マイナビ キャリアリサーチLab

2021年時点で男女の賃金格差は縮小傾向。安易に喜べないその実態から今後の社会を考える

はじめに

広がる格差、上がらない給与、一方では社会保障負担率や消費者物価指数は上がり続けている。さらに新型コロナウイルスの影響から、雇用調整助成金の給付が増加したことにより、2022年から雇用保険料を引き上げる検討も始まった。
今回のコラムでは、公的データとマイナビ ライフキャリア実態調査2021年版を用いて、男女の賃金格差の推移・傾向などの実態から、こらからの社会について、私なりの考えを書いてみようと思う。

これまでの男女の賃金と就業者数の推移

まずは、これまでの男女の賃金と就業者数について振り返ってみる。
潮目が変わった第一歩は、1986年施行の「男女雇用機会均等法」であろう。この頃はバブル経済を背景に、1986年当時2,327万人であった女性の就業者数はバブル崩壊の1993年までに約280万人増の2,610万人となった。
また賃金は男女とも右肩上がりで推移しており、93年の「賃金(所定内給与額)全体<男女計>」は281.1千円と、86年比で1.2倍以上に増加している。その後、バブル崩壊後も就業者数は増加し続けるが、同時に非正規雇用者の割合も増え始めている、いわゆる就職氷河期世代と呼ばれる人達だ。低賃金である非正規雇用者の増加に合わせ、全体の賃金上昇率の鈍化も始まる【図1】。
その後、就業者数は1997年の6,557万人をピークに減少傾向となったが、1999年の派遣業種自由化、2003年の製造・医療の派遣解禁を経て、就業者数は再度増加傾向に転じていく。ただ、雇用形態の内訳をみると、正規雇用者は減少し、非正規雇用者が増加していることがわかる【図2】。
賃金の推移をみると、男性の賃金は2001年をピークに下降推移に突入していく、それに合わせ全体の賃金も停滞、その一方で2008年のリーマンショックを経ても、女性の賃金は緩やかながら増加傾向で推移している【図1】。

男女の賃金格差の縮小に繋がったアベノミクス

次に潮目が変わったのは、2012年末に始動したアベノミクスだろう、2013年以降2019年まで、就業者数は女性を中心に増加、賃金上昇率もアベノミクス以前の+0.7%(06年~12年平均)から、+1.1%(13年~19年平均)となっている。
また完全失業率は下がり、求人倍率も上がるポジティブな変化の裏で、男性の賃金は2000年代10年間の平均額以下の水準で停滞、男性の非正規雇用者の割合はバブル崩壊後10人に1人程度だったのに対し、2020年には5人に2人以上の割合まで増加、全体の賃金も2001年のピーク以降、およそ20年間停滞している【図1】【図2】。

バブル崩壊後からの約25年を振り返ると、正規雇用者数が伸び悩む反面、非正規雇用者は堅調に増加してきた。賃金については男性の賃金が停滞する反面、女性の賃金は堅調に上がってきており、実質的な金額差が未だあるとはいえ、男女の賃金格差は年々縮小しているのが実態だ。

【図1】就業者数の推移と、男女の賃金推移

※総務省統計局「労働力調査」と厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を組み合わせマイナビで作成

【図2】役員を除く雇用者数の推移と、正規・非正規雇用者の割合

※独立行政法人労働政策研究・研修機構「正規・非正規雇用の長期的な推移」をもとにマイナビで作成

外国人労働者の受け入れ、改正高年齢者雇用安定法など、
これからも増え続ける就業者

人手不足のなか、その解決策の1つとして外国人労働者の受け入れがある。つい先日「特定技能」について、在留期限をなくす方向で調整も始まった。その外国人労働者は、2013年71.8万人だったが、年々増加し2020年時点では2.4倍の約172万人に達した。
また2019年時点の日本人との賃金(所定内給与額)の差は、84,600円も外国人の方が低く、ここにも賃金格差は存在する【図3】。
さらに、2021年4月の改正高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業確保措置をとることが努力義務とされ、今後シニアの就業者も増えることが予想される。
賃金に関しても、年齢による賃金ピークは55歳~59歳であることを考えると、平均より低い賃金で就業することが想像できる。

今後は女性だけでなく、外国人労働者やシニアなど、より多様な就業者が増える一方で、賃金の停滞が続けば、男女の賃金格差縮小と似たようなことが、外国人・シニアに対しても起こり得る。
特に諸外国と比べ、解雇規制が厳しい日本では、景気低迷時でも人員カットではなく、雇用を維持しながら、従業員の賃金を調整してきた過去もある。今後は、外国人やシニアに対しても不当な賃金格差が生まれないように考慮すると同時に、上がらない賃金との痛み分けとならないような方策も検討していく必要がある。

【図3】外国人労働者数の推移と、2019年の外国人労働者の賃金

※厚生労働省「令和元年賃金構造企保統計調査(外国人)」と厚生労働省「外国人雇用状況の届け出状況」を組み合わせ
マイナビで作成

政府・企業の主導の下、個人が自主・自律的な能力開発のできる
機会創出とリスキリング意識の啓蒙を

では今後どうすべきか、結論から書かせていただくと、デジタルの活用による省人化はもちろんのこと、デジタル化に適用できるスキル・能力開発を、性別・年齢・国籍など関係なく自主・自律的に行える公平な機会の創出と、リスキリング意識を啓蒙していく支援や制度を、政府・企業の主導の下で行い、日本で働く1人1人の付加価値労働生産性を上げていくことが必要だと考える。
なぜ、私がそのような考えに至ったかについて、マイナビ ライフキャリア実態調査2021年版から、みていきたい。

自費で自己啓発・自己学習活動は行っていないが7割弱、
理由は「行いたいと思わない」が66.5%

正規雇用者、非正規雇用者、自営業者・役員・家族従業者など2021年3月時点に働いていた就業者に対し、自費での自己啓発・自己学習を行っていたかきいたところ、「自費での自己啓発活動は行っていない」が69.3%という結果になった。特に非正規雇用の女性で80.8%と全体より11.5pt高く、個人が自主・自律的にスキル・能力開発を行っているとはいえない状況がある【図4】。
また、自費での自己啓発活動を行っていない人に対して、行っていない理由をきいたところ、複数回答にも関わらず、「行いたいと思わない」という排他の回答が66.5%となった【図5】。

終身雇用の限界や、ジョブ型雇用の導入など、世の中の変化が激しい状況においても、個人がスキル・能力開発を行う意識は低いという実態がある。企業内でリスキリングの意識を啓蒙していくなど、世の中の動きと個人の意識のギャップを埋める支援が必要なのではないだろうか。

【図4】自費での自己啓発活動・自己学習活動の有無

出典元:「マイナビ ライフキャリア実態調査」マイナビ調べ(2021年4月調査)
※集計ベース:21年3月時点就業者(うち休業者は除く)

【図5】自費での自己啓発活動・自己学習活動を行っていない理由

出典元:「マイナビ ライフキャリア実態調査」マイナビ調べ(2021年4月調査)
※集計ベース:21年3月時点就業者(うち休業者は除く)かつ自費での自己啓発活動を行っていない人

将来のキャリアに関して求める支援は、
スキルアップ研修の充実や、学んだスキルを実践する場の提供

一方で、将来のキャリアに関して支援を求めている就業者も当然おり、会社・企業に求める支援と、会社・企業以外に求める支援のそれぞれを自由回答できいたところ、会社・企業に求める支援では、「定年制撤廃の企業なので、長期就業ができるようにスキルアップ研修の充実」「スキルを身に付けられる研修と、学んだスキルを実践する場を提供してほしい」などがあった。
会社・企業以外に求める支援では「ひとり親世帯への働き方支援」「政府として、社会の理解や意識改革をしてほしい(特に旧来の性別役割分担意識などを払拭して、能力ある人が社会で輝けるようにする仕組みや教育)」などのコメントがあった【図6】。

コロナ禍以降、リモートワークなどの普及により、働く時間や場所の制限が減っている。同様にオンラインで行われるセミナーなども増え、学びの機会も時間や場所の制限が減り、以前より身近になってきている。こういったデジタルの力も活用しながら、政府と企業が協力して、より多くの人を対象としたリスキリングの場を増やし、今以上に身近なものとしてほしい。

【図6】将来のキャリアに関して求める支援(自由回答)

出典元:「マイナビ ライフキャリア実態調査」マイナビ調べ(2021年4月調査)
※コメント抽出対象者:21年3月時点就業者(うち休業者は除く)

さいごに

ちょうどこの原稿を書いている際に、政府による「教育未来創造会議」の新設が閣議決定された。そのメンバーには民間企業からも多数の登用があり、「社会人の学び直し」「デジタルなど成長分野の人材育成」なども、主な議題として盛り込まれている。私が考えていたことの第1歩として期待したいところだ。
願わくは、失業など困った状況になる前に、先んじてリスキリングの意識を持てるように啓蒙することも行ってほしいと思う。

また、忘れてはいけないのが、キャリア形成に失敗した人や、働く上でハンデのある立場の人などを、自己責任として片づけることなく、 “誰でも“ “いつでも“ “何度でも“ 再チャレンジの意志を持てるような、セーフティーネットを設ける議論もセットで行ってほしいと思う。
そして、性別・年齢・国籍などを理由とした、あらゆる不当な格差や不公平感のない社会になることを望んでいる。

キャリアリサーチLab研究員 関根 貴広

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