→入社1年半後)
<社長、役員、経営者の印象について> n=363
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先の経営者の印象の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先の経営者の印象の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
 
図11 【将来のキャリア展望】の変化の比較(就職活動時→入社半年後→入社1年半後)
<理想とする将来のキャリアプランを実現できそうか> n=363
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先での将来のキャリア展望の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
就職活動時→入社半年後→入社1年半後の勤務先での将来のキャリア展望の変化/2020年卒入社「1年半」後調査
 

理想のキャリアへの道をこの勤務先で歩むことの厳しさを実感し、
勤務先満足度が低下したか

5つの側面のうちもっとも変化が大きいのは、「将来のキャリア展望【図11】」だった。

【将来のキャリア展望 の 入社半年後 → 入社1年半後 の変化】
「レベル5(十分実現できそう)」 6.2pt減
「レベル2以下(実現できそうにない)」 9.8pt増

研修期間を終えて実際に仕事をするようになり、就職活動時に描いた将来の理想のキャリアへの道をこの勤務先で歩むことの厳しさを実感した。あるいは、想像(入社予定先)と現実(実際の勤務先)のギャップを経験することで勤務先満足度が低下した、ということだろうか。

「うちの会社の経営者はこんな人だったのか!」という思いの中、
勤務先満足度の低下につながったか

次に変化が大きかったのは、「経営者の印象【図10】」だった。

【経営者の印象 の 入社半年後 → 入社1年半後 の変化】
「レベル5(とても印象が良い)」 6.1pt減
「レベル2以下(印象は良くない)」 8.0pt増

新入社員として勤務する中で、やや遠い存在だった自分の会社の経営者について知る機会が増え、その印象が悪いほうに変化した場合、「うちの会社の経営者はこんな人だったのか!」という思いの中、勤務先満足度の低下につながったのかもしれない。

より良い就職活動を実現するために「就職後」を追い続ける

ここまで見てきたように、入社半年後から入社1年半後にかけての時期には、勤務先満足度が下がる傾向があり、それには「将来のキャリア展望(理想とする将来のキャリア展望の実現可能性が低いと感じるようになる)」「経営者の印象(経営者の印象が良くない方向に変化する)」といったことが関連している可能性があった。より良い就職活動を実現するために、今後も就活生の「就職後」を追う調査を続けていきたい。

キャリアリサーチLab研究員 石田 力

 

下記より調査レポートのPDFデータをダウンロードできます。内容はこのコラムとほぼ同じです。

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