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どうなる?2022年卒学生の就職活動

東郷 こずえ
著者
キャリアリサーチLab主任研究員
KOZUE TOGO

2021年3月1日に広報活動が開始し、はや1カ月が経とうとしている。2022年卒学生はプレ期間(一般的には大学3年生の6月から始まるインターンシップや就職活動準備を行う期間)からコロナ禍であるという初の「就活生」となった。コロナ前の就職活動と何が変わったのか、また、採用広報開始時点からコロナ禍であった2021年卒学生と何が違うのか、を紐解いていきたい。

■2022年卒プレ期間(就職活動準備期間)を振り返る

まずは「インターンシップ」について振り返る。
プレ期間がスタートした2020年6月は、ちょうど緊急事態宣言が解除され2021年卒学生の採用活動が再開された時期でもあった。2021年卒の採用選考の遅れもあったが、何より、対人接触を避けなければならない状況で「実務経験を伴う」インターンシップが実施できないと判断され、予定されていたプログラムが中止・延期になるケースも少なくなかった。そのため、大学の夏季休暇にあたり、例年であれば学生がインターンシップに参加し始める8月の参加率が伸び悩む結果となった。(図1)

初めてインターンシップに参加した時期/22年卒大学生広報活動開始前の活動調査

『図1:22年卒大学生広報活動開始前の活動調査』

しかし、大学の授業がオンライン化し、2021年卒の採用選考でのWEB活用が拡大するなどしてインフラが整い始めると、インターンシップでもWEB対応が進み、最終的にはインターンシップ参加学生の95%が一部でもWEB上で参加経験があると回答している。(図2)WEB対応が進むにつれて、徐々に参加率が上がり、最終的に2月時点では前年を若干下回るものの前年と同水準まで達した。(図3)

参加したインターンシップの形式/マイナビ22年卒大学生広報活動開始前の活動調査
インターンシップ参加率と参加社数経年変化/マイナビ22年卒大学生広報活動開始前の活動調査

『図2,3:22年卒大学生広報活動開始前の活動調査』

WEB型インターンシップが、これまで実施されていた“通常の”対面で実施されるインターンシップと同じように、キャリア教育や職業観涵養についての効果があるのかは、今後検証が必要だと思われるが、コロナ禍という特殊な環境下で学生にインターンシップ参加の機会を与えたことに価値があったとはいえるだろう。

また、2022年卒で企業・学生双方が経験したWEB型のインターンシップは3月から始まる就職活動にも影響を与えている。「授業や研究の合間にも参加できる」「遠方でも交通費がいらない」といった時間的・金銭的なコスト削減といった利便性は、採用選考の際、WEBで参加することへのハードルを前年以上に下げたと思われる。下記グラフ(図4)は就活における「対面」または「WEB」での実施についての考え方を聞いた結果だが、前年同時期に比べると、WEB実施についてかなり寛容になっていることがわかる。

一方で、両方体験したからこそ、対面のプレミア感を感じることもあり、オンライン上での活動が多い2022年卒学生においても、面接以降は対面を望む声が多数派であるともいえる。

就活「対面」または「WEB」/マイナビ22年卒大学生活動実態調査(3月1日)

『図4:22年卒大学生活動実態調査(3月1日)』

■2022年卒 就職活動はどうなるのか

前項で 学生はプレ期間中の経験からWEB活用に対して前年学生よりは寛容になったこと、また目的に応じた使い分けを望んでいることを示したが、企業側も同様の傾向が見られる。下記グラフ(図5,6)は2月に実施した企業調査で得られた結果だが、2021年卒と比較すると「合同企業セミナー」や「個別企業セミナー」といった初期のフェーズではWEB化が進んでいる一方で、「1次面接」では半々、「最終面接」では逆に「全て対面」との回答が最多となっている。感染防止策に十分注意したうえとなるが、特に「最終面接」のような入社候補者を決める(学生から見ると入社予定先企業を決める)ために、相互理解のための十分なコミュニケーションが必要な段階では「対面」を選んでいるようだ。このように、2021年卒での経験があるからこそ、WEBと対面それぞれの利点を生かして、使い分けるようになるったといえるだろう。

21卒22卒WEB活用状況/マイナビ22年卒企業新卒採用予定調査

『図5,6:22年卒企業新卒採用予定調査』

このように新型コロナウイルスの影響で企業セミナーや面接を中止・延期にせざるを得なかった2021年卒と異なり、2022年卒はおそらく止まることなくWEB活用が進められると考えられる。そのため、採用スケジュールについてはコロナ禍前と同様に、個別企業セミナーや面接などは3月、内々定出しは4月から開始され、採用終了時期は6月頃を予定している企業が多い。(図7)

22卒就活各フェーズ開始時期/マイナビ22年卒企業新卒採用予定調査

『図7:22年卒企業新卒採用予定調査』

現時点ではコロナ収束、経済状況に関して不確定要素も多く、まだ最終的な状況はつかめないが、上記のように採用選考の実施、内々定出しがスムーズに進めば、学生の内定率も同時期比で前年を上回って進捗すると考えられる。

ただ、 新卒採用に関しては景況感だけで判断するのではなく、「年齢など人員構成の適正化」「組織の存続・強化」を見越して実施される傾向にあり(図8)、大きく採用意欲が減退するとは考えづらい。バブル崩壊やリーマン・ショックなど過去に経済状況が大きく悪化した際に採用を控えたため、特定の年代にあたる人材が不足し、いびつな年齢構成になるなど、様々な反省を企業は抱えてきた。中途採用で人材を補うことはもちろんできるが、今後、若い世代の人口が減少し、人材獲得競争が激しくなることが想定されるので、定期的に新卒採用を実施している企業は今後も継続的に行っていくといえるだろう。(図9)

新卒採用を実施する理由/マイナビ22年卒企業新卒採用予定調査

『図8:22年卒企業新卒採用予定調査』

22歳人口の推移・グラフ/総務省統計局「人口推計」

『図9:人口推計(総務省統計局)「年齢(各歳)、男女別人口及び人口比-総人口、日本人人口(各年「10月1日現在)」より筆者作成』

新型コロナウイルスの収束、東京オリンピック・パラリンピック、そしてそれに伴う経済情勢など不確定要素が多いなかではあるが、企業・学生双方に協力いただき、定期的な調査を通じてなるべく精緻に現状を把握し、正確な情報を発信できるよう努めていきたい。

キャリアリサーチLab主任研究員 東郷 こずえ

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