マイナビ キャリアリサーチLab

Vol.3 日常生活の中に根付くZ世代の「推し活」と仕事
—Z世代のリアル

はじめに

Z世代とは一般的に1996~2010年ごろに生まれた若者を指す言葉だ。今後、経済や文化、社会などさまざまな分野において中心になっていく世代ということで世界的に注目を集めている。

本シリーズでは、マイナビ転職Z総研の共同活動体である「はたらきかたラボ」で行った調査と座談会をもとに、さまざまなテーマから”等身大のZ世代”を明らかにしていきたい。第3回目となる今回はマーケティング市場としても注目を集めている「推し活」を取り上げる。

そもそも「推し」とは何か?

「推し」とは、もともとアイドルファンの中で使われていた用語で、アイドルグループ内で一番応援しているメンバーを指す言葉だった。それが徐々に他のジャンルにも広がり、今では広義の「好きなもの/人」を指す言葉として日常的に使われるようになっている。

「推し」は名詞的に使われることもあれば「推せる」「推している」と動詞的に使われることもある。名詞的に使われる場合は応援しているものや人を表し、動詞的に使われる場合は自分の行動を表す際に使うことが多い。

自分の推しを応援する行為を「推し活」と言い、代表的なものとしてはCD・グッズの購入やライブへの参加、SNSアカウントのフォローのほか、投稿された動画にいいねやコメントをするなどが挙げられる。金銭の多寡など客観的な指標で「推し活をしている/していない」と論じられることは少なく、基本は本人が推しを応援していれば「推し活をしている」ことになる。

Z世代についてはさまざまな先行調査があるが、それによるとZ世代を語るにあたり「推し」は欠かせない要素だ。実際に「推し」が存在していることでどんな影響があるのか、働き方に何か関わりがあるのかを調査してみた。

「推し」がいることがスタンダードになっている

今回の調査では回答のしやすさを考慮し、推し=人物と想定して設問を作成し「推しはいますか?」と聞いた。すると、93.7%人が「はい」と回答【図1】。

推しはいるか/はたらきかたラボ調査
【図1】推しはいるか/はたらきかたラボ調査

推しがいること=一般的なことということがうかがえる。座談会メンバーも8人中7人に推しがおり、アンケート結果と近しい割合となった。それぞれの推しについて聞いてみると、アイドルやお笑い芸人、マンガ・アニメのキャラクターのほか、スポーツ選手、 YouTuberなどの動画配信者と多種多様な回答が得られた。

かつては時代を代表するアイドルやアーティストに熱狂的なファンがつき、それが社会現象化することもあった。今では多種多様なコンテンツにスマホひとつでアクセスすることができるという利便性から、受け手が何を見るかを選択することができる。そういった時代背景もあり、同年代ながらそれぞれ触れているメディアによって「推し」のジャンルが異なっているのであろう。

座談会参加者に追加で「趣味と推しの違いは何か?」と尋ねたところ、推しの特徴は「お金や時間をかけることが惜しくないと思える」「SNSの投稿を見ただけで沸く(=テンションが上がる)」「聞かれなくても誰かにおすすめしたくなる」など、具体的な出来事を挙げての回答が多かった。そんな中、一番共感を集めたのは「そのジャンルの中で一番好きなもの(人)が推し」という意見。もちろん、推し活をしている人の中にはひとつのジャンルで複数の推しが存在する人もいるだろう。しかし、限られた時間やお金をすべての推しに均等に費やすことは難しい。そう考えると「そのジャンルの中で一番好きなもの(人)」は一応の定義にはなり得るのではないかと思われる。

ただ、9割以上に推しがいるとはいえ全ての人に推しがいるわけではない。推しのいない座談会メンバーからは「推しがいる前提で話をされるのはあまりいい気がしない」というコメントもあり、コミュニケーションには気を付けたいところだ。

お金をかける、時間をかける…推し方は人それぞれ

1問目で「推しがいる」と回答した人を対象に、「1年間で推し活に使っているお金はいくらか?」と尋ねたところ、もっとも多いのは1万超~3万円で27.2%。次いで5万超~10万円、5000円超~1万円という結果となった【図2】。

1年間で推し活に使う金額/はたらきかたラボ調査
【図2】1年間で推し活に使う金額/はたらきかたラボ調査

推しているジャンルにもよるだろうが、同じ「推し活」をしていると言ってもかけている金額に関しては大きな個人差があるようだ。

第2回コラムで見たように、将来に備えて貯金をしている人が多く、投資や資産運用に関しては金銭的な理由で始められていないという声も多かった。そのことを踏まえると、おそらくZ世代は限られた資金のなかで効率的に推し活をしているのだろう。とはいえ、年間10万円以上を推し活に使っている人は11.4%もいる。月額平均にすれば約8,333円以上となる。限られた可処分所得の中で推し活と貯金を両立するのは難しいのではないだろうか。座談会メンバーの中で推し活に年間10万円以上使うと回答した人が2名いたが、彼らは「普段の給与での貯金は難しいため、賞与だけは貯金するようにしている」などメリハリをつけているようだった。自分の将来と推し活に折り合いを付けるための方法を自分なりに考えている、ということだろう。

また座談会では「CDが発売するたびに10万円程度は購入する。それが年間3ー4回程度あり、他のグッズも買ったりするので50万円は推し活に使っている」という、今回の調査平均63,570円を大幅に上回る金額で推し活をしている人もいれば、「結婚しているのでなるべくお金を使わず楽しむようにしている」と人もいた。それぞれの日常生活での支出に優先順位をつけているということだろう。また、動画配信者を推している人であれば、動画の生配信でコメントをする、繰り返し動画を見て再生回数を増やす、投げ銭(※1)をする等できる推し活も限られていることから、金額というよりも時間をかけているということなのかもしれない。
※1:リアルタイムで動画配信をしている際に視聴者が演者にオンラインで金銭を送金すること。プラットフォームにより表示方法等は異なるが、投げ銭をするとユーザー名や金額がリアルタイムに配信画面やコメント欄に表示され、演者だけでなく視聴者にも伝わる仕組みになっている

なお、推し活で購入したグッズに関して、座談会では「会社のデスクに推しグッズを置いて仕事をしている」「推しのメンバーカラーで持ち物を統一する友人もいる」との声があった。オフィスはもちろん普段目に入る場所に推しの存在を感じられることで、気分が上がったり、前向きに仕事に取り組めたりするのかもしれない。

生活スタイルや勉強、進路の背景に推しの存在がいることも

次に「推しに影響されて何か新しいことを始めた経験があるか?」と尋ねたところ、約7割の人が「ある」と回答【図3】。

推しに影響されて新しく始めたころがあるか/はたらきかたラボ調査
【図3】推しに影響されて新しく始めたころがあるか/はたらきかたラボ調査

自由回答で具体的な内容を聞いてみると、「推しがプロデュースしたコスメを購入した」「推しの好きなスイーツを買う」という推し活の一環としての行動のほか、「推しが外国人だから、推しの母国語の勉強を始めた」「推しと同じ資格を取得した」「推しの趣味がカメラなのでカメラを始めた」などスキル面で影響を受けた人も。中には「推しが薬剤師だから薬学部に進学した」「推しのためにアパレルの仕事を始めた」という、進路や職業選択に関与するほど推しの存在が大きい人がいることも分かった。

座談会では「推しがミニマリストで真似してみたら無駄遣いをしなくなった」という人もおり、推しの影響はかなり広範囲に及ぶようだ。 普段購入するものの選択基準や生活様式といった身近な部分から、新たに獲得するスキルや進路、職業選択といった将来に関わるものまで、「推し」は常に生活のさまざまな場面で新たな選択肢や気づきを与えてくれる存在なのだろう。そして推しが原動力となり、勉強や日常生活のモチベーションアップにも繋がっているのかもしれない。

なお、Z世代ではないが高齢者の中にも、推しができたことで日々の生活に活力が生まれ、ポジティブな変化があったという人がいるという事例をSNSやメディア等でも見かける。自分が一生懸命応援できる存在(=推し)がいることで心がときめいたり、日常生活が楽しく感じられることに年齢は関係ないということだろう。

最後に、座談会参加者に「職場で上司など上の世代から“推しはいるの?”“誰推しなの?”と聞かれたらどう思うか?」と聞いたところ、「何においての推しなのかと思ってしまう」とやや困惑するような様子がうかがえた。推しの定義の話であったように「そのジャンルで一番好きなもの=推し」という認識という前提に立てば、ジャンルが多岐にわたっている人もいるため、漠然と聞かれると困ってしまうのだろう。 この質問への対応については、メンバーの回答が二分する結果となった。一方は「自分の推しについて知らなさそうな人には”いない”と答えるか、その人が知ってそうなレベルの好きな人やものを答える」という意見。もう一方は「同じ趣味だったときに話が弾むので正直に答えるようにしている」という意見。いずれも回答後のコミュニケーションを想定して答え方を決めているようだ。回答内容は正反対ではあるが、どちらも相手を慮っている姿勢が垣間見える議論となった。

まとめ—推しや推し活をきっかけに得たスキルが将来に繋がる可能性も—

今回の調査ではZ世代のほとんどの人に「推し」がおり、多くの人が日常生活はもちろんスキルセットや進路に至るまでさまざまな場面で影響を受けていることが分かった。

「推しの母国語を勉強する」という声もあったが、言語を学ぶということは、単純に言葉を知るだけでなくその国の文化や歴史を知ることにも繋がる。新しいライフスタイルを取り入れることで、今まで知らなかった考えに出会うということもあるだろう。推しがいることで、そういった新しい世界を知るきっかけが増えるというのは人生を豊かにすることにも繋がりそうだ。

なにより限られた時間やお金をやりくりして自分が好きなものや人を応援するという行為は、客観的に見るとタイムマネジメントや予算管理のほか、推しについて調べる際の情報収集能力や、ファン同士で推しの情報を交換するための人間関係を構築・維持する力など仕事にも通じるスキルが自然と身につくのではないか、と感じられた。推し活をしている本人たちに自覚はないかもしれないが、知らず知らずのうちにビジネススキルが高まるという副産物もありそうだ。推し活を通して、働き方のスタイルや仕事の選択肢は広がっていくのかもしれない。

調査概要
<アンケート調査>
調査時期:2022年2月10日~2月15日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国男女18~25歳 255名

<『はたらきかたラボ』オンライン座談会>
実施:2022年2月25日
参加者:マイナビ転職メンバー4名、Z総研コミュニティ所属メンバー4名、はたらきかたラボ所長 道満綾香(Z総研) 計9名(メンバー男女比 4:4)


著者情報
マイナビ転職「はたらきかたラボ」コラム担当

はたらきかたラボとは、Z世代のこれからの生き方や働き方について深く知るため、マイナビ転職とZ世代のシンクタンクである「Z総研」が手を組み、2022年3月に発足した運動体。毎月リアルZ世代コミュニティに所属する大学生~社会人(18~24歳)へのアンケートと、両社のZ世代社員がアンケート結果をもとに行う座談会からリアルなZ世代の声を拾い上げ、テーマごとに発信を行っている。

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