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働く世代に知ってほしい ウィズコロナ時代のメンタルヘルスケア(後編)

こんにちは、株式会社エリクシア代表取締役の上村紀夫と申します。私は産業医・経営コンサルタント・経営者という3つの役割で、日々組織の問題解決に取り組んでいます。

前回に引き続き、産業医という立場からコロナ禍での職場・生活におけるメンタルヘルスというテーマでお話します。前編では、ストレスとは何か、コロナ禍でどう違うのかといったストレスの原因が中心でしたが、今回の記事では、コロナ禍の今、ストレスから自分を守るためにはどうすれば良いかという対処法について具体的に触れていきます。

ぜひ、やってみたいと思うところから積極的に取り入れていただき、ウィズコロナ時代を健康に乗り切りましょう。

コロナ禍のストレスから自分を守る技術

前編で述べた通り、ウィズコロナ時代は自分でコントロール不可能な大きな変化が数多く起こっているため、普段は何でもないことでもストレスになり得えます。ストレスは自身の許容範囲を超えるとココロやカラダの不調につながるので、特にこの時代はストレスから自分を守る技術が重要になります。

本稿ではストレスから自分を守る3つの方法とその具体例をご紹介します。
3つの方法とは
1.ストレスのもとを減らす
2.ストレスに強くなる
3.ストレスを発散すること です。
ストレスになる刺激を避けつつ、もし受けてしまっても耐える力を身に付け、ため込まずに発散するという流れでお話していきます。効果が大きい具体例も交えつつ説明しますので、ぜひご自身に合う方法を見つけて実践してみてください。

1.ストレスのもとを減らす

前編でも述べた通り、「不安の増大」や「変化の重なり」はストレスになります。コロナ禍では、ストレスが発生する機会になるべく出くわさないようにすることが大事です。順に考えていきましょう。

「不安の増大」を防ぐためには、むやみに不安を大きくしてくる情報を減らす必要があります。特に新型コロナウイルスに関する情報はテレビやインターネットなどさまざまなメディアに溢れています。メディアの中には閲覧者数や商品の購入を伸ばすために、誇張表現とはいかなくともあえて不安をあおるものもあります。そのような情報に触れれば、当然不安は増大し、ストレスになってしまいます。信頼できる情報源を自分なりに設定し、それ以外の情報をできるだけ見ない・聞かないようにすることで、不安の増大を防いできましょう。

その一方で、何も情報をいれないことも不安につながりますので、ニュースは決まった時間、決まった情報源に限ることや、公的機関のホームページや信頼のできる専門機関の発信する情報に絞って確認することなどが有効です。

ウィズコロナ時代に不安の増大を防ぐ方法として、もう一つ別の方法を紹介します。それは、他者とのつながりを持つことです。家族や友人、職場の人などと、不安なことや心配なことを言葉にして伝えましょう。特に単身者は1週間、オンライン上の業務連絡以外は誰とも会わなかったという状況になりやすいです。第三者の相談機関を利用することも有効です。

「変化の重なり」を避けるためには、自分でコントロールが可能なのかどうかという変化の種類を見極めましょう。自分でコントロールできない変化に対しては、避けようがありませんので、変化があることを事前に「想定」しておきます。事前に想定しておくなど、心の準備があることで変化の影響は小さくなります。

自分でコントロールできる変化に対しては、まず避けられる変化がないか確認しましょう。変化が重なっている場合は、タイミングをずらせるものはないか確認しましょう。タイミングをずらすことで、変化を一つずつ「消化」できる形にするのが理想です。また、コントロールできない変化と同様に、変化があることを事前に「想定」しておくことで心の準備ができ、心に受けるダメージを減らすことにつながります。

2.ストレスに強くなる

ストレスを受けてしまった場合、ストレスに強くなっている(耐性がついている)と身を守ることができます。身を守るために知っておくべきことは、まず、睡眠、そして不安を感じづらくする方法です。早速、説明していきます。

睡眠状態を改善する

健康のために睡眠をしっかりとることが良い、と言うのは当たり前の話ですが、睡眠は体の健康だけでなく、心の健康にも効果的です。弊社では「睡眠はココロを守る鎧(よろい)」として研修で説明しています。睡眠をすることで、ストレスから身を守る力が高まります。理想的な睡眠は、6~8時間です。ストレスが多いときは、いつもより30分でもいいので長めに寝ることをおすすめしています。もし、睡眠に関して下記のような症状がある場合は睡眠状態が悪化している可能性があります

・寝つきに時間がかかりすぎている
・途中で目が覚めてしまうことが多く、目覚めた後は寝られない
・早朝に起きてしまう、熟眠感(熟睡した感じ)がない

悪化してしまった場合は、改善していく必要があります。
睡眠改善にオススメな方法は以下になります。

①ぬるめのお湯で30分ほど入浴する
 入浴することで体温を上げ、冷めていく段階で入眠しやすくなります。
②適度な強度の運動をする
 ココロが疲れているときは、カラダも疲れさせることが有効です。
③カフェインは夕方以降避ける
 15時以降は控えましょう。
④タバコをやめる
 カフェインと同様に15時以降は控えることで安眠につながります。
⑤就寝前1時間は視覚刺激を減らすこと
 携帯やテレビなどブルーライトが出るものは見ないようしましょう。
⑥リラックスの時間を作る
 ゆったり過ごす時間で脳内をリセットできます。

もし、上記の方法を試してみても、睡眠が自力で改善できない場合は、睡眠薬などの検討が必要になることが多いので、自力での改善を試みても改善しないときは専門家に相談しましょう。相談が必要なタイミングの目安としては、睡眠状態の悪化が週3回以上起こることが3週間続いたときです。その場合は産業医と面談を行うか、メンタルクリニックや睡眠クリニックを受診してください。

不安を感じづらくする方法

不安を感じづらくするためには、マインドフルネスが有効です。マインドフルネスを行うことで「今、ここ」にいる感覚を高め、焦りや迷いを手放し心穏やかな時間を過ごせます。

そもそも人間の思考の60%~80%は「今ここ」ではないことをあれこれ考えて散らかっていることが分かっています。あのときああすれば良かったという過去への後悔、この先どうなっていくのかという未来の不安などに常に引っ張られ、あちこちに行ったり来たりしている思考は「雑念」と呼ばれます。雑念に振り回されていると、悩みは尽きず、脳が疲れてしまいます。
この雑念を上手に制御するためには、脳を「今」でいっぱいにするマインドフルネスな状態を自ら生み出せるようになることが大切です。

もっともメジャーな方法としては瞑想です。
【基本的なやり方】
①椅子に座る。もしくは胡坐(あぐら)をかき、背筋をスッと伸ばす
②親指と人差し指で軽く輪を作り、太ももの上に置く。残りの指は自然に伸ばす
③目を閉じ、自然な鼻呼吸をゆったり続ける
→吸う息、吐く息に意識を集中する。「今息を吸っている、吐いている」
→雑念が浮かんだらすぐに呼吸に意識を戻す
④3分間続けたら、ゆっくり目を開ける

瞑想は最初からうまくできるものではありません。日々続けてトレーニングすることが大切です。

脳科学的にマインドフルネスの効果について話をすると、マインドフルネスを実施することで脳の不安を生み出す偏桃体という部分の過剰な活動を改善させることにつながるようです。

他にも得られる効果としては、脳の疲労がとれ、ストレスを解消することや、心の知能指数(EQ)が高まり気持ちが安定すること、幸福感が高まること、また寝る前に行うことで眠りの質を高めること等があることが分かっています。

3.ストレスを発散する

最後に、ストレスを溜めずに発散していくために、自分でできるストレス発散法を作っておきましょう。人によって合うもの・合わないものがありますが、作る上では条件が二つあります。「すぐにできること」と「自分がしようと思ったタイミングでできること」です。発散方法はたくさんありますが、弊社でおすすめしている「セルフケア5選」をご紹介します。

①美味しいものを食べましょう
美味しいものを食べましょう。ただ単にいつもと同じように食べるのではなく、よく噛んで味わって5感をフル活用して味わいましょう。
②心地よい音楽を聴く
気分を落ち着けるにはクラシックが良いとよく言われますが、自分の好きな曲であれば有効です。
③良い香りをかぐ
お風呂などで湯船につかるときに自分の好きな香りに包まれるとストレス発散になります。アロマテラピーもおすすめです。
④感動する映画を見る
感動して、涙を流すことはストレス指数が下がることが分かっています。
⑤笑う
お笑い動画、テレビ番組など、心から笑うことでストレス発散につながります。

他にも巷ではストレス発散方法はたくさん紹介されています。自分に合うものを「すぐにできる」「自分がしようと思ったときにできる」ものという観点で選んでやってみてください。

ストレスは人生のスパイス

ここまで、コロナ禍のストレスから自分を守る方法について説明してきましたが、ストレスは完全に悪というわけではありません。変化はストレスになり蓄積すればココロやカラダにダメージを与えますが、その一方で自身の成長を促すという側面もあります。そのため、なんでもかんでも変化から全部逃げてしまうことは自分自身の成長が滞るリスクにつながります。

すべての変化を避けるのではなく「変化の重なりを避ける」。そして、変化が多いことや重なった場合には睡眠改善やマインドフルネスでストレスに強い心身状態にし、溜まったストレスを適宜発散しため込まないようにできるよう変化と上手に付き合いましょう。

上村 紀夫
株式会社エリクシア
代表取締役

著者紹介
1976年兵庫県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業後、病院勤務を経て、2008年ロンドン大学ロンドンビジネススクールにてMBAを取得。戦略系コンサルティングファームを経て、2009年「医療・心理・経営の要素を用いた『ココロを扱うコンサルティングファーム』」としてエリクシアを設立。これまで3万件以上の産業医面談で得られた従業員の声、年間1000以上の組織への従業員サーベイで得られる定量データ、コンサルティング先の経営者や人事担当者の支援・交流で得られた情報をもとに、「個人と組織のココロの見える化」に取り組む。著書は『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』『組織と働き方を「変える・変えない・先延ばす」さて、どうする?』(クロスメディア・パブリッシング)。

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