マイナビ キャリアリサーチLab

Vol.5 情報社会で生きるZ世代の「情報収集」と仕事
—Z世代のリアル

はたらきかたラボ
著者
マイナビ転職「はたらきかたラボ」コラム担当
HATARAKIKATA LAB

はじめに

Z世代とは一般的に1996~2010年頃に生まれた若者を指す言葉だ。今後、経済や文化、社会などさまざまな分野において中心になっていく世代ということで世界的に注目を集めている。

本シリーズではマイナビ転職Z総研の共同活動体である「はたらきかたラボ」で行った調査と座談会をもとに、さまざまなテーマから”等身大のZ世代”を明らかにしていきたい。第5回となる今回は「情報収集」について取り上げる。主な情報源が4大マスメディア(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)や身近な人達からの口コミだった時代と異なり、SNSで世界中の情報が手軽に収集できる現代において、彼らはどんな手段で情報を得ているのかを調査してみた。

「テレビ離れ」でも時事ニュースの情報源はテレビが主流

最初に「普段どのくらいの頻度で”時事ニュース(※1)をチェックしていますか?」と質問したところ、もっとも多かったのは「1日1回」で36.9%、次点が「毎日複数回」の28.1%だった。つまり65%が1日1回以上時事ニュースをチェックしているようだ。【図1】

【図1】時事ニュースのチェック頻度/はたらきかたラボ調査

時事ニュースをチェックしている人を対象に、「”時事ニュース”をチェックする媒体は何ですか?」と尋ねたところ、1位がテレビ、2位がTwitter、3位がニュースアプリ、という順位になった。【図2】
※1:ここでは政治、経済、国際、社会一般における事象・ニュースを指す言葉として質問している

【図2】時事ニュースをチェックする媒体/はたらきかたラボ調査

総務省が発表している「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、20代がリアルタイムでテレビを視聴している1日の平均時間は平日で71.2分、休日でも90.8分。10代に至っては平日で57.3分、休日で73.1分と更に短くなっている。「若者はテレビを見なくなっている」と言われている状況は数字の面からも明らかではあるものの、アンケート結果を見ると時事ニュースを得る媒体としてはテレビの力は未だに健在ということかもしれない。一般的に時事ニュースを録画して視聴するとは考えづらいため、この短い時間の中にテレビから時事ニュースの情報を得ているということだろう。
とはいえ、テレビを視聴している時間だけで時事ニュースの情報を得ているとは考えにくい。2位以下の媒体も組み合わせながら、日々の情報を追っているのではないだろうか。

座談会メンバーにも同様の質問をしたところ、時事ニュースをチェックする頻度については「毎日複数回」が3名、「1日1回」が1名、「2-3日に1回」が2名となった。アンケート結果とやや比率が異なるものの、定期的にチェックしているということはうかがえる。同様に、チェックする媒体について聞くと、アンケート結果とは異なりテレビと回答したのは6名中1名。一方、アンケートで2位だったTwitterは全員が活用しているとのことだった。「Twitterのトレンドを見て、今盛り上がっているニュースをチェックしている」「特定の情報を得るためというよりはタイムラインを流し見て、興味があれば詳細を読む」など、時事ニュースを含めてタイムリーな情報が得られるTwitterを普段から情報収集ツールとして活用しているようだ。Twitterは世間で話題になっている情報がランキング形式で表示される“トレンド”というトピックがあり、リアルタイムで更新されている。時間が決まっているテレビ番組と異なり、世界中のあらゆるニュースを知りたいときにすぐ調べることも可能だ。1日の中でも次々に話題となるニュースが変わるため、特に1日1回以上時事ニュースをチェックするには適したツールだと言えるだろう。

なお、座談会ではニュースをチェックする習慣がついたきっかけについても聞いてみたところ「小学生の頃から家族で朝ご飯を食べる際にニュース番組がついていて、その頃から習慣がついた」というような、家族や周囲の影響で見始めたとの声が半数以上あった。総務省統計局が行った「令和2年国勢調査」によると、未婚の20~24歳のうち約7割が家族と同居している。幼少期からの習慣が続いているとすれば、引き続き朝食を食べる際にニュース番組を見ているといった世帯も多いとも考えられる。チェックする媒体については住環境に左右される可能性もありそうだ。

職場での雑談ネタを時事ニュースから仕入れる

さらに座談会参加者に「時事ニュースを知っていたことで仕事や日常生活に活きた経験があるか?」と尋ねたところ、複数の参加者が「ある」と回答。「職場で話題のニュースについて若者の意見を求められたときに、とっさに自分の意見が話せた」「ベテランの上司や先輩とランチに行って話のネタが尽きてしまったときの話題に出せる」など、特に職場での会話で活用しているようだ。それ以外にも「年上の方ほど時事ニュースに敏感。“若い子はそんなことも知らないんだね“と思われたりするのも、話の輪に入れないのももったいないので情報収集している」という声もあった。

時事ニュースはそのときに社会で起きている出来事のため、年代を問わず共通の話題となりやすい。職場での雑談ネタは、仕事の話やプライベートの話、時事ニュース辺りが一般的だ。Z世代は多様性を尊重し、自分と異なる意見でも否定しないことが多く、第2回の投資に関する話題でもあったように、堅実な側面も強い。この2点を踏まえると年長者と堅実にコミュニケーションをとるための準備として、時事ニュースをチェックしているという人も少なくなさそうだ。

深く知りたい情報は検索エンジン+他ツールで検索

続いて「仕事や勉強でわからないことを調べる際、どのような手段で調べますか?」と質問したところ、「検索エンジン」が94.4%とダントツの結果となった。【図3】

【図3】わからないことを調べるときの手段/はたらきかたラボ調査

2位以下はYouTube、Twitter、書籍と続いていくが、2位のYouTubeでさえ33.8%と検索エンジンの4割にも満たない。時折「Z世代はググらない」や「Z世代は動画で検索する」というような記事を見かけることもあるが、それとは異なるアンケート結果となった。

自由回答で「具体的にどの媒体でどんな内容を調べたのか?」について回答してもらったところ、検索エンジンでは「資格の勉強中に出たわからないこと」や「ビジネス文章や正しい日本語」「データの分析方法」「仕事で必要なコロナ関連の助成金の申請方法」など幅広い内容を調べていることがわかった。YouTubeでは「PCの便利機能」「株や積み立てNISAのやりかた」「わからない数学の問題の解き方」などが挙げられた。同じ動画媒体であるTikTokでも「エクセルの裏技」を調べたという回答もあり、具体的な手順や方法を見たいときに動画系メディアを使用することが多いようだ。Twitterでは時事ニュースの情報、Instagramでは香水やオフィスカジュアルなどファッションに関する情報からエクセルのショートカットキーまとめ等も検索する、という回答があり、それぞれのツール特性に合わせて日常的に使い分けている姿が見えた。

この結果を受けて、座談会参加者に「知りたい情報に合わせてツールを使い分けて検索しているか?」を尋ねたところ、6人全員が「使い分けている」と回答。具体的な内容としては「急いでいるときはGoogle検索、より深く学びたいときはYouTubeで検索する」「ざっくりと概要が知りたいときは検索エンジン、より深く知りたいときはSNSを使ってなるべく多くの人の意見をみる。特にTwitterは多くの意見をみられるのでよく活用している」とのこと。各ツールの特性を知っているからこそ、上手に使い分けができているようだ。

あるメンバーは「転職活動時に”転職系YouTuber”の動画を参考にした。話す内容は本や文章でも学べるけど、話し方の抑揚や振る舞いは動画でしかわからないと思ったのでYouTubeで調べた」とより具体例を挙げての回答もあった。動画の情報伝達力は文字の5,000倍とも言われており、(※画像の伝達力は文字の7倍)ある研究によれば1分間の動画を文字情報に直すと、180万語になるという結果も出ている(※2)。より短時間で詳しく物事を知りたい場合に動画を活用するというのは非常に効率的な選択と言えるだろう。 物心ついた頃から便利なツールが身近にあった彼らには、情報を効率良く得るために何を使えばいいのかを選択するスキルが当たり前のように身についているのかもしれない。
※2:アメリカの調査会社Forrester ResearchのJames McQuvey博士による調査。
VIDEOBREWERY by EPIPHEO / 18 Marketing Statistics And What It Means For Video Marketing

SNS上にある情報がすべて正しいわけではないという前提

最後に「テレビなどのマスメディアとSNSを比べたとき、SNS上の情報をどの程度信頼していますか?」と座談会メンバーに質問してみた。すると「時事ニュースに関しては、テレビ局のアカウントなど発信源が信頼できるところなら信用できる」という、ツールで判断しているというよりも情報ソースで判断している回答が挙がった。総務省の「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、10代のメディア信頼度の高さはテレビ、新聞、インターネット、雑誌の順。20代のメディア信頼度の高さは新聞、テレビ、インターネット、雑誌の順である。また、マイナビが調査した「2023年卒大学生のライフスタイル調査」によると「情報源として最も信頼度が高いメディア」の1位は新聞であった。このことから、SNS等のツールでも新聞社やテレビ局などのアカウントを「信頼できる情報を発信するアカウント」としてみているのだろう。

一方、「テレビだから信用できる、SNSだから信用できないといった判断をするのではなく、どの媒体が・どんな情報を扱っているかによって信頼できる情報かを見極めている」といった情報リテラシーの高さが感じられる意見も挙がった。総務省の「情報通信白書」では2020年2月頃に流布した「新型コロナに起因するトイレットペーパー不足」に関する偽情報についての情報源を調査している。情報源となっていたのは1位がテレビ、2位がニュース配信、3位がSNSとなっていた。偽情報の発端はSNS上の投稿だったが、それをメディアがニュースサイトやテレビ番組で取り上げたことにより加速度的に偽情報が広まったとされる。これは各メディアが偽情報自体を拡散したというよりも「偽情報が広まっている」という報道をしたために結果的に偽情報のニュース源となっていたというのが実状だろう(※3)。
※3:「トイレットペーパーが不足するという偽情報の拡散により、トイレットペーパーが不足している」と各メディアが報道したことにより、元の偽情報を見ていない人も、トイレットペーパー不足を懸念して買い占め等を行うといった現象が起きた。

誰もが自由に発信できるSNSとは異なり、各メディア内にはチェック体制もあり比較的正しい情報が発信されやすい仕組みになっている。ただ、先に示した事例のようにメディアによって結果的に偽情報が広まってしまうということもある。座談会メンバーの回答にあるように、テレビだから、新聞だから、と判断するのではなくしっかりと情報の正誤を見極める力が求められているのだろう。座談会メンバーの回答は日々情報さまざまな情報が氾濫している中で、彼らなりに正しく情報を得ようとする姿勢が十分に感じられた。 特にSNSで見聞きする情報に関しては「情報は流し見する程度に留める」「趣味など自分が楽しむだけの分野なら多少間違った内容でも構わない」など、誤った情報がある前提で、情報収集しているとのことだった。

まとめ—ツールを使い分け多様な情報の中から適した内容を見つける—

Z世代の情報収集行動については「ググらない」「動画で検索する」という傾向があるという記事もあるが、今回の調査結果を踏まえると他の世代と同様に検索エンジンを利用することや動画だけで物事を調べているわけではない、という実態がわかった。また、「若者のテレビ離れ」が叫ばれているものの、時事ニュースに関してはテレビも活用して情報収集しており、職場での上司や取引先とのコミュニケーションに活かしている人が多いことも明らかとなった。

時事ニュースはもちろん、仕事や勉強で必要な情報を得るためには検索エンジンやSNS等も含めてさまざまなツールをフレキシブルに活用しており、その使い分け方法など彼らに学ぶことも多い。複数のツールを活用して自分と異なる意見でも貪欲に吸収していく姿勢は、多角的に物事を考えるきっかけにもなり、固定観念に捉われない発想を与えてくれそうだ。さらに、信頼できる情報なのかを疑い判断するクセがついているのは、常に確かな情報を元に会話をすることにも繋がるため、信頼関係の構築にも役立つのではないだろうか。 ソーシャルネイティブと呼ばれる彼らは、各SNSやツールの特性を把握したうえで日常的にさまざまな情報に触れている。Z世代は、他の世代に比べると情報収集のスキルや経験値が高い人が多いだろう。業務の一環としてSNSに力を入れる企業も多い現代、「正しい情報収集をすること」また「正しい情報を発信すること」は重要なスキルである。これからを担うZ世代の情報リテラシーの高さがよくわかる調査となった。

調査概要
<アンケート調査>
調査時期:2022年7月15日~7月20日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国男女18~25歳 160名

<『はたらきかたラボ』オンライン座談会>
実施:2022年8月3日
参加者:マイナビ転職メンバー3名、Z総研コミュニティ所属メンバー3名、はたらきかたラボ所長 道満綾香(Z総研) 計7名(メンバー男女比 2:4)


著者情報
マイナビ転職「はたらきかたラボ」コラム担当

はたらきかたラボとは、Z世代のこれからの生き方や働き方について深く知るため、マイナビ転職とZ世代のシンクタンクである「Z総研」が手を組み、2022年3月に発足した運動体。毎月リアルZ世代コミュニティに所属する大学生~社会人(18~24歳)へのアンケートと、両社のZ世代社員がアンケート結果をもとに行う座談会からリアルなZ世代の声を拾い上げ、テーマごとに発信を行っている。

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