インターンシップを行う企業・参加する学生のメリットとは?3つのポイントを解説

インターンシップを行う企業・参加する学生のメリットとは?3つのポイントを解説

キャリアリサーチLab編集部
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キャリアリサーチLab編集部

現在、インターンシップは企業・学生の間に広く浸透しており、入社先選定や企業の採用充足率に影響している。開催数が増加している一方で、学生・企業双方にとっての「インターンシップの質の向上」が課題に。背景として、採用スケジュールの短期化により、企業が採用広報解禁前の企業認知にのみ重きを置くような「学生の職業観涵養につながらないインターンシップ」が問題視されていることが挙げられる(※1)。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を背景に広がっているオンライン形式のインターンシップについても、上記懸念は変わらない。学生の求めるインターンシップとの乖離を埋めるためにも、開催形式に関わらず、学生にとって有益なインターンシップを実施することが求められている。
※1:三省合意文書(文部科学省、厚生労働省、経済産業省「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」)より

<編集部注>インターンシップについての考え方は2022年6月に改正され、2023年度より取り扱いが変わった。詳細はこちら

本レポートでは、「どのようなインターンシップであれば、実際に学生の入社意思を高め、かつ、学生の職業観を醸成できるのか」について、新卒入社後3年以内の社会人に対して調査をすることで明らかにすることを目的とした。

インターンシップの現状

インターンシップの実施率推移

まず改めて、インターンシップの現状を確認する。16年卒から21年卒までの経年推移をみると、企業の実施率はおよそ6割、学生の参加率はおよそ9割に迫る勢いであり、企業の実施・学生の参加ともに増加傾向にあり、一般的になっているといえる。【図1】

左「企業 インターンシップ実施率」出所:マイナビ2021年卒企業採用活動調査(6月実施)右「学生 インターンシップ参加率」出所:マイナビ2021年卒大学生広報活動開始前の活動調査
【図1】左:企業 インターンシップ実施率/マイナビ2021年卒企業採用活動調査(6月実施)
右:学生 インターンシップ参加率/マイナビ2021年卒大学生広報活動開始前の活動調査

採用充足率とインターンシップの関係

21年卒の6月時点採用充足率を見ると、全体で36.6%が「0割(採用が確定している人はいない)」と回答しており、 企業側にとっては20年卒よりも厳しい状況になっていることがわかる。特に、インターンシップを実施していない場合は「0割」が55.4%(対前年12.0pt増)と極めて厳しい状況である。一方で、インターンシップを実施していた企業では、充足率は全体的に高い傾向にあり、インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなることがわかった。【図2】

【図2】インターンシップ実施有無別 採用予定充足率※採用予定数を10割として採用が確定している割合/マイナビ2021年卒企業採用活動状況調査
【図2】インターンシップ実施有無別 採用予定充足率
※採用予定数を10割として採用が確定している割合
/マイナビ2021年卒企業採用活動状況調査

学生の就職先決定とインターンシップの関係

一方、学生の就職先選定においては、インターンシップ期間のうち(2月末まで)に行う傾向が見られる。採用広報解禁前である2月末までに、エントリー先の半数を決めている割合は2人に1人となっている。【図3】

【図3】これまでのエントリー総数を10割としたとき、2月末までに「エントリーする」と決めていた企業は何割か(6月時点)/マイナビ2021年卒大学生活動実態調査
【図3】これまでのエントリー総数を10割としたとき、2月末までに「エントリーする」と決めていた企業は何割か(6月時点)
/マイナビ2021年卒大学生活動実態調査

以上のことから、インターンシップが企業における採用充足率および学生の入社先選定に寄与していることは明らかである。

インターンシップを行うメリット

それではここからは、企業側と学生側双方にメリットのあるインターンシップについて考察する。

実施企業のメリット:学生の選考受験・入社意思につながる

学生の選考受験意思につながる要素

まずは、学生が選考を受験する企業を選ぶ際にどのような要素が影響しているのか検証したところ、「そのインターンシップを実施した企業の選考を受験する」ことに対して、「その企業へ入社したいと思う(入社意思)」は有意に影響していた。将来を考える上で最も影響を受けたインターンシップに参加して、その企業に入社したいと思ったかどうかは、就職活動時に実際にその企業を選考するかどうかに影響したことが分かる。【図4】

※以下の図4から図6は、各項目の関連性を重回帰分析・相関分析で確認したもの(1%水準で有意であり、影響があると判断できる)。

学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ3つのポイント/選考受験意思につながる要素とは
【図4】選考受験意思につながる要素

インターンシップ先への入社意思に影響する要素

選考受験意思につながる「最も影響を受けたインターンシップ先への入社意思」には、「インターンシップの満足度」および「職業意識の醸成実感」が有意に影響していることが示された。また、満足度と職業観の醸成実感は相関関係にあった。つまり、学生にとって満足度の高いインターンシップのプログラムを実施することが、そのインターンシップ先に入社したいという意思につながっているようだ。【図5】

学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ3つのポイント/入社意思につながるインターンシップとは
【図5】入社意思につながるインターンシップ

インターンシップの満足度に影響する要素

では、学生の満足度が高いインターンシップには何が必要なのか。満足度向上には「仕事の重要度を認識していること」、「問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらうこと」、「話を聞いてもらったり、相談にのってもらうこと」、「具体的な仕事内容の説明があること」が有意に影響していることがわかった。【図6】

学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ3つのポイント/満足度につながるインターンシップとは
【図6】満足度につながるインターンシップ

職業意識の醸成実感に影響する要素

満足度同様に、学生の入社意思向上に重要な「職業意識の醸成実感」には何が影響するの見ていく。インターンシップにおけるいくつかの要素を見ていくと「仕事の重要度を認識していること」、「問題の解決に必要なアドバイスや情報を与えてもらうこと」、「業務内容についてのフィードバックがあること」、「自己特性について振り返る機会があること」が有意に影響していることが分かった。【図7】

学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ3つのポイント/職業観の醸成実感につながるインターンシップとは
【図7】職業観の醸成実感につながるインターンシップ

参加学生のメリット:企業からのサポートを受け、仕事への理解が深まる

どのようなインターンシップであれば、学生の入社意思を高めつつ、学生の職業観醸成に有意義であったのかを、「満足度」向上の要素と「職業意識の醸成実感」につながる要素から分析したところ、以下の3要素が必要であると分かった。【図7】

  • インターンシップで関わる社員からの情報面・情緒面での「サポート」
  • インターンシップで実感した仕事の重要度も含めた「仕事の具体的な理解」
  • 学生が自身の能力や特性を客観的に把握することのできる企業からの「振り返り機会」の提供
学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ3つのポイント/ポイントは「サポート」「仕事の具体的な理解」「振り返り機会」
【図7】学生・企業の双方にメリットのあるインターンシップ

企業が学生の就職先候補となるには、インターンシップにおいて上記3点を押さえて、学生の満足度を高めること・将来の働き方への考えを深めるきっかけを与えることが必要である。

調査概要

調査名 学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ3つのポイント
調査期間 2020年3月12日(木)~2020年3月26日(木)
調査対象 4年生大学卒もしくは大学院卒者のうち、社会人歴が3年以内の正社員
調査方法 インターネット調査
有効回答数 1,557名

レポート内目次

<1. はじめに>
1-1. インターンシップは一般的になっている
1-2. 2021年卒の採用充足率は特に中小企業で厳しい傾向
1-3. インターンシップを実施した企業ほど採用充足率は高くなる
1-4. 学生は採用広報解禁前にエントリー先の半数を決めている
1-5. インターンシップに参加する目的
1-6. コロナ禍により、オンラインのインターンシップが拡大
1-7. 学生はインターンシップで“体験”を求めている
1-8. オンラインインターンシップと対面式インターンシップの差
1-9. インターンシップにおける課題と調査目的

<2. サマリー>
2-1. 学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ<概要>
2-2.学生・企業双方にメリットのあるインターンシップ<詳細>
2-3. 開催形式別事例(対面形式・オンライン形式)

<3. データ編>
3-1. 調査仕様
3-2. 検証プロセス
3-3. 選考受験につながるインターンシップとは
3-4. 入社意思につながるインターンシップとは
3-5. 満足度につながるインターンシップとは
3-6. 職業意識醸成の実感につながるインターンシップとは

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