マイナビ キャリアリサーチLab

就職活動における「親」の存在(影響・役割・関わり方)

内定先について「親」から反対に遭うということ

10月上旬の内定式シーズンも終わり、学生も約半年後に迫る「新社会人」としての生活を徐々に意識している頃かもしれない。「2022年卒大学生活動実態調査(9月)」によれば9月末時点での内々定率は86.6%で、多くの学生が就職活動に一区切りをつけている模様。内定先についても、誰かに相談したり、あるいは自分ひとりで考え抜いたりして、最終的に、ここと決めた一社への入社準備をしていることだろう。

同調査には「内々定先企業について否定的・意見や反対を受けたことがあるか」という質問も含まれている。それによれば、「誰にも反対されたことはなかった」が65.7%であり、大半の学生は自身が獲得した内々定先について特に反対を受けず、自分自身の判断が尊重されている状況のようだ。一方で「否定的な意見・反対を受けたことがある」という学生も27.7%の割合で存在しており、否定的な意見や反対を受けた相手としてもっとも多いのが「父親・母親」(69.9%)であった。さらに、否定的な意見や反対を受けた学生の約3割が、結果として内々定を辞退しているということもわかっている。

内定先企業について否定的な意見・反対を受けた学生の割合
【図1】内々定先企業について否定的な意見・反対を受けたことがあるか(2022年卒大学生活動実態調査・9月)

否定的な意見・反対を受けた相手
【図2】否定的な意見・反対を受けた相手 ※内々定先企業について否定的な意見・反対を受けたことがある学生限定(2022年卒大学生活動実態調査・9月)

出所:マイナビ2022年卒大学生活動実態調査(9月)

企業による「オヤカク」の一般化

こうした、親や保護者を中心とした内定先への反対について、「オヤカク」というワードが近年一般的になってきている。学生の親・保護者が内定受諾・入社について承諾しているか、企業が確認を行うというものだ。「2022年卒学生就職モニター調査(7月)」によれば、入社予定先企業から親・保護者が入社を承諾しているか確認されたことがある割合は25.7%であり、学生の4人に1人がオヤカクを経験していることになる。電話や面談で学生に確認するものもあれば、なかには親・保護者宛てに連絡があったり、親・保護者の捺印・署名を求めたりする場合もあるようだ。私が就職活動をしていた約8年前にも、当時の内定先企業から私の両親宛てに挨拶状が届いたことがあった。あくまで「ご子息の就職活動の成功、おめでとうございます」といった趣旨の挨拶であり、そこに内定承諾の確認まではなかったと記憶しているが、近年ではそのような挨拶がオヤカクというより直接的なアクションに変化しているのかもしれない。コロナ禍とは言え依然売り手市場がつづく新卒採用において、学生の内定辞退は企業の採用計画への影響も大きい。企業としては、オヤカクによってその可能性の大小を確認したいと思うのは当然とも言える。

オヤカクのあった割合
【図3】入社予定先企業から親・保護者が入社を承諾しているか確認されたことがある(「オヤカク」があった)割合(2022年卒学生就職モニター調査・7月)
オヤカクの方法
【図4】親・保護者承諾の確認方法(2022年卒学生就職モニター調査・7月)

出所:マイナビ2022年卒学生就職モニター調査(7月)

親は内定先のどの部分に反対するのか

このように、学生の内々定受諾の判断に関して「親」が一定の存在感を示していることがわかる。では、親はどのような点に否定や反対をしているのか。これについても冒頭で紹介した活動実態調査(9月)は明らかにしており、「安定性」(28.5%)、「将来性」(26.2%)、「福利厚生制度(休暇や残業時間・給与含む)」(24.2%)が否定・反対ポイントの上位3つとなった。多くの親が、子供の内定先が「長く安定して働ける企業かどうか」を気にかけていると推察でき、「就職活動に対する保護者の意識調査」でも同様の傾向がみられる。そしてここが、企業を見る際の学生と親の違いを見るうえで重要なポイントとなる。

内定先について否定的な意見・反対を受けたポイント
【図5】内々定先について否定的な意見・反対を受けた点 ※内々定先企業について否定的な意見・反対を受けたことがある学生限定(2022年卒大学生活動実態調査・9月)

「2022年卒学生就職モニター調査(8月)」おいて、学生が入社予定先企業を選択する際に、何を判断材料としたかに関するデータがある。その結果、重視した情報の上位3つは「待遇(給与・福利厚生等)に関する情報」、「企業の社風・企業文化についての情報」、「勤務地に関する情報」であった。1位の「待遇(給与・福利厚生等)」については、親の否定・反対ポイントの3位になっていることから、親子で共通で重視しているポイントだと言える。しかし、2位の「企業の社風・企業文化についての情報」は、親の懸念である「安定性」「将来性」と大きく性質を異にするポイントであろう。社風や企業文化という情報は、インターンシップや選考といった体験を通じて学生が直接的に知りえる生身の情報、一次情報である。それに対して、親はその情報を直接体験できず、体験した学生の言葉などを通して間接的にしか把握することができない。

学生が入社予定先企業を選ぶ際に判断材料とした情報
【図6】入社予定先企業を選択した際に判断材料となった情報(2022年卒学生就職モニター調査・8月)

調査対象や選択肢の表現の違いもあり一概に比較できないが、同じく8月のモニター調査から、親が気にするポイントである「安定性」「将来性」に相当する項目を学生がどのような順位で重視しているかがわかる。それによると、企業の安定性や将来性に関わる「業界の景気に関する情報」は13位、「勤続年数、正社員の平均年齢に関する情報」は15位、「企業の財務状況・株価に関する情報」は17位と、親の関心の高さに反して学生の関心が比較的に低い。安定性と将来性を気にする親と、そこまで重視せずに社風や企業文化に重きを置く学生。その差・ギャップこそが、親が内々定に対して否定や反対をするという状況を生み出す、1つの要因ではないかと私は考えている。


出所:マイナビ 2022年卒学生就職モニター調査・8月

自分の経験から判断したい学生と、その経験を追体験できない親のギャップ

学生と親との間にある、企業を見る際に重視するポイントのギャップ。それを考えるうえで非常に示唆的な、ある学生のコメントを紹介したい。活動実態調査(9月)内に寄せられたもので、否定的な意見や反対を受けたものの入社を決めたという学生からのコメントである。

『否定的な意見を持っていた父親は会社規模を気にしていましたが、自分の目指していた業界・職種かつ利用者としても好きな会社であったため、会社規模にとらわれず入社を決断しました。好きな会社でやりたい仕事ができることを大切にしたかったですし、会社規模に関してはむしろ大きすぎない方が自分に合っていると感じていました(さまざまな企業の選考を受ける中で、自分に合った規模の会社を定められました)。父親以外の周りの人は否定的な意見を持っていなかったので、内定を承諾しました。』(文系女子)

 この学生にとって重要だったのは、自分に合った企業規模(大きすぎない会社)で自分のやりたい仕事ができる、というポイントだ。これは、この学生がさまざまな企業の選考を通じて感じてきた生身の情報・1次情報であり、モニター調査でいうところの「企業の社風・企業文化についての情報」に相当する部分だと言える。対して父親は、こうした1次情報を持たないため企業文化という観点での判断ができず、数字としての「会社規模」の大小を気にしたようだ。規模の大きな企業であればきっと安定しているであろう、というイメージであり、これは活動実態調査でいうところの親の否定・反対ポイント「安定性」と近い。結果、この学生は父親の反対に遭うことになったが、「大きすぎない方が自分に合っている」という自分自身が就職活動を通じて身をもって感じた1次情報(親は経験しえない、本人しかわかりえない情報)をもとに、内定承諾という判断に至ったのだろう。

「学生と親」、そして「企業と親」のコミュニケーション

親世代で当たり前であった「1つの会社で長く安定して働く」という就職観が徐々に変わり、転職を通じ2社、3社と経験しながらキャリアを形成していくことが珍しくなくなった近年。もちろん、「安定性」「将来性」という観点も重要ではあるが、それだけで学生の内々定先を否定・反対するのではなく、親が建設的に果たしえる役割とはなんだろうか。

 就職活動を行うのも、その結果どのような進路を決めるのかも、当然のことながら学生本人だ。そこには、就職活動を通じて得た学生本人しか知りえない1次的な体験や印象、判断の積み重ねがあり、それは親が完全に理解することは難しい。その一方で、親の側にも、その学生をこれまで育ててきた親しか知りえない情報の蓄積が存在しているはずだ。その学生の性格や特性、得意不得意など、それこそ育て見守ってきた者にしか知りえない1次情報である。そしてそれは、採用する企業側はもちろん、学生自身も十分に気づき理解せずにいる場合もあるだろう。

親であるからこそ知っている学生本人すら気づいていないパーソナルな情報を、適切に学生本人にフィードバックしていくこと。そのフィードバックされた情報を参考に、学生が十分な自己分析を行い、そのうえで自身の適性とマッチする業界・企業を見定め、内定を得た際は入社先として妥当かどうか判断していく。そして親は、その判断に対して頭ごなしに否定・反対するのではなく、親の観点から適切に助言する。「学生と親」の関係においてこうしたスタンスが大切であり、それこそが学生の就職活動に対して果たしうる親の役割ではないだろうか。学生と親との適切なコミュニケーションが、学生自身の就職活動を充実させ、活動全体を成功へ近づけることになるだろう。

そうなると、学生を採用する企業の側としても学生の特性を知り抜いている「親」というファクターを完全に無視することはできない。雇用契約としてはあくまで「学生と企業」の関係性であることは間違いない。しかし上述したように親が学生の就職活動に存在感を示す以上、「企業と親」という関係性で採用活動を捉えてみることは意義がある。オヤカクだけではなく、場合によっては親に対する企業PR・広報の必要が出てくるかもしれない。そして、その広報は親が懸念しがちな「安定性」「将来性」などに関する情報の提供に留まらない。学生がこれまで選考を通じて体験してきた社風や仕事の魅力といった情報を可能な限り伝える努力をし、「学生は知っているが親は知らない情報」を少なくすることも重要になってくるだろう。内定を出した学生がどのような軸で就職活動を行い、自社のどのような点がその学生の琴線に触れ、選考を進んでくれたのか。社風や企業文化、仕事のやりがいなど、学生が内定受諾や入社を決意したポイントとなる情報を多少でも親に提供できれば、親も学生と目線を合わせやすくなるはずだ。

 「学生と企業」だけでなく、「学生と親」、そして「企業と親」のいずれもが適切なコミュニケーション・情報共有を通じて良好な関係を構築していくこと。非常に当たり前のことではあるが、就職活動をする学生、それを見守る親、そして採用する企業にとって、この点の重要さが改めて認識できるのではないだろうか。

研究員 長谷川洋介