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学生のキャリア形成という視点から就活支援サービスを考える

キャリアリサーチLab編集部
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キャリアリサーチLab編集部

多岐にわたる就活支援サービス

学生と企業間の情報の不均一性をなくしたいという思いから、1990年代には各社で現在の就活支援サービスの前身となるサービスがスタートしていた。その種類は多岐にわたり、企業の求人広告を掲載する「就職情報サイト」をはじめ、近年はダイレクトリクルーティングやSNSを通じた採用手法が生まれるなど、変化が起こっている。

では改めて、学生が就活支援サービスを使う理由について考える。初めて就活をする彼らにとって、十分な量の企業情報を取得し、自身に合う企業と出会い、就職先を決定するというプロセスすべてを自身の手で実行することは極めて難しい。

ましてや、初めての就職先を決定するということは、その後のキャリアを大きく左右するという決断にもなりうる。そのような人生における一大イベントを行う際に膨大な選択肢を整理し、どのような物差しで決めていくかをサポートする”味方”として就活支援サービスは存在しているのだ。程度の差はあれ、就職を考える学生のほとんどが何かしらのサービスを利用していることから、就活支援サービスはある意味彼らのキャリア形成に大きく影響を及ぼしているといっても過言ではない。

このような状況を踏まえ本コラムでは、学生が自らの手でキャリアを切り開く最初の機会を迎えるうえでの”味方”である就活支援サービスについて、就職情報サイト(以下ナビサイト型と記述)とダイレクトリクルーティング(以下オファー型と記述)に関して双方の特徴をまとめ、学生にとって就活支援サービスがどのような存在なのかを論じていく。

サービスの特徴と学生からの見え方

まずは、ナビサイト型についてサービスの概要を説明する。学生を新卒で採用したい企業が求人情報を公開し、入社希望者のエントリーを募る。またサービスのオプションとして、エントリー者情報の管理や各種案内の送信などができ、企業、学生ともに現在利用者がもっとも多いのはこちらのサービスである。企業は学生に魅力的に映る情報公開を試みる一方で、学生のエントリーがなければそれ以降の選考に進むことはない。つまり、起点は求職者である学生にあるということになる。

それに対し、オファー型はどうか。こちらは就職活動を行う学生が、サービスを利用する際に自身のプロフィールを公開する。志望業種・職種や学生時代の経験、自己PR等その内容は多岐にわたる。そして、サービス利用企業は自社の採用要件に適した学生を探し、説明会や選考へ誘導するメッセージを送る。

学生は魅力的に映る情報公開を試みる一方で、企業からのオファーがなければそれ以降の選考に進むことはない。つまり、先ほどのナビサイト型と矢印の向きが正反対であり、起点は採用をする企業にあるということになる。

ただし、起点は異なるもののその後のフローに関して差異はほとんどないと言っていい。学生がエントリーしたにせよ企業からオファーを送ったにせよ、説明会や書類選考、面接選考などは等しく実施され、最終的な合否は企業に決定権がある。

相手に魅力的に映らなければアプローチを受けることもなく、活動が頓挫してしまうケースも考えられる。また当然ではあるが、特定の属性を持つ企業/学生に人気が集中するケースも大いにありうる(業種、専攻、学校など)。こうしたやりとりの中で、双方の合意が得られた場合に採用/就職成功というのが一連の流れである。

続いて、両者について学生側からどのように見えているかについて考える。これについては、特徴的である①基本姿勢②企業選定の労力という2つの視点から述べていこう。

まずは、①基本姿勢について。学生がナビサイト型のサービスを使うとき、基本的には「攻め」の姿勢である。これは学生側から企業にエントリーをすることによってはじめて、企業の採用フローの中に入っていくからである。これに対してオファー型では、学生の基本姿勢は「待ち」となる。企業からのオファーが来て初めて、自らの志向に合うかどうかを考え、承諾した場合にその後の選考を受けるという流れだからだ。またこれにより、”主導権”がどちらにあるかという考察もできる。ナビサイト型では、学生は「攻め」の姿勢を取ることから主導権はこちら側にあると感じられるだろう。一方のオファー型においては、学生が志望する業種や企業があったとしても、オファーがなければ採用フローの中に入っていくことはできない。さらに、選考において合否を決めるのもまた企業であるため、終始企業側に主導権があるように感じられるのではないだろうか。

次に、②企業選定の労力について考える。就職先候補として企業を選定するうえでどの程度手間がかかるかという意味で捉えていただいて差し支えない。これについて、ナビサイト型では大きな労力がかかることは間違いない。筆者も学生時代はナビサイト型のサービスを利用していたが、社会に出たことがない以上、どのような条件で見ていけばいいか最初は見当もつかない、という学生が大半であるように感じる。実際、就職情報サイト「マイナビ2022」には約24,000社の掲載(2021年3月1日時点)があり、その中から自身の志向に合った企業を探すとなると、容易ではないことが想像できるのではないだろうか。特に、自らの専攻分野と進路先が必ずしもリンクしない文系学部の学生であれば、「やりたいこと探し」に多大な労力がかかるケースは学校現場でも多くみられる。その一方、オファー型において学生による企業選定は比較的容易だ。自身に届いたオファーの中で、志望度の高い順に企業を選定し採用選考を受ければよい。以上より、学生側から見ても両者の特徴がくっきりと分かれていることがわかる。

まとめると、以下のようになる。

 ナビサイト型オファー型
①学生の基本姿勢攻め待ち
②企業選定の労力比較的大きい比較的小さい

以上が、ナビサイト型とオファー型の学生からの見え方である。これらからわかるように、どちらのサービスも学生から見ると一長一短である。ナビサイト型に掲載している大量の企業から、どんな企業が自分に合うかわからないままやみくもに探すことが「正」ではないのと同時に、オファーメッセージだけを頼りに自身の活動範囲を限定することも「正」ではないと私は考える。では、学生は就職活動をどのように進めていけばいいのだろうか。そこで、次のパートではもう一歩踏み込み、学生のキャリア形成という視点で、私の業務の中で出会った学校現場の教職員からの意見を基に論じていこう。

学生のキャリア形成を考える

冒頭で述べたとおり、就職活動は社会に出ることを初めて強く意識する活動であり、その後のキャリアを大きく左右するものとして学生側も理解をしている。その活動すべてを学生自身で完結させることは難しいと考えられるため、これを支援するために就活支援サービスが存在している。

また、同じく学生の就職・進路全般をサポートする存在として無視できない存在がある。それは、大学等の教育機関に設置されている就職支援部署だ。ご存知の方も多いかとは思うが、大学には「キャリアセンター」などの名称で進路指導を行う部門の設置が義務付けられている(※1)。当該部署では、学生の出口支援を目的として個別面談や就職ガイダンスの実施、学内企業説明会の運営など多岐にわたる支援を行っており、いわば「学校と社会の橋渡し役」として機能している非常に重要なセクションである。就職に関する情報を学校に求める学生は多く、支援行事はすでに大学や学生の中で恒例化しているといっても過言ではないだろう。私も学生時代には企業へ提出するエントリーシートの添削をお願いするいちユーザーであったこともあり、現在の職務ではそういった業務に関わる教職員の方の力になるために、さまざまな情報提供や企画の提案等を行っている。

日々キャリアセンター等に足を運ぶ中で、望ましい進路選択、キャリア形成に対してどのように考えているかについて意見を伺い、それを基に支援プログラムを策定しているわけだが、私が懇意にしているとある大学のキャリアセンター長との会話の中で就活支援サービスについての印象的な発言があった。

「オファー型のサービスの利便性は理解できる。ただ、それだけで就職先を探すのはいささか不安が残る。学生が”自らの意思で選択をした”という感覚が薄れる危険性をはらんでいるからだ」。

これを聞いて、私はハッとした。出口支援に関わる多くの大学教職員が思っていることを代表しているように感じたからだ。またこれは、キャリア理論に相応する考えでもある。理論家ドナルド・E・スーパーの提唱した「職業的成熟」(※2)では、6つの段階を経て人は「職業的成熟」あるいは「キャリア成熟」が果たされると述べている。また、この達成のために重要なのは自己概念の形成であり、それが不明確もしくは十分でない場合、職業選択も不適切であったり不満足なものとなったりしてしまう可能性も高くなると言われている。

ユーザーである学生は「自らのキャリア形成に役立つように」「自己概念を発達させよう」という意図で就活支援サービスを使うわけではないだろうが、教育現場の意見やキャリア理論を踏まえて考えてみると、サービスの捉え方が少し変わるのかもしれない。

(※1)「大学設置基準」 第四十二条
大学学校組織として大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施および厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。

(※2)ドナルド・E・スーパーとは

【補足】
実際、マイナビが学生向けに行った調査(※3)で入社先企業を知ったきっかけとして挙がったのは、逆求人サイト(=本コラムでいうオファー型)が2.4%に対して、就職情報サイトは37.6%に上る。多少の手間をかけてでも、自分で見つけて掴み取った企業に行きたい、という思いが表れているのかもしれない。

入社予定先企業を知ったきっかけ/マイナビ2022卒内定者意識調査
入社予定先企業を知ったきっかけ/マイナビ2022卒内定者意識調査

(※3)マイナビ2022卒内定者意識調査(2021年8月リリース) 

おわりに – 就活支援サービスとともに創る初期キャリア

ここまでナビサイト型とオファー型の特徴について整理してきた。両者の特徴を理解した上で、学生は目的に応じて使い分けている。今回取り上げたサービスを筆頭に、さまざまな就活支援サービスが現れている。就職支援に携わる身として、学生のキャリア形成に寄与できるような形で就活支援サービスの提供に努めていきたい。

最後に、学生のよりよいキャリア形成につながる企業選び、就活支援サービスの活用法について筆者の意見を論じ、本コラムを締めくくろう。

キャリア理論家ナンシー・K・シュロスバーグは、キャリアを発達させるのは転機(transition)の連続であると考え、自らに起こる転機がどういうものなのか、そしてそれにどのように対処すべきかについて理論を構築した。その中で、転機を以下のように区分している。

■3種類の転機の起こり方:

 予期している予期していない
起こる①予期していた転機②予期していなかった転機
起こらない③予期していたことが起こらなかった転機

シュロスバーグの理論を厳密に捉えると、「就活そのもの」を総合して「転機」とするのかもしれないが、就活支援を現場で行っている身としては、学生は就活をする中でも興味や価値観を大きく変え、自らのキャリアを発達させていると感じる。そこで、ここでは「企業との出会い」一つひとつを「転機」として捉える。先ほどの表で、①~③の3種類の転機の起こり方があることを示した。小さな転機の積み重ねにより、学生はキャリアを形成していく。そこに色や良し悪しはなく、学生自身の解釈があるのみだと考えている。重要なことは、いかに目の前の転機をポジティブに捉え、行動を起こせるかいうことだ。

以上の理論、状況を踏まえると、学生には自身の就活の進捗度合いによって就活支援サービスの使い方を考え、企業探しをしていくことをオススメする。活動を始めたばかりの段階であれば、形態を問わず幅広くサービスに触れ、幅広い転機を生み出す。そして経験を積んだ後は、自身の中に「見立て」あるいは「仮説」が生まれてくるだろう。それは、自身のキャリア形成において転機を生む主導権を自分が持つのか、他者に委ねるのか、もしくは並立させて進めるのかということである。この見立ては、その時々によって変わることや一貫性が持てないこともあるかもしれないが、それで構わない。時間の経過や経験の蓄積によって、自身の就活を見直すことこそが、自己概念の発達やドナルド・E・スーパーの言う「キャリア発達」につながるのだから。そして、最終的に企業選びや自身のキャリアの方向性が定まった後は、活動を収束させるためにも使用する就活支援サービスを選択して活用するといい。

こうしたプロセスは、ほとんどの学生は就活を通じて初めて経験するものだ。であれば、転機を避けるのではなく、自身のキャリア形成に役立てるために、利用できるものは大いに利用して将来を切り開いていってほしい。就活支援サービスを提供する者として、学生のキャリアが豊かなものになることを願って、本コラムを締めさせていただこう。


著者紹介
南谷知志 
マイナビ就職情報事業本部 神戸キャリアサポート課所属

新卒にてマイナビに入社、以来、一貫して大学・短大・専門学生の就職支援に携わる。主な活動は大学等キャリアセンター等の部署と連携した就職支援プログラムの企画。キャリアに関する講演はこれまで累計300回以上の実績を持つ。学校現場から見えることを基に、学生のよりよいキャリア形成を支援するために、新たな考え方を得るきっかけを意識し、日々情報を発信している。※所属は執筆時点のものです。

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