マイナビ キャリアリサーチLab

上司や同僚、人事担当者はここに注意!!
『ライフキャリア実態調査』で考えるZ世代との関わり方とは?

吉本隆男
著者
キャリアライター
TAKAO YOSHIMOTO

「Z世代」という言葉が、『現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞』のトップテンに選出されたのが2021年12月。1990年代後半~2012年代生まれで、デジタル&SNSネイティブであり、タイパを重視し、社会課題への関心が高い⋯などなど、数々の特徴が指摘されている。

また、Z世代の社員がいる職場からは、「上司のリーダーシップについてこない」「仕事を依頼したら、『なぜですか?』と理由を確認する」といった声が聞かれ、世代間ギャップを実感する上司も少なくないという。

そこで、今回は、『マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版』の調査結果の中から、20代の調査結果が就業者(正規)全体の数値と差がついている項目に焦点を当て、Z世代の職業観やキャリア意識の特徴を探ってみたい。
※『マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版』では、2022年4月~2023年3月までのキャリアと生活の実態や変化を明らかにするために、全国15歳以上の男女14,000名を対象に、個人の現在の労働の実態・意識変化、生活の実態・意識変化などを調査している。

仕事や私生活に対する満足度は平均以上だが、収入に対する満足度は低い

まずは、現在の仕事や生活に対する満足度から見ていこう。『マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版』では、「2022年4月~2023年3月の1年間を通して、あなたの生活や仕事は満足いくものでしたか。それぞれあてはまるものを一つだけお選びください。」という設問で、(1)仕事、(2)私生活、(3)収入、(4)人生全般に対する満足度を聞いている。

20代の調査結果を、就業者(正規)の平均と比較すると、すべての数字が上回っていることがわかる。仕事に関しても、私生活についても総じて満足度は高い状態だが、収入面についてだけは満足度の数値は他の項目と比較すると大きく下がっている。もちろんこれは20代に限ってのことではなく、就業者(正規)全体の満足度も相対的に低くなっており、現在の日本の給与水準を反映しての結果といえそうだ。【図1】

【図1】仕事や生活の満足度/マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版

他人との関係性を重視。将来に備えて堅実的な側面も

私生活における時間の使い方、他人との関係性、財産に対する考え方についてもZ世代の特徴がよく感じられた。

まず時間の使い方について。「友人・知人との時間を多く過ごしたいか?」、あるいは「1人の時間を多く過ごしたいか?」を比較すると、就業者(正規)は「1人の時間を多く過ごしたい」が全体の6割を超えているが、20代の場合は「友人・知人との時間を多く過ごしたい」と「1人の時間を多く過ごしたい」が拮抗し、就業者(正規)の平均より友人や知人との関係性を重視する傾向が強いようだ。【図2・3】

その傾向は他人との関係性についても同様で、就業者(正規)平均では、「他人との関わりは少ない方が良い」が6割近く、「他人との関わりが多い方が良い」を上回っているが、20代は「他人との関わりが多い方が良い」が5割を超えている。 【図2・3】

財産についての考えについて全体的な傾向は、就業者(正規)も20代も同じだが、20代の方が「他人より多くの財産を持ちたい」という数値が高い。Z世代に対するさまざまなリサーチで、「消費行動が等身大である」「将来に備えて投資にも積極的」などの指摘を目にすることがあるが、その傾向は財産に対する考え方にも通じるところがあるようだ。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」などでも、年齢が下がるにつれて平均貯蓄額が少なくなることが判明しており、将来に対して経済的な不安を抱えるZ世代が少なくないことがうかがえる。【図2・3】

【図2】生活や考え方について/20代 【図3】生活や考え方について/就業者(正規)/マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版

上司に求めるのはアドバイスと励まし。同僚には共感と同情を期待

職場での関係性を知るために、職場の上司や同僚にどんな支援やサポートを期待しているかについての調査結果を見てみる。「仕事上において、あなたが求める『周囲(会社の上司)からの助力(支援・サポート)』を、いくつでもお選びください」との問いでは、「アドバイスがほしい」が33.2%でトップ。次いで、「励ましてほしい」(15.1%)となった。【図4】

【図4】20代が会社の上司に求める支援・サポート/マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版

また、「仕事上において、あなたが求める『周囲(会社の同僚)からの助力(支援・サポート)』を、いくつでもお選びください」との問いについては、「共感・同情してほしい」が21.8%とトップで、「アドバイスがほしい」(19.2%)が続いた。【図5】

【図5】20代が会社の同僚に求める支援・サポート/マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版

紹介したグラフには就業者(正規)の数値を掲載していないが、励ましや共感、同情などを求める割合は、就業者(正規)全体の平均値より高く、職場の上司や同僚に精神的なサポートを求める傾向が強いようだ。これもZ世代の一つの傾向といえるかもしれない。

自主・自律的なキャリアを歩み、将来にも高い関心

Z世代のキャリア観や職業観についても確認する。職業上のキャリアに対する考えを確認するため、「全般的にみて、私はとても自主的・自律的なキャリアを歩んでいるか?」について質問したところ、「非常にそう思う」「そう思う」「ややそう思う」と答えた20代の合計が57.4%で、就業者(正規)の合計46.5%を10ポイント以上上回っている。【図6】

【図6】自主的・自律的なキャリアを歩んでいる/マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版

また、自分のこれからの職業生活や生き方に関心があるかを質問したところ、「あてはまる」「ややあてはまる」の合計が50.6%で、就業者(正規)の合計44.8%を上回っている。20代という年齢を考えれば当然のことかもしれないが、自分の将来のキャリアについて前向きに考え、自分なりに納得のいくキャリアを現在歩んでいる状況がうかがえる。【図7】

【図7】これからの職業生活や生き方には、大変関心を持っている/マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版

将来のキャリアに高い関心。希望する職業生活に向けて積極的に情報収集

将来のキャリア、職業生活に対する関心の高さは、その他の質問項目でも特徴が際立っている。「職業生活の設計は自分にとって重要な問題なので、真剣に考えているか?」「今後どんな職業生活を送っていきたいのか、自分なりの目標を持っているか?」といった質問に、20代の回答は就業者(正規)の回答より10ポイント近い高い数値となっている。

さらに、「希望とする職業生活が送れるように、努力しているか?」との質問に、「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた20代は48.5%に達しており、47.2%が「職業生活設計や生き方に役立つ情報を、積極的に収集するようにしている」と回答している(「あてはまる」「ややあてはまる」 の合計)。【図8】

【図8】これからの職業生活について/マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版

日本で「キャリア教育」という用語が公的に登場し、その必要性が提唱されたのは、1999年の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」において。それ以降、キャリア教育に関する調査研究が進められ、さまざまな取り組みが実施されてきた。

そういった意味では、Z世代は日本のキャリア教育の歩みと歩調を合わせて育ってきた世代であり、当然のことながら自分の将来のキャリアについてことあるごとに検討する機会に接してきたことを考えると、自分のキャリアや職業生活に対する意識が高いのは当然のことといえそうだ。

今回は、『マイナビ ライフキャリア実態調査 2023年版』をもとに、キャリア意識や職業観に対するZ世代の特性が感じられる調査結果をピックアップした。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が目まぐるしく変化する予測困難なVUCAの時代に、他者との関係を大切にし、自らのキャリアに真剣に向き合い、希望する職業生活の実現に前向きに取り組むZ世代の一面が垣間見られたのではないだろうか。

まとめ

さて、今回の調査結果を踏まえ、Z世代がいる職場の上司や同僚、そして人事担当者はどう彼らとコミュニケーションを取るべきだろうか?

上司や同僚としては彼らが実現しようとするキャリアについて対話を通じて理解する努力を怠らず、その実現をサポートする意識を忘れないこと。また、日常的な業務においては、業務の目的を明らかにしたうえで的確なアドバイスを行い、必要に応じて彼らを元気づける言葉を投げかけることを大切にしたい。

また、人事担当としては、彼らの価値観や考え方、キャリアに対する意識をしっかり理解し、彼らの強みを最大限に引き出すような指導や育成を意識すべきだ。

そして、彼らが理想とするキャリアの実現を支援するサポーターとしての役割を忘れないようにすべきではないだろうか。もちろん、安易な世代論に陥ることには注意したい。Z世代だからといって、みんなが同じわけではない。さまざまな多様性を秘めた世代であることも忘れないようにしたい。


著者紹介
吉本 隆男(よしもと たかお)キャリアライター&就活アドバイザー

1960年大阪生まれ。1990年毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)入社。各種採用広報ツールの制作を幅広く手がけ、その後、パソコン雑誌、転職情報誌の編集長を務める。2015~2018年まで新卒のマイナビ編集長を務め、2019年からは地域創生をテーマとした高校生向けキャリア教育プログラムおよび教材の開発に従事。2020年定年退職を機にキャリアライター&就活アドバイザーとして独立。
日本キャリア開発協会会員(CDA)、国家資格キャリアコンサルタント。著書に『保護者に求められる就活支援』(2019年/マイナビ出版)

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