マイナビ キャリアリサーチLab

インターンシップに参加しまくっている大学生と
ほとんど参加していない大学生でライフスタイルに違いはあるのか

石田 力
著者
キャリアリサーチLab研究員
CHIKARA ISHIDA

 
 「2023年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況(以下、23年卒モニター調査2月)」によると、インターンシップ・ワンデー仕事体験に参加した学生の割合は91.3%【図1・左】、参加した学生の平均参加社数は8.2社となっている(以下、「インターンシップ」には「ワンデー仕事体験」を含む)。この数字を見ると、「最近の就職活動直前の学生は多くの企業のインターンシップに参加しまくっているのか!」と思うだろう。しかし、実際には8.7%のインターンシップに参加していない学生がいるし、参加している学生の中にも1社しか参加していない学生(7.7%)や2社しか参加していない学生(9.5%)がいる【図1・右】。今回のコラムは、「インターンシップに参加しまくっている学生」と「ほとんど参加していない学生」では何が違うのか、について、学生のライフスタイルの面から分析してみようという試みである。

【図1】 左:インターンシップに参加した割合  右:参加社数別分布・23年卒 n=2,238
インターンシップに参加した割合・参加社数別分布/マイナビ2023年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況
2023年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況より


 株式会社マイナビでは毎年、就職活動をする予定の大学3年生・大学院1年生を対象に様々な調査を実施しているが、ここでは「2023年卒大学生のライフスタイル調査 (以下、23年卒ライフスタイル調査)」と「23年卒モニター調査2月」の結果を用いる。インターンシップ参加状況については「23年卒ライフスタイル調査」と「23年卒モニター調査2月」両方に回答した1,050名の学生の調査結果をもとに分析を行う。具体的には、後者の調査において、インターンシップに「1度も参加していない」「参加社数が1社または2社」と回答した群を、それぞれ「参加社数が10社以上」と回答した群と比較・分析する形を取る。
 
 学生のライフスタイルについては、前年の就活生のモニター調査(2022年卒 学生就職モニター調査 8月の活動状況、以下22年卒モニター調査8月)において、「就職活動における自己PRのエピソード」として就活生が最もよく使った「アルバイト経験(26.6%)」と、3番目と4番目によく使った「サークル活動(17.9%)」「部活動(15.8%)」を取り上げることにする【図2】。なお、2番目は「学業・研究活動・ゼミ活動(19.4%)」だが、今回は課外活動に注目するため除いた。

【図2】 メインで使った自己PRのエピソードのジャンル・22年卒
メインで使った自己PRのエピソードのジャンル・22年卒/マイナビ2022年卒 学生就職モニター調査8月の活動状況
  2022年卒 学生就職モニター調査 8月の活動状況より

大学生のアルバイト事情:コロナ禍でどんな影響が?

 まずは大学生のアルバイト事情について見ていこう。「23年卒ライフスタイル調査」によれば、大学生が「定期的なアルバイトをしている」割合は71.7%である。また、アルバイトの種類でもっとも大きな割合を占めているのは「飲食・フード」で41.7%だ。飲食・フード業界は、コロナ禍における緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった営業時間の短縮や酒類提供の制限という形で大きな影響を受けており、大学生のアルバイト状況にもコロナ禍の影響があったのではと推察されるが、実際はどうだろう。

【図3】 定期的なアルバイトをしている割合・年次推移
定期的なアルバイトをしている割合・年次推移/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査
2023年卒大学生のライフスタイル調査より

定期的にアルバイトしている学生の割合が減少に転じる

 定期的なアルバイトをしている割合は17年卒から21年卒にかけて年々増加し、21年卒では80.9%に達していた。ところが、ここ2年は減少に転じている【図3】。21年卒の調査時期は「2019年11月25日(月)~2019年12月23日(月)」と最初の新型コロナウイルス感染症流行のタイミングより前なので、コロナ禍の影響が明らかに表れていると言える。それでも多くの学生が定期的にアルバイトをしている状況に変わりはない。

収入は21年卒 → 22年卒で平均約6,000円・15%程度の減少

 次にアルバイト収入について1ヶ月平均の収入の年次推移を見てみよう。

【図4】 アルバイトによる1ヶ月の収入の平均・年次推移
アルバイトによる1ヶ月の収入の平均・年次推移/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査
2023年卒大学生のライフスタイル調査より

 こちらもコロナ禍前の21年卒には平均3万9,473円だったのが、コロナ禍に入った22年卒では3万3,559円と、約6,000円、15%程度の収入減となっていた【図4】。飲食・フード業界などで、店が休みになったり、閉店時間が早くなったりして、アルバイトのシフトが減ったことが影響していると考えられる。23年卒では22年卒よりもさらに約1,500円減って、3万2,010円だった。

大学生のアルバイト状況はインターンシップ参加状況で差が出るか

 これらのアルバイトの状況は、「インターンシップに参加しまくっている学生」と「ほとんど参加していない学生」で、違いがあるのだろうか。早速分析結果を見ていこう。表中の「不参加」はインターンシップに参加したことがない学生、「1社または2社」はインターンシップ参加社数が1社または2社の学生、「10社以上」はインターンシップに10社以上参加していた学生を表す。

【図5】 定期的にアルバイトをしている割合・
インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較
定期的にアルバイトをしている割合・インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査とマイナビ2023年卒学生就職モニター調査2月の活動状況
「23年卒ライフスタイル調査(アルバイト状況)」と「23年卒モニター調査2月(インターンシップ参加状況)」の
両方に回答した学生(n=1,050)のデータをもとに分析
青枠太字は5%の有意水準で低い、赤枠太字は5%の有意水準で高い
※「全体」はライフスタイル調査回答者全体の値


インターンシップに参加しまくっている大学生は
定期的にアルバイトしている割合が比較的高い

 まず、定期的なアルバイトをしている割合については、インターンシップに「不参加」の学生は53.8%、「1社または2社」参加の学生は55.0%だった。一方、インターンシップに「10社以上」参加の学生は74.5%で、20pt前後の差がついた【図5】。差の検定を行ったところ、定期的なアルバイトを行っている割合について、インターンシップに「不参加」の学生や「1社または2社」参加の学生は、「10社以上」参加の学生より「5%の有意水準で低い*」という結果だった。

*5%の有意水準で低い:「低い」という結果が出ない確率が5%以下

インターンシップにほとんど参加していない大学生は
アルバイトの稼ぎが比較的少ない

 次にアルバイト収入の1ヶ月平均について見ると、インターンシップに「不参加」の学生は1万9,708円、「1社または2社参加」は2万1,065円で、「10社以上参加」の学生の3万3,050円と比べると1万円以上少なかった【図6】。差の検定を行ったところ、インターンシップに「不参加」の学生や「1社または2社」参加の学生はインターンシップに「10社以上」参加の学生より「5%の有意水準でアルバイト収入が少ない」と言えるという結果だった。

【図6】 アルバイト収入の1ヶ月平均・
インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較
アルバイト収入の1ヶ月平均・インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査とマイナビ2023年卒学生就職モニター調査2月の活動状況
「23年卒ライフスタイル調査(アルバイト状況)」と「23年卒モニター調査2月(インターンシップ参加状況)」の
両方に回答した学生(n=1,050)のデータをもとに分析
青枠太字は5%の有意水準で低い、赤枠太字は5%の有意水準で高い

 これにより「インターンシップにほとんど参加していない大学生は、定期的にアルバイトをしている割合が低く、稼ぎも少ない」ということが言える。おそらく、インターンシップにおいて行動的でない学生は、アルバイトにおいても行動的ではなく、お金を稼ぐことにもやや消極的な傾向があるのではと考えられそうだ。

インターンシップ参加社数平均8.2社のうちオンラインは平均6.7社

 なお、「アルバイト収入が少なかったため、多くのインターンシップに参加するための交通費が出せず、結果的に不参加あるいは1社・2社しか参加できなかった」ということも考えられるが、「23年卒モニター調査2月」によると、23年卒の学生が参加したインターンシップの社数平均8.2社のうち、オンライン参加だった社数の平均は6.7社と、交通費がかからないオンラインインターンシップへの参加が主流で、「お金がなくてもオンラインでたくさん参加しようと思えばできる」状況だった【図7】。

【図7】 インターンシップ参加社数平均およびそのうちオンラインで参加した社数平均
インターンシップ参加社数平均およびそのうちオンラインで参加した社数平均/マイナビ2023年卒学生就職モニター調査2月の活動状況
2023年卒 学生就職モニター調査 2月の活動状況より

大学生のサークル・部活動:コロナ禍に入って1年経過後に影響?

 次は大学生のサークル・部活動事情について見ていく。コロナ禍による緊急事態宣言時は「不要不急の外出を控えましょう」や「大学のキャンパス利用禁止」といった呼びかけがなされ、「講義を聴いたり、研究活動をしたりするために大学に行く」ことだけでなく、「大学でのキャンパスライフを満喫する」こともできにくくなった。よって「サークル・部活動」もコロナ禍の影響を受けたのではと推測される。そこで、まずは「サークル・部活動に所属しているか」の調査結果について年次推移を見よう。

【図8】 サークル・部活動に所属している割合(棒グラフ上の数字)・年次推移
サークル・部活動に参加している割合・年次推移/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査
2023年卒大学生のライフスタイル調査より  

コロナ禍に入った直後は影響が出ず、1年後に影響が出る

 サークル・部活動に所属している割合は23年卒では55.0%(前年比5.5pt減)だった。経年変化では16年卒をピークにおおむねわずかずつ減る傾向にあった(17年卒から18年卒にかけて1.0pt増とわずかに増えたのを除く)【図8】。コロナ禍の影響が出るのは22年卒(調査期間:2020年11月26日~2020年12月23日)からだが、前年比1.0pt減とわずかな減少に留まっている。しかし、さらに1年経過した23年卒では前年比5.5pt減と、減り幅が大きくなった。コロナ禍で1年以上キャンパスでの活動に制約があったことでサークル・部活動をやめる学生が出たのだろうと考えられる。

スポーツ・運動系のサークル・部活動に所属する学生の割合が減少
大学キャンパスの施設が一時期使えなかったことが影響か

 また、サークル・部活動を「スポーツ・運動系(ダンス含む)」と「それ以外」に分けたところ、23年卒で「スポーツ・運動系(ダンス含む)」に所属しているのは全体の25.1%(前年比5.5pt減)、「それ以外」に所属しているのは29.9%(前年比増減なし)だった【図8】。経年変化では、「スポーツ・運動系(ダンス含む)」はコロナ禍前の21年卒までは17年卒以降わずかずつ増える傾向にあったのが、22年卒(前年比3.6pt減)、23年卒(前年比5.5pt減)と明らかに減る傾向に変わっている。グラウンドや体育館などの大学キャンパスの施設が使えなかったなど、コロナ禍はスポーツ・運動系のサークル・部活動への影響が大きかったようだ。

部活動・サークル活動状況はインターンシップ参加状況で差が出るか

 「サークル・部活動」についても、アルバイト同様「インターンシップに参加しまくっている学生」と「ほとんど参加していない学生」で差が出るのだろうか。さっそく分析結果を見てみよう。

【図9】 サークル・部活動に所属している割合・
インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較
サークル・部活動に参加している割合・インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査とマイナビ2023年卒学生就職モニター調査2月の活動状況
「23年卒ライフスタイル調査(サークル・部活動所属状況)」と「23年卒モニター調査2月(インターンシップ参加状況)」の
両方に回答した学生(n=1,050)のデータをもとに分析
※青枠は10%の有意水準で低い、赤枠は10%の有意水準で高い

 サークル・部活動に所属している割合は、インターンシップに「不参加」の学生は49.2%、「1社または2社」参加の学生は51.1%であるのに対し、インターンシップに「10社以上参加」の学生は60.3%と、10pt前後の差がついた【図9】。差の検定を行ったところ、サークル・部活動に所属している割合について、インターンシップに「不参加」や「1社または2社」参加の学生より「10社以上参加」の学生のほうが「10%の有意水準で高い」という結果だった。定期的なアルバイトをしている割合やアルバイト平均収入では「5%の有意水準で差がある」という結果だったので、それよりはやや弱いが、差はあると言えそうだ。

インターンシップ参加状況で
部活動・サークル活動所属割合に差が出るのは男子のみ

 なお、同じ分析を男女で分けて行うと、女子ではほとんど差がなかったが、男子ではインターンシップに「不参加」の学生のサークル・部活動の所属割合は37.9%、「1社または2社」参加は42.6%だったのに対し、インターンシップに「10社以上」参加した学生は64.2%と、20ptを超える大きな差が表れた【図10】。差の検定を行ったところ、男子ではサークル・部活動に所属している割合について、インターンシップに「1社または2社」参加の学生より「10社以上」参加の学生のほうが「5%の有意水準で高い」という結果になった。なお、男子のインターンシップに「不参加」の学生は、サンプル数が29名と少なかったため有意差が出なかった。

【図10】 男女別サークル・部活動に所属している割合・
インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較
男女別サークル・部活動に所属している割合・インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査とマイナビ2023年卒学生就職モニター調査2月の活動状況
「23年卒ライフスタイル調査(サークル・部活動所属状況)」と「23年卒モニター調査2月(インターンシップ参加状況)」の
両方に回答した学生(n=1,050)のデータをもとに分析
青枠太字は5%の有意水準で低い、赤枠太字は5%の有意水準で高い
※男子の「不参加」は、サンプル数が29人と少なかったため有意差は出なかった


インターンシップに参加しまくっている男子学生は
体育会の部活動・サークルの所属割合が比較的高い

 さらに「所属しているサークル・部活動の種類」で差の検定を行ったところ、唯一10%の有意水準で差が出たのが男子の「体育会の部活動・サークル」の所属割合で、インターンシップに「1社または2社」参加している学生は14.9%、「10社以上」参加している学生は29.2%と、倍以上の差となった【図11】。なお、「体育会系以外のスポーツ系のサークル」については、むしろ「1社または2社参加(8.5%)」より「10社以上参加(4.7%)」のほうが所属割合は低いので、「体育会系」に特化しての事象となっている。つまり、「インターンシップに多く参加した男子学生は、体育会系の部活動・サークルの所属割合が比較的高い」ということが言える。

【図11】 男子学生のサークル・部活動の種類・
インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較・一部抜粋
男子のサークル・部活動の種類・インターンシップに「不参加」「1社または2社」参加と「10社以上」参加の比較/マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査とマイナビ2023年卒学生就職モニター調査2月の活動状況
「23年卒ライフスタイル調査(サークル・部活動所属状況)」と「23年卒モニター調査2月(インターンシップ参加状況)」の
両方に回答した学生(n=1,050)のデータをもとに分析
※青枠は10%の有意水準で低い、赤枠は10%の有意水準で高い
※複数所属している場合はもっとも多く活動に参加しているものを選択


インターンシップに参加しまくっている大学生と
ほとんど参加しない大学生ではライフスタイルに差があった

 ここまで紹介した通り、キャンパスライフにおける大きな要素である「アルバイト」と「サークル・部活動」の状況は、コロナ禍による影響を受けており、さらにインターンシップ参加状況で差があるということが分かった。ライフスタイル調査では、このほかにも大学生活や将来像など、さまざまな項目を調査しており、また、モニター調査は今後、進捗する就職活動について調査を進めていく。引き続き分析の機会を持ち、大学生のライフスタイルと就職活動の実態について探究を進め、紹介していきたい。

キャリアリサーチLab研究員 石田 力

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