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アルバイト市場 総括レポート 2024年版(2023年度実績)

  • アルバイトの不足感は2022年7-8月以降30.0%の水準で推移しており、慢性的な人手不足感に拍車がかかっている様子がうかがえる

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、2023年におけるアルバイト市場を3部構成でまとめた、「アルバイト市場 総括レポート2024年版(2023年度実績)」を発表した。第1部は「雇用市場の概況」、第2部は「企業の動向」、第3部は「求職者・アルバイト就業者の動向」についてまとめている。

トピックス

雇用市場の概況

正規の職員、非正規の職員、非正規雇用比率の推移

  • 非正規の職員・従業員数は2020年より減少傾向にシフトしたが、2022年・2023年は2年連続増加で推移
  • 非正規雇用比率も2020年・2021年は減少したが、2022年・2023年は増加傾向に転じている

非正規の職員・従業員数は増加傾向で推移している。2020年・2021年はコロナの影響により減少したが、2022年には再び増加に転じ2023年は2,124万人(非正規雇用比率:37.07%)。2000年以降、非正規雇用者数が著しく増加し、非正規雇用比率も堅調な増加傾向で推移している。

非正規雇用者の増加の背景には、高齢化や女性活躍推進法に伴う女性の社会進出の影響が考えられる。加えて近年ではワークライフバランスに代表されるように、都合のよい時間に働けることや、自分らしい多様な働き方にメリットを感じ、自ら非正規雇用の働き方を選択する者も少なからず増えてきた。

一方で、男性の中間年齢層では正社員の仕事がないことを理由に、不本意的に非正規雇用として働く者も依然として多い点は、日本において大きな社会課題となっている。【図1】

【図1】正規の職員、非正規の職員、非正規雇用比率の推移

出典:総務省統計局 労働力調査 ※01年までは「労働力調査特別調査(2月調査)」、02年以降は「労働力調査(詳細集計)」
出典:総務省統計局 労働力調査 ※01年までは「労働力調査特別調査(2月調査)」、02年以降は「労働力調査(詳細集計)」

有効求人数、有効求職者数、有効求人倍率の推移

  • 2023年の有効求人倍率は1.31倍(前年比:0.03ptプラス)
  • 前年に比べ有効求人数は増加した一方で、有効求職者数は減少した

有効求人倍率における新型コロナ流行の影響は、バブル崩壊後ほどではないものの、リーマンショック後と同程度に有効求人倍が低下している。

2023年はコロナ5類移行などにより、コロナ禍以前の様相を取り戻しつつあり求人数は増加傾向。一方で求職者数が減少したことにより有効求人倍率は上昇。【図2】

【図2】有効求人数、有効求職者数、有効求人倍率 推移

出典:厚生労働省 一般職業紹介状況 パートタイム含む実数
出典:厚生労働省 一般職業紹介状況 パートタイム含む実数

日銀短観 業況判断D.I.

  • 製造業は一時的に減少した後、前年と概ね横ばいで推移、非製造業は右肩上がりで推移
  • 大きく低下していた「宿泊・飲食サービス」は、2023年4月より大幅に回復

2023年12月の業況感は非製造業を中心に改善。製造業は、価格転嫁の進展や自動車生産の回復などから、改善が遅れていた中小企業を中心に改善した。

非製造業は、経済活動の回復や価格転嫁の進展から、個人消費関連業種を中心に幅広い業種で改善を続けた。(日本銀行「経済・物価情勢の展望2023年1月」)

コロナ禍で大きく低下していた「宿泊・飲食サービス」の景況感は、コロナ5類を控えた2023年4月より大幅プラスに転じている。【図3】

【図3】日銀短観 業況判断D.I. 実績 業種別(「景気が良い」-「景気が悪い」)

出典:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」
出典:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」

企業のアルバイト採用状況

アルバイトの採用活動実施率

  • アルバイトの採用活動実施率は23年5-6月に過去最高となり、その後11-12月に減少するも20%水準の推移

2023年のアルバイトの採用活動実施率は、5-6月に過去最高となるなど、2022年の横ばい傾向から増加に転じた。直近2024年1-2月は20.0%で高い水準で推移。【図4】

【図4】アルバイトの採用活動実施率

出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」
出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」

アルバイトの採用活動実施率

  • 業種別では「飲食・宿泊」が最も高く5割程度になるも、前年同期比では減少

業種別の比較を見ると、「建設」「製造(建設除く)」「医療・福祉」「サービス」で前年同期比増となるも、「小売」「飲食・宿泊」「ソフトウェア・通信」 「インフラ」で減少。特に「飲食・宿泊」「小売」は5.0pt程度の減少となっている。【図5】

【図5】業種別 アルバイトの採用活動実施率  1-2月の比較  業種は一部抜粋

出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」
出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」

アルバイトの過不足感

  • アルバイトの不足感は2022年7-8月以降30.0%の水準で推移しており、慢性的な人手不足感に拍車がかかっている様子がうかがえる

アルバイトの「不足」ー「過剰」の数値は、2021年後半頃から大きくなり、2022年後半頃からは30%程度で推移しており、不足感が慢性的な様子がうかがえる。【図6】

【図6】アルバイトの過不足感(「不足」ー「過剰」数値)

出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」
出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」

業種別のアルバイトの過不足感

  • 業種別では「小売」「飲食・宿泊」において不足感が特に高く、「小売」では増加幅の大きさも目立つ

業種別に見ると、「小売」「ソフトウェア・通信」で不足感の増加が顕著に増加していることがうかがえる。「飲食・宿泊」は、慢性的に不足感が高いが、前年同期比では減少している。【図7】

【図7】業種別 アルバイトの過不足感(「不足」ー「過剰」数値)1-2月の比較  業種は一部抜粋

出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」
出典:マイナビ「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2024年1-2月)」

前年と比較したアルバイトの採用数

  • 前年と比較したアルバイトの採用数は「増えた」が「減った」を上回り過去最高

2021年以降、採用数は増加傾向で推移し、2023年には「増えた」が過去最高となった。前年と比較したアルバイトの採用数は、「増えた」が28.2%と「減った」11.5%を16.7pt上回った。【図8】

 (2022年:+12.0pt、2021年:+10.6pt、2020年:-7.4pt)

【図8】前年と比較したアルバイトの採用数 n=1500

出典:マイナビ「アルバイト採用活動に関する企業調査」
出典:マイナビ「アルバイト採用活動に関する企業調査」

人材確保のために実施した施策と今後実施したい施策

  • アルバイト人材確保のために実施した施策は「給与の増額」がトップ
  • 効果があった施策は給与増額に続き、定年退職者の再雇用、給与支払い方法の見直しがあげられた

人材確保のために実施した施策は「給与の増額」が最も高く前年同様。次いで「主婦(夫)層の積極採用」「シニア層の積極採用」「正社員登用制度の導入」となる。

実施した施策のうち効果があった割合で最も高かったのも「給与の増額」で前年同様。次いで「定年退職者の再雇用」でシニア層でも特に正社員経験がある人材の採用に効果を感じていることが考えられる。

また、3番目には「給与支払い方法の見直し」があげられ、給与の増額とあわせ、給与の支払い方法にもテコ入れすることで人材確保に効果を感じている様子がうかがえる。「リファラル採用の導入・強化」について、実施率は低いが効果があった割合は高く、4番目にあげられている。【図9】

【図9】人材確保のために実施した施策・今後実施したい施策(複数回答) n=1500

出典:マイナビ「アルバイト採用活動に関する企業調査」
出典:マイナビ「アルバイト採用活動に関する企業調査」

2022年と比較したアルバイトの採用数予定

  • 2024年のアルバイトの採用数の予定は「増やす予定」が「減らす予定」を大きく上回った

2023年と比較したアルバイト採用数の2024年の予定は、「増やす予定」が35.9%と「減らす予定」5.5%を30.4pt上回った。(2022年:+29.1pt、2021年:+28.4pt、2020年:+20.1pt)2024年のアルバイト採用活動は、よりいっそう活発に行われる予定となっている。【図10】

【図10】2022年と比較したアルバイトの採用数予定 n=1500

出典:マイナビ「アルバイト採用活動に関する企業調査」
出典:マイナビ「アルバイト採用活動に関する企業調査」

求職者・アルバイト就業者の動向

アルバイトの仕事を探したか

  • アルバイトの求職率はコロナ禍の減少から回復傾向にあるが、2022年以降から直近の推移は一進一退の様相

アルバイト求職率はコロナの影響による減少から回復傾向にあるが、2022年以降から直近に至るまで堅調な増加とならず、一進一退の様子が見られる。【図11】

【図11】アルバイトの仕事を探したか

出典:マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(24年1-2月)」
出典:マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(24年1-2月)」

属性別では、「学生」の求職率が最も高いが前年同期比では減少。次いで「フリーター」が21.4%と高いが21年1-2月比では減少している。【図12】

【図12】属性別 アルバイトの仕事を探したか  1-2月の比較

出典:マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(24年1-2月)」
出典:マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(24年1-2月)」

アルバイトの仕事で探した職種上位

  • アルバイトの仕事で探した職種のトップは「オフィスワーク」
  • 「飲食・フード」は2021年と比較すると2022年・2023年・2024年の3年連続で大きく減少

アルバイトの仕事で探した職種は「オフィスワーク」が最も高く、次いで「販売・接客・サービス」「軽作業」「飲食・フード」だが、いずれも前年同期比で減少。

多くの職種で過去3年間(21年~23年)は増加傾向で推移していたが、前年同期比でみると多く職種が減少している。特に「オフィスワーク」の減少幅が大きく、求職者が探す職種が分散してきていることも考えられる。【図13】

【図13】アルバイトの仕事で探した職種上位(複数回答)

出典:マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(24年1-2月)」
出典:マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査(24年1-2月)」

アルバイトの目的

  • アルバイトの目的は属性により異なる特徴があるが、「貯金をするため」は全属性で上位3項目以内となっている。

高校生では「趣味のため」が、大学生では「貯金をするため」が最も高く、次いで高校生が「貯金をするため」、大学生が「趣味のため」となった。フリーターでは「自分の生活費のため」が72.3%で最も高く、次いで「貯金をするため」が45.8%となり、上位2項目で大きなポイント差がある。

主婦では「家族の生活費のため」が最も高く、次いで「貯金をするため」となった。ミドル・シニアでは「自分の生活費のため」が最も高く、次いで「家族の生活費のため」となった。また「健康維持のため」が全体より10pt以上高く目立つ。【図14】

【図14】アルバイトの目的(複数回答)

出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」
出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」

アルバイト探しの必須条件

  • アルバイト探しの必須条件は「シフトの融通がきく」が最も高く、次いで「自宅から近い」となり前年同様
  • 「シフトの融通がきく」は主婦で、「自宅から近い」は主婦/ミドル・シニアで全体より10pt以上高い

全体と比較して、高校生・大学生では「自宅から近い」「交通費が全額支給される」などは低め。また、フリーターは「扶養の範囲内で働ける」が低め。

反対に、主婦では「シフトの融通がきく」「扶養の範囲内で働ける」「子育てへの理解がある」が全体より10pt以上高い。また、ミドル・シニアでは「年齢に関係なく活躍できる」「自宅から近い」「有給など労務管理がしっかりしている」「長期で働ける」「車・バイクでの通勤が可能」が他属性より高くなっている。【図15】

【図15】アルバイト探しの必須条件(複数回答)

出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」
出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」

早期離職経験の有無

  • 職場の雰囲気が良くなかった/想定よりも仕事がきつかった/職場の人間関係が合わないこと等を要因に、早期離職経験があるアルバイト就業者は2割
  • フリーターでは4人1人が早期退職経験がある

直近3年間で早期離職した経験があるのは8.6%、直近3年間より前に早期離職した経験があるのは11.5%となった。属性別ではフリーターが最も早期離職経験が高く4人に1人程度となる25.3%となっている。【図16】

【図16】早期離職経験の有無(複数回答)

出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」
出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」

早期離職理由

早期離職した理由では、「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」 「想定よりも仕事がきつかった」 「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」「上司/先輩から理不尽な指摘や指導があった」などが3割程度となり、高い傾向にある。【図17】

【図17】早期離職理由(複数回答)n=1,812

出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」
出典:マイナビ「アルバイト就業者調査(2024年)」

※早期離職とは、引越しなどのやむを得ない状況は含まず、就業当初は長期勤務予定だったアルバイトを1カ月以内に辞めることとしている。

2023年度のアルバイト市場まとめ

  • 企業によるアルバイトの採用活動率は23年5-6月に過去最高となり、直近24年1-2月も過去最高水準
  • lアルバイトの求職率はコロナ禍の減少から回復傾向にあるが、2022年以降から直近の推移は一進一退の様相。 前年同様に「学生」の求職率が最も高いが前年同期比では減少している

企業

  • 企業によるアルバイトの採用活動率は23年5-6月に過去最高となり、直近24年1-2月も過去最高水準。
  • 2022年5-6月以前は20%台であったアルバイトの不足感は、2022年7-8月以降30.0%台で推移しており、慢性的な人手不足感に拍車がかかっている様子がうかがえる。
  • アルバイト採用の課題は「応募数が確保できなかった」が最も大きな課題となる一方で、採用コストの増加も常態化している様子がうかがえ、応募数確保の難度が上がっていることが考えられる
  • 人材確保・定着の施策で効果があった施策は「給与の増額」がトップ。また「給与の支払い方法の見直し」も上位となり、給与の増額とあわせ、給与の支払い方法の見直しを行う企業が今後増加することも考えられる。
  • 2024年以降のアルバイトの採用数・採用費の増減予定では「増やす予定」が「減らす予定」を大きく上回り、今後2024年は、よりいっそう活発な採用活動が実施される見通しとなっている。

求職者・就業者

  • アルバイトの求職率はコロナ禍の減少から回復傾向にあるが、2022年以降から直近の推移は一進一退の様相。 前年同様に「学生」の求職率が最も高いが前年同期比では減少している。
  • 探した職種は「オフィスワーク」がトップ。21年から23年にかけては多くの職種で増加していたが、直近の1-2月を前年比でみると多く職種が減少。特に「オフィスワーク」の減少幅が大きく、求職者が探す職種が分散してきていることも考えられる。
  • アルバイト探しの情報収集源は「求人サイト」がトップになるも、学生では「求人アプリ」がトップになるなど、デジタルネイティブ世代の完成形ともいわれる学生は、多様な情報収集源から効率よく情報を得ている様子がうかがえる。
  • アルバイト探しの必須条件は「シフトの融通がきく」がトップとなるも、属性により違いも見える結果となった。「扶養の範囲内で働ける」「子育てへの理解がある」など、ミドル・シニアでは「年齢に関係なく活躍できる」「自宅から近い」などが高い。
  • 応募~入社の間でアルバイト先の決め手となったのは、応募後の連絡の速さ・合否通知の速さなど“企業の迅速な対応”が上位に。

レポート内目次

第 1 部.雇用市場の概観 ・・・ P.3~7
└非正規の職員・従業員数の推移
└有効求人数、有効求職者数および有効求人倍率の推移
└職種別有効求人倍率
└業況感

第 2 部.企業の動向 ・・・ P.8~16
└アルバイトの採用活動実施率
└アルバイトの過不足感
└アルバイトの採用数・採用費
└アルバイト採用の課題
└アルバイト人材確保のための実施施策
└アルバイト人材定着のための実施施策
└2024年のアルバイトの採用数・採用費
└2024年のアルバイト採用の見通し

第 3 部.求職者・アルバイト就業者の動向 ・・・ P.17~24
└アルバイトの求職率
└探した職種
└アルバイト探しの情報収集源
└アルバイトの目的
└アルバイト探しの必須条件
└アルバイト先を決めた理由
└早期離職経験と理由

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