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道半ばの同一労働同一賃金、処遇改善「期待できない」が30.5 %


全事業者で適用となった同一労働同一賃金関連制度

企業内の正規雇用労働者と非正規雇用労働者 の間の賃金や福利厚生、処遇等における不合理な差を是正する目的で、法改正が行われた。まずは2020年4月に大企業を対象として施行され、2021年4月には中小企業にも適用されるようになり、企業側の対応が進んでいる。今回はこの同一労働同一賃金に対する企業側の動向と労働者側の認識について、それぞれの調査結果から現状をまとめてみたい。

企業側の対応:すでに改定実施済み41.0%、改定予定13.9%

まずは企業側の対応をみてみよう。基本的に同一労働同一賃金に関しては不合理な差が認められるときに是正を行うため、非正規雇用労働者に合わせて正規雇用労働者の賃金や処遇を改善することもあり得るのだが、通常は正規雇用労働者に合わせて非正規雇用労働者の賃金や処遇を改善する割合が高い。そのため今回は非正規雇用労働者の採用担当者に実施した調査結果から企業側の対応を記載する。 今年5月にリリースした「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査」において、「基本給」や「賞与」に加え、各種手当に関する同一労働同一賃金への対応をそれぞれ確認している。項目別にみると、「基本給」や「賞与」、「時間外、深夜、休日手当の割増率」などで改定済みの割合が高かった。最も改定済みの割合が高い「基本給」をみると「改定済み」が34.9%、「改定予定」が17.7%となっている。また「元から待遇差はない」と回答した企業が21.3%。「待遇差はあるが改定しない」が26.1%となっている。ここには基本給においては不合理な待遇差ではないということで改定しないと判断し、他の項目で改善しているケースも含まれる。
そこで改めて全体として改善がどの程度進んでいるのかを確認するために、これらの項目のうち、いずれか一つでも「改定済み」とした企業の割合を再集計したところ41.0%となった。同じように一つでも「改定予定」とした企業は13.9%となっており、過半数の企業は何らかの対応を進めていることがわかる【図1】。

【図1】「同一労働同一賃金」について各項目の進捗具合を教えてください

【図1】出典元:「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査」マイナビ調べ(2021年5月調査)

非正規雇用労働者側の認知度は7割強。理解度は4割程度にとどまる

今度は非正規雇用労働者側の状況を確認してみたい。今年5月に実施した「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動状況調査」において、同一労働同一賃金の認知状況を聞いてみたところ、「詳細を知っている」が全体の38.4%、「言葉は聞いたことがある程度」が37.4%、「全く知らない・聞いたことがない」が24.1%となり、まだまだ非正規雇用労働者全般に広く理解されているとは言えない状況となっている。特に若い世代ほど「全く知らない・聞いたことがない」比率が高く、周知が必要な状況となっている。

【図2】2021年4月より中小企業に対しても同一労働同一賃金が適用されましたが、以下であてはまるものを1つお選びください

出典元:「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動状況調査」マイナビ調べ(2021年5月調査)

非正規雇用労働者が改善を実感する割合は低い

「非正規雇用に関する求職者・就業者の活動状況調査」に見られるように、非正規雇用労働者側は十分な理解には至っていない。 そこで次は「マイナビライフキャリア実態調査」において、非正規雇用労働者2,518名をベースに、同一労働同一賃金に対する改善実感や制度への期待感を確認してみたい。
こちらの調査でも同一労働同一賃金の改善について項目ごとに聞いているのだが、一番最後に「総合的」に同一労働同一賃金をどう受け止めているか聞いている。全体として「改善された(される予定含む)」とする回答が4.6%なのに対し、「正規雇用・非正規雇用の間で不合理な差はあると思うが、自分の処遇は変わらない」が18.6%と大きく上回っており、改善を実感していない非正規雇用労働者が多い結果となっている。
また「わからない」も過半数(52.2%)存在することから、自分の賃金や待遇の改善を実感できるような変化が起きていないものと推察される。
属性別に見ると比較的若い世代で「わからない」の回答が多い。
就業形態別に比較してみると、アルバイトで「わからない」との回答が57.5%と高い。 そもそも正規雇用労働者の賃金や待遇を認識・比較する機会も少なく、判断をつけられない可能性が考えられる。比較的正規雇用労働者と一緒に仕事をする派遣社員や契約社員では「正規雇用・非正規雇用の間で不合理な差はあると思うが、自分の処遇は変わらない」が派遣で24.4%、契約で25.6%と高く、同一労働同一賃金を認識しながらも、あまり納得のいかない状況が続いているようだ【図3】。

【図3】同一労働同一賃金の導入に伴い、あなた自身に総合的な変化はありましたか

出典元:「マイナビライフキャリア実態調査」マイナビ調べ(2021年4月調査)

非正規雇用労働者の期待値は低い

また「同一労働同一賃金の導入はあなたの仕事の処遇改善に期待できると感じますか。」という問いに対し、非正規雇用労働者全体では「どちらとも言えない」が52.6%、「(どちらかと含む)期待できる」が16.8%、「(どちらかと含む)期待できない」が30.5%と、年配者や派遣社員を中心に期待値は低い結果となっている。ただし、若い世代においては今後の処遇改善に期待する割合が高いので、改めて周知と理解を行うことで、労働者のモチベーション向上、離職防止につながるのではないだろうか【図4】。

【図4】同一労働同一賃金の導入はあなたの仕事の処遇改善に期待できると感じますか

出典元:「マイナビライフキャリア実態調査」マイナビ調べ(2021年4月調査)
※前問で「わからない」と回答した人を除いて集計

まとめ

現状の同一労働同一賃金に対する企業側の対応と労働者側の認識、双方の結果をみる限り、施行2年目ということもあり、まだ改善の余地がありそうな状況だと感じる。労働者側ではそもそもの認知や十分な理解が足りていない可能性があり、期待値も低い。企業側も一定の対応を行ってはいるものの、明確に整理しきれている状況ではなさそうだ。その要因として「何をもって不合理な差と認められるか」の線引きがいまひとつ明確にできていないことが挙げられる。厚生労働省としても「同一労働同一賃金ガイドライン」を策定し、周知に努めているが、その範囲は賃金体系・人事評価制度・労働環境など幅広く、各項目を詳細に精査していく必要がある。また、今後様々な労働係争を経て、その判決結果等も踏まえた自社の整備を常に意識して規定をアップデートしていく努力も求められる。

一方で、同一労働同一賃金の整備を進めることは社員のモチベーション向上や採用のアピールポイントにもなる。実際にマイナビライフキャリア実態調査において「同一労働同一賃金が導入されたことにより、仕事のモチベーションはあがりましたか。」という問いに対し、わずかではあるが「上がった」が「下がった」を上回っている(「上がった」合計14.1%、「下がった」合計12.9%)【図5】。特に若い世代においてその傾向は強く、今後労働力人口が減少し、非正規雇用労働者の中でも存在が大きくなっていく若手労働者の獲得、定着には必要になってくるだろう。まだ施行2年目の同一労働同一賃金。今後の推移を追ってみていきたい。

【図5】同一労働同一賃金が導入されたことにより、仕事のモチベーションはあがりましたか

出典元:「マイナビライフキャリア実態調査」マイナビ調べ(2021年4月調査)
※前々問で「わからない」と回答した人を除いて集計

キャリアリサーチLab所長 栗田 卓也

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