- 正社員の4割以上が「静かな退職※」をしていると回答。20代が最多で46.7%
- 約6割の人が静かな退職で得られたものがあると回答。7割以上が「今後も静かな退職を続けたい」
- 静かな退職を選んだきっかけを4タイプに分類。仕事・環境の不適合や処遇・評価に対する不満から「静かな退職」を選択している人も
- 企業の中途採用担当者の約4割は「静かな退職」に賛成、「人それぞれ」「キャリアアップを求めない働き方も考慮すべき」。反対派は周囲への影響や会社への有益性を懸念
株式会社マイナビは、全国の企業・個人を対象に実施した、「正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)」の結果を発表した。調査の詳細はページ末尾に記載している。
※「静かな退職」とは、やりがいやキャリアアップは求めずに、決められた仕事を淡々とこなすことを指す。近年のワークライフバランスを重視する動きが加速化したことによって、この働き方が増え、注目されている。
個人から見た「静かな退職」
「静かな退職」とは
「静かな退職」とは、やりがいやキャリアアップは求めずに、決められた仕事を淡々とこなすことを指す。2022年にTikTokでアメリカのキャリアコーチが提唱したことをきっかけに、この考え方がアメリカを中心にトレンドになっている。静かな退職が注目されている背景については以下のコラムで詳しく解説している。
「静かな退職」の実態
- 正社員の4割以上が「静かな退職」をしていると回答。20代が最多で46.7%
「静かな退職」をしている割合
20~50代の正社員に「静かな退職」をしているか聞いたところ、「静かな退職」をしていると回答した割合は44.5%と4割を超えた。【図1】
「静かな退職」をしている割合/正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)
年代別の「静かな退職」割合
年代別にみると、最も多かったのは20代で46.7%、次いで50代が45.6%、40代が44.3%だった。「静かな退職」をしている人はどの年代でも4割を超えており、幅広い年代に存在することがわかった。【図2】
【年代別】「静かな退職」をしている割合/正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)
今後の「静かな退職」
- 約6割の人が「静かな退職」で得られたものがあると回答
- 「今後も静かな退職を続けたい」割合は7割以上
「静かな退職」で得られたもの
「静かな退職」をしている人に、「静かな退職」で得られたものがあるか聞くと、57.4%が「得られたものがある」と回答した。具体的には、「休日や労働時間、自分の時間への満足感(23.0%)」が最多で、「仕事量に対する給与額への満足感(13.3%)」で続いた。【図3】
静かな退職で得られたもの/正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)
「静かな退職」を続けたい割合
次に、「静かな退職」をしている人に対して、「静かな退職」を今後も続けたいか聞いたところ、「働いている間はずっと静かな退職を続けたい(29.7%)」が最多となり、「できるだけ静かな退職を続けたい(22.7%)」、「どちらかといえば静かな退職を続けたい(18.0%)」と続いた。「静かな退職を続けたい」と考えている人の合計は70.4%で多数派となった。
年代別にみると、「静かな退職を続けたい」割合は40代が73.5%で最多、「静かな退職を続けたくない」は20代が最も高く35.4%であった。全年代で「静かな退職を続けたい」と考える人の割合は高いが、年代別では差があることもわかった。【図4】
「静かな退職」を続けたい割合/正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)
「静かな退職」のきっかけ
- 「静かな退職」を選んだきっかけを4タイプに分類
- 仕事・環境の不適合や処遇・評価に対する不満から「静かな退職」を選択している人も
「静かな退職」きっかけ4タイプ
「静かな退職」をするようになったきっかけを自由回答で聞き、回答をA~Dタイプの4つに分類した。
- Aは「不一致タイプ」で、仕事・環境の不適合による意欲低下がきっかけとなっている。
回答としては「今の職場にはやりがいがある仕事がない(50代)」などがあがった。
- Bは「評価不満タイプ」で、処遇・評価に対する不平不満がきっかけとなっている。
回答としては「自分で仕事を行い、面談時にアピールしても評価をされないから(20代)」などがあがった。
- Cは「損得重視タイプ」で、金銭的な損得やコストパフォーマンスを考えて静かな退職をしている。
回答としては「お金のために働いているのでそれに見合った仕事量はしている(30代)」などがあがった。
- Dは「無関心タイプ」で、もともとの価値観として変化・上昇を求めていない。
回答としては「キャリアアップすることに興味がないから(20代)」などがあがった。
C・Dのように、もともとの価値観やコスパ重視の考え方から「静かな退職」を選択しているタイプもあれば、A・Bのように、仕事環境や働く中で生まれた不満が要因となり「静かな退職」を選択している(した)タイプも存在することがわかった。【図5】
「静かな退職」のきっかけ/正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)
企業から見た「静かな退職」
- 企業の中途採用担当者の約4割は「静かな退職」に賛成
- 賛成意見は「人それぞれ」「キャリアアップを求めない働き方も考慮すべき」など
- 反対派は周囲への影響や会社への有益性を懸念
企業は「静かな退職」に賛成か反対か
企業の中途採用担当者に「静かな退職」について賛成か反対かを聞いたところ、「賛成」(賛成14.1%+どちらかと言えば賛成24.8%)が38.9%で、「反対」(反対14.6%+どちらかといえば反対17.5%)の32.1%を6.8pt上回った。(反対より)賛成が多かった業種は「IT・通信・インターネット」や「金融・保険、コンサルティング」、一方で(賛成より)反対が多かった業種は「不動産・建設・設備・住宅関連」や「流通・小売」であった。【図6】
企業は「静かな退職」に賛成か反対か/正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)
具体的な意見
賛成意見では、「人それぞれだと思うので、キャリアアップを求めない働き方も考慮すべき」、「そういった人材がいないとなりたたない業務もある」といった意見がみられた。反対意見では「他の従業員に伝播する」、「会社としては有益ではない」など、静かな退職をしている人の周囲への影響や会社への有益性を懸念する意見があがった。
個人の価値観を尊重し、「静かな退職」という働き方に理解を示す声はありつつも、業種や業務内容によっては企業側の賛否が分かれることもわかった。【図7】
賛成・反対の具体例/正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)
総評
今回の調査から、正社員の4割以上が「静かな退職」をしており、「静かな退職」は一般的になりつつあることが分かった。そのうちの約7割は「今後も静かな退職を続けたい」と回答しているため、今後も働き方を変えない人は一定数いることがうかがえる。「静かな退職」は“決められた仕事はこなしている”ことが特徴であり、企業もそういった働き方に少なからず理解を示してはいるものの、業種や業務内容によっては反対意見もみられた。
また、「静かな退職」のきっかけを分類した結果から、仕事や環境の不一致や評価・処遇への不満、仕事環境などが要因で、不本意ながら「静かな退職」を選択している人がいることも見えてきた。不本意な静かな退職者は不満を抱えながら働いている可能性が高いため、企業は少しでも不本意な静かな退職者を生み出さないような工夫や制度改革が求められるのではないだろうか。
価値観が多様化する昨今、企業は個人の多様な価値観を受け入れ、柔軟な働き方を提供し、向き合っていくことが重要だと考えられる。
キャリアリサーチラボ 研究員 朝比奈 あかり
調査概要
内容 |
正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績) |
調査期間 |
個人…2024年11月15日~18日 企業…2025年3月3日~6日 |
調査対象 |
<個人向け調査> 調査方法 インターネット調査 調査対象 20~59歳の正社員の男女
<企業向け調査> 調査方法 インターネット調査 調査対象 従業員数3名以上の企業に所属している全国の経営者・役員または会社員で、中途採用業務を担当している人のうち、前月採用活動を行った人、今後3カ月で採用活動を行う予定の人、直近3カ月に中途入社者がいた人 有効回答数 815件
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調査方法 |
外部パネルによるインターネット調査 |
有効回答数 |
<個人調査>有効回答数 3,000件 <企業調査>有効回答数 815件
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本データを用いた連載コラム