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退職者とのつながりが資産になる、アルムナイとは?

キャリアリサーチLab編集部
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採用の場でよくきかれるようになった「アルムナイ」。アルムナイとは本来、大学などの卒業生を意味する。「企業同窓生」とも訳され、人事領域で使われる場合「企業を離職・退職した人の集まり」を指す。退職者と再雇用や業務委託といった形で共に仕事をしたり、元社員が顧客やアンバサダー化したりと、 退職した後も企業と退職者がつながりを持つことで新しい価値が生まれている。アルムナイは企業と退職者の新たな関係性のあり方として、注目を集めつつあるのだ。

なぜ今、アルムナイなのか

「退職はネガティブなもの」というイメージは変わりつつある。フリーランスや副業といった働き方の変化や、仕事の流動化により、キャリアアップ等を目的とした転職や退職は珍しくなくなってきている。従来は、企業と退職者は「退職したらそこで関係は終わり」という考え方が一般的だったが、最近では、ポジティブな退職が増え、企業と関係が円満なまま退職することも多い。そして、退職後も企業と関係を持ったり、退職者同士のコミュニティを作ったりするケースが増えており、アルムナイとのつながりそのものが資産になり得ると企業が気づき始めている。

無視できないアルムナイの効果

アルムナイとの関わりはさまざまだ。「アルムナイ採用」というように「採用」について取り扱われることも多いが、それだけではない。雇用関係でなくとも、退職後も定期的につながりを持ち続けることによって企業はさまざまなメリットを得ることができる。

別の会社に就職した元社員をきっかけに新しい取引先とのつながりを手に入れたり、仕事を業務委託したりと、企業と従業員という関係ではなくとも共に働くケースもある。アルムナイは社内では知りえなかった情報を得て、新しい視点や視座を共有してくれる。全くの部外者とは違い、働く上での事前に知っておくべき情報や熱量、温度感などのすり合わせも少なく済み、話がスムーズに進むことが多い。

もしくは、自社商品やサービスを購入する顧客になる可能性もある。アルムナイの顧客化ができるのは商品やサービスを取り扱う企業のみと限定的になるが、一般的な消費者よりも企業についてよく知っているため、ファンやアンバサダーになる可能性が高い。【図1】

アルムナイと退職した会社との関係
【図1】 アルムナイと退職した会社との関係

アルムナイを取り巻く現状と事例

アルムナイとの関わりを持つことで多くのメリットを得られるが、一方で退職者に対するネガティブイメージは根強くあるのも事実で、アルムナイの認知もまだまだ低い。

マイナビ中途採用状況調査(2021年版) によると、「アルムナイ採用を導入している計」が52.7%と半数を超えている。「アルムナイ採用を導入している」計は、従業員数301名以上の企業で7割弱、上場企業で7割を超えており、規模の大きい企業ほど、アルムナイ制度が整っている。【図2】

【図2】アルムナイ採用の導入状況/マイナビ中途採用状況調査(2021年版) 

具体的な事例を紹介すると、とある外資系企業ではアルムナイの会を定期的に行い、世界中で活躍するアルムナイと社員が交流することは会社にとって有益なことだと理解している。大手コンサルティング企業では25万人以上のアルムナイが登録するネットワークがある。年間多くのイベントが開催され、企業に関するニュースや求人情報なども多数掲載されている。

また、アルムナイを顧客化するという動きもある。大手外食企業では退職後も商品の割引サービスを受けられたり、試食会に参加できたりする制度を導入している。また、ホテル・レストランを運営する企業では退職後もホテルやレストランを特別価格で利用できる制度があるという。両社ともアルムナイの同伴者もサービスを受けられることが特徴だ。ブランドのファンを増やす施策の一環として、アルムナイと企業との新しい関係を作っている。

これから

変化が激しい時代において、転職や退職は今後も増え、当たり前になってくるだろう。少しずつではあるが、退職者とのつながりを持ちコミュニティを作る企業や、アルムナイに関する制度を導入する企業も増えている。退職者と良好な関係を保つことは会社にとっても財産になるため、必要不可欠といえる。企業と退職者の新しい関係としてアルムナイは今後も普及していくだろう

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