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テレワークはコロナ後も定着するか!?
普及&定着の課題を探る

コロナ禍によりテレワークを導入する企業は急速に拡大した。しかし、コロナ禍が常態化するなかで一部の企業では対面でのコミュニケーションを重視し、出社を前提とした働き方への回帰が伝えられている。コロナ禍以前より働き方改革が進み、時間や場所にとらわれない柔軟な勤務体制としてテレワークの導入が進んできたが、コロナ後もテレワークは定着するのか、海外でのテレワーク導入状況と比較しながら日本の現状を探ってみたい。

海外でのテレワーク導入状況

厚生労働省が運営する「テレワーク総合ポータルサイト」には、コロナ禍以前の主要国のテレワーク導入状況が掲載されている。圧倒的に導入率が高いのがアメリカで85%、日本企業の導入率は19.1%と21.9%のドイツより少し低い程度となっている。【図1】ただし、日本の導入率は従業員規模が100人以上の企業を対象としており、従業員規模100人未満の企業を含めると導入率はさらに低いと考えられる。
なお、テレワークには、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイルワークの3形態を含んでいる。

海外でのテレワーク導入状況/厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト
【図1】
厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト

新型コロナウイルス感染症が世界中で急速に拡大したのは2020年2月以降のこと。この時期からテレワークを実施する企業が世界中で急拡大した。アメリカの労働者を対象とした調査によると、感染拡大後に一度でも在宅勤務をした経験がある者は57.9%、調査実施の時点で在宅勤務をしている者は35.3%という結果であった。【図2】

米国における在宅勤務の実施割合/総務省「令和3年版情報通信白書」成長戦略会議(2021.2.17)資料 2020年12月調査データをもとに筆者作成
【図2】総務省「令和3年版情報通信白書」/成長戦略会議(2021.2.17)資料 2020年12月調査データをもとに筆者作成
米国の20-64歳の男女に対して、2020年5月21-25日、6月30日-7月9日、8月21-28日、9月29日-10月2日、10月28日-11月3日にそれぞれ実施したアンケート調査の結果。8月以外の回答数は2,500人、8月の回答は5,000人の計1万5,000人の回答を集計したもの

ヨーロッパでもテレワークの導入は急速に進んだ。Eurofound(欧州生活労働条件改善財団)が2020年2月に公表した調査によると、新型コロナウイルス感染症の流行後に、 平均でEU域内の労働者の36.5%が在宅勤務を始めている。グラフは省略したが、新型コロナウイルス感染症流行以前は、在宅勤務を月1回以上実施していた労働者は22.7%にとどまっていたようで、EUでも新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、テレワークが急拡大している。【図3】

EUにおけるテレワークの動向/総務省「令和3年版情報通信白書」
【図3】総務省「令和3年版情報通信白書」
Eurofound Living,working and COVID-19 data

コロナ禍により日本でもテレワーク実施企業が拡大

日本でも新型コロナウイルス感染症の流行でテレワーク導入企業が急激に増加した。総務省が発表した「令和2年通信利用動向調査」によると、民間企業のテレワーク導入率は2019年には20.2%だったが、2020年には47.5%と倍以上になっている。【図4】

民間企業のテレワーク実施状況/総務省「令和2年通信利用動向調査」
【図4】総務省「令和2年通信利用動向調査」

その後、民間企業におけるテレワークの実施状況は、感染状況に応じて変化している。1回目の緊急事態宣言が発出されたのは2020年4月。東京商工リサーチが企業を対象に実施した調査によると、この間、テレワーク実施率は17.6%から56.4%に上昇した。その後、緊急事態宣言解除後に30%台に下がったが、2021年1月に2回目の緊急事態宣言が発出されると38.4%に再上昇している。【図5】

企業のテレワーク実施率/総務省「令和3年版情報通信白書」
【図5】総務省「令和3年版情報通信白書」
東京商工リサーチ「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(第2~6、8、10、14回)をもとに総務省が作成したグラフより筆者作成

産業や従業員規模などによってテレワーク導入・実施に格差

日本のテレワークの導入率や実施率は、総務省の調査では全産業で導入が進んだとはいえ、情報通信業をはじめとして不動産や金融・保険業の導入率は高いものの、対面型のサービス提供が不可欠な運輸・郵便業、サービス業・その他、卸売・小売業では導入率は相対的に低くなっている。【図6】

産業別テレワークの導入状況、令和元年と令和2年の比較/総務省「令和2年通信利用動向調査」
【図6】総務省「令和2年通信利用動向調査」
令和元年と令和2年の比較

実施率においては、日本生産性本部の調査では2022年1月時点で従業員1001名以上の企業のテレワーク実施率は29.8%であるのに対して、従業員100名以下の企業では11.1%と大きな開きがある。【図7】

従業員規模別・テレワークの実施率/公益財団法人日本生産性本部「第8回働く人の意識に関する調査」
【図7】公益財団法人日本生産性本部「第8回働く人の意識に関する調査」

勤務エリアによっても違いがあり、2022年1月時点の1都3県のテレワーク実施率は26.8%であるのに対して、それ以外のエリアでは12.9%にとどまっている。【図8】

首都圏とそれ以外のテレワーク実施率/公益財団法人日本生産性本部「第8回働く人の意識に関する調査」
【図8】 公益財団法人日本生産性本部「第8回働く人の意識に関する調査」

テレワークの導入や実施に際しては、感染状況の深刻さはもちろんのこと、企業規模、勤務エリア、そして職種などによって大きな違いがあることが推察される。

業務効率と勤務満足度の向上に効果

新型コロナウイルス感染症の予防を目的として、急速に広まったテレワーク。導入によってどんな変化がもたらされたのだろうか。日本生産性本部の調査では、テレワークの大多数を占める自宅での勤務状況について継続的に調査している。このうち、自宅勤務での効率について、「効率が上がった」「やや上がった」の合計は、2022年1月の調査で、63.3%と過去最多を記録している。【図9】

自宅での勤務で効率が上がったか/公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」
【図9】公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」

また、自宅勤務の満足度については、2022年4月の調査では、「満足している」「どちらかと言えば満足している」の合計は、84.4%と過去最多となった。2020年5 月調査で、在宅勤務に満足している割合は57.0%であったことを考えると、この2 年間での満足度は大幅に向上しているようだ。【図10】

自宅での勤務に満足しているか/公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」
【図10】 公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」

テレワークに向けたさまざまな課題

働く従業員にとって、テレワークは多くのメリットがある一方で、実施に際しては障壁も多い。総務省の調査研究によると、「テレワークに適した仕事ではないため」「勤務先にテレワークできる制度がないため」といった課題が指摘されている。【図11】

テレワーク実施の課題・障壁/総務省「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」
【図11】総務省「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」

もちろん、導入を支援するさまざまな取り組みや制度も充実しつつある。たとえば、厚生労働省は、「テレワーク相談センター」を開設し、テレワークに関する相談を無償で受け付けているし、厚生労働省や経済産業省ではテレワーク導入の費用を補助する支援制度なども設けている。東京都をはじめとして、自治体レベルでもさまざまな導入支援を実施している。

また、海外でもテレワークを促進する動きがある。総務省の情報通信白書によると、テレワーク普及に向けたヨーロッパでの取り組みを下記のように報告している。

EUでは、テレワークに関して格差の拡大等が生じる可能性があるなどの課題があると認識されており、そのような課題解決に向けて、在宅勤務に関するさまざまな議論や法整備が進められている。たとえば、オランダは、「柔軟な働き方を保証する法律(フレキシブルワーク法)」が制定されている。また、フランス、イタリア等では「つながらない権利(勤務時間外に電子メール等を送らなくてもよい権利等)」が確立されている。他にも、在宅勤務を実施すること自体を権利として認めようとする議論もある

日本生産性本部の調査では、テレワークをスムーズに行うための課題として、「Wi-Fi など、通信環境の整備」「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」など、自宅の環境整備に関する項目が上位に入っている。テレワークのなかでも、特に自宅での勤務となると、個々人で作業スペースの確保や通信環境の整備をする必要があり、それなりのコスト負担が求められる。【図12】

テレワークの課題(2022年4月)/公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」
【図12】公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」

日本生産性本部の調査では、労務管理上の課題も指摘されている。「仕事振りが評価されるか不安」「仕事の成果が評価されるか不安」「オフィス勤務者との評価の公平性」といった、人事評価に関する課題が20%を超えており、こうした不安に応え、公平な評価を担保する制度の確立も今後は必要となるものと思われる。【図13】

労務管理上の課題(2022年4月)/公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」
【図13】公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」

しかしながら、働く側のテレワークに対する満足度は高く、コロナ禍収束後もテレワークを行いたいと答えた人は2022年1月の合計で80.4%(「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計)に上っている。【図14】

コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか/公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」
【図14】公益財団法人日本生産性本部「第9回働く人の意識に関する調査」

テレワークの継続を要望する声は大きいが、アメリカの電気自動車大手のトップが在宅勤務の廃止を通告するなど、ここにきてテレワークの導入に後ろ向きな企業の報道が相次いでいる。もちろん、業界や職種、仕事内容によってテレワークの導入が難しいケースもあるが、ICTを有効活用すれば時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができる可能性は大きいはずだ。

コロナ禍が収束した後も、テレワークが安定的に拡大していくのか予測は難しいが、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに働き方改革を前進してほしいと考える労働者は少なくないのではないだろうか。


著者紹介 吉本 隆男(よしもと たかお)キャリアライター&就活アドバイザー

1960年大阪生まれ。1990年毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)入社。各種採用広報ツールの制作を幅広く手がけ、その後、パソコン雑誌、転職情報誌の編集長を務める。2015~2018年まで新卒のマイナビ編集長を務め、2019年からは地域創生をテーマとした高校生向けキャリア教育プログラムおよび教材の開発に従事。2020年定年退職を機にキャリアライター&就活アドバイザーとして独立。
日本キャリア開発協会会員(CDA)、国家資格キャリアコンサルタント。著書に『保護者に求められる就活支援』(2019年/マイナビ出版)

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