AIにアルバイトの相談をする魅力
まず、仕事上の相談事を解決したいとき、「AIの方が良い」「どちらかと言えばAIの方が良い」とした人の自由回答を深掘りする。
ブレない感
AIに相談する良さとして特徴的だった一つが「ブレない感」。これは、主観を交えることなく中立的な立場で、質・量ともに安定した情報を提供してくれる性質をあらわしている。
- 何事もフラットに受け止めてくれて感情論抜きの具体的アドバイスをくれるので実践しやすい(女性/29歳/AIの方が良い)
- (ヒトの場合)人間関係の好き嫌いで回答が変わったり、いらない情報をインプットされたりすると思うので中立の立場での回答や、忖度のない回答を得られる為。(男性/66歳/AIの方が良い)
- 感情に囚われずに、客観的かつ建設的な意見を提示してくれると思ったからです。(男性/33歳/どちらかと言えばAIの方が良い)
- AIであればどんな時でもわかりやすく教えてくれるが、先輩などはその日の気分によって教え方や態度が変わると思うから(男性/20歳/どちらかと言えばAIの方が良い)
職場に複数の先輩や上司がいる場合、日によって教わる人や内容が変わることも起こり得る。中には性格的に合わなかったり、教わる内容が分かりにくかったりする人もいるかもしれない。それを菅賀れば、人との利害が絡まず、多面的・客観的なデータを提示してくれるところにAIへの相談の魅力を感じることもあるだろう。
裏切らない感
「裏切らない感」というのもAIを信頼する理由の一つだろう。これは、自分に対して常に肯定的に受容してくれることを意味する。
- 人に相談するのはその人にも迷惑になるかもしれないし、噂はすぐに広まるから。AIは迅速に良い方法をだしてくれる(女性/18歳/AIの方が良い)
- 絶対に本人にばれずに何でも相談でき、後から噂されたり関係がこじれたりといった心配がなく、落ち着いて自分の考えを整理することができるから。(男性/21歳/AIの方が良い)
- 他の従業員に内容をバラされる心配がないし、遠慮なく色々なことを話すことができそうだからです。(女性/41歳/どちらかと言えばAIの方が良い)
- AIなら相手のことを気にせずに、気兼ねなく相談することができるから。また、寄り添った回答をしてくれると思うから。(男性/19歳/どちらかと言えばAIの方が良い)
AIへの相談内容の最上位だった「職場の人との付き合い方」のように、人間関係が絡むような相談の時は特に、普段一緒に仕事をしたり職場に居合わせたりする人に相談しにくく、拡散のリスクも捨てきれない。そのような場面で、いつも自分の味方になってくれて、秘密を守ってくれるところもまた、ヒトとは異なるAIの特性であろう。
ざっくばらん感
相談のしやすさの観点では「ざっくらばらん感」もメリットとなり得る。これは、相手にうかがいを立てることなく自分の裁量で情報を得られることを表現している。
- 気兼ねを全くせずに思う存分言いたいことをぶちまけられる、そして本当に合理的で偏りのない返答が期待できる(男性/45歳/AIの方が良い)
- (ヒトの場合)しょーもない相談してきたと思われるから。自分で考えろと言われるのが怖いから(女性/34歳/AIの方が良い)
- 気兼ねなく24時間いつでも聞ける、対人相手だと時とタイミングを見計らわなきゃいけない。(男性/36歳/AIの方が良い)
- 細かく質問する事が出来る。自分が理解出来るまで説明を分かりやすくしてくれる。時間に縛られない。気分で判断されない。(男性/37歳/どちらかと言えばAIの方が良い)
職場に入ったばかりの場面や新たな業務に慣れていく過程では、どうしても「聞かないとわからないこと」が出てくる。時間的制限もなければ、相手に気を遣う必要もない、そんな情報へのアクセスのしやすさは、アルバイトの仕事の文脈に限らず広く相談相手としてのAIを考えた時のメリットと言えるだろう。
ヒトにアルバイトの仕事を相談する魅力
次に、仕事上の相談事を解決したいとき、「先輩・上司の方が良い」「どちらかと言えば先輩・上司の方が良い」とした人の自由回答を分析する。
前置きいらず感
ヒトへの相談の特徴の一つとして浮かび上がったのが「前置きいらず感」。これは、タスク・文化・慣習といった職場の文脈を一から説明せずとも相談ができることを意味する。
- 仕事上の問題なので、内容やニュアンスでAIには伝わりにくいことがありそうなので内容がわかっている上司などに相談したい(女性/46歳/職場の先輩・上司の方が良い)
- 実際の現場にいる人が一番分かってるから。具体的に説明しなくても話早いから。(女性/32歳/職場の先輩・上司の方が良い)
- 一般的な事柄はAIでも良いが、職場の些細な事柄や案件は職場をよく分かる人の方が良いと思うから。(女性/63歳/どちらかと言えば職場の先輩・上司の方が良い)
- AIは一般論を中心に答えてくれると思うが、職場や接する人ごとに違った正解がありそのように画一的に解決できないことも多いと思われるため。結局はそこにいる人同士で解決したり落とし所を作るしかないため(女性/28歳/どちらかと言えば職場の先輩・上司の方が良い)
職場の人同士の関係性が構築されているような状況では、相談者の性格やコミュニケーション時の感情を被相談者が汲み取ってくれることも期待できるだろう。職場の前提条件を共有していることで対話を円滑に運ぶことができる点に魅力を感じる人はヒト派の中に多く見られた。
解決しそう感
特徴としては他にも「解決しそう感」に魅力を感じている人が多かった。これは、職場特有の課題に対して経験則に基づいた具体的解決案を提示してもらえることへの期待感をあらわしている。
- AIはいろいろなデータからアドバイスをしてくれると思うが、たまに間違えた回答をするし、現場の経験者のアドバイスが一番的確だと思うから(女性/42歳/職場の先輩・上司の方が良い)
- AIは自分の事を肯定する発言が多い。上司だと、日頃の生活を見た上で、自分に必要なことを言ってくれそう(女性/20歳/職場の先輩・上司の方が良い)
- まだAIは間違える部分も多々あり、その分その仕事をやってる期間が長い先輩・上司に聞いたほうがAIよりは間違いが少ないと思ったから(男性/16歳/職場の先輩・上司の方が良い)
- やはり実際に同じ場所でお仕事をしているかたに相談するのが一番臨機応変な対応をアドバイスしてくれそうだから(女性/29歳/どちらかと言えば職場の先輩・上司の方が良い)
相談内容が職場特有のタスクに関することであれば尚更、その仕事に精通した先輩・上司が自らの経験に基づいて行うアドバイスが有効であろう。近くに先輩・上司がいるような環境であれば、仕事でつまずいたその瞬間に相談し、解決することも見込める。
問題解決に直結するベストアンサーにたどり着ける確率でいうと、いくつかの一般的な解決案を示してくれるAIよりも、経験値が豊富なヒトの方が高いと考えている人は少なくなさそうだ。
ほっこり感
別の視点では「ほっこり感」も特徴としてうかがえた。これは、ヒト同士のコミュニケーションによって人の温かみや交流の楽しみ、仲間意識を感じられることを表現している。
- 具体的な仕事の疑問や解決法は現場の上司に聞いた方が回答も早いし、人間関係を深めるきっかけにもなると思うから(男性/71歳/職場の先輩・上司の方が良い)
- 生身の人間の方が温かみがある回答をしてくれそうだから。(女性/36歳/どちらかと言えば職場の先輩・上司の方が良い)
- 人間の方が気持ちの面では信用ができるような気がするから(男性/25歳/どちらかと言えば職場の先輩・上司の方が良い)
- 人とのコミュニケーションを大事に思っているし、相手の経験の確認も
出来る出来る。AIは的確な答えを出してくれるかもしれないが、機械的で、不器用なりに一所懸命考えて答えてくれる人間の温かみを感じられない。(女性/43歳/どちらかと言えば職場の先輩・上司の方が良い)
コミュニケーションを通じて人間同士の関係性や職場の活発な雰囲気が育まれることもある。また、目の前の仕事に関する相談から、思わぬアドバイスをもらったり性格・人柄を知るきっかけになったりと発展することもあり得る。対話による感情的やりとりを重視する考え方は、特にミドルシニア・シニア層のヒト派に見られた特徴だった。
AIかヒトかどちらとも言えない
最後に、仕事上の相談事を解決したいとき、AIが良いか、先輩・上司が良いかは「どちらとも言えない」とした人の自由回答を見ていく。
- 上司には言いたくないことをAIで聞けるかもしれないが的確な回答が得られるとは思えない(男性/53歳/どちらとも言えない)
- 先輩や上司には素直な気持ちが言えず、伝わらない事があるかもしれないが、AIは遠慮なく相談できそう。しかし適切な返答がもらえるのか解決出来るのか不明。(女性/58歳/どちらとも言えない)
- 人であれば状況を詳しくわかってるが何を思われるかわからない。AIは全て説明しなくてはいけないが嫌われる可能性はないから(女性/32歳/どちらとも言えない)
- AIにはハルシネーションがあるし、上司や同僚などだとその人の意見の偏りがあるからどっちもどっちだと思う(女性/29歳/どちらとも言えない)
回答によくあらわれていたのが「どっちもどっち」という考え方だ。AIは一般論的な情報で、ヒトのように文脈に沿った個別具体的な情報を得ることが難しいという意見が多く見られた。
また、ヒトでは経験則に基づいた主観的・感情的な相談対応になる恐れがある一方、AIは客観的ではあるもののリソースや根拠の特定が難しいといった側面もある。それぞれの良し悪しを理解しながら、状況に応じて相談先を変えるという意見も見られた。
両利きの相談
これまで見てきたように、アルバイトの仕事に関してAIへの相談、ヒトへの相談はそれぞれにメリットがある。人間関係や仕事全般に関わる一般知識的なことについて言えば、AIへの相談は実用的だろう。そうすることで、効率的に必要なスキルを習得し、働くストレスが和らぐこともあるかもしれない。
対して、現場のタスクやコツ、仕事に対するマインドのような内容は経験豊富なヒトに相談するメリットが大きいように思う。具体的な解決策はもちろん、今の自分にはない視点を得られることがあるだろうし、対話を重ねることで関係性が深まり仕事がしやすい環境が育まれる可能性だってある。
AIとヒト、それぞれにメリットや得意分野があることを踏まえれば、双方の良し悪しを十分理解し、相談したい内容や状況に応じてAIとヒトの両方に相談することで、アルバイトの仕事における活躍の可能性はもっと広がると思う。
相談相手としてのAIの台頭は何を意味するのか?
求められるのは「寄り添い」
相談相手としてのAI・ヒトそれぞれのメリットに関する分析からは、もう一つ重要な示唆が得られた。それは、AIとヒトに共通して求められている要素として「寄り添い」があるということだ。
ヒトへの相談が良いと考える前提には、実務や状況を把握し親身に応じてくれるような“見てくれている人”の存在がうかがえる。逆に、AI派の意見からはスキルや人間性の部分で信頼できない先輩・上司の存在が透けて見え、だからこそ肯定的に受容してくれるAIに頼ることも考えられる。
雇う側・教える側に欠かせない視点
AIの台頭によって、今後アルバイトの仕事を教える側やマネジメントする側に求められるのは「人の感情に寄り添う」ことなのかもしれない。
非正規雇用のような有期雇用で人材の入れ替わりが起こりやすい環境においては、アルバイトで働く多くの人が先輩となり教える立場に回ることがあるだろう。メンバーを指示するバイトリーダーや、職場を管理する正社員のマネージャーのような人は尚更、周囲の相談に対応する機会は増える。
何かを教えたり相談に乗ったりする場面で、相手の立場で物事を考え、感情に寄り添いながら、一緒に解決策を考える。そのような姿勢が、技術が発展する今の時代のマネジメントに一層求められている要素であると考える。 相談内容を個別に落とし込めるかどうかで受け手の感情は変わるだろうし、それを実現するためには日頃から人を観察することや個々に向き合うことが重要になる。
AIの能力は加速度的に進化し、この先さらに人間が担う仕事の性質は変わることが予想される。その中でヒトに求められるのは、正規雇用と非正規雇用で重なる要素があると思う。それは、AIのさまざまある機能を見極めて実務レベルに落とし込んで活用しようとする姿勢であり、ヒトならではの受容・共感を軸にしたコミュニケーションではないだろうか。
キャリアリサーチLab研究員 宮本 祥太