マイナビ キャリアリサーチLab

終身雇用、年功序列…日本型雇用に対する世代間ギャップと、この20年の意識変化

コロナ禍をきっかけにリモートワークが促進されるなど日本社会でも働き方が大きく変わり、「多様な働き方」「ジョブ型雇用の導入」「人材の流動の活性化」など、日本型雇用を見直そうとする動きが活発になっている。最近の印象が強いので、「日本型雇用の見直し」と聞くと、新しい話題のようなイメージを持つ方もいるかもしれないが、議論自体はかなり前からなされている。

しかし、ジョブ型雇用が導入されている企業はまだ少なく、新卒一括採用は継続されており、新卒で入社した企業でそのまま働き続けている方も多いのではないだろうか。「日本型雇用」は日本社会に強く根付いており、また、それだけ良さもあるシステムなのだろう。

本コラムでは、そもそも働く人は「日本型雇用」についてどう感じているのだろうか、という点に注目する。2001年に独立行政法人労働政策研究・研修機構(以下、JILPT)で実施された「勤労意識に関する調査」を参考にして、2021年12月に調査を実施した。2001年のJILPTの結果と、2021年のマイナビ実施調査の結果を比較することで、この20年間でどのように意識が変わったのか、また変わらなかったのかを探ろうと思う。

なお、マイナビで実施した調査では可能な限りJILPTで実施した調査と調査対象を合わせるように調整しているが、調査方法や就労状況の条件が異なる(※1)こともあり、完全に調査対象が一致していない点をご了承いただきたい。

調査概要

日本型雇用の成り立ち

まず、そもそも「日本型雇用」はどのように成立したのか。JILPTの報告書(※2)によると『高度成長前期に、長期雇用と「雇用の維持」最優先の労使の姿勢の確立、技術革新等に対応した賃金・処遇面における職・工の区分の撤廃と一体的な従業員制度の形成をみた。さらに、高度成長後期に、学卒一括採用方式の形成、職能等級制度と職能給の導入・定着、配置転換やOJTなどの能力開発手法の確立、労使コミュニケーションの活発化、企業中心主義と組織の一体化などが進み、1960年代後半から1970年代にかけて「日本的雇用システム」が確立するに至った』とある。日本型雇用は安定的な経済成長を背景に、「安定した雇用の維持」を目指して確立したのだ。
(※2)資料シリーズ No.199「雇用システムの生成と変貌―政策との関連―」

では、日本型雇用が見直されるようになったのはなぜなのだろうか。きっかけは「バブル崩壊」である。雇用主である企業の多くが打撃を受け、雇用の維持が難しくなり、失業率が上昇した。1995年の第8次雇用対策基本計画では、雇用対策の基本的事項の第1に「雇用の創出と失業なき労働移動の実現が挙げられた。また、1993年からの「就職氷河期」と呼ばれる新規学卒者の就職が極めて厳しい状況は長期化し、若年者の失業率が急速に高まったことも、「新卒一括採用」の在り方に疑問を持たれるきっかけになった。

その後、リーマンショックで一旦上昇した失業率も、全体的には改善している。しかしバブル崩壊後を「失われた20年」(30年という人もいる)というように、日本経済の成長率は低く、長く低迷しているとの評価が主流だ。企業が従業員全員を新卒入社から定年まで維持することが難しくなったり、変化の激しい環境下で、必要とされるスキル・能力も変化したりするなどして、「新卒で企業に入社したら定年まで安泰」という世界観ではなくなりつつあることは明白だろう。

「1つの企業」か「複数の企業」、望ましいキャリアは?

2021年のマイナビ調査で、現在、働いているかいないかに関わらず、「望ましいと思う仕事のコース(職業キャリア)」を聞いたところ、「わからない」「どちらともいえない」を除くと、全体では「1つの企業に長く勤め、だんだん管理的な地位になっていくコース」と「1つの企業に長く勤め、ある仕事の専門家になるコース」が14.1%と同率で最多、次いで「いくつかの企業を経験して、ある仕事の専門家になるコース」が11.6%と続く。

性別・年代別に見ると、60代男性では「1つの企業に長く勤め、だんだん管理的な地位になっていくコース(23.0%)」が最多で、他の世代に比べて特徴的に高い。40代では男女ともに「1つの企業に長く勤め、ある仕事の専門家になるコース」最多となっている。また、30代は男性では「いくつかの企業を経験して、だんだん管理的な地位になっていくコース」が13.4%、女性では「いくつかの企業を経験して、ある仕事の専門家になるコース」が14.6%で最多となっており、他の年代と異なり「いくつかの企業を経験して~」の項目が高い。【図1】

望ましいと思うキャリア・性年代別

「管理職を目指すか、専門家を目指すか」については世代・性別による差があり、希望するキャリアパスという視点から別の議論が必要だが、本コラムでは、「一企業キャリア(終身雇用)」と「複数企業キャリア(転職あり)」の2つの志向の違いに注目した。以下のように選択肢を合算し、さらにその結果を2001年と比較する。

「一企業キャリア」
 =「1つの企業に長く勤め、だんだん管理的な地位になっていくコース」+「1つの企業に長く勤め、ある仕事の専門家になるコース」
「複数企業キャリア」
 =「いくつかの企業を経験して、だんだん管理的な地位になっていくコース」+「いくつかの企業を経験して、ある仕事の専門家になるコース」

2001年の結果を見ると、全体では「一企業キャリア」の割合が高い傾向にはあるが、20~40代の男性、20~30代の女性では「一企業キャリア」と「複数企業キャリア」の割合が同程度になっている。特に当時20~30代前半の人は新卒入社の時期が新規学卒者の就職が厳しい時期(いわゆる氷河期世代)で、希望する仕事に就けなかった人も多く、「複数企業キャリア」を視野に入れていた、と考えられるかもしれない。一方、バブル崩壊前に入社し、働き盛りである30~40代を過ごした50~60代男性は4割以上が「一企業キャリア」を選択しているが、日本型雇用の恩恵を受けた世代として自然な選択だろうと思う。【図2】

次に2021年の結果を見ると、先述したように全体では「一企業キャリア」が高いものの、全世代で4割を超えるほどの多数派というわけではない。その分「複数企業キャリア」が高くなっているのかというとそうでもないのだ。2001年の結果と比較して、大きく変わったのは「どちらともいえない・わからない」の割合が大幅に増えている点である。【図3】【図4】

もちろん、調査方法の違い(2001年は調査員による訪問調査、2021年はインターネット調査)等が影響している点は否めないが、筆者は「価値観が多様化したことで、“望ましいキャリアはこれだ”と決めづらくなっている」と考えた。

望ましいキャリア形成(2001年)
望ましいキャリア形成(2021年)
望ましいキャリア形成・20年比較

(2001年調査には「自営者」が含まれるが、2021年調査は「自営者」を対象としていないため、「独立自営キャリア」については比較を行わない)

「終身雇用」は良いけど、「年功序列」は良くない?

2021年調査の結果から、「日本型雇用」についての価値観を探っていく。

まず「1つの企業に定年まで勤める日本的な終身雇用(以下、終身雇用)」については、全体では「良い(どちらかといえば含む)」が54.7%、若い世代ほどその割合は低下するが、総じて「良い」と思われている。【図5】
一方、「勤続年数とともに給与が増えていく日本的な年功賃金(以下、年功序列)」については、50~60代男性では半数が「良い」と回答しているが、40代以下の男性では「良くない」と同程度、女性では「良い」のほうが多い。【図6】

日本型雇用として「終身雇用」と「年功序列」は並べて語られることが多いが、安定的な雇用の維持をもたらす「終身雇用」の恩恵はある意味ですべての人にとって平等であるものの、年齢とともに給与が増える「年功序列」については恩恵のある世代とない世代が生まれるため評価が分かれているようだ。バブル崩壊後の景気低迷期には給与がそれほど上がっておらず、また、今後、日本型雇用の崩壊が加速していくと予想されるため、若い世代にとってはより不平等感が強いのもうなずける。

女性についても同様の傾向が見られるものの、男性に比べると「終身雇用」「年功序列」ともに「良い」とする回答割合が高い。これは、産休・育休を取得することの多い女性は、「長く雇用され続ける」ことの利点が大きいためではないかと予想される。特に「育休」については取得できる人の要件が決まっており、取得には一定程度の雇用期間が必要となるケースが多い。また、「産休」は誰でも取得できるものだが、休暇を取得し、育児をしながら復職することを考えると、慣れた職場のほうが心理的ハードルの低いことは想像に難くない。

終身雇用について
年功序列について

参考までに、2001年調査の結果を並べると、より「終身雇用」と「年功序列」への評価の違いが明確に見える。「終身雇用」については「良い」とする意見が多いが【図7】、「年功序列」については特に若い世代で「良くない」との回答割合も同程度に見られ、意見が分かれていることがわかる。【図8】

終身雇用と年功序列・2001年

次に、旧来の日本型雇用に対する新しい考え方として「組織や企業にたよらず、自分で能力を磨いて自分で道を切り開いていくべきだという意見(以下、「自律的なキャリア観」)」と「職業能力を高めるためには、1つの会社で働き続けるよりも、複数の会社を経験した方がよい(以下、「複数企業経験によるキャリアアップ志向」)」を確認する。

「自律的なキャリア観」に対しては全体では「良い」という回答が多いが、30~40代男性で他の属性に比べてやや低い傾向がみられる。本調査だけでは明らかにできないが、「自分で能力を磨いて~」という自己研鑽の部分を否定する気持ちはないとすると、「組織や企業が従業員の能力を磨く場を用意すべき」と考えている可能性がある。一方、50~60代男性や、女性は年齢層が高いほど「良い」の割合が高くなる。役職定年・定年を控えた中高年や、正社員以外の状況である割合が高い女性は組織や企業から十分な研修機会を提供されていない可能性もあり、むしろ「自律的なキャリア観」が醸成されているという見方もできるかもしれない。【図9】

自律的なキャリア観

次に「複数企業経験によるキャリアアップ志向」を見ると、こちらも30~40代男性で「そう思う」の割合が他の属性よりも低く、特に40代男性は唯一「そう思わない」の割合のほうが高くなっている。【図10】

複数企業経験によるキャリアアップ志向

1993~2004年頃に新卒で就職活動を行った世代を「就職氷河期世代」と呼ぶが、大卒であれば1970~1980年に生まれた人たちが該当する。つまり現在40代の多くが該当しており、新卒時期に不本意な就職を行っている(もしくは就職できていない)可能性が高い。

以前、マイナビでまとめた「就職氷河期世代の実情と就労意識」によると、氷河期世代の転職意向理由は「自己成長・スキルアップのため」が全体よりも低く、「給与に不満があるため」が高くなっていた。職業人生のスタートで不満を持ち、その不満解消のために転職を行っていたとしたら、必ずしも「職業能力を高めるため」という意識を持っていないのも理解できる。

ここまで、日本型雇用といわれる特徴のうち、「終身雇用」「年功序列」に対する考え方に注目して検証してきた。こうしてみると、日本型雇用の崩壊はずいぶん前に始まっているようだが、この20年間、ずいぶんとゆっくり進んだ「過渡期」の状態だったような印象を持つ。誤解を恐れずにいうと、コロナ禍で各個人や企業が働き方を変えるようになり、ようやく日本型雇用に対する考え方の変革が進んだように感じる。

自己研鑽

筆者自身は1970代の後半生まれで、新卒の就職活動時期は氷河期世代であり、1度転職を経験した。属性は40代・女性である。振り返ると、特にワーク・ライフ・バランスへの考え方やチームのマネジメント方法などはずいぶんと変化したように思う。「終身雇用」はもう現実的ではないな、と感じる一方で、転職をすれば給料が下がってしまうリスクを感じたりもする。自分にとってどういうキャリア形成がベストなのか、かくいう筆者自身も常に悩んでいるのだ。

冒頭でお伝えしたとおり、「このライフコースが正解です」という典型的なパターンがなくなっていることは確かであり、望ましいキャリアは「ケース・バイ・ケース」なのだろう。そういう意味で、ここで日本型雇用の是非を問うつもりはない。安定的な雇用を維持することのメリットは大きく、だからこそ、継続されてきたのだと思う。

問題は、組織と働く側(個人)の関係性に甘えが生まれ、「新卒で企業に入社したら定年まで安泰」と思って、変化に対応するための自己研鑽などの努力を止めてしまうことだろう。働く側(個人)は正しく危機感を持ち、組織にとって有益な人材であり続ける必要があるし、逆に、組織はそういう人材が「働き続けたい」と思えるベネフィットを提供し続けなければならない。自律した者同士の関係性のなかで、安定した雇用が維持されるのだとしたら、それが最も良い状況ではないだろうか、と考えている。

キャリアリサーチラボ 主任研究員 東郷こずえ