派遣社員の意識・就労実態調査(2023年版)
- 「機械・電気・IT・エンジニア」は職種別で最も昇給額が高いが、理想の時給とのギャップも最も大きい結果に
- 派遣社員の4人に1人以上が正社員就業意向あり、一方で正社員になることが難しいと感じる人は8割
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、派遣社員として勤務する20〜59歳の男女を対象とした「派遣社員の意識・就労実態調査(2023年版)」を発表しました。なお、本調査は2019年から実施し、今回で5回目となります。
目次
トピックス
- 同一の派遣先における昇給額の平均は69円。最も昇給額が高い職種は「機械・電気・IT・エンジニア」で122円だが、現在の時給と理想時給の差額は319円と、職種別で最も大きなギャップが出る結果に。【図1】
- 自ら正社員化を申し出たことのある人は11.6%、そのうち正社員化された割合は54.9%となり年々増加傾向に。【図2】
- 派遣社員の4人に1人以上が正社員就業意向あり。一方で正社員になることが難しいと感じる人は8割以上。【図3、4】
- 派遣3年ルールは派遣社員にとって「悪い影響があると思う」が「良い影響があると思う」を14.7pt上回る。【図5、6】
調査詳細
同一の派遣先における昇給額と理想時給とのギャップ
同一の派遣先における初回契約時からの昇給額を算出したところ、平均は69円となった。電気代やガス代など生活コストが上がるなか、昇給額の前年比は14円に留まっている。職種別にみると「機械・電気・IT・エンジニア」が122円と最も高く、次いで「テレオペ・テレマーケティング」が93円となった。
また、現在の時給額と理想の時給額との差額を算出したところ、全体では204円のギャップがあり、前年よりギャップが8円拡大。職種別で最もギャップが大きいのは「機械・電気・IT・エンジニア」で319円となった。【図1】
【図1】現在の派遣先における昇給額と理想時給とのギャップ(数値回答)
業務のDX化などにより、派遣市場においても専門スキルを持つ人材が不足しており、人材定着の観点からも、昇給などによる賃金待遇の向上が求められる。
派遣社員から正社員への転換状況
派遣就業先に対する正社員転換の状況を聞いたところ、勤務する派遣先や派遣元に対して、自ら正社員化を申し出たことがあるのは11.6%(前年比:1.1pt増、21年比:7.7pt増)となり、そのうち正社員化された割合は54.9%(前年比:5.4pt増、21年比:29.3pt増)となった。
一方で、派遣先や派遣元から正社員化の誘いを受けたことがあるのは26.4%(前年比:0.1pt増、21年比:0.9pt減)、そのうち正社員化された割合は24.1%(前年比:1.7pt増、21年比:3.2pt増)となった。【図2】
【図2】派遣就業先に対する正社員転換の状況(単一回答)
派遣社員が正社員に転換されるケースは多数派ではないものの、自らの申し出による能動的な正社員転換、誘いを受ける受動的な正社員転換ともに年々増加傾向にある。
コロナ禍が落ち着いたことで、企業の中途採用は活発化し人材の需要が増えている一方で、経験者人材の採用には苦戦をしている。このような状況から、企業では、すでに職場環境や実務内容をよく知っている派遣社員の正社員転換のハードルを下げていることが考えられる。
派遣社員の今後の就業意向
今後の就業意向について、「正社員として働きたい」が29.8%で最も高く、派遣社員の4人に1人以上が正社員就業の意向を持っていることがわかった。【図3】
【図3】今後の就業意向(単一回答)
正社員になりたい時期では、「すぐにでもなりたいと思っている」が52.3%で最も高く、年代が高いほど、その意向を持っていることがわかる。
正社員になりたい時期と難易度意識
一方で、正社員になる難易度意識を聞くと、自分が正社員になるのは「難しいと思っている」が83.9%で、50代では91.0%にのぼった。年代が高いほど正社員化の難しさを感じている人が多いようだ。【図4】
【図4】正社員になりたい時期と難易度意識(単一回答)
派遣3年ルールの影響とその評価
派遣3年ルール※が、派遣社員として働く上でどのような影響があると思うかを聞いたところ、「悪い影響があると思う」が37.3%、「良い影響があると思う」が22.6%で、悪い影響が14.7pt上回った。【図5】
【図5】派遣3年ルールの影響評価(単一回答)
派遣3年ルールにより増えたと思うものでは、「契約満了(契約解除)のされやすさ」が36.3%で最も高く、次いで「派遣先を決める時に慎重になった」が28.5%となり、3年で契約満了となることを危惧して慎重に派遣先を選ぶ様子がうかがえる。
派遣3年ルールで増減したもの
一方で、減ったと思うものでは、「正社員登用の機会」が21.0%で最も高く、次いで「キャリア形成のしやすさ」が19.3%となった。【図6】
【図6】派遣3年ルールで増減したもの
派遣社員の雇用の安定と待遇改善を目的に2015年に施行された派遣3年ルールだが、同一事業所における勤務期間の制限により、派遣社員として働き慣れた職場で長期的なキャリア形成が難しくなるケースがあることが悪い印象に繋がっているものと考えられる。
※有期雇用派遣社員として同じ職場・部署で働ける期間を最大3年間と定めた制度。引き続き同じ職場・部署で働きたい場合は、正社員や無期雇用派遣社員など、雇用形態を切り替える必要がある
調査概要
内容 | 派遣社員の意識・就労実態調査(2023年版) |
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調査期間 | 2023年7月11日(火)~2023年7月18日(火) |
調査対象 | ・現在派遣社員として対象職種※のいずれかで働く、男女20~59歳 ※対象職種:オフィスワーク・事務/販売/サービス/テレオペ・テレマーケティング/機械・電気・IT・エンジニア技術・開発・通信系/クリエイティブ系/医療・介護・福祉関連業務/製造/配送・輸送・物流 |
調査方法 | インターネット調査 |
有効回答数 | 1,400件 |
レポート内目次
- 回答者のプロフィール
- 就労意識・実態
- 派遣元/派遣先選びの実態
- 派遣元/派遣先の定着につながるポイント
- 今後の就労意向
- 派遣社員以外の雇用形態との比較、派遣就業先への正社員転換の状況
- 派遣3年ルール/同一労働同一賃金について
詳しくは下のPDFデータをご覧ください