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既卒者として活動することのリアル

既卒者とは「内定を得なかった学生」だけではない

 既卒者とは、大学や大学院を卒業した後も就職活動を行っている人たちを指す。在学中に内定を得ることができなかった人、内定を得たものの辞退した人、内定を得て就職したもののアルバイトなどで働きながら就職活動を続けている人など、就職活動を行う背景はさまざまである。

 マイナビが2021年8月に発表した研究レポート「既卒者採用の10年間とこれから」によれば、2012年卒当時と比べて、在学中に内定を得たことがありそのうえで再度就職活動をする既卒者の数は2倍以上にもなっている。また、卒業後に活動する理由を、①内定を得て、受諾したが就職しなかった、②内定を得たが、受諾せずに辞退した、③在学中に活動したものの、内定を得なかった、④在学中に活動しなかった、の4つに分類し、既卒者=在学中に内定を得られず卒業後も就職活動をする人、というイメージ(上記4分類で言いうところの③のような人)に限定せず、多様な背景・状況から活動していることを明らかにしている。

「既卒者=授業がない分、就職活動により時間が割ける」だけでもない

 卒業後の活動の仕方についても、その実態はさまざまだ。既卒者へのイメージの1つとして、「大学を卒業し学業から解放されているので、就職活動に専念でき、活動量自体もおのずと増える」というものがあるかもしれない。同じく既卒者を対象にした「2021年度 既卒者の就職活動に関する調査」でも、「卒業後の就職活動において良かったと思うこと」という質問に対し、1番多かった回答は「授業や試験がなくなったので、就職活動に多くの時間を充てられた」で36.1%だった。

既卒者としての活動で、良かったと思うこと
※マイナビ 2021年度 既卒者の就職活動に関する調査より

 また「在学中の就職活動に比べて卒業後の就職活動では活動量に変化はありましたか」という質問に対して、「増えた」(「かなり増えた」と「やや増えた」の合計)は46.5%であり、「あまり変わらない」が22.7%、「減った」(「やや減った」と「かなり減った」の合計)は30.8%であった。「増えた」という回答がボリュームゾーンではあるが、卒業したからと言って必ずしも活動量が増えている既卒者だけではないようだ。

在学中と卒業後を比べた際の、活動量の変化
※マイナビ 2021年度 既卒者の就職活動に関する調査より

 必ずしも活動量が増えている人ばかりではない、ということは、活動量に対するフリーコメントからも見ることができる。以下、その一部を抜粋する。

活動量が増えたと答えた理由(フリーアンサー)
※マイナビ 2021年度 既卒者の就職活動に関する調査より

 ここにある「在学中は研究と両立することが難しく時間が取れなかったが、卒業後は全ての時間を使うことができたため」という回答は、「卒業して時間が生まれたことで活動量を増やすことができる」という既卒者イメージに近いものだろう。その他、単に使える時間が増えたかどうかとは別に、既卒者としての活動に焦りを感じるなどで、意識的に活動量を増やしている既卒者の姿も見える。

 続いて「変わらない」と答えた理由も紹介する。

活動量が変わらないと答えた理由(フリーアンサー)
※マイナビ 2021年度 既卒者の就職活動に関する調査より

「非正規で働きながらなので忙しい」という回答からもわかるように、大学での授業がなくなった代わりにパートやアルバイト等で働く時間が増え、総じて見ると就職活動にかける時間は在学中と変わらないというケースもある。「希望する業界は在学中と変わらない」という回答は、前述の活動量が増えたと回答した理由の1つにある「多少希望職種と違っても、自分の理想のキャリアプランに合わせて転職をしていけばいいと考え(中略)選考を受ける企業が増えた」と対をなすパターンであり、志望業界への志望度・こだわり具合も活動量に影響があることがわかる。また、既卒で応募可能な企業については「少ないという事はない」という回答がある一方、「既卒の応募を受け付けておらず(略)」のように逆の捉え方をする回答もある。

活動量が減ったと答えた理由(フリーアンサー)
※マイナビ 2021年度 既卒者の就職活動に関する調査より

 活動量が「減った」という理由への自由回答にも、アルバイト等で就労しながら就職活動を行う既卒者の姿が見えてくる。「仕事を通じて自分のやりたい仕事が明確になっており、応募企業を絞り込むことができたから」というように、就労経験を通じて自己分析が進んだという人もいれば、アルバイト先企業への正社員登用と公務員試験に並行して挑んでいる既卒者もおり、就労しながら就職活動と言ってもさまざまなようだ。また「居住地が地方になり、希望勤務地と少し遠くなったため」のように、卒業して地元に戻るなどの理由で希望勤務地との物理的な距離が開いてしまった、という事情も垣間見える。卒業後の活動の仕方についても個々の抱える事情により異なり、まさに千差万別なのだ。

 もちろん、一概に「活動量を増やせばいい」というものでもない。活動量が増えることで志望先企業といった選択肢が広がり、結果として内定を獲得しやすくなる可能性はある。しかし、中には「希望する業界は在学時と変わらない」のように、活動量を増やす必要性がない層もいるだろう。一方で、「非正規で働きながらなので忙しい」や、「居住地が地方になり、希望勤務地と少し遠くなった」というように、活動量を増やしたいが、増やせないという事情を持つ既卒者も存在している。

「オンライン化」は既卒者を救えるか

 就労しながらの就職活動は、勤務先での業務と両立しなければならない。勤務先の就労時間帯によっては、シフトを調整したり休暇を取得して選考を受けにいく必要などもあるだろう。また「居住地が地方になり、希望勤務地と少し遠くなった」というように、希望する企業の選考に参加することに困難を感じる人もいる。このように、「時間的」「距離的」な制約のもとで、活動量を増やしたくても増やせない人はどうすればいいだろうか。

 筆者は、この課題を解決できるのは「就職活動におけるオンライン化の浸透」ではないかと考えている。それも、インターンシップ開催や選考実施といった「企業側」のオンライン化対応だけでなく、キャリアセンターや就職課といった「大学側」のオンライン化対応、という2つの軸での浸透が重要になるのではないか。

 例えば、就労しながら活動する既卒者にとっては、企業が選考において積極的にオンライン開催を取り入れている場合、その開催時間帯と就労先の勤務時間とを調整しながらではあるが、オンラインで自宅などからより気軽に参加することが可能になる。都市部から地方、地方から都市部と、遠方企業の選考に対する参加ハードルは低くなるだろう。企業向けに実施した「2022年卒企業新卒採用活動調査」では、企業セミナーや面接の一部がWEB化されたことで、他エリアからの応募者が増えたという結果も出ている。

コロナ禍前後で、応募者の居住地はどのように変わったか
※マイナビ 2022年卒企業新卒採用活動調査より

 また大学のキャリアセンターによる各種サポートも、オンラインであれば時間的・距離的な事情で受けられないといった懸念は軽減されるだろう。「2021年度 キャリア・就職支援への取り組み調査」では、新型コロナウイルス感染拡大の中、学内の就職支援においても、就職ガイダンス、業界研究セミナー、学内企業説明会について「WEBでの開催が9割以上」とする回答が半数を超えるなど、WEB利用がメインとなっている様子がわかる。

キャリアセンターによる就職支援WEB実施の割合
※マイナビ 2021年度 キャリア・就職支援への取り組み調査より

「卒業後3年以内は新卒枠」のさらなる浸透も必要

 このように、企業へのアプローチ方法(説明会や選考への参加方法)と、大学から学生へのサポート方法(就職ガイダンス、業界研究セミナー、学内企業説明会の実施方法)で、現在ではともにオンライン化が進んでいる。そして、そのメリットは現役生だけでなく、既卒者にもあると思われる。活動量を増やしたくても増やせない既卒者にとって、就職活動のオンライン化は時間的・距離的な困難を和らげてくれるはずであり、活動量の増加につながる可能性がある。このオンライン化によるメリットを、大いに就職活動に活用してほしい。

 そして、オンライン化によるメリットの活用の他に、もう1つ必要となる軸がある。それは、卒業後の活動方法について、より具体的には、卒業後3年以内の既卒者は新卒として企業へ応募できるということについて、既卒者の認知度を向上させるという軸だ。

 前出の「活動量が『変わらない』と答えた理由」の中で、既卒で応募できる企業について「少ないという事はない」という声と「(企業が)既卒の応募を受け付けておらず」という、逆の認識を示す回答があった。(以下再掲)

活動量が変わらないと答えた理由(フリーアンサー)

 さらに前出の「既卒者の就職活動に関する調査」において、「卒業後の就職活動において大変だと思うこと」を答えてもらったところ、1位の回答は「既卒者の募集が少ない」(49.9%)で、「既卒として活動している理由を聞かれる」(47.4%)、「既卒者としての活動の仕方がわからなかった」(46.9%)が続いた。さらに「新卒の就職サイトに登録して活動していいものか迷った」(34.1%)、転職サイトなどの第2新卒採用や中途採用の募集に応募していいものか迷った」(30.7%)という回答も上位に上がった。これは総じて「既卒者でも応募可能な企業かどうかがわかりづらい」「多くの既卒者が、自身の身の振り方がわからない」という状況を示していると言えるだろう。

既卒者としての活動で、大変だったと思うこと
※マイナビ 2021年度 既卒者の就職活動に関する調査より

 既卒者の採用については、卒業後3年以内の既卒者は新卒枠として応募を受け付けるよう、経済界に対して政府から要請が出されている(2020 年度及び 2021 年度新卒者等の採用維持・促進に向けた特段の配慮に関する要請)。これはリーマンショックの影響を受けた2010年の就職難において発出されたものが、コロナ禍を受けて2020年に改めてアナウンスされたものだ。このアナウンスの存在について、まず既卒者自身が認識をさらに高める必要がある。場合によっては、キャリアセンター等によるさらなる周知も必要であろう。そのうえで、既卒者が新卒枠として企業へ積極的にアプローチを行い、並行して、企業側も新卒枠で応募を受け付している旨を明示することが望ましい。

 既卒者は、必ずしも現役生より時間があるわけではない。既卒者としての身の振り方もわからず、企業が既卒者を受け付けているかどうかもわかりづらい。就職活動のオンライン化(企業側・大学側)が進んだことで、既卒者として活動する際のいくつかの苦労・負担は軽減されるかもしれないが、それでも現役生とまったく同じようにはいかないのが実情だろう。とは言え、まったくアドバンテージがないかと言えばそうでもない。一番はじめに紹介したグラフに戻るが、「卒業後の就職活動においてよかったと思うこと」では、「選考や面接について経験済みなので対策がしやすかった」という回答が2番目に多い。1年おきに大半のプレーヤー(応募者)が入れ替わり、みながビギナーとして挑むことになる新卒採用というフィールドにおいて、前年の経験を活かせる者はごくわずかであり、アドバンテージでもある。

マイナビ 2022年卒 大学生就職意識調査」では、就職しなかった時の進路について「卒業して次年度就職活動する」が25.4%だった。学生の約4人に1人は、既卒者として活動するということを選択肢としてとらえていることになる。転職がこれまで以上に当たり前のものとなり、キャリア形成の仕方が多種多様になった現在。たとえ第一志望の企業・業界・仕事でなくても、ひとまず社会に出て社会人として経験を積むという選択肢もあれば、あくまで第一志望にこだわり卒業後も活動を続けるという選択肢もある。そして、そうした選択肢においては、既卒者が自身の活動方法を明確に理解すること(新卒枠での応募が可能であると意識すること)と、キャリアセンターや企業がその理解促進のために周知を続けていくことという、既卒者・大学・企業の3者の意識や取り組みが重要になってくるはずだ。

研究員 長谷川洋介

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