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Vol.1 枠にとらわれないZ世代の「結婚」と仕事—Z世代のリアル

はたらきかたラボ
著者
マイナビ転職「はたらきかたラボ」コラム担当
HATARAKIKATA LAB

はじめに

「Z世代」とは一般的に1996年~2010年頃に生まれた若者を指す言葉だ。幼少期からスマートフォンが生活の中で身近にあり、ソーシャルネットワークサービス(SNS)に慣れ親しんだ世代で、「スマホネイティブ」や「ソーシャルネイティブ」と呼ばれることも多い。今後、経済や文化、社会などさまざまな分野において中心になっていく世代ということで世界的に注目を集めている。

近い将来、働き手の主軸となっていくZ世代。マイナビ転職Z総研の共同活動体である「はたらきかたラボ」で行った調査と座談会の内容をもとに、さまざまな視点からZ世代を見つめ直すことで、”等身大のZ世代”の実像を明らかにしていきたい。第一回となる今回は、未婚率の上昇や晩婚化などが問題視される「結婚」をテーマに、Z世代の価値観を調査した。

7割の人が結婚願望を持っている

「選択的夫婦別姓」や「別居婚」「LGBT婚」「事実婚」など、法的な「結婚」以外のパートナーシップも注目されている。「結婚」に対する価値観も社会全体で少しずつ変化してきているなかではあるが、Z世代に「将来結婚を考えているか?」を聞いたところ、72.2%が「(直近でを含む)結婚を考えている」と回答【図1】。

将来結婚を考えているか/はたらきかたラボ・Z世代に対する調査
【図1】将来結婚を考えているか/はたらきかたラボ調査

2022年6月14日に内閣府が発表した「2022年版:男女共同参画白書」が独身者を対象にした今後の結婚願望について調査した結果によると、「結婚の意思がある」と回答した20代女性が64.6%、20代男性が54.4%とのこと。この結果と比較すると、20代全体よりも結婚を考える割合が高いことから、Z世代は比較的結婚に前向きであると考えられるのではないだろうか。

またZ世代への調査で「結婚を考えている」と答えた人に、「何歳で結婚したいか?」を追加で尋ねたところもっとも多かったのが25歳、次いで27歳、26歳と比較的20代後半での結婚を希望している人が多いようだ【図2】。

何歳で結婚したいか/はたらきかたラボ・Z世代に対する調査
【図2】何歳で結婚したいか/はたらきかたラボ調査

座談会メンバーに同様の質問をしたところ、6人全員が結婚を考えているとのこと。結婚したい年齢については25~30歳が4名、35~40歳が2名と意見が分かれた。25~30歳と回答した人は「ある程度働いてからの結婚・出産・育児を考えている」という意見が多く、一方35~40歳と回答した人は「若いうちは好きに仕事に取り組みたい」という意見であった。仕事に対する考え方や個人のライフプラン、ワークライフバランスなどを総合的に鑑みたうえで結婚したい年齢を回答していることはわかるが、いずれの場合も「仕事」を重視しており、比較的働くことに意欲的な姿勢が見受けられる。

パートナーと「結婚後の理想の働き方」を話し合いたい

続いて、1問目で既婚者および結婚を考えていると回答した人に「結婚後の理想の働き方があるか?」と聞いたところ、60.8%が「ある」と回答【図3】。

結婚後の理想の働き方/はたらきかたラボ・Z世代に対する調査
【図3】結婚後の理想の働き方/はたらきかたラボ調査

具体的な理想の働き方について自由記述で回答してもらったところ、「両方フルタイム」「共働きで家事も分担する」「夫婦で一緒に成長しながらキャリアをデザインしていきたい」という共働き派のほか、「時短勤務」「リモートで働く」「好きな時に在宅ワーク」など働き方を変えたいという人や、「子供ができたら仕事をセーブしたい」「子供に合わせて仕事量を変える働き方」といった家族との時間をしっかりと確保したいという人も。専業主婦(夫)になりたいという意見は少数派で、働き続けることを理想としている人が多いようだ。

座談会でも6人中5人が「結婚しても共働きが理想」と回答しており、多数派であることは間違いなさそうである。一方、「生活が上手くいくなら専業主夫という選択肢も考えている」という意見も見られた。時代的な背景もあってか、旧来的な性別役割分担意識は薄まりつつあるのだろう。

自由回答や座談会での意見の中には、結婚後の理想の形自体は決まっていないものの、「相手とも相談したうえで決める」や「相手の仕事に対する考え方を尊重したい」といった意見も複数見られた。自分の理想は持ちながらも、自身のパートナーと話し合って最適な形を見つけていきたいということだろう。また、座談会で自分と異なる意見が出ても、それを否定しない姿は「Z世代の多様性への受容度」を感じさせる場面だった。

従来の「結婚」のイメージや形にとらわれない柔軟性を持つ

最後に「あなたにとって”結婚”とは?」という質問に自由回答で聞いたところ、大きく3つの意見に分かれた。1つ目は「幸せの始まり」「人生を豊かにするもの」といったポジティブな意見。2つ目は「苗字を変えること」「自分の選択できる家族」「したい人がするもので、必ずしもしなくて良いもの」といった現実的な手続きや心境に即した意見。3つ目は「妥協」「幸せと我慢」「なんとなく怖いもの」といったマイナスな意見だ。座談会参加者の中では「超強力な味方になること」といったポジティブな意見や「自分の老後を支えてくれる人ができること」などの現実的な意見が中心で、マイナスな意見はあまり見られなかった。

あえて嫌なことをしたいと考えている人は少ないことを踏まえると、7割近くいる「結婚を考えている」人の多くは結婚に対してポジティブな意見を持っていると考えるのが自然だろう。一方でネガティブな意見というのもここ最近生まれたわけではないだろう。日本では昔からネガティブな意味で「結婚は人生の墓場(※1)」という言葉も使われており、もともと一定の割合でマイナスなイメージを持つ人がいたと考えられる。ただ、最近ではSNSなどで結婚・配偶者に関するマイナスな意見や、夫婦同姓制度に疑問を持つコメントを見る機会も増えていることから、現実的な意見やネガティブな意見が出ているのだと考えられる。
※1:フランスの詩人ボードレールが残した格言。本来は「自由気ままに恋愛するのではなく、一人の深く愛する人と墓のある教会で結婚しなさい」という言葉だったと言われる。性の乱れから性病が流行していた19世紀のフランスの現状を憂いて残したとされるが、日本では解釈を誤って現在周知されるようなネガティブな意味合いになった。

なお、座談会では「夫婦別姓」や「事実婚」「別居婚」など新しい形の結婚についての話題にも言及。夫婦別姓については、「女性の知り合いから夫婦別姓にしたいという話をよく聞く。自分が婿養子に行って苗字が変わると考えると迷うと思うので、そういう意見があるのは当然」「選択的夫婦別姓なら問題ないと思うし、手続きも楽になっていい」という意見が挙がった。

事実婚については「自分がするかどうかはわからないけれど、否定的ではない」という意見も。「第6回 人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」で発表された「日本社会における事実婚の実態」資料によると、事実婚を選んだ理由の上位に「夫婦別姓を通すため」が挙げられている。「男女共同参画白書」の調査によると、積極的に結婚したいと思わない40歳未満女性の25.6%が「苗字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」と回答しており、40歳以上ではその割合が35.3%に増えていることがわかる。同姓か別姓かが選べるようになることで、多少なりと結婚(法律婚)に前向きになる人が増える可能性はありそうだ【図4】。

積極的に結婚したいとは思わない理由/男女共同参画局「男女共同参画白書」
【図4】積極的に結婚したいとは思わない理由/男女共同参画局「男女共同参画白書」をもとにマイナビ作成

なお、別居婚に興味を持っている人の「1人の時間を大切にしたいのでいちばん理想的なのは、同じマンションの隣の部屋同士。理由はいつでも会える距離だけど、自分のスペースも確保できるから」という意見には、当初別居婚についてあまり肯定的ではなかったメンバーも「それなら良いかも」と意見を変える場面も見られた。幼少期から常にさまざまな情報に囲まれているからか、自分と異なる意見でも柔軟に取り入れられるのかもしれない。

まとめ~柔軟な発想で自分たちらしい結婚の形を探す~

今回の調査からZ世代は将来的に結婚を考えている人が多く、なかでも「ある程度仕事を覚えた20代後半で結婚したい」と考えている人が多いことがわかった。「若者は結婚願望がない」という報道もあるが、他の年代と比べたときに「結婚したい」と考えているZ世代が極端に少ない、ということはないようだ。国立社会保障・人口問題研究所が行った「第16回 出生動向基本調査」でも、今回の調査対象である18~24歳はその後の年代よりも「いずれ結婚するつもり」と回答している割合が若干ながら高くなっている【図5】。

「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者の割合/「第16回 出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)
【図5】「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者の割合/「第16回 出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)をもとにマイナビ作成

「仕事もしっかりしたいから20代後半で結婚を考えている」という意見が座談会で複数出たことや、結婚後も仕事を続けている状態を理想と回答している人が多いことを踏まえると、Z世代は仕事に対する意欲も高いのだろう。

ただ、「パートナーと方針を話し合ったうえで、専業主夫になる選択肢もあり」という発言もあったことから、自分の理想だけにこだわるというよりは、双方の意見を尊重したうえで「理想」の形を見つけていくというのがZ世代の価値観に一番近いのかもしれない。また、別居婚や夫婦別姓、事実婚についても最初から選択肢として排除しているという姿勢は見られなかった。

旧来の固定観念にとらわれず、さまざまな選択肢も踏まえたうえで”自分たちらしい結婚の形を模索していくことで、さらに新しい結婚の形が生まれてくるのだろうと感じさせる調査結果となった。

調査概要
<アンケート調査>
調査時期:2022年3月19日~3月24日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国男女18~25歳 165名

<『はたらきかたラボ』オンライン座談会>
実施:2022年4月8日
参加者:マイナビ転職メンバー3名、Z総研コミュニティ所属メンバー3名、はたらきかたラボ所長 道満綾香(Z総研) 計7名(メンバー男女比 2:4)


著者情報
マイナビ転職「はたらきかたラボ」コラム担当

はたらきかたラボとは、Z世代のこれからの生き方や働き方について深く知るため、マイナビ転職とZ世代のシンクタンクである「Z総研」が手を組み、2022年3月に発足した運動体。毎月リアルZ世代コミュニティに所属する大学生~社会人(18~24歳)へのアンケートと、両社のZ世代社員がアンケート結果をもとに行う座談会からリアルなZ世代の声を拾い上げ、テーマごとに発信を行っている。

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