マイナビ キャリアリサーチLab

男性育児休暇取得が何を変えるのか

男性育休は浸透するのか

2021年6月、育児介護休業法が改正され、男性の育休取得推進のための柔軟な枠組みが創設されることになりました。また、仕事と育児の両立のための研修・相談窓口の設置など、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が企業等に義務付けられます。2022年4月以降には、分割での取得や自らの申し出がなくとも企業側から育休取得の有無を確認することになるため、取得者の増加が予想されています。

日本では他の先進国と比較し男性の育休取得が進んでいないといわれていますが、調査結果を基に実態と課題について考えていきたいと思います。

下記、図1をご覧ください。中途採用実態調査2021年版の調査結果では、直近1年間(2020年7月~2021年6月)での男性育休取得割合が5割以上になる企業は、13.1%となっており、まだまだ一般的とはいえない状況です。法整備が進む一方、男性育休取得を阻んでいる理由はどこにあるのでしょうか。

【図1】直近1年間(2020年7月~2021年6月)の男性従業員の育児休業取得割合 
出典:中途採用実態調査2021年版

男性育休を取得しづらいと考える理由としては、図2にある通り、「職場が男性育休を認めない雰囲気があるから」が1位となっており、「育休取得中の収入が減るから」「育休取得中に業務が滞るなど、職場に迷惑をかけたくないから」と続いています。20代男性に関しては、収入面での不安や周囲への迷惑を気にする傾向があるようです。また、性別に関わらずサービス業の職種においては、認めない雰囲気を強く感じている結果となりました。

【図2】育児休業を取得しづらいと考える理由 出典:転職活動における行動特性調査(2021年)

みなさまの職場ではいかがでしょうか。男性育休を浸透させるためには、取得しやすい雰囲気の醸成や育休取得期間中の給付金制度の周知が重要になってきそうです。

営業部長の決断 ~休暇取得理由と取得後の変化~

マイナビで働く社員も、男性育休取得者はまだ多くはありません。
そんな中、千葉支社で働く営業部長の原島さんが3か月間の男性育休を取得することになったので話を聞いてきました。

(写真は3か月間の育児休暇中の営業部長の原島さん)

ーー育児休暇を取得しようと思ったきっかけを教えてください。

当初は育児休暇を取得する予定がなかったものの、妻に持病があり、保健師さんからの提案で育休取得について前向きに検討することになりました。長くお世話になっている直属の上司は、以前からプライベートの相談にも乗ってくれていて相談しやすい雰囲気がありました。営業部長という立場で取得して良いものか迷いがあったものの、背中を押していただくことで決心することができました。2019年に船橋の男性支部長が3か月間の育児休暇を取得しており、社内でのパパ会の開催や取得期間中の収入面や育児サポート、感じたメリットについて話してくれた開催レポートを読んだことも大きかったと思います。

ーー取得に向けて周囲の反応はどのようなものがありましたか。

休暇取得を伝えた当初は、所長・課長を始め、不安そうなメンバーがいたことも事実です。ただ、準備期間があったことは幸いでした。今まで自分で抱えていた業務を所長に任せることや言語化してこなかったことを伝えるなど、1つ1つの業務を棚卸しする機会となりました。そして、この準備期間でメンバーがとても頼もしく感じられる場面が増えてきたことは、1番の収穫です。複数エリアを担当している直属の上司が休暇取得中は重点的にフォローしてくださると約束いただいたことで、安心することもできましたね。また、取引先のお客様に休暇についてお伝えすると、笑顔で応援してくださる方が多かったことも嬉しかったです。

ーー育休取得中の生活や取得した感想を教えてください。

大変だとは聞いていたのですが、もう少し余裕があるものだと思っていました。今まで料理を作る機会は多くなかったのですが、今は3食すべての料理や買い出しをして、効率的な家事についても考えるようになりました。また、沐浴やオムツ替え、ミルクなど赤ちゃんのお世話でできることは妻と交代しながら積極的に行っています。奥さんが育休中なのに、旦那まで休む必要があるのか。男性は仕事をして・・・。という旧来の価値観も根強くあると思います。しかし、もしかしたらその価値観が共働きの女性の負担を増やしていたり、家庭不和による離婚率の上昇に繋がっていたりするのではないかとも思いました。実際に育児をしてみると本当に大変で二人いても日々、睡眠不足ですね。

ーー取得後の心境の変化や今後について教えてください。

2019年に開催されたパパ会の様子。
育児休暇を3か月取得した船橋の
男性支部長による講話会

今まで育児休暇を取得する周囲のメンバーに対し、ゆっくり休んできてね。という気持ちで送り出していました。でも実際は毎日が寝る暇もない程、多忙で休んでなんていられません。休暇に入る前の不安な気持ちや周囲の反応についても、自身が体感したことで理解することができました。今後、メンバーを送り出す時には以前とは違う気持ちで寄り添うことができるように思います。また、休暇を快く認めてくれた会社や上司、支えてくれたメンバーに対する感謝の気持ちがとても大きくなりました。復職後は、一層、恩返しをしていきたい気持ちでいます。

男性育休100%宣言の取り組みと生産性向上の事例

男性育休を進めることでの業績悪化や生産性が落ちることを危惧されている企業も多いのではないでしょうか。ここでは、男性育休100%宣言をプロジェクト化し、国内のさまざまな企業経営者から賛同を得ている株式会社ワーク・ライフバランスの原コンサルタントより取り組みの成果と事例についてお話しいただきました。

『働き方改革のコンサルティングをしている、株式会社ワーク・ライフバランスでは、2019年から育児休業法の改正を目指し、男性の育児休業を100%取得できる職場づくりを宣言する、「男性育休100%宣言」を開始しました。2年かけて、1社1社に説明し、現在106社の経営者にご賛同いただいています。中でも屋根金具などを製造するサカタ製作所(新潟県本社、従業員約150人)様では、男性育休を推進した結果、毎年1人程度だった、社員とその配偶者の出生数が、2017~2020年で計24人となり、ベビーブームが起きています。取得日数は、2~3日休むだけの「取るだけ育休」ではなく、平均4週間です。この育休取得日数の長さは、産後2週間から1カ月の期間になりやすい産後うつの発症をカバーできます。同時に働き方改革を進めることで、現在の残業時間は月に1人当たり1.1時間、かつ増収増益を実現しています。仕事を休めない雰囲気を無くし、誰もが当たり前に育児休業を取得できる風土に変わるためには、男性育休の推進と共に働き方改革を同時に進めることが重要です。』
株式会社ワーク・ライフバランス 原

魅力ある企業として生き抜くために

法改正が進む一方、人材不足により休暇の推進が難しいケースや一部休暇取得者による業務のシワ寄せについて問題になっている現状があるかもしれません。では、なぜ男性の育休取得が必要なのでしょうか。

前述の営業部長の事例では、取得者本人に芽生える属人化された業務に対する問題意識やエンゲージメント向上などのメリットがありました。また、配偶者との長期的なパートナーシップの維持や配偶者の就労意欲の向上があり得るかもしれません。自社の既婚女性社員も、どこかの企業で働く男性の配偶者なのです。1社だけで成り立つものではなく、社会全体に変化が求められています。「管理職を希望しない」「退職をしてしまう」「マミートラックから抜け出せない」など、育児中の女性社員が抱えやすい課題解決の糸口がもしかしたらここにあるのかもしれません。

下記、図3は転職者、転職活動者から取得したアンケート結果です。男性の育休取得のしやすさが転職先の選択軸としてどのように影響するのかを調査しています。「男性の育休取得がしやすい環境」や「取得率が高い企業」に対して、好印象とする回答が4分の3を占め多数となりました。特に若い世代を中心に好印象である傾向があります。また、男性20~30代の6割が転職先を選択する際に重要になると回答しています。優秀な人材の確保については、組織にとって重要な経営課題の1つです。採用競争力強化という観点からも、男性の育休取得に前向きに取り組んでいくことで優秀な人材の流入や定着に影響があるといえるでしょう。

【図3】男性の育休取得のしやすさの転職選択軸への影響 出典:転職活動における行動特性調査(2021年)



井上慶子 (株式会社マイナビ 千葉支社長)
2004年新卒入社。千葉県出身。17年間、採用戦略・企業研修のサポートに従事。営業・制作、マネジメントを経て、2017年より現職。2021年、介護離職防止アドバイザーの資格を取得。経済団体でのコラム寄稿、複数大学の外部講師や女性向けキャリア講座などを担当。社内ではダイバーシティに関わる取り組み、企画・運営に携わる。プライベートでは12歳、7歳の育児に奮闘中。

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