マイナビ キャリアリサーチLab

企業が学生に求める「主体性」が求められる背景とその伸ばし方

こんにちは。マイナビで学生向けの就職支援の仕事をしております村山と申します。

日頃は学生のみなさんがマイナビをどのように利用しているのかを調べたり、

マイナビ上で無料受検できる「適性診断MATCH plus」 ※ の受検結果やWEB模試試験の結果などを活用したデータの分析を行ったりしています。

その中で、大学のキャリアセンターの担当者や、学生自身へのアンケート調査から「主体性」を伸ばしたいという声をよく聞きます。弊社で行っている企業へのアンケート調査でも、求める要素で「主体性」は1位でした。

「主体性」が求められているということはこれからデータをもとにお示ししますが、今回は、はたして主体性だけで良いのか?という点を考えてみたいと思います。

※「適性診断MATCH plus」
https://job.mynavi.jp/23/pc/forward/forwardLowerGradeMatch/index 
「CAB」「GAB」「玉手箱」の採用テストを作成している。
日本エス・エイチ・エル(SHL社)がロジックを作成。
受検するとパーソナリティや業界、職種適性に加えて社会人基礎力を測ることができます。

企業が求める要素

企業が選考時に重視する力を見ていくと2021年卒、2022年卒採用ともに主体性が最多で、実に8割以上の企業が選考時に重視すると回答しています(図1)。

業界別に見てもすべての業界で主体性が最も高い回答比率となっています。これは今年に限ったことではなく、2008年(2009年卒を対象)の同内容の調査開始以来13年間、主体性が最も高い割合で重視され続けています。

つまり、ここ数年で主体性を求める企業が増えたわけではなく、新卒に対しては常に主体性が求められてきたと言えます。

主体性以外の回答を見てみますと「実行力」、「柔軟性」、「傾聴力」が高い回答比率となっています。業界別では「金融」、「官公庁・公社・団体」で「規律性」、「マスコミ」で「ストレスコントロール力」が高い回答比率となっており、業界ごとに多少異なる傾向が出ていると言えます(図2)。おそらく職務内容によって求められる要素も変わってくることが理由ではないでしょうか。

(図1)マイナビ 2022年卒企業新卒採用予定調査(2021年3月リリース)
(図2)マイナビ 2022年卒企業新卒採用予定調査(2021年3月リリース)

一方、同調査の別の設問に「WEB上でのコミュニケーション機会が増えたことで社員に求めるようになったこと」というものがあります(図3)。ここでは「相手の話を聞く力」が全体で最も高くなっており、昨年よりも傾聴力や柔軟性のポイントが上がっているのはこのような背景もあるのではとも考えられます。

働き方改革と総称される様々な取り組みや、ビジネスモデルの転換など企業側の変化はもちろんのこと、年代や性別、国籍など働く人の価値観の多様化も進んでおり、しっかりと相手の立場に寄り添い話を聞き、思考・行動ともに「柔軟」に対応していくことが一層求められるようになったとも言えそうです。

数年単位の変化や傾向などは、このように現在社会で起こっていることと調査結果を結び付けていくことで、変化の要因の仮説を立てることも可能ですし、他の調査データを合わせて見ていくことでその仮説を補強することもできます。しかし、就職指導、キャリア教育というシーンでは、そのような確からしさを補強していくことはあまり意味をなさないと私自身は考えています。

仮説が正しかったとしても、社会は毎年変化していきますし、学生も毎年変わります。それよりもここで大切なことは、変化している社会背景を考察することで、これから起こること、影響がありそうなことを予測し、今後のビジネスパーソンに求められることが何かを考えていくことだと思います。
これをもとにし、「主体性」や「柔軟性」という言葉を「主体的な行動とは○○の際に、○○という行動・思考ができること」などの具体的な行動まで言語化していくことで、学校として学生を導く短期的な方針を打ち出していくことのほうが意義があると考えます。

短期的と申し上げたのは、12年間の調査で常に求められてきた「主体性」ですが、主体性をあらわす行動や、主体的であると判断する価値基準は変化していると考えられるためです。

主体性という言葉は一見するとわかりやすく、なんとなく概念的に理解できるため、安易に使ってしまいますが、きちんと言葉を分解し、学校ごとに「主体性とは」という共通意識を持つことで、主体性を伸ばすためにどのようなキャリア教育が望ましいのか、どのようなプログラムを設計するべきなのかという議論が深まるのではないでしょうか。加えて、学生に対しても「いま求められている主体性というのはこういう思考、行動ができることなんだよ」という具体的なアドバイスができ、指導の効果を高めるとともに効果検証も行いやすくなるのではないかと思います。

(図3)「WEB上でのコミュニケーション機会が増えたことによりスキルとして社員に求めるようになったこと」マイナビ 2022年卒企業新卒採用予定調査(2021年3月リリース)

学生側のデータ

続いて学生側の調査データを見ていきます。

ここで登場するデータは2022年卒の学生のうち、2021年7月時点で内定を得ている学生を対象にしている調査結果です。「これから社会で働く上で身に付けていきたいと思う能力を最大2つまで選んでください」と聞いたところ、主体性が他の項目に20ポイント以上の差を付けてトップ(42.0%)になっています。最も低いのは規律性で2.9%でした(図4)。

このデータで留意すべき点はいくつかあります。1点目は、学生自身が自己の特性に対してどのような認識を持っているのかという点です。つまり、すでに「主体性は身に付いていると認識している学生」と、「主体性が欠けていると考えている学生」が混在しているということです。2点目は、2つ選択しているので、1つは自身の課題感や、伸ばしたいことという本来の趣旨に沿った回答であったとしても、もう1つの回答は自身の意志ではなく、「企業が求めている要素だし、きっと必要だよね」という期待に応えようとする姿勢から主体性を選ぶ学生もいるのではないかということです。

少し行き過ぎた疑念でないかと感じる方もいらっしゃるとは思いますが、回答背景が読めないことを前提にすることで、「今時の学生は主体性が欠如している自覚があり、社会に出る前にちゃんと伸ばそうとは考えてるんですね。やはり、そういう学生は内定もらえますよね」というような、そうですね、と同意したくなるような解釈にも待ったをかけることができます。データ自体は事実ではありますが、特に学生が回答してくれているデータはその背景を一度考えることで、解釈の幅が広がるだけではなく、適切な理解と支援につながると感じています。

(図4)マイナビ 2022年卒内定者意識調査( 2021年7月リリース)

ではこの調査結果を基礎データとし、それぞれの学校で同じような調査を行い、就職支援に活かすならどう設計していくべきかを考えてみたいと思います。

まず学生自身の自己認識を確認すること、次にどの時点での回答かという2つのポイントは意識しておきたいところです。

自己認識については上述の通りなのですが、なぜ、どの時点での調査かが大切とか言えば、学生個々の経験値による差の影響が大きいと感じるためです。今回の調査データで補足をしますと、回答対象は「就職活動を経て内定を得た後」の学生です。

就職活動の中でも採用選考の結果は学生のメンタルに大きく影響を与える要素の1つではないでしょうか。選考過程を経てはじめて課題感を持つ学生もいれば、自信をつける学生もいますし、これを機に一気に成長する学生もいます。

大きな環境の変化や、成功・挫折の経験はその人の価値観を変えることもあります。ですから、学生個々の自己認識を測るにしても時期を定めることや、自己認識をしたきっかけや変化した機会を調査することで、より実態に即した支援が可能になると考えます。

このような調査をもとに支援施策を検討することで、自己認識に対する学生の自信を深めさせ、刺激を与える有効な機会を設計することができると考えます。もちろん、学生が個々に気がつき、自己研鑽できることが最も望ましいですが、その第一歩をサポートすることは学生個々の納得感のある就職につながるのではないでしょうか。学生の自信を深めるにしても、リアリティショックを与えるにしても、適切にサポートできる環境を考え、自分では歩き出せない学生が1人でも多く自走できるよう、弊社としても情報の側面からサポートしていきたいと考えています。

まだ検証段階ですが、参考事例として1つご紹介します。

実際に弊社で低学年向けに実施しているプログラムで次のようなトライアルを行いました。

・事前事後に適性検査「MATCH plus」を受検してもらい、結果の変化を測定
・事前の「MATCH plus」の結果をもとに目標設定
・ほとんど初対面の学生同士で約4時間のディスカッションとプレゼンテーション
※すべてオンライン環境で実施

実施後のアンケートでは、参加した学生の半数以上が適性検査の結果に変化があると回答し、7割の学生がこの変化に納得していました。

ここで重要なことは、1日で変化したものが力として身に付いているのかや、その結果自体の信頼性はあるのかといったことではないと考えています。大切な示唆は、1日とはいえ自身の特性に対する自己認識とツール等での客観的な結果をもとに、目標を立て、何かしらの活動に取り組むことで、活動自体への取り組みの意識を変え、成長を実感してもらうことも可能だということです。

同様のトライアルを1日だけではなく2日間行うパターンも検証しており、2日版の方がポジティブな変化が多く、また、納得度も高い結果となっています。 この結果から、自己認識を持たせ、意識的に活動できるように支援することで成長実感を学生に与え、自己肯定感の醸成にもつながるのではないかと考えています。今後もこのようなトライアルを継続的に行うことで、より効果的な支援の方法を探っていきたいと考えております。

(図5)課題解決プロジェクト実施後の低学年86名によるアンケート結果 「Match plus」結果の変化と納得度(2021年8-9月実施)

(図6) 課題解決プロジェクト実施後の低学年86名によるアンケート結果 「Match plus」受検結果の変化(2021年8-9月実施)

主体性を伸ばすには何が有効なのか

学生の主体性を伸ばすには2つのポイントがあると私は考えており、その1つ目は、学生一人ひとりの主体性が発揮されやすい環境を見つけるということです。

主体性を考える際に、一度立ち返って考えたいのは、「主体性」のある人はどんなシーンや環境でも主体的なのかということです。おそらく、そのような人は稀有ではないかと思います。上記でご紹介したプログラム実施時の学生アンケートでは、主体性を伸ばすために積極的に進行役や発表役に取り組んだ、といった声がありました。

学生個々に異なると思いますが、まずは学生自身にどんな状況、環境なら主体的に取り組めそうかということを考えさせることも良いのではないかと考えます。

2つ目は主体的に取り組んでみたいと前向きな気持ちになった際に、取り組める自力があるのかということです。

例えば、学業でより良い結果を出したい、と考えた学生がいたとします。おそらく決意したその時から学業に対して主体的に向き合うようになると思います。しかし、学業で良い結果を出すために状況を分析し、計画を立て、着実に実行していくことができず、思っただけで何もできないままに時間が過ぎていけば、自己肯定感や主体性は徐々に失われていくのではないでしょうか。

一方で、主体的に取り組む対象を見つけ、その中で成長し、他の素養も引き上げられるケースもあれば、主体的に取り組む対象を見つけた際に、小さな成功体験や自身が望んだ結果が出せるような力もしくは適切な支援があれば、良いスパイラルに入るケースもあるはずです。

大学入学直後は意欲的でも、徐々に意欲が低下するというような例で考えると、1つ目の、より主体的に取り組みたい対象が見つかったというケース、そして2つ目の取り組もうとしたけど、自分の意思で維持できなかった(うまくできなかった)ケースが考えられます。

自校の学生が主体性を発揮できない、しにくいポイントをクリアにすることで結果として主体的な学生が増えるのではないかと思います。就職・キャリア支援部署には「きっかけづくり」と「後押し」を学校の特色や学生の傾向に合わせて行うことが求められてくるのではないでしょうか。

まとめ

  • 主体性が企業から求められていることは変わらないが、そのニュアンスは変化していることが考えられる。主体性という言葉を分解し、行動レベルまで落とし込んで学校としての共通認識をつくると良い
  • 学生自身が自身の特性と向き合う機会をつくることで成長を加速させることも可能主体性が発揮できない要因を分析し、必要に応じてケアする。

村山 享平 

2010年に毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)入社、長野県で新卒採用媒体の営業を経験後に一度退職。大学職員となり認証評価を担当、IR部署の立上げに関わる。再びマイナビに入社し、主に大学のキャリア支援部署と関わり、学生向けの就職ガイダンス講師を経験。現在はより効果的に学生支援ができるよう、学生対象調査の設計やマイナビ利用状況などのデータの収集・分析をしています。

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