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グループディスカッション復活の軌跡と「おせっかいWEBグルディス」のススメ

 
 大学生・大学院生の就職活動について、2月~8月の毎月調査・レポートする学生就職モニター調査では、毎年7月に「あなたの周りで流行った就活用語」のランキングを発表している。そのランキングで、それまで3年連続ランクインしていたにもかかわらず、21年卒になって突然T0P10から姿を消した言葉がある。それが「グルディス」だ(「グループディスカッション」の略)。ところが、22年卒のランキングでは、見事7位にカムバックし、さらには、関連用語の「クラッシャー(※1)」を10位に引き連れてきて、番外には「地蔵(※2)」という新語まで登場した。まさに「グループディスカッションの復活」ともいえる現象である。
 
 このコラムでは、前年(21年卒)のコロナ禍の就職活動で、いったんは存在感を薄めた「グループディスカッション」が、22年卒の就職活動で、いかにして復活したかを見ていく。そしてコロナ禍2年目の「グループディスカッション」について考察し、問題点を明らかにし、その解決策について提案したい。
 
*文中の数字で調査名を表記しないものは「学生就職モニター調査」による

※1 グループディスカッションで、繰り返し議論を妨害する人。故意ではない場合も多い。その回の参加者全員が巻き添えになることも。
※2 インターンやグループディスカッションで一言も発さない(発することができなかった)こと。

就活用語ランキング

目次

コロナ禍1年目・21年卒の就職活動での「WEB面」と「グルディス」

コロナ禍が採用選考にもたらしたもの、その名は「WEB面」?

 再び21年卒の「あなたの周りで流行った就活用語」ランキングを振り返ってみると、そこにはこれまでまったくTOP10入りしたことがなかった言葉が5位にランクインしていた。それは「WEB面」である。この単に「面接」の「接」を一文字省略しただけの何のひねりもない単語がランクインしてしまうほど、21年卒の就職活動における「WEB面接」の存在は大きかった(※3)。
 21年卒の就活生のうちWEB面接(ライブ形式または録画形式)を経験したのは実に79.6%(※4)だった(2020年6月調査。分母はモニター学生全体)。また、実際に就活生が受けた面接のうちどのくらいがWEB面接だったかでは、ピーク時の2020年の5月はその月に受けたすべての面接のうち実に94.7%がWEB面接だった(分母はモニター学生がその月に受けた面接の数の総合計)。
 実は「WEB面接」そのものは純粋なコロナ禍の産物ではなく、新たな採用ツールとして何年か前から話題に上っていた。実際19年卒の調査で就活生の11.1%、20年卒では19.6%がWEB面接を経験している(※5)。しかしそこからほぼ1年で、ほとんどの面接がWEB面接になるような状況になったわけだから、コロナ禍の影響は間違いなく圧倒的だった。

※3 ちなみにこの「何のひねりもなさ」からか、あるいは当たり前になりすぎたせいか、「WEB面」は22年卒のTOP10からは消えてしまった。
※4 ライブ形式のWEB面接(78.9%)または録画形式のWEB面接(22.2%)のいずれかを経験した割合
※5 19年卒調査および20年卒調査のリリース時は、面接を受けたことがある学生を分母にした割合で発表(19年卒 11.5%、20年卒 20.2%)

WEB面接を受けたことがある割合
  

グループディスカッションのWEB化は困難?

 面接がスムーズにWEB面接になっていく一方、グループディスカッションのWEB化は、そううまくはいかなかった。そもそも「WEBグループディスカッション(略して「WEBGD(?)」)」なる言葉は、それまで存在しなかったと思われるのである。20年卒で就活生全体の67.9%(2019年5月調査)だったグループディスカッションの経験者は、21年卒では37.9%(2020年5月調査)に落ち込み、さらにWEBグループディスカッションの経験者となると就活生全体の8.2%にすぎなかった。どうやら選考する企業の側は、グループディスカッションのWEB化は困難だと考え、学生個別のWEB面接に切り替えたケースが多かったのではないかと思われる。
 そんな中、レアケースだったWEBグループディスカッションを経験した学生に、実際にやってみてどうだったか聞いたところ、「やりにくかった」もしくは「非常にやりにくかった」と回答した学生は77.2%に達した。参加してみて感じたことでも「発言するタイミングが難しい(59.7%)」「空気感がつかみづらい(49.8%)」「複数人が同時に話すと声が被ってしまう(47.1%)」といった否定的な声が、それぞれ半数近くの学生から挙がったのである。

22年卒での「グルディス」の華麗なる「復活」

WEB面接は9割の就活生が受ける就職活動の「主役」の座に

 そして翌年の22年卒の就職活動は、3月1日の広報活動開始が2回目の緊急事態宣言下(首都圏の一都三県)だったこともあり、面接のほとんどが最初からWEB面接となった。2021年3月の調査によれば、3月中に就活生が受けた採用面接のうち85.7%がWEB面接だった(21年卒の2020年3月は37.3%。分母はモニター学生がその月に受けた面接の数の総合計)。また同年6月の調査では、WEB面接を経験した就活生は90.3%(前年比10.7pt増。分母はモニター学生全体。※6)に達した。就職活動において「WEB面接」は「主役」といえるほど完全に定着したのである。

※6 ライブ形式のWEB面接(90.0%)または録画形式のWEB面接(29.0%)のどちらかを経験した割合

WEB面接が占める割合
  

グループディスカッションもWEB化で華麗なる復活を遂げる!

 一方、グループディスカッションはというと、経験した割合が56.5%(前年比18.6pt増、2021年5月調査)まで回復した。そしてWEBグループディスカッションを経験した割合は、なんと前年の5倍にあたる49.3%(前年比40.9pt増)に達したのである。グループディスカッション経験者が参加した平均2.9社のグループディスカッションのうち実に2.6社がWEBでの実施だった。グループディスカッションの復活のカギはWEB化にあったのだ。しかし、なぜ前年は進まなかったグループディスカッションのWEB化が22年卒では進んだのだろうか。

グループディスカッションを経験した割合
WEBグループディスカッションを経験した割合
  

ひっそりと、かつ、しっかり増加していたWEBグループ面接

 実はWEBグループディスカッションと同様に22年卒になってから増加したWEB選考の形式がある。それは「WEBグループ面接」だ。21年卒のWEBグループ面接経験者は就活生全体の25.2%だったのだが、これが22年卒では55.2%にまで増加し(2021年6月調査)、就活生ひとり平均で1.7社のWEBグループ面接を経験していた(経験しなかった人を0社として集計)。対面のグループ面接は平均0.3社だったので、グループ面接のほとんどがWEBだったことになる。つまり、21年卒から22年卒の採用活動においては「複数人の学生が参加する選考のWEB化」が急速に進んだのである。

WEBグループ面接を経験した割合
  

21年卒の選考活動から22年卒の選考活動の間にあったもの

やるしかないからやった(?)「インターンシップ」のWEB化

 ではこの「複数人の学生が参加する選考」のWEB化は何がきっかけで起こったのだろうか。筆者はインターンシップのWEB化(オンラインインターンシップ化)が契機になったのでは、と考える。21年卒の選考(2020年6月1日選考活動開始)から22年卒の選考(2021年6月1日選考活動開始)の間には、22年卒対象のインターンシップの実施があった。グループディスカッションもグループ面接も「選考すること」ができればよいなら、「複数の学生の参加」をあきらめて「学生個別のWEB面接」で代替できる。しかしインターンシップは、複数の学生が共同で作業したり、一緒に職業体験することに意義があったりするので、「WEBで学生個別」にできることには限界がある。よってなんとかして「複数の学生が参加できる形で」WEB化する必要があったのだと推察される。また、コロナ禍の企業活動において定番化した「WEB会議」の活用を通して、採用担当の方々の間で「複数人が参加する状況におけるWEBツールに対するリテラシー」が向上したことも、インターンシップのWEB化を後押ししたと考えられる。
 企業調査を見てみると、22年卒対象のインターンシップ(予定も含めて)において一部でもWEBを活用している企業(全体から「すべて対面」を除いた割合)は67.0%(前年比41.6pt増、22年卒企業採用予定調査)と急増し、「すべてWEB」という企業も24.4%(前年比18.7pt増)に増加していた。また、学生調査でも、22年卒のインターンシップに参加したことがある学生の平均参加社数は8.0社で、そのうちオンラインで参加した社数の平均は6.6社と、8割以上がオンラインだった(2021年2月調査)。

企業のインターンシップにおけるWEB活用の度合い
  

オンライン(WEB)でインターンシップに参加して、学生が思ったこと

 では、実際にオンラインでインターンシップに参加した就活生はどう思ったのだろうか。22年卒対象のモニター調査(2021年2月調査)によると、一番多かったのは「交通費や移動時間の節約になるのは助かる(62.2%)」だが、その次に多かったのは「発言するタイミングが難しい(49.0%)」で、WEBグループディスカッションの感想に重なる結果となった。そして4番目に「企業や社員の雰囲気を感じ取りにくい(45.3%)」が入ってくるに至っては、果たして学生はインターンシップ参加のための目的を達し得たのだろうかと心配になるほどである。

オンラインでインターンシップに参加して思ったこと

普通に志望度が上がるんだったら、オンラインインターンシップでいいじゃない

 ところが「インターンシップの参加がその企業の志望度に影響したか」について見ると、オンラインのインターンシップに参加して「志望度が上がった」学生の割合は66.1%と高く、対面のインターンシップ(64.4%)と比べて差がなかった。よって、企業側も「オンラインインターンシップでも、わりと大丈夫かも」と思ったのではないだろうか。そして、これが「学生が複数人参加する選考のWEB化」へのゴーサインになったのでは推察する。

インターンシップは対面かオンラインか×志望度変化
  

そして「グルディス」もまた、まがりくねってWEB化の道をたどる

「やりにくい」ものはやっぱり「やりにくい」のだ

 そんなこんなでグループディスカッションのWEB化への道は開かれた。ただし、WEBグループディスカッションに参加した22年卒の就活生のうち「やりにくかった」もしくは「非常にやりにくかった」と回答した学生は60.3%(前年比16.9pt減)と、前年より減ったものの6割を超えている(2021年5月調査)。そして、参加してみて感じたことも「発言するタイミングが難しい(59.9%、前年比0.2pt増)」「複数人が同時に話すと声が被ってしまう(51.1%、前年比4.0pt増)」「空気感がつかみづらい(46.2%、前年比3.6pt減)」と相変わらず否定的だ。ただし、何回か経験しているうちに慣れが生じたのか、全否定ともいえる「グループディスカッションは対面でやるべき(11.2%、前年比25.0pt減)」は大きく減った。とはいえ、ここまで学生のウケがよくない状況では企業側としては何らかの工夫をする必要があるのではないだろうか(もちろん「そんな状況でもうまくこなせる学生しか欲しくない」というのもありだとは思うが)。

WEBグループディスカッションに参加して感じたこと
  

意外にも(?)感想が肯定的なWEBグループ面接

 ところで、22年卒で増えたもうひとつのWEBグループ選考である「WEBグループ面接」だが、こちらの「参加して感じたこと」を見ると、「他の学生が答えている間に自分の答えを考えられる(37.9%)」や「他の学生の話が聞けたのがよかった(32.4%)」といった「肯定的な感想」の割合が意外と高いのだ(2021年6月調査)。もっとも高い「自分と他の学生を比較してしまう」は、WEBだろうが対面だろうが「グループ面接」なら同じことなので、ここでは考えないことにする。すると「WEBグループ面接」の方はそれなりにWEB化のメリットが出ているのでは、と思うのだがどうだろう。よって、このようなWEBグループ面接のノウハウを、WEBグループディスカッションの改善に応用できないだろうか。

WEBグループ面接に参加して感じたこと
  

そこで、おせっかい「WEBグルディス」のススメ

「クラッシャー」のいない「グルディス」は、よい「グルディス」

 ここで思い出していただきたい。22年卒の就活用語ランキングで10位にランクインした言葉「クラッシャー(※1)」のことを。この言葉がランクインするということは、22年卒で急増したWEBグループディスカッションでは対面のそれより「クラッシャー」の出現率が高く、よって就活用語としてランクインするほど印象に残ったのかもしれないと考える。もしかしたら自分自身が「クラッシャー」になってしまったと感じることも時々あったのではないか。よって、WEBグループディスカッションにおいては、この「クラッシャー」の出現率を減らし、さらにできるだけ手も足も出ない「地蔵(※2)」で終わることも防げるよう、企業側が「おせっかいを焼いて」うまく仕切るのが肝要なのだ。その結果、学生が「やりやすく」なり、かつ企業側も選考としてより「有用なもの」にできるのではないだろうか。学生が感じたことにおいて、WEBグループディスカッションよりWEBグループ面接のほうが肯定的なのは、「企業側の仕切り」がよいからだと考えるのである。

具体的な「おせっかい」としての「ルール」の提案

 そこで、具体的にどう「おせっかいを焼くか」であるが、まずは「ルール」の提案という形はいかがだろう。WEBグループディスカッションのグループに参加する企業の担当者は、議論のテーマを提示したらあとは評価者としてオブザーバーに徹するのではなく、最初に議論をスムーズに進めるためのルールを提案し、参加学生の同意を得るのである。

WEBグループディスカッションのルールの例

 たとえば以下のようなルールが考えられる。なお、これらは互いに矛盾するものもあるので、ルールとしての採用は選択的に行うものとする。

  1. 個々の発言の終了時にはマイクオフなどで必ず発言が終わったこと明示する
  2. 前の人の発言が終わってから次の人が発言する
  3. 発言の前には「手を挙げる」機能で意思表示する
  4. 前の発言者が次の発言者を指名する
  5. 次の発言者は挙手している人の中から指名する
    (または、挙手していない人も指名できる)
  6. 指名された際に何も思い浮かばない場合は、その旨を述べて次の発言者を指名できる
    (順番をパスできる)
  7. 発言した内容は、全員が閲覧・編集できるWEB上の「ホワイトボード」に記入する
  8. 他の学生の意見に触れる場合は、WEB上の「ホワイトボード」を参照する
  9. 議論の最初に司会者を決め、さらに司会者の役割を決める
    (次に誰が発言するか決める、発言が長すぎると感じた場合にいったん発言を止めるよう示唆する、など)

 もしグループディスカッションの評価項目として、議論の中でルールや役割を自分たちで決められるか見たいのであれば、最初に企業側の担当者が参加学生に対しルールや役割決めの話し合いを行うよう促し、例として、上記のようないくつかのルールを提示するのもよいだろう。

グルディスの「レフェリー」として「間に入って分ける」

 さらに必要だと感じた場合は、企業の担当者が、いったん学生の議論を止めたり、個別の参加者に対して発言の停止を求めたりする、というのも考えられる。ちょうどボクシングなどの格闘技で両者の間に入って分ける「レフェリー」のような役割を担うわけである。例えば、議論が白熱しすぎて収拾がつかなくなったり、ルールを守らない(守れない)学生により議論の場が保てなくなったりした場合、挙手機能などではっきりした意思表示をした上で、参加者のマイクを一斉にオフにするなどして、企業側が介入する。そして、守るべきルールの再提示やどこから議論を再スタートするかを示し、場合によってはルールを守らない(守れない)参加学生に一時発言を見合わせるよう要請するなどの交通整理を行う。企業側が複数人で参加する場合は、企業担当者間でのチャットなどで意思統一を行ってから連携して介入するとよりスムーズにいくだろう。
 ただし、この「レフェリー」を実際にやるには必要なことが2つある。1つ目は、参加する学生に対して、企業側が議論に介入することを具体的に説明し、参加学生全員に了承を得るようにすることだ。これを怠って、いきなり間に入られたら「不当な介入だ」と考える学生もいるかもしれない。よって、ここは最初にできるだけていねいに説明し、了承を得ておきたい。
 2つ目は、介入に必要な機能を持つWEBツールを導入しておくことだ。企業側によるマイクオフ、企業担当者間のチャットなど、有料のツールを含めて機能を検討し、必要な準備をしておきたい。

WEBグループ面接形式のWEBグループディスカッションという手も

 グループディスカッションの評価の目的が「個々の学生が他者の意見をしっかり聞けるか」「議論を踏まえてものを考えることができるか」「しっかりと自分の考えを述べることができるか」などを見ることにあり、議論における役割分担やルール順守、臨機応変な対応などには重きを置かない場合、議論の進行そのものを企業側が仕切るということも考えられる。つまり、ちょうどWEBグループ面接のように、参加学生のうち誰が発言するかを企業側がすべてコントロールするのである。最初に議論のテーマを提示したら、まずは学生一人ずつに自分の考えを述べてもらい、そのあとは企業側が指名した学生が、他の学生の考えに対する自分自身の考えを述べていくという進行である。「手を挙げる」機能を使って意思表示した学生を指名する形でも、順番に当てていく形でもよいだろう。この場合、当てられた学生はその回の発言を辞退することが可能(順番をパスできる)としておく。この「WEBグループ面接形式」を用いる場合も、最初に企業の担当者が参加する学生に対し、どのように進行するのかを具体的に説明し、理解してもらっておく必要があるだろう。

最後にあえて「蒸し返す」ような話を

「やりにくいからこそのグループディスカッション」という考え方について

 ここまで企業側の介入によるWEBグループディスカッションのスムーズな進行とその有用性について述べてきたが、「そもそも学生がやりにくい中でどのように対処するのかが見たくてグループディスカッションを実施している」という考えから、「どのように空気を読むか」や「どのくらい強引に意見を述べられるか」を見たいがために学生に自由にやらせるという方針もあるだろう。
 しかし、WEBを介した場合、対面よりはるかに「空気を読む」のは難しい。文字通りWEB上には「空気」がないのだから。それこそ、WEBでのディベートが主体のゼミに所属していたというような特殊事情でもない限り、WEBでの議論は慣れないものだ。よって、初めてWEBグループディスカッションに参加する学生の戸惑いは対面より大きく、WEBグループディスカッションが2回目、3回目の学生が有利になる可能性は高いだろう。
 さらには「クラッシャー」の問題がある。空気を読まずに(読めずに)強引に議論に割って入る「クラッシャー」は、先に述べた通り「対面」より「WEB」のほうが発生しやすいだろう。その際、学生の間だけで「空気」を再構築し「クラッシャー」を無力化するのは「WEB」の場合相当難しいと思われる。しかも「クラッシャー」の登場は、その場に参加する学生がすべて巻き添えになる(=評価を下げる)危険をはらんでいるのだ。
 そういったことを踏まえて、企業側の「おせっかい」により「WEB上で議論する環境を整える」ことのメリットを、今一度検討していただければと願うものである。

キャリアリサーチLab研究員 石田 力