マイナビ キャリアリサーチLab

大学生のワーク・ライフ・バランス意識(マイナビ2022卒ライフスタイル調査のデータを用いた研究事例のご紹介)

広島大学高等教育研究開発センターが実施している公開研究会『シリーズ・大学生の“今”を探るーマイナビ・大学生のライフスタイル調査から』において、摂南大学経済学部、平尾准教授が発表された内容がディスカッションペーパーとして公開されたのでその概要を紹介したい。
※本研究では弊社で実施した「マイナビ2022年卒ライフスタイル調査」のデータが利用されている。

「大学生のワーク・ライフ・バランス意識―グローバル意識とパーソナル意識の乖離―」
(摂南大学経済学部 平尾 智隆、帝塚山大学経済経営学部 井川 静恵)

以下、ディスカッションペーパーを基に平易な言い回しをするなどの変更を加えている。原文については上記リンク参照。

■概要

本研究の目的は、ワーク・ライフ・バランス意識におけるグローバル意識(*1)とパーソナル意識(*2)の乖離を明らかにすると同時にその乖離がどうして起こるのか決定要因を分析することにある。

*1:社会が理想とする価値観が平等感、平たく言うと「建て前」
*2:個人の実際の意識や行動、平たく言うと「本音」

1980年代の労働時間短縮から今日の「働き方改革」まで、ワーク・ライフ・バランスの実現は長きに渡って日本の労働問題だが、その解決が難しい原因として、社会が理想とするグローバル意識と個人のパーソナル意識が大きく乖離していることが疑われる。そこで、本研究では就労前の大学生(労働環境や人事制度の影響を受けていない人々)を対象とした調査から、この乖離と決定要因の分析を行った。

■調査方法について

グローバル意識を測るために「『働き方改革』などワーク・ライフ・バランス推進に関する産学官の取り組みは必要だと思いますか」という質問項目を設定し、「必要だと思う」「必要だと思わない」の2つの選択肢を用意した。

そして、間に別の設問を挟み、パーソナル意識を測る6つの質問項目を設定した。それらは労働時間を減らすワーク・ライフ・バランス意識を測る「残業はしない」「有給休暇は全て取得したい」という項目と、家庭時間を増やすワーク・ライフ・バランス意識を測る「将来家族ができたら積極的に家事をしたいと思う」「将来子どもができたら育児休業を取得したいと思う」「将来子どもができたら積極的に育児をしたいと思う」「将来必要になったら積極的に親の介護をしたいと思う」という項目である。このパーソナル意識を測る6つの質問項目には「そう思わない」「そう思わないが、他人がするのはいいと思う」(*3)「そうしたい」の3つの選択肢を用意した。

*3:世間的に”正しい”とされていることに対して「YES」と思うものの、自分のこととなると「NO」という回答になることを示す選択肢

■本研究からわかったこと、与えてくれる示唆

ワーク・ライフ・バランス意識については、一定程度のグローバル意識とパーソナル意識の乖離がある(つまり、本音と建て前に乖離がある)ことが明らかになった。また、その決定要因としてジェンダー差、経営者としての就労希望が影響を与えていることが明らかになった。

労働時間を減らすワーク・ライフ・バランス意識と家庭時間を増やすワーク・ライフ・バランス意識の両方について、男性よりも女性のほうがその意識が高く、就労前の時期までにすでに性別役割分業意識(*4)が浸透していることが垣間見える結果となった。また、分析結果より、女性よりも男性のほうがグローバル意識とパーソナル意識の乖離が大きく、今後社会の政策・施策としてワーク・ライフ・バランスを推進していくとするならば、改めて男性の意識・行動改革が必要であることを示唆している。

*4:男性だから、女性だからというように性別による役割分担意識のこと

また 将来「会社を経営する」ことを希望するものは、家庭時間を増やすワーク・ライフ・バランスについて否定的であることを示す結果となった。これは家事、育児、介護に自身の時間を割くよりも会社を大きくすることに時間を割きたいという思いの裏返しと言えるかもしれない。今後社会の政策・施策としてワーク・ライフ・バランスを推進していくとするならば、企業家(起業家)教育やリーダーシップ教育の在り方についても議論が必要であるかもしれない。

                        主任研究員 東郷こずえ