インターンシップを行う企業側・学生側双方のメリット—3つのポイントを解説
現在、インターンシップは企業・学生の間に広く浸透しており、入社先選定や企業の採用充足率に影響している。開催数が増加している一方で、学生・企業双方にとっての「インターンシップの質の向上」が課題に。背景として、採用スケジュールの短期化により、企業が採用広報解禁前の企業認知にのみ重きを置くような「学生の職業観涵養につながらないインターンシップ」が問題視されていることが挙げられる(※1)。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を背景に広がっているオンライン形式のインターンシップについても、上記懸念は変わらない。学生の求めるインターンシップとの乖離を埋めるためにも、開催形式に関わらず、学生にとって有益なインターンシップを実施することが求められている。
※1:三省合意文書(文部科学省、厚生労働省、経済産業省「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」)より
<編集部注>インターンシップについての考え方は2022年6月に改正され、2023年度より取り扱いが変わった。詳細はこちら
本レポートでは、「どのようなインターンシップであれば、実際に学生の入社意思を高め、かつ、学生の職業観を醸成できるのか」について、新卒入社後3年以内の社会人に対して調査をすることで明らかにすることを目的とした。
インターンシップの現状
まず改めて、インターンシップの現状を確認する。企業の実施率はおよそ6割、学生の参加率はおよそ9割に迫る勢いであり、一般的になっているといえる。
また、2021年卒の採用充足率は特に中小企業で厳しい傾向であったが、インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなることがわかった。【図1】
インターンシップを実施していない場合は、「0割」が55.4%(対前年12.0pt増)と極めて厳しい状況である。
一方、学生の就職先選定においては、インターンシップ期間のうち(2月末まで)に行う傾向が見られる。採用広報解禁前である2月末までに、エントリー先の半数を決めている割合は2人に1人となっている。【図2】
以上のことから、インターンシップが企業における採用充足率および入社先選定に寄与していることは明らかである。
インターンシップを行うメリット
それではここからは、企業側と学生側双方にメリットのあるインターンシップについて考察する。
企業側:学生の選考受験・入社意思につながる
就職活動において、インターンシップ参加後の「選考受験」および「入社意思」につなげるためには、「インターンシップの満足度」および「職業意識の醸成実感」が有意に影響していることが示された。【図3】
※以下の図3から図5は、各項目の関連性を重回帰分析・相関分析で確認したもの(1%水準で有意であり、影響があると判断できる)。
インターンシップの満足度
学生の満足度向上には、「仕事の重要度を認識していること」、「問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらうこと」、「話を聞いてもらったり、相談にのってもらうこと」、「具体的な仕事内容の説明があること」が有意に影響している。【図4】
インターンシップから見える仕事の重要度も含めた「仕事の具体的な理解」と、情報面と情緒面での「サポート」が、インターンシップ経験の満足度に影響しているといえる。
職業意識の醸成実感
職業意識の醸成実感には、「仕事の重要度を認識していること」、「問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらうこと」、「業務内容についてのフィードバックがあること」、「自己特性について振り返る機会があること」が有意に影響している。【図5】
学生が職業観の醸成を実感するには、インターンシップから見える仕事の重要度も含めた「仕事の具体的な理解」と、インターンシップで関わる人からの特に情報面での「サポート」、学生自身の能力や特性を客観的に把握することのできる「振り返り機会」が必要である。
学生側:企業からのサポートを受け、仕事への理解が深まる
どのようなインターンシップであれば、学生の入社意思を高めつつ、学生の職業観醸成に有意義であったのかを、「満足度」向上の要素と「職業意識の醸成実感」につながる要素から分析したところ、以下の3要素が必要であると分かった。【図6】
- インターンシップで関わる社員からの情報面・情緒面での「サポート」
- インターンシップで実感した仕事の重要度も含めた「仕事の具体的な理解」
- 学生が自身の能力や特性を客観的に把握することのできる企業からの「振り返り機会」の提供
企業が学生の就職先候補となるには、インターンシップにおいて上記3点を押さえて、学生の満足度を高めること・将来の働き方への考えを深めるきっかけを与えることが必要である。
調査概要
調査名 | 学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ3つのポイント |
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調査期間 | 2020年3月12日(木)~2020年3月26日(木) |
調査対象 | 4年生大学卒もしくは大学院卒者のうち、社会人歴が3年以内の正社員 |
調査方法 | インターネット調査 |
有効回答数 | 1,557名 |
INDEX
<1. はじめに>
1-1. インターンシップは一般的になっている
1-2. 2021年卒の採用充足率は特に中小企業で厳しい傾向
1-3. インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなる
1-4. 学生は採用広報解禁前にエントリー先の半数を決めている
1-5. インターンシップに参加する目的
1-6. コロナ禍により、オンラインのインターンシップが拡大
1-7. 学生はインターンシップで“体験”を求めている
1-8. オンラインインターンシップと対面式インターンシップの差
1-9. インターンシップにおける課題と調査目的
<2. サマリー>
2-1. 学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ<概要>
2-2.学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ<詳細>
2-3. 開催形式別事例(対面形式・オンライン形式)
<3. データ編>
3-1. 調査仕様
3-2. 検証プロセス
3-3. 選考受験につながるインターンシップとは
3-4. 入社意思につながるインターンシップとは
3-5. 満足度につながるインターンシップとは
3-6. 職業意識醸成の実感につながるインターンシップとは