マイナビ キャリアリサーチLab

【子育て世帯】収入、副業観を2021年調査から探る~アフターコロナの働き方~

長谷川洋介
著者
キャリアリサーチLab研究員
YOSUKE HASEGAWA

子育て世帯は、何かとお金がかかるし、毎日が慌ただしくて自由な時間もない―。そんな状況でも世帯収入アップを目指すにはどうしたらいいか。2021年最新調査をもとに、子育て世帯の年収の理想と現実、正規就業・非正規就業の割合、そしてコロナ禍をきっかけに急速に世の中に広まった「副業」への意識などを手掛かりに、アフターコロナの子育て世帯が知っておきたい新しい働き方を探る。

コロナ禍で変わった「働くことへの考え方」

日本を含め世界で新型コロナウイルスの感染が急拡大した2020年。この年に約1万4,000人を対象にマイナビが行った調査(マイナビライフキャリア実態調査/2020年)では、「働くことへの考え方が変わった」という回答が20代・30代を中心に高い結果となった。特に女性に関しては、男性よりも「変わった」「やや変わった」と回答した割合が高く、コロナ禍の影響により、2020年は多くの人たちにとって「働き方」についての考えが変化した年だったと言える。
また、新型コロナウイルスの感染拡大は、子育て世帯にも大きな影響を与えた。保育園の休園や学校の休校により、子供が日中家にいるなかで在宅ワークをしたり、あるいは仕事を休まざるを得なかったりした人もいるだろう。こうした事態により、働き方への考え方にも変化があった子育て世帯も多かったはずだ。
そこで今回は、マイナビライフキャリア実態調査2021年版(現在最新版)をもとに、コロナ禍以降の子育て世帯の収入や男女別の就業形態、そして副業への意向など、働き方に関する考え方について考察していきたい。

子育て世帯の回答者の平均年収は463.5万円。男女別に見ると2倍以上のギャップも

食費やオムツといった消耗品、成長してすぐにサイズアウトしてしまう服や靴、毎月の保育園代や学校の教材費…。何かとお金のかかる子育て世帯だが、まず、子育て世帯がどのような経済的基盤の上で暮らしているのかを概観してみる。
2021年のマイナビライフキャリア実態調査の調査対象から、第1子が10歳以下の男女・20歳以上を対象に絞って年収と就業形態を見てみる。まず年収については、世帯年収ではなくあくまで回答者自身の年収の平均となるが、全体の平均値は463.5万円となっている 【図1】 。世帯年収男女別で見てみると男女間で大きな差が出ていることもわかる。

子育て世帯の男女別平均年収/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図1】男女別 平均年収
マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
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子育て世帯は、男女間で就業形態にも差が

また子育て世帯の就業形態について男女別に見てみると【図2】、正規の就業者の割合は男性が高く、女性では低くなっている。逆に、非正規の就業者の割合は女性の方が高くなっていることがわかる。子育て世帯では男性は正規就業、女性は非正規就業がそれぞれ多く、就業形態については、まだまだ男女差があるのが現状である。男女による就業形態の違いが、前述した収入の違いに影響している可能性もあるだろう。

子育て世帯の男女別就業形態/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図2】男女別 就業形態/ マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
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子育て世帯が満足する年収は519.7万円

このように、収入や就業形態といった点から子育て世帯の置かれる経済的な基盤・環境を概観してみたが、収入に着目したときに、子育て世帯の人が満足する収入は一体いくらぐらいなのだろうか。
年収について「とても満足していた」と回答した人の平均年収を見てみると、519.7万円となった。上記「主な仕事の収入」全体の平均値が463.5万円であることから、現実と理想の間には56.2万円のギャップがあると言える。【図3】

子育て世帯の収入満足度別平均収入/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図3】収入満足度別 平均年収 / マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
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子育て世帯に限ったことではないと思うが、収入をいきなり50万円以上アップさせようと思っても簡単にはいかないだろう。では、このギャップを少しでも埋めるにはどうすればいいのか。ここで注目したいのが、コロナ禍をきっかけに注目されるようになった「副業」だ。

子育て世帯と副業

副業については、コロナ禍前からすでに副業を認める企業が出てくるなど浸透の兆しを見せてはいたが、コロナ禍でリモートワークや在宅勤務が急速に広まったこともあり、本業の終業後や空き時間などに自宅でできる副業への注目が集まった。
下のグラフ(図4)は、同じく子育て世帯を対象に、収入への満足度と副業・兼業への意向をクロス集計したものだ。収入への満足度として「とても満足していた」と回答した人は、「副業・兼業をしたことがあり、今後もしたいと思っている」の割合が高くなっており、副業・兼業による副収入により年収がアップしたことで満足度があがり、今後も副業・兼業をしたいという意向を持ったものと推測できる。一方、収入に対して「とても不満であった」と回答した人は、「副業・兼業をしたことはないが、今後はしたいと思っている」の割合が高く、現状の収入への不満を、副業による副収入でカバーしたいと期待していると言える。

子育て世帯の収入満足度別副業・兼業意向/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図4】収入満足度別 副業・兼業意向 / マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
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収入への満足度別に「今後、副業・兼業をしたいと思う理由」について見てみても、収入に「とても不満であった」と回答した人の9割が「生活費や学費など生活維持のため」を理由に副業・兼業をしてみたいと考えていることがわかる。【図5】

子育て世帯の収入満足度別今後副業・兼業をしたいと思う理由/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図5】収入満足度別 今後副業・兼業をしたいと思う理由 / マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
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副業に使う時間は平均で週8時間

子育て世帯の収入補填として、副業・兼業意向を見てきたが、副業・兼業をするにあたって気になるのは、やはり本業や家事・育児と両立できるか、そもそも副業に充てる時間があるかということではないだろうか。そこで、実際に子育て世帯で副業・兼業をしている人は、どの程度の時間を副業・兼業に充てているのかを見てみることにする。
下のグラフは、子育て世帯の男女別に、副業・兼業に週何時間充てているかを聞いた結果である。全体、男女別ともに週約8時間が平均のようだ。収入の満足度別に見てみても、「満足していた(「とても満足していた」と「まあ満足していた」の合計)」と回答した人で8.8時間となり、8~9時間程度だ。1日平均にすると、1時間とちょっと、という具合になる。

子育て世帯の男女別副業・兼業の平均時間(週平均)/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図6】男女別 副業・兼業の平均時間
マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
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子育て世帯の収入満足度別副業・兼業の平均時間(週平均)/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図7】収入満足度別 副業・兼業の平均時間
マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
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「1日1時間ちょっと」と言うと、もしかしたら「自分でもできるのかもしれない」と思う人もいるだろう。その一方で、仕事に家事・育児に追われ、そのうえ自身の睡眠時間や余暇の時間も確保しなければならない中、この「1日1時間ちょっと」も確保するのが大変、という世帯もあるかもしれない。そうした世帯で、どのようにしたらこの「1日1時間」を捻出できるだろうか。

子育て世帯の家事・育児分担は女性に負担が寄りがち

非正規就業の方が正規就業に比べて時間の都合をつけやすいという前提に立つとすれば、子育て世帯において非正規就業で働く側がその時間を工面して副業に挑戦することで、男女関係なく追加収入を得ることができる。現状だと、前述の通り子育て世帯では女性の方が非正規就業の割合が高く、女性が副業に挑戦することで世帯収入アップを目指すこともできるかもしれない。しかし、果たして子育て世帯の女性にそこまで時間的余裕があるだろうか。
下のグラフ(図8)は、子育て世帯の男女別に、家事や育児に1日何時間使っているかを集計したものだ。見ての通り、男性は「1時間」が最多で、「2時間」「3時間」「0時間」と続いており、対して女性は「5時間」がもっとも多く、中には「24時間」という回答も5.6%ではあるが存在している。子育て世帯の女性は忙しいのだ。

子育て世帯の男女別家事育児にかける時間/マイナビライフキャリア実態調査2021年版
【図8】男女別 家事育児にかける時間 / マイナビ ライフキャリア実態調査 2021年版
当データのExcel版のダウンロードは【こちら

副業時間を捻出するには、女性の家事・育児負担の軽減が必須!

このように、家事・育児にかける時間が女性に偏っていることを踏まえると、女性がそのうえさらに副業・兼業に挑戦するような時間的余裕がない、というケースも十分想定できる。その上で、副業に挑戦し収入をアップさせたいという女性をバックアップするためにカギとなるのは、女性の家事・育児の負担を軽減することだろう。

家庭内での分担見直し、時短家電の導入などで、家事・育児負担を減らす

家事・育児の負担を少なくするためにはいくつか方法が考えられる。例えば、どのような家事があり、どの程度の負担があるのか、俗に言う「名前のない家事」といったさまざまな細かい作業なども含め、家庭内で一度洗い出しを行い、その分担を改めて見直すことだ。ことに、家事・育児負担が女性に偏っている現状、男性がより家事・育児に関わり、分担していくことが重要だろう。また、先行投資として時短家電や高機能家電などを購入し、それにより負担を軽減するということも1つの手段だ。ちょうど筆者の家でも、切った食材と調味料を入れてセットするだけで、あとは自動で料理ができあがるという便利家電を導入したが、セットするまでの時間や手間が少なく、セットしてから放置(調理)している間に他の作業ができるため、家事の効率化・負担軽減に非常に重宝している。

女性の家事・育児負担の軽減は、「副業のため」だけにあらず

このようにして女性の家事・育児負担を軽減することの意義は、副業・兼業に挑戦したいという女性がそのための時間的余裕を持つことができる、ということだけに留まらない。負担が軽減されて生まれる時間的余裕を副業・兼業という形で収入増加に転じていく延長上に、副業・兼業によって身に着けたスキルによるさらなる収入アップや、そうしたスキルを活かし、子育てが落ち着いたあとに正規就業へ挑戦する、といった女性の社会進出にもつながっていく可能性がある。もちろんそれは男性にとっても同様で、男女ともに副業による収入アップやスキルアップは期待できるはずだ。

アフターコロナだからこそ、子育て世帯に「副業」という新しい働き方を

リモートワーク・在宅勤務をする人が増えたことで、家で時間を過ごす人が男女ともにコロナ禍以前より増えていることだろう。このことは、子育て世帯の中での家事育児分担の適性化を進めるという点でも追い風となり、そのことにより、副業に挑戦する時間的余裕が生まれる子育て世帯も出てきているかもしれない。コロナ禍によりリモートワークが進んだ子育て世帯は、家事・育児の分担等をパートナーと相談しながら、男女問わず、アフターコロナの新しい働き方として「副業」という選択肢を検討してみてはどうだろうか。

キャリアリサーチLab研究員 長谷川 洋介

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