パーパスとは?企業理念との違いやパーパス経営が注目される理由を解説

キャリアリサーチLab編集部
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近年、「パーパス」という言葉を目にする機会が増えている。企業の経営方針や採用活動、人材育成の文脈で語られることも多く、「パーパス経営」を掲げる企業も少なくない。一方で、「企業理念とは何が違うのか」「ミッションやビジョンとの関係がよく分からない」という人もいるだろう。

パーパスは単なる企業のスローガンではなく、企業や個人が「なぜ存在するのか」を問い直す考え方である。本コラムでは、パーパスの意味や注目される背景、一緒に用いられる用語の違いなどについて解説する。

パーパスとは

パーパスの意味

パーパス(Purpose)は本来、「目的」を意味する英語である。ビジネスの文脈では一般的に企業や組織の「存在意義」や「社会における存在理由」を指す言葉として用いられている。

企業活動では、これまで利益の創出や事業の成長が重視されてきたが、近年は、企業が社会の中でどのような価値を提供し、どのような課題の解決に貢献するのかが問われるようになっている。その中で、自社(自組織)の存在意義を明確に示す概念としてパーパスが注目されている。

また、パーパスは企業だけでなく個人にも用いられる。個人にとってのパーパスは、「自分はなぜ働くのか」「社会にどのような価値を生み出したいのか」といった問いにつながる考え方である。

パーパスの考え方

パーパスの特徴は、「何をするか(What)」や「どのように行うか(How)」ではなく、「なぜ存在するのか(Why)」に焦点を当てる点にある。

たとえば、同じ製品やサービスを提供する企業であっても、その背景にある存在意義は異なる。社会課題の解決を目指す企業もあれば、人々の生活の利便性向上を目指す企業もある。パーパスは、その企業ならではの存在理由を示すものであり、経営判断や事業活動の基盤となる考え方である。

また、パーパスは企業が困難な意思決定を迫られた際の判断軸にもなり得る。短期的な利益だけでなく、自社が社会に対して果たすべき役割という視点から意思決定を行うことで、一貫性のある経営につながる。そのため近年は、経営戦略や人材戦略を支える重要な概念として位置付けられている。

パーパスが注目される背景

多様なステークホルダーへの責任

これまで企業経営では、株主利益の最大化が重要な目標の一つとされてきた。しかし近年は、顧客や従業員、取引先、地域社会、投資家など、多様なステークホルダー(利害関係者)との関係を重視する考え方が広がっている。

また、気候変動や人口減少、人権問題といった社会課題への対応も企業に求められるようになった。こうした環境の変化によって、企業には単に利益を生み出すだけでなく、社会にどのような価値を提供する存在なのかを示すことが期待されている。

パーパスは、その企業が社会の中で果たす役割や存在意義を明確にするものである。ステークホルダーとの信頼関係を築き、長期的な企業価値向上を目指す上で、重要な考え方として注目されている。

人的資本経営への関心の高まり

近年、人材を単なるコストではなく、企業価値を生み出す資本として捉える「人的資本経営」が注目されている。経済産業省は、人的資本経営を「人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。」と説明している。

その中で重要視されているのが、従業員が組織の目指す方向性に共感し、自らの仕事に意義を感じられる環境づくりである。どれほど優れた制度が整っていても、組織の価値観や目的が共有されていなければ高いエンゲージメントにはつながりにくい。

パーパスは、企業が何を目指し、なぜ存在するのかを明確にすることで、従業員の共感や主体的な行動を促す役割を果たす。そのため、人的資本経営を推進する上で重要な要素の一つとして考えられている。

働く人の価値観の多様化

働き方やキャリアに対する価値観は大きく変化している。これまでの日本では、終身雇用や年功序列を前提としたキャリア観が主体であったが、近年は、自分らしい働き方や仕事の意義を重視する人が増えており、企業がどのような社会的価値を生み出そうとしているのかに関心が集まっている。給与や待遇だけでなく、企業の理念や社会的な役割への共感を重視して就職先や転職先を選ぶ人も少なくない。

こうした価値観の変化を受け、働く意味や存在意義を示すことが求められるようになっているのだ。

企業理念・ミッション・ビジョン・バリューとの違い

企業理念との違い

企業理念とは、「企業が大切にしている価値観や考え方」のことである。パーパスと企業理念は重なる部分もあるが、企業によって位置付けが異なる。

企業理念は、企業が大切にする価値観や信念、経営上の基本的な考え方を示すものである。一方、パーパスは「なぜその企業が存在するのか」という存在意義に焦点を当てた概念である。両者は対立するものではなく、企業理念が価値観を示し、パーパスが存在意義を示すことで相互に補完し合う関係にある。

ミッションとの違い

ミッションは、「企業が果たすべき役割や使命」のことである。パーパスと混同されやすいが、焦点を当てる対象が異なる。パーパスは「なぜ存在するのか」を示す概念であり、企業の根源的な存在意義を表す。一方、ミッションは「何を成し遂げるのか」を示す使命や役割である。つまり、パーパスが企業活動の出発点であるのに対し、ミッションはパーパスを実現するための具体的な任務といえる。

たとえば、「人々の可能性を広げる」という存在意義がパーパスだとすれば、「教育機会を提供する」「新たな学習サービスを創出する」といった具体的な役割がミッションに当たる。パーパスが企業の存在理由を示し、ミッションがその存在理由を実現するための活動内容を示すという関係で整理すると理解しやすいだろう。

ビジョンとの違い

ビジョンは、「企業が実現したい将来の姿」のことである。パーパスとの違いは、「現在」と「未来」のどちらに重きを置くかにある。パーパスは、企業が現在から将来にわたって変わらず持ち続ける根本的な考え方である一方、ビジョンは、企業が将来的に実現したい姿や目標を表す。

ビジョンはパーパス(存在理由)を基に目指す未来の姿である。パーパスを土台としてビジョンを定めることで、一貫した方向性を示すことができる。

バリューとの違い

バリューは、「社員に求める行動基準や判断基準」のことである。パーパスが「なぜ存在するのか」を示すのに対し、バリューは「どのように行動するのか」を示す。

たとえば、「社会に新たな価値を提供する」というパーパスを掲げる企業が、「挑戦を恐れない」「顧客視点を重視する」「誠実に行動する」といった価値観を定める場合、それらがバリューに当たる。

企業によっては、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を体系的に整理しているケースも多い。その中でパーパスは最上位の概念として位置付けられ、ミッションやビジョン、バリューがパーパスの実現を支える役割を担っている。

パーパス(マイパーパス)と個人のキャリア形成

働く意味を考える手掛かり

パーパスは企業経営だけでなく、個人のキャリア形成においても重要な概念である。近年は働き方の選択肢が増え、自らキャリアを主体的に築くことが求められるようになっている。その中で、「何のために働くのか」「自分は社会にどのような価値を提供したいのか」といった問いに向き合う機会も増えている。

もちろん、仕事をする目的は人によって異なる。収入の確保や生活の安定を重視する人もいれば、自己成長や社会貢献にやりがいを感じる人もいる。重要なのは、自分が仕事を通じて実現したいことや大切にしたい価値観を理解することである。

自分自身のパーパスを考えることは、価値観や強み、興味関心を整理することにもつながる。働く意味が明確になることで、日々の業務にも納得感を持ちやすくなり、困難な状況に直面した際の支えにもなる。

キャリアの判断軸として活用できる

パーパスは、自分自身のキャリア形成における意思決定の判断軸としても活用できる。たとえば、転職や異動、新たな仕事への挑戦を検討する際、給与や待遇だけでなく、「自分が実現したいことと一致しているか」という視点を持つことで、より納得感のある選択につながる可能性がある。

また、自身の価値観やパーパスと、企業が掲げるパーパスの方向性が一致している場合、仕事への共感や満足度が高くなる。反対に、価値観に大きな隔たりがある場合は、働き続ける中で違和感や、ストレスを感じることも考えられる。

働き方やキャリアが多様化する時代において、自分自身のパーパスを意識することは、長期的なキャリア形成を考える上で有効な手掛かりとなるだろう。

パーパスを企業・組織に浸透させるためのポイント

パーパスを分かりやすく言語化する

パーパスを策定しても、その内容が抽象的で理解しにくければ組織には浸透しない。従業員が自分事として捉えられるよう、分かりやすく具体的な言葉で表現することが重要である。また、社内外に向けて一貫して発信することで、組織全体で共通の認識を持ちやすくなる。

経営層や管理職が体現する

パーパスは掲げるだけでは意味を持たない。経営層や管理職が日々の言動や意思決定を通じて体現することで、初めて組織に浸透していく。トップ自らがパーパスに基づいた行動を示すことで、従業員もその重要性を理解しやすくなる。

人事制度や日常業務と結び付ける

パーパスを組織文化として根付かせるためには、人事制度や評価制度、採用活動などと連動させることが重要である。たとえば、求める人物像や評価基準にパーパスの考え方を反映することで、日常的に意識される機会が増える。

また、日々の業務やチームの目標設定においても、「この仕事がパーパスとどのようにつながっているのか」を共有することで、従業員が自身の役割を理解しやすくなる。制度と実践の両面から取り組むことが、浸透の鍵となる。

まとめ

パーパスとは、企業や個人が「なぜ存在するのか」という根源的な問いに向き合うための概念である。近年は、ステークホルダーの存在や人的資本経営への関心の高まり、働く人の価値観の変化などを背景に、その重要性が増している。

また、パーパスは企業理念やミッション、ビジョン、バリューと関連しながらも、それぞれ異なる役割を持つ。企業にとっては経営や組織づくりの軸となり、個人にとっては働く意味やキャリアの方向性を考える手がかりとなる。

社会や働き方が変化し続ける中で、企業と個人の双方にとって、パーパスへの理解は今後ますます重要になっていくだろう。