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売り手市場×人手不足で逼迫する採用担当者たち―新卒採用担当者のマンパワー不足を考える

沖本麻佑
著者
キャリアリサーチLab研究員
MAYU OKIMOTO

コロナ禍が落ち着き、採用意欲が回復したことなどによって売り手市場となっている新卒採用市場。企業は学生の確保に苦労しているが、その状況以外にも採用担当者たちを苦しめることになっているのが採用担当部門の「マンパワー不足」である。

そこで今回は、2024年卒企業新卒内定状況調査の結果から、新卒採用担当者のマンパワー不足の現状とそれによって起こる問題、そして少ない人数で満足度の高い採用活動を行っている企業が実施している工夫について探っていく。 

新卒採用担当部門の体制とマンパワー不足の現状

1人体制で新卒採用を実施している企業の割合

はじめに、新卒採用担当部署の人数の実態を見ると、もっとも多いのは「2人」体制の企業で34.0%、「1人(21.4%)」の企業と合わせると半数以上が1~2人で新卒採用を実施していることが分かる。

新卒採用担当部門の人数
新卒採用担当部門の人数


採用予定人数ごとに見ると、採用予定人数が多いほど採用担当部門の人数も多い傾向はあるが、採用予定人数が20人以上でも1~2人体制で採用活動を実施している企業が3割程度あることも見てとれる。 

<採用予定人数別>新卒採用担当部門の人数
<採用予定人数別>新卒採用担当部門の人数

マンパワー不足を感じている採用担当者の割合

新卒採用担当者に、採用担当部門の人手不足問題について聞いたところ、70.5%の企業がマンパワー不足を感じていると回答した。

新卒採用担当部門のマンパワー不足について
新卒採用担当部門のマンパワー不足について

前述のように、新卒採用担当部門は少人数である場合が多いことから、人数が少ないことによってマンパワー不足が起きているのかと思われたが、部門の人数別にマンパワー不足の実感の有無を見ても大きな差はなかった。

採用担当人数が多ければマンパワー不足を感じないというわけではなく、全体的に人手不足の実感を持っている採用担当者が多い様子が分かる。 

<新卒採用担当部門の人数別>新卒採用担当部門のマンパワー不足について
<新卒採用担当部門の人数別>新卒採用担当部門のマンパワー不足について

新卒採用担当者がマンパワー不足になっている要因

では、なぜそれほど多くの企業で新卒採用担当部門がマンパワー不足となっているのか。次はその背景を探っていく。

新卒採用以外の業務を兼任しているケースが多いこと

新卒採用担当部門の業務内容について聞いたところ、77.5%の採用担当者は、部門のメンバー全員が新卒採用以外の業務も兼任していると回答した。全員が新卒採用専任であるという企業はわずか3.8%であり、ほとんどの企業の新卒採用担当部門では全員または一部のメンバーが他業務も並行して実施していることが分かる。 

新卒採用担当部門の業務担当状況
新卒採用担当部門の業務担当状況

そこで、具体的にどのような業務と兼任しているのか、広報活動(説明会)や面接など、直接的な採用活動以外の業務についてどの部署が担当しているかを聞いた。

グラフを見ると、内定者フォローや入社式の運営をはじめ、新入社員の研修、新卒以外の採用活動や企業HPの更新なども新卒採用担当部門が担当している場合があると見てとれる。また、それ以外の人事業務や総務業務の中にも、担当している業務があると回答した採用担当者は多く、新卒採用活動に限らず幅広い業務を担当している様子が分かる。

【新卒採用の広報・選考活動以外】の業務を担当している部署
【新卒採用の広報・選考活動以外】の業務を担当している部署

このように、担当している業務範囲の広さも、新卒採用担当部門がマンパワー不足となる要因の一つと推察される。 

採用手法や内定者フォローの多様化などで業務負担が増えていること

もう一つ、採用担当者の業務が圧迫されている要因は、現在の新卒採用市場が企業にとって厳しい状況であるということだ。

24年卒の採用充足率は、同時期の調査と比較して過去最低であり、「採用活動が厳しかった」と振り返った企業では、理由として母集団の確保や採用選考への動員、内定辞退の増加への課題を挙げており、採用選考の各フェーズに問題があることが分かる。 

「採用活動が厳しかった」と回答した理由
「採用活動が厳しかった」と回答した理由

ターゲット層の学生への訴求を強化しつつも、一人ひとりの学生との関係性を深めて入社まで繋げていくために、採用手法の多様化や内定者フォローの充実、学生へのより深い理解などが求められており、採用担当者はそれらの対応にも追われている。

そのため、かつては少人数で実施できていたとしても、業務量の増加や複雑化によって負担が大きくなっている可能性が考えられる。 

採用担当のマンパワー不足によって起こる問題

ここまで、新卒採用担当部門がマンパワー不足となっている現状や要因を見てきたが、このマンパワー不足によってどのような問題が起こっているのか。採用担当者のコメントから、その問題点について3点見ていく。 

対応することが多く、業務が逼迫している 

まず1点目は、シンプルだが人手不足によって業務過多の状態になるという点である。

新卒採用担当者に、マンパワー不足を感じるエピソードを聞いたところ、「年始を過ぎると入職手続きなどの準備で他部署との兼ね合いが多くなるのに加えてインターンシップや早期採用の重複も始まり、残業増加や休日返上も日常的になっている」「他の業務をこなしつつ対応しており、特に入社式・懇親会の準備もたった1人で準備が大変」という趣旨のコメントが見られた。 

前述のように、新卒採用を担当する部門では、時期によってはその年に採用した学生たちの入社までのフォローと次の年の採用対象となる学生たちへのインターンシップなどの活動が重複することもある上に、中途採用など他の業務と兼任している部署も多いため少人数で実施するには多すぎる業務量を抱えてしまう状況が起こりやすいと考えられる。 

マンパワー不足を感じているエピソード(業務過多に関するコメント)
マンパワー不足を感じているエピソード(業務過多に関するコメント)

担当不在時に採用活動が滞っている

2点目は、1~2人体制で採用活動を実施していると、担当者が体調不良などで活動を実施できない状況になったときに代わりにその業務を対応できる人がいないという問題だ。コメントでは、「体調を崩して会社を休んだときに代理で説明会を行えない」「担当不在時に採用業務が滞る」などの意見が見られた。 

マンパワー不足を感じているエピソード(担当不在時に採用活動が滞ることに関するコメント)
マンパワー不足を感じているエピソード(担当不在時に採用活動が滞ることに関するコメント)

企業の採用活動が停滞すること自体も問題だが、説明会や面接などが担当者不在によって実施できなくなることは、学生の活動も同時に止めてしまうことに繋がるため、より重大な課題である。 

実施できる業務の幅が狭まっている・一人ひとりと向き合えてない

3点目は、実施したいことが思うようにできないということである。

「説明会から面接までを回すことで手一杯で広報活動がほぼできていない」「大学訪問などには手が回らない」など、1人体制や少人数で業務を実施しているために、できることが限られてくるというコメントも多く見られた。

さらに、「一人ひとりと向き合った採用を実施したいが、新卒採用以外など複数の求人募集が重なったときはどうしても手を掛けられない部分が出てきてしまう」などのコメントも見られた。昨今の売り手市場や学生の将来観が多様化している現状の中、採用手法の幅を広げたり、より一人ひとりの学生と向き合った活動をしたりしたいという希望があってもそれを実施できない状況に課題を感じている採用担当者も多いようだ。 

マンパワー不足を感じているエピソード(実施できる業務の幅が狭まっている・一人ひとりと向き合えてないことに関するコメント)
マンパワー不足を感じているエピソード(実施できる業務の幅が狭まっている・一人ひとりと向き合えてないことに関するコメント)

少ない人数で新卒採用を実施する工夫  

次に、これまで見てきたようなマンパワー不足の状況でも採用活動を実施するために、採用担当者がどのような工夫を行っているのかについて探っていく。 

他部署に協力を要請する

採用担当者の声を見ると、「各部署から人員を募って採用プロジェクトチームを創設することを検討している」「当日運営を採用担当以外でもできるように研修中」という趣旨のコメントがあった。

少ない人数で新卒採用を実施する工夫(他部署との協力に関するコメント) 
少ない人数で新卒採用を実施する工夫(他部署との協力に関するコメント) 

前述のような、採用担当の不在時に採用活動がストップしてしまうような状況を防いだり、業務過多にならない状況をつくったりと工夫している、またはそのような方法を検討している様子が見てとれる。 

業務自体の工数を減らす、アウトソーシングする

その他、少人数で採用活動を実施する工夫として挙がったのは「業務効率化」「ツールの導入」「アウトソーシング」など、業務自体の工数を減らすという声だった。特に採用人数が多い企業でアウトソーシングや業務効率化のためのツールの導入などが検討されているようだ。

少ない人数で新卒採用を実施する工夫 (業務自体の工数を減らす、アウトソーシングする)
少ない人数で新卒採用を実施する工夫 (業務自体の工数を減らす、アウトソーシングする)

対応する学生の人数が多いと業務の軽量化に対しての意識も働きやすいと考えられるが、この工夫は採用人数が小規模でも有効な手段である。

業務効率化は一人ひとりと向き合うことと一見矛盾して見えるかもしれないが、学生個人それぞれと丁寧に接するためにも、事務的な部分の業務はできるだけ工数を減らす工夫をしていくことで、結果的に学生と深く関係を築く余裕が生まれる可能性があると言えそうだ。 

採用担当部門の人数が増えたら実施したいこと

最後に、採用担当部門の人数が増員されるとしたらどのようなことを実施したいかという希望を聞いた結果について見てみる。

採用担当者からは、「学生個人に合わせたインターンシッププログラムや選考フローの設計」「プログラムの相談」「研修プログラムの見直し」などさまざまな意見が出てきた。

新卒採用担当者が増えたら実施したいこと
新卒採用担当者が増えたら実施したいこと

採用担当者たちにとっては、採用活動を定期的に振り返りながらブラッシュアップしていけるような体制が理想であると推察される。 

おわりに

今回は、新卒採用担当部門におけるマンパワー不足の問題について見てきた。新卒採用が企業にとってこれまでよりも厳しい状況となり、学生一人ひとりとのより深い関係性構築が求められ、採用担当者もそのような活動をしていくことを望む一方で、丁寧で手厚い採用活動を行うにはマンパワーと余裕が足りていない様子が分かった。

前述のように部署の中で、限られた人数で採用活動を実施する工夫をしていくことも重要だが、企業としては、業務量として対応可能か、新卒採用業務が遂行できるかという視点ではなく、「よりよい採用活動にするため」という観点で、部署の人数設定や人員配置を行っていく姿勢も同時に求められる。

そして、そのように部門の誰かが体調不良でも採用活動が実行できる・定期的に活動を振り返りながらブラッシュアップしているなど、採用担当者が安心して、自分たちが思うベストな働きができるような業務体制は、採用広報という側面でも有用であると考えられる。採用担当者は多くの場合、就活生が最初にその企業との接点を持つ対象だからだ。

学生はまず説明会での姿やメール等の連絡など、採用担当者の仕事を通してその企業の社風を感じとる。採用担当部門の余裕のある業務体制は、学生から見た安心感にも繋がり、志望度もあがるなど、双方にとって良い効果をもたらすのではないだろうか。 

キャリアリサーチLab研究員  沖本 麻佑

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