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正社員のワークライフ・インテグレーション調査2024年版(2023年実績)

正社員の5割は「静かな退職」をしている
“「仕事」と「私生活」の充実”に関係性があると感じる人は約7割
双方充実している人の職場は「仕事の裁量権」「服装」「時間」の柔軟性が高い

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、現在正社員として働く20~59歳の男女3,000名を対象に、「正社員のワークライフ・インテグレーション※調査2024年版(2023年実績)」の結果を発表した。調査結果の概要(一部抜粋)は以下の通りとなっている。

※ワークライフ・インテグレーションとは、「仕事」と「私生活」を、人生の構成要素として統合的にとらえて 両方とも充実させ、人生を相乗的に豊かにしていくという考え方を指す。

調査概要

調査期間2023年11月17日(金)~11月20日(月)
調査方法インターネット調査
調査対象20~59歳の正社員の男女
有効回答数  3,000件
※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります

トピックス

  • 「静かな退職をしている」と感じている人は約5割。「私生活」と「仕事」の充実度が関係していると感じる人は7割【図1、2、3】
  • 仕事と私生活どちらも充実している人は職場の柔軟性が高い傾向。特に「仕事での裁量権」や「服装」「時間」の項目で差が出る結果に【4、5】

調査詳細

「働くホンネ」と仕事と私生活の関係性

「静かな退職をしている」人が約5割

20-50代の正社員に対し、働くホンネについて聞くと「できることなら働きたくない」と感じている合計が56.9%となった。次に「静かな退職※をしている」と感じるか聞いたところ、計48.2%がそう感じると回答した。【図1】

※静かな退職とは、やりがいやキャリアアップは求めずに、決められた仕事を淡々とこなす働き方のことを指す

働くホンネ_ワークライフ・インテグレーション調査
【図1】働くホンネ/正社員のワークライフ・インテグレーション調査

“「仕事」と「私生活」の充実”に関係性があると感じる人は約7割

「仕事と私生活の充実の関係性」について聞いたところ、「私生活の充実」が「仕事の充実」につながっている」が20.4%、「仕事の充実」が「私生活の充実」につながっている」が12.4%、「相互に影響しあっている」が37.2%となり、合計70.0%が「私生活と仕事の充実」に関係性があると回答した。【図2】

仕事と私生活の関係性_ワークライフ・インテグレーション調査
【図2】仕事と私生活の関係性/正社員のワークライフ・インテグレーション調査

仕事と私生活の関係性について、具体的なエピソードを聞くと、関係があると感じる人は「ライブなど何かプライベートで楽しみにしていることがあると仕事のモチベーションも上がるから(20代男性)」など、私生活と仕事のどちらも充実させるために、積極的に行動している回答が多く見受けられた。

一方、関係がないと感じる人は「仕事は仕事、プライベートはプライベートとしか今まで考えてこなかった(50代女性)」など、仕事と私生活の線引きをしている回答が目立った。【図3】

具体的なエピソード_ワークライフ・インテグレーション調査
【図3】仕事と私生活の関係性のエピソード/正社員のワークライフ・インテグレーション調査

仕事と私生活、両方の充実を追求できているかを聞くと、「できていると感じる」は26.6%、「できていないと感じる」は39.0%となり、仕事と私生活について両方の充実を追求できていない人が多数派となった。【図4】

仕事と私生活両方の充実を追求できているか/正社員のワークライフ・インテグレーション調査
【図4】仕事と私生活両方の充実を追求できているか/正社員のワークライフ・インテグレーション調査

仕事と私生活どちらの充実も追及できている人の特徴

職場の柔軟性が高い傾向

現在の職場の柔軟性について、場所、時間、仕事の裁量権、服装、髪型の5つの項目で聞くと、「仕事」と「私生活」両方の充実を追求できている人は、できていない人と比べ、職場の柔軟性が全ての項目で20pt以上高い結果となった。

なかでも、「職場で仕事の裁量権がある(27.9pt差)」、「職場での服装の柔軟性がある(26.1pt差)」、「職場に時間の柔軟性がある(24.8pt差)」の項目で、差が大きかった。「仕事」と「私生活」両方の充実を追求できていると感じる人は、仕事の柔軟性が高く私生活の時間を確保しやすいため、両方の充実を追求できていると感じる人が多いのではないだろうか。【図5】

仕事の柔軟性/正社員のワークライフ・インテグレーション調査
【図5】仕事の柔軟性/正社員のワークライフ・インテグレーション調査

現在働く職場で導入されている「従業員向けの制度」について聞くと、「仕事」と「私生活」両方の充実を追求できていると感じる人と、追求できていないと感じる人でもっとも導入割合に差があった制度は「在宅ワーク・リモートワーク制度」で9.4pt差となった。

次いで「有給取得率向上施策」で9.1pt差、「女性向けの産育休制度」で9.1pt差だった。「仕事」と「私生活」両方の充実を追求できていると感じる人は在宅ワーク・リモートワーク制度や有給取得、産育休制度が利用できる職場に勤めている傾向にあり、働く場所や時間の柔軟性に影響がある制度で導入率の差が大きいことがわかった。【図6】

導入されている制度/正社員のワークライフ・インテグレーション調査
【図6】導入されている制度/正社員のワークライフ・インテグレーション調査

調査担当者コメント

「仕事と私生活の充実は関係している」と実感している人が7割と多数派であることがわかった。この、切っても切り離せない関係である「仕事」と「私生活」を、人生の構成要素として統合的にとらえて両方とも充実させ、人生を相乗的に豊かにしていくという考え方を、「ワークライフ・インテグレーション」と言い、昨今注目されつつある。

従来よく取り上げられている「ワーク・ライフ・バランス」は、仕事(ワーク)と私生活(ライフ)のバランスを考えるもので、どちらかに偏重が起きないように調整をする必要があった。一方、ワークライフ・インテグレーションは、仕事と私生活の相乗効果を追及する考え方である。【図7】

用語のイメージ図/正社員のワークライフ・インテグレーション調査
【図7】用語のイメージ図/正社員のワークライフ・インテグレーション調査

ワークライフ・インテグレーションの考え方が注目されつつある背景には、仕事と私生活の統合が進んでいることが挙げられる。新型コロナウイルスを経て、テレワークや在宅ワーク制度が定着し、「働く場所」と「私生活の場所」は統合されている傾向にある。また副業の認可が進んだことで、私生活の中に複雑に仕事が入り込んでおり、仕事と私生活を切り離すことが以前より難しくなってきている。

現在、健康経営や人的資本への投資が注目されているが、このような私生活の充実につながる企業施策は、働く人の「仕事の充実」にもつながると考えられる。その結果、企業もメリットを感じられるようになるのではないだろうか。今後企業は、様々な従業員向け施策を検討していく中で、ワーク・ライフ・バランスからワークライフ・インテグレーションの考え方を持つよう、進化が求められていくだろう。

マイナビキャリアリサーチラボ 研究員  朝比奈 あかり

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