Z世代の価値観:仕事と家族、働き方への考え方とは?【マイナビ最新調査で考察(2024年更新)】
昨今、「Z世代」という呼び方も浸透し、この世代が従来とは違う価値観を持っているという認識も広まっていると思われるが、具体的にデータでその特徴を見たことはあるだろうか。今回は、マイナビの大学生ライフスタイル調査を中心に、(すでに社会人になっている年代も含めて)この世代が就職活動生の時点で抱いていた仕事や家族、働き方への考え方について紹介していく。
※Z世代は一般的に1996年から2010年ごろに誕生した若者を指すため、2019年卒以降のデータを中心に見ていくが、できるだけ長期間の年次推移を追うべく調査初期の2016年卒ごろのデータも含めて紹介していく。
目次
Z世代の仕事の価値観:人生の中での位置づけは?
まずは働き方の前に、Z世代は就職活動生の時点で、将来どのような生活を送ることを理想としているのか、そしてその将来像の中で「仕事」はどのように位置づけられているのかを見ていこう。
仕事における成功よりも「安定」を優先したい学生が多い
『マイナビ2025年卒大学生のライフスタイル調査』で、理想とする将来の自分像を聞いたところ、「自由な暮らし」や、出世をはじめとした「仕事における成功」など、さまざまな人生像の中で、「一生食べていける安定した仕事を持つ」「自分の好きな仕事を一生続ける」「愛する人と結婚して子供ができ幸せに暮らす」など「安定」を求める学生が7割前後を維持する結果となっている。【図1】
会社内での出世や起業など社会的な地位や名声を得ることよりも、家庭を持つことや安定した社会人生活を求めていることがわかる。
また、「安定」に分類している3項目の中でも割合の変化が見られる。2022年卒までは「愛する人と結婚して子供ができ幸せに暮らす」を選んだ学生が3割以上で1位だったのに対して、以降は割合が減少している。一方「一生食べていける安定した仕事を持つ」の割合が増加して24年卒以降は1位となっており、同じZ世代と言われる年代の中でも、価値観がやや変化していることが見てとれる。
人生において仕事の優先度が高い学生が減少
人生において優先度の高い要素を見てみると、調査当初は「家族」>「仕事」>「趣味」>「自分」の順番だった優先度が、2025年卒にかけて変動している。家族が最多なのは変わらないが、「仕事」が19卒以降減少しており、「自分」「趣味」が近年増加していることから、自分の時間を大切にするという価値観を持っている様子がうかがえる。【図2】
Z世代にあたる学生の「理想の自分像」「人生において優先度の高いもの」の調査結果を見ると、人生の中で優先したいのは「家族」であることや、「安定した暮らしとそのための仕事を持つこと」を理想とする学生が一貫して多い傾向がわかる。一方で人生を構成するさまざまな要素の優先度については、同じZ世代の中でも「仕事」よりも「趣味」や「友情」に重きを置く学生が増えてきている傾向にあることがわかった。
「好きな仕事を一生続ける」も理想の将来像の上位3位には入っているが、優先度はあくまで「家族」や「自分」であり、仕事はその経済的な安定性を維持するための手段だと捉えているために、「仕事そのもの」の優先度は「自分」などに対して相対的に低くなっているのではないかと考えられる。
将来の家庭への価値観と理想とは?
Z世代の将来の理想の暮らしについて、家族や自分を優先したい様子がわかったが、家庭についてはどう考えているのだろうか。
結婚を望まない学生が増加
結婚への希望そのものについての調査ではないが、「結婚後にどう働きたいか」という質問に対する回答から、その傾向がうかがえた。
結婚後の働き方について、共働きや自分の収入のみでの生活など生計の立て方に関する回答の中で、「結婚せず自分の収入のみで生活するのが望ましい」という割合を見ると、調査当初は全体で6.6%だったが徐々に増加し、2023年卒から1割を超えた。この傾向は男女ともに見られ、将来の生活に対して結婚しないイメージを持つ学生がやや増えている様子がわかる。【図3】
子供を望まない学生も増加
こちらも子供を持つことそのものへの希望を聞いているわけではないが、「子育て」についての質問に対して「今のところあまり子供は欲しくない」と回答した学生が増加傾向にある。2016年卒では6.0%だったが結婚の意向と同じく2023年卒から1割を超え、2025年卒では19.2%と調査当初と比べて3倍ほどの割合となった。
また、「子育てのことなど考えたこともない」と回答した学生の割合も増加しており、25年卒では「子供は欲しくない」と合計すると29.2%で、約3割の学生が子供のことについて考えていないまたは欲しくないという意向だとわかる。【図4】
男女別に見ると、「考えたこともない」は男子学生の方が多いが、「今のところあまり子供は欲しくない」は女子学生の方が多い結果となっている。【図5】
子供が欲しくない学生について、2025年卒の調査ではその理由も聞いている。もっとも多かったのは「うまく育てられる自信がない」で57.4%、「自分の時間がなくなる(51.5%)」「経済的に不安(51.0%)」「子育てに伴う責任を負う自信がない(49.5%)」が続いた。
自信がないという回答は女子学生に特に多く、女子学生の中では上位2項目が「自信がない」ことに関連したものになっている(「うまく育てられる自信がない(61.0%)」、「子育てに伴う責任を負う自信がない(53.8%)」)。また、多くの項目で女子学生の方が割合が高い一方で、「経済的に不安」という回答については男子学生の方が割合が高いこともわかる。【図6】
Z世代においては、結婚しないことを望む学生や子供を欲しいと思っていない学生が増加傾向にある様子がわかる。この学生たちが子供望むようになるかどうかについては、女子学生においては子育ての不安解消、男子学生においては経済面の不安解消が主なカギとなってきそうだ。
結婚後の働き方への考え方
結婚や子供を望まない学生も増えてきている様子がわかったが、依然として将来家庭を持つことをイメージしている学生が多数派ではある。次は、結婚・子育てを希望する学生は具体的にどのような家庭の在り方・働き方を考えているのかについて見ていく。
共働きを希望する割合が男女ともに年々増加
結婚後の仕事に関して、「夫婦共働きが望ましい」と回答した学生の割合は、Z世代とされる19年卒ごろから上昇傾向になり、当調査における最高数値を毎年更新している。特に男子学生の共働き希望割合の上昇率が大きく、20年卒以前は5割以下だったのが直近では64.1%まで上昇している。【図7】
共働きを希望する背景には経済面の不安も見られる
「結婚後、夫婦共働きが望ましい」とした学生にその理由を聞いた結果を見ると、「一方の収入だけでは生活できないから」が14.8%で1位だった。お金に関して、「一方の収入に頼るのはリスクがあるから」「将来に備えて貯金がしたいから」など将来の経済的不安に関連する金銭関連の項目を合計すると31.1%となっている。【図8】
また、男女別に見ると男子学生は調査当初「結婚相手が仕事を続けたいならその意思を尊重したいので」が3割程度で1位だったが、その割合は徐々に減少して2025年卒では16.1%となり、3位に下がった。
女子学生は「仕事を続けることが生きがいになると思うから」が2016年卒から変わらず最多であるものの、その割合は減少傾向にある。結婚後に共働きを選ぶパターンとして、妻が生きがいとして仕事を続けることを希望し、夫がその意思を尊重した結果、夫婦ともに仕事を続けるというイメージをする学生もいたが、徐々にそのような考え方をする学生が減少していると推察される。【図9】
実際、社会の共働き世帯と専業主婦世帯の数は1990年代後半に逆転し、Z世代とされる学生が生まれたころから共働き世帯の方が多くなっている。物心ついた時点では世間共働き世帯の方が多い状況となっており、共働きが一般的な在り方であると認識している学生が多いことも考えられる。【図10】
また、別の調査から、結婚後の具体的な働き方の希望について見てみると、「結婚後の自分の働き方の希望」について「結婚前と同じ働き方をしたい」という女子学生はやや増加傾向にあり、男子学生の「結婚相手の働き方への希望」も「結婚前と同じ働き方をしてほしい」が、特に2023年卒・2024卒で増加している。【図11】
前述のように、経済的な懸念から共働きを希望する学生もいることから、夫婦ともに結婚前と同じ働き方をすることで世帯年収を確保したいと考えていると推察される。
専業主婦希望は減少、理由も変化
夫婦どちらかの収入で生活することについては、専業主婦・主夫どちらのケースについても聞いているが、「専業主夫」想定の学生は少なかったため(相手の収入で生活したい男子学生は1.1%、自分の収入のみで生活したい女子学生は1.8%)、今回は「専業主婦」の希望について見ていく。
専業主婦希望の学生は2020年卒以降男女ともに減少しており、男子学生は2016年卒と比べて21.7pt減、女子学生は13.5pt減で半数以下となっている。【図13】
男子学生が「自分の収入のみで生活するのが望ましい」と思う理由を見ると、「結婚相手には家を守って自分や家族を支えてほしい」や「結婚相手には家事や子育てに専念してほしい」は割合が減少している。また、女子学生の「家を守って家族を支えたい」「家事や子育てに専念したい」の回答も減少傾向にある。【図14】
過去の専業主婦希望の背景には、「妻が家事や子育てに専念して家族を支える」というイメージが社会的に存在していたことも影響していたと考えられるが、徐々にその考えが変化してきたのではないだろうか。
Z世代の学生は男女ともに、共働きの家庭を想定していることがわかる。また、女子学生は「仕事が生きがいになると思う」という理由で共働きを希望している場合が多かったが、その割合は徐々に減ってきており、生きがいとして仕事を続けるというよりはさまざまな理由で収入源を夫婦で確保しておきたいという考えの方が強いようである。
また、専業主婦の考え方についても、「女性に家を守ってほしい・女性自身が家を守りたい」という理由で専業主婦世帯になることを希望する学生は少なくなっているという変化が見られる。
子育てしながらの働き方への考え方
最後に、共働き家庭を想定している学生が多いZ世代が、育児をしながらどのように働くことをイメージしているのかを見ていく。
育児休業を取らずに子育てする想定の学生は減少
子育てに関する考え方を聞いてみると、「育児休業を取って積極的に子育てしたい」学生は増加傾向にあり、全体割合では2016年卒では5割以下だったが直近では6割程度となっている。「育児休業は取らないが子育てはしたい」という割合は大きく減少しており、子育てするのであれば育児休業を前提として考える学生が増えていると考えられる。【図15】
特に男子学生の割合は育児休業を取る想定の学生の増加幅が大きく、2016年卒では32.6%だったのに対して、2024年卒では初めて6割を超えるなど、育児休業を希望する男子学生は増えており、育児休業希望者の男女差はなくなってきている。【図16】
一方、育児休業を取って子育てしたい女子学生の割合は2021年卒以降減少傾向にあり、2025年卒で調査開始以降初めて6割を下回ったが、これは育児休業を取らずに子育てしたいということではなく、前述のように特に女子学生において「今のところ子供は欲しくない」学生が増加していることが要因にあると見られる。
子育てに専念するために育児休業を取りたい学生が増加
「育児休業を取って子育てしたい」と回答した学生にその理由を聞いてみると、2016年卒では約半数を占めていた「子供が小さいうちはできるだけそばにいてあげたい」という回答が減少している。
一方で2016年卒時点では20.4%だった「育児期間中は育児に専念したい」という回答は増加傾向にあり、2025年卒では37.3%となっているほか、「育児休業を取るのは当然の権利だと思うから」もやや増加していることがわかる。【図17】
育児休業を取らなくても子育てできると思う学生は減少
「育児休業は取らないが夫婦で子育てはしたい」と回答した学生の理由を見てみると、調査開始以降常に最多となっていた「育児休業を取らなくても十分子育てに参加できると思う」は減少しており、2025年卒調査では初めて「育児休業後の職場への復帰に不安がある」が上回る結果となった。
また、「出世に影響するのではないかと思うから」や「収入が下がることを避けるため」という回答も増加している。【図18】
Z世代の育児休業に関する考え方を見ると、育児休業を取る理由として「子育てに専念したい」が増加していたり、育児休業を取らない理由として「休業を取らなくても子育てに参加できると思う」が減少していたりといった傾向が見られた。
この背景には、Z世代が子育てを「仕事と両立するのは難しいこと」と捉えていることがあるのではないだろうか。子育てに自信がなく、子供が欲しくないという学生がいるように、子育てに対するハードルを感じ、「小さいうちはそばにいたい」気持ちの学生よりも「専念したい」学生が増えるほど育児における休業の必要性を感じていると考えられる。
育児休業を取らない想定の学生は、必要性を感じないのではなく、さまざまな懸念から休業を取るのが難しいと考えていると推察される。
「育休を取る男性」に良い印象を持つ学生は増加傾向
自分以外の人が育児休業を取ることに対する意識を聞いたところ、子育てに専念するため育児休業を取得する男性に対しても女性に対しても「すごくかっこいい」と思う割合は、増加傾向にある。
特に、育児休業を取得する男性に対してすごくかっこいいと思う男子学生は2016年卒では30.3%だったが、2025年卒では56.1%と大幅な増加となった。【図19】
育児を希望するZ世代の学生は、男女ともに育児休業を希望している割合が高く、休業せずに子育てするという発想は少なくなってきているようだ。また、自身が育児休業の取得を希望しているかどうかに関わらず、育児休業を取得する人に対して「かっこいい」と思う学生の割合は男女ともに増加傾向にあり、「育児休業の取得」が子育てにおいて不可欠な認識であり、取得することに肯定的なイメージを持っていると推察される。
おわりに
今回は、マイナビの学生調査を中心に、Z世代が就職活動生の時点で仕事・家族・働き方についてどのように考えていたのかを見てきた。
Z世代は「仕事を最優先に置き、生きがいとする」というよりも、「自分の趣味なども大事にしながら、家族と安定して暮らしていく」ことを理想としている人が多いが、結婚や子供を持つことを希望しない人も増えている。また、家庭を持った場合については、結婚後は「共働き」、子供を持った場合は「育休も活用しながら男女ともに協力して育児する」ことを希望しており、現在推進されている「男性の育休取得」に対しても前向きで良い印象を持っているようである。
「ワークライフバランス」という言葉が一般的になって久しいが、Z世代はこのバランスを考えるというより、最初からそのバランス感覚を持って社会にでる世代と言えるかもしれない。
あくまで就職活動中のアンケートでの調査結果であり、仕事を始める中で考えが変わることも大いに考えられるが、Z世代はこのようなバランス感覚を持って就職活動を行い、働いていることを念頭に置いたコミュニケーションが必要になりそうだ。
キャリアリサーチLab研究員 沖本 麻佑