
アースデイ(4月22日)をきっかけに地球温暖化・気候変動が私たちの働き方に与える影響・変化を考える
近年、地球温暖化による気候変動が私たちの生活に与える影響は年々大きくなっている。さらに気候変動が進むと、働き方においてもその影響は無視できないものとなるだろう。
みなさんは、4月22日のアースデイをご存じだろうか。アースデイは環境保護を目的とし、毎年、世界中でさまざまな活動が行われている。マイナビキャリアリサーチLabでもアースデイをきっかけに、有識者や専門家、サステナビリティの観点から業務に取り組んでいる方の知見・インタビューを基に、地球温暖化・気候変動が私たちの仕事の内容や働き方にどのような変化をもたらすのかという点について考えたいと思う。
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アースデイ
まずは、アースデイとはなにかについて解説する。
アースデイとは?
アースデイは、環境保護を目的とした国際的なイベントであり、毎年4月22日に世界中でさまざまな活動が行われる。この日は、1970年にアメリカで始まり、環境問題に対する意識を高め、持続可能な社会を実現するための行動を促すものである。2009年には国連総会にて、4月22日を「国際マザーアース・デー」とすることが採択されている。
日本では、各地でアースデイに関連したイベントが行われており、環境問題に対する意識を高めるための活動が展開されている。これらの取り組みを通じて、アースデイは環境保護の重要性を広く伝える役割を果たしている。
アースデイの意義
アースデイの意義は、環境問題に対する意識を高めるだけでなく、具体的な行動を促すことにある。例えば、リサイクルや植樹活動、エネルギーの節約など、個人や企業単位で取り組むことができる、さまざまな活動があげられる。
また、アースデイを通じて、環境保護に関する情報を共有し、持続可能な社会を実現するためのアイデアを交換する場にもつながっている。
地球温暖化の現状
まずは、地球温暖化の現状に関して、国立環境研究所 主幹研究員の横畠徳太氏に伺った。
以下は、横畠氏の記事から抜粋している。詳細は、記事を参照してほしい。
温暖化の近未来予測とは?
2023年と2024年は世界と日本で観測史上最高の平均気温を記録した。今後10年、地球と日本の平均気温は上昇し続けると予測され、温暖化の進行が続くと考えられる。将来の気温予測には、社会経済シナリオに基づく温室効果ガス排出量が考慮されているが、どのシナリオでも気温上昇が予想されている。
地球温暖化がなぜ進むのか
地表気温の上昇は、空気中の温室効果ガス(主に二酸化炭素)の増加が原因だ。人間活動により年間約400億トンの二酸化炭素が排出され、化石燃料の燃焼や森林伐採が主な要因となっている。自然はこの二酸化炭素の約半分を吸収するが、残りは空気中に残る。このため、空気中の二酸化炭素濃度が増加し続け、温暖化が進行するのだ。
どうすれば、地球温暖化を止めることができるのか
2000年代に増加していた全世界の二酸化炭素排出量は、最近はそれほど増えていない。これはCOVID-19による経済活動の停滞や地球温暖化対策が影響している。しかし、空気中の二酸化炭素濃度は増加し続けている。
パリ協定の目標を達成するには、さらなる排出削減が必要だ。人間の排出する二酸化炭素を半分にしても、地球温暖化を止めるには不十分だ。地球全体の気温は二酸化炭素濃度の増加に遅れて上昇し、植物の呼吸増加などで自然の吸収量が低下する。最終的には二酸化炭素排出量をゼロ以下にする必要があり、その他の温室効果ガスの影響も考慮する必要がある。
地球温暖化・気候変動と企業経営
ここからは、企業経営の動向について見ていく。
カーボンニュートラル
近年、カーボンニュートラルという言葉を目にすることが多くなっているのではないだろうか。
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引き、実質ゼロにすることを指す。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの利用など排出量を抑える取り組みだけでなく、排出された温室効果ガスを吸収する手段をとして植林(森林の育成)などの取り組みが挙げられる。
カーボンニュートラルは、パリ協定で定められた目標の一環として、2050年までに達成することが求められており、地球温暖化の進行を抑制し、持続可能な社会を実現することが期待されている。
ESG経営
また近年、企業運営において、ESG経営に関する話題も多く取り上げられるようになっている。
ESG経営とは?意味や背景
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業が持続可能な経営のための指標である。ESG経営は、企業が環境保護や社会貢献、適切なガバナンスを重視することで、長期的な成長と持続可能性を追求する経営手法である。
なぜ今ESG経営が求められているのか
ESG経営が求められる背景には、いくつかの重要な要因がある。
環境問題の深刻化
地球温暖化や気候変動、資源の枯渇など、環境問題が深刻化している。これに対して企業が積極的に取り組むことが求められており、特に温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの利用促進などが重要な課題となっている。
社会的責任の重要性
近年、企業は単に利益を追求するだけでなく、社会的責任を果たすことが求められている。ジェンダー平等や人権保護、労働環境の改善など、社会的な課題に対する取り組みが企業の評価に直結するようになっている。
投資家の関心の高まり
ESG投資が注目されるようになり、投資家は企業のESGパフォーマンスを重視するようになっている。ESGに配慮した企業は、投資家からの評価が高まり、資金調達が容易になる。
ブランド価値の向上
消費者や顧客は、社会的責任を果たしている企業に対して好感を持ち、その製品やサービスを選ぶ傾向が強まっている。ESGへの取り組みは、企業のブランド価値を高め、競争力を強化する要因となる。
上記などから、ESG経営は企業の持続可能な成長を実現するために欠かせない戦略となっている。
労働安全衛生規則の一部改正
次に、気候変動に関する国の動きについて見ていこうと思う。気候変動に関係する国の動きとして、2025年3月12日に実施された労働政策審議会安全衛生分科会にて、「職場における熱中症対策」が罰則付きで義務づけられることが議論され、労働安全衛生規則の一部を改正する省令案が了承された。
改正の趣旨
厚生労働省の資料よると、改正の趣旨としては、
熱中症の重篤化による死亡災害を防止するため、熱中症のおそれがある作業者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することが可能となるよう、事業者に対し、「早期発見のための体制整備」、「重篤化を防止するための措置の実施手順の作成」、「関係作業者への周知」を義務付ける。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001439159.pdf
となっている。
改正の概要
厚生労働省の資料によると、改正の概要としては、
以下1、2の事項を事業者に義務付けること。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001439159.pdf
1 熱中症を生ずるおそれのある作業(※)を行う際に、
①「熱中症の自覚症状がある作業者」
②「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」 がその旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して 周知すること
2 熱中症を生ずるおそれのある作業を行う際に、
①作業からの離脱
②身体の冷却
③必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせること
④事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等
など、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること
※ WBGT(湿球黒球温度)28度又は気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を 超えて行われることが見込まれるもの
となっている。
このように、地球温暖化や気候変動によって、私たちの働き方が変わることも予想される。
次回は、国立環境研究所 主任研究員の高倉潤也氏に気候変動による労働環境への影響についてインタビュー記事を掲載予定だ。記事の公開と合わせて、本記事も更新する。