
「失敗したくない!」Z世代が望む「ネタバレ就活」の実態~2026年卒新卒採用・就職活動の展望~
本日3月1日は、政府の関係省庁連絡会議によって定められた就職・採用活動日程における広報活動開始日、いわゆる就職活動の解禁日である。このタイミングに合わせて、マイナビキャリアリサーチラボでは、2026年卒学生の動向や企業の採用活動の展望について講演を実施した。本コラムはその内容を紹介するものである。
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企業の動向
2025年卒採用の結果
まず初めに、前年2025年卒の採用活動について振り返りたい。内定式が行われる前年9~10月頃に実施したマイナビ2025年卒企業内定状況調査の結果によれば、採用充足率(内定者数/募集人数)は70.0%(前年比5.8pt減)で3年連続の減少となり、採用スケジュールが変更された2017年卒以降、同時期の調査と比較して過去最低の結果となった。
また、内定者満足度について聞いた結果をみても、「量・質とも満足」の回答はコロナ禍以降、減少傾向となり、2025年卒では22.5%と、前年と同程度に低い水準となった。

2026年卒採用の予定
今年の採用予定についてはどうだろうか。採用予定数について聞いた結果をみると、文理ともに「前年並み」とする回答が増加している。「増やす」は2022年卒から2024年卒にかけて2年連続で増加していたが、直近では2年連続で減少しており、前年の採用充足率が低下するなか、採用予定数を据え置きとしている企業が多いようだ。

新卒全体の採用環境の見通しについて、「厳しくなる」と回答した企業は78.1%(「非常に厳しくなる(26.8%)+「厳しくなる(51.3%)」)となり、前年より1.5pt増加した。前年同様、採用に苦戦すると考えている企業が増えている。このことからも、2026年卒の採用市場が、昨年に引き続き売り手市場となることが予想される。

2026年卒学生の動向
学生優位の売り手市場となれば、学生の活動量は減少すると考えるのが一般的だろう。しかしながら意外にも学生の動きは活発だ。2026年卒学生のインターンシップ・仕事体験の参加率は85.3%、平均参加社数は5.2社と、いずれも過去最高水準に達している。(※)
※2013~2015年卒の調査時期は11月、2013~2023年卒までは「インターンシップ」として聴取
平均値の集計方法が卒年によって異なるため、2024年卒以前の結果は参考値
(2013年卒:数値回答、2014~2024年卒:選択肢式「1~5,6社以上」、2025年卒以降:選択肢式「1~20,21社以上」)

ネタバレ就活
ネタバレ就活とは
なぜ、2026年卒学生は市況感と異なる動きを取るのだろうか。その背景となる価値観を、「ネタバレ就活」という言葉で表現したいと思う。
”ネタバレ消費”という言葉がある。時間の無駄や失敗を避けたいという意識の強いZ世代に多いとされる特徴的な消費行動で、商品の購入前にレビューやSNSでの評価を確認したり、映画やドラマなどのコンテンツ鑑賞の前に内容・結末を把握して(ネタバレして)自分の求めるコンテンツかどうかを判断するといった行動のことだ。
(参考:「ネタバレ消費」「失敗したくない」…Z世代の傾向を「ネガティブ・ケイパビリティ」を通して見る)就職という人生の中の重要なポイントでも、同じ心理が働いていると考えることができる。

学生の価値観
企業選択のポイントを経年で聞いた結果を見てみたい。2019年卒までは長く「やりたい仕事(職種)ができる会社」がトップだったが、年々「安定している会社」という回答が増加し、2020年以降は逆転し、2025年卒では約5割となった。ここから近年学生の安定志向が高まっていることがわかる。

なぜ今の学生がそこまで安定を求めるのか。2026年卒学生が生まれてからの社会的な出来事をみてみると、先行き不透明で将来の予測が困難な状態である「VUCAの時代」と言うにふさわしい。
彼らはコロナ禍で大学受験を経験し、その後は紛争や円安・物価高といった社会背景の中で学生生活を過ごした世代だ。この先どうなるかわからないという不安の中で、安定を求め、失敗したくないと考えることは、自然なことだと言えるだろう。

ここで改めて、2026年卒学生が積極的に行ってる活動や注目が高まっている制度などをみてみたい。インターンシップ・仕事体験というのは、仕事を実際に体験し、就職後のイメージを持つための取り組みだ。オープン・カンパニーも同様で、実際に企業に訪問、見学することができるプログラムである。OB・OG訪問やリクルーター訪問、口コミサイトやSNSの活用などは、よりその企業のリアルな情報を知るための手段である。
また近年注目が高まっている勤務地確約採用やジョブ型採用などは、いわゆる配属ガチャを避けることができる仕組みだ。これらはすべて、就職後の不確定要素をできるだけなくすためのものであり、「就職後のネタバレ」と言い換えることができる。

学生の感じる不安
2026年卒学生が就職後の将来に対する不安を解消したいと考えていることが分かった。では、彼らの不安とは具体的にどのようなもので、それを和らげるにはどうしたらよいのだろうか。ここからは学生の感じる不安の具体的な内容と、新卒採用を行う企業はどのように学生と向き合うべきなのか、採用成功に向けたヒントを探りたい。
将来の不安について漠然と感じていることや考えていることを聞いた結果では、老後の貯蓄や景気、年金など、長期的な目線での不安が多く挙げられた。近年、学生の副業や投資に対する意識が高まっていることからも、特にお金に関する不安が強いことがわかる。

前年2025年卒の入社予定先を決定した学生に、入社の決め手となった企業の魅力について聞いた自由回答の結果を見ると、給与面も含め、就職後のことをより丁寧に伝えている企業について、魅力的に感じている様子がわかる。

実際に内定者辞退対策で効果があったと感じたものを企業向けに聞いた結果として、一緒に働く同期や先輩社員とのコミュニケーションをとることができる「内定者懇親会(食事会等)」や「社員との座談会」など、自社を開示する取り組みが上位に挙がった。このようなことからも、企業は、学生の不安要素がなくなるまで、丁寧な対話をしていくことが必要だと考えられる。

おわりに
2026年卒学生が売り手市場でも活発に就活準備を行う背景は、ファーストキャリアを「失敗したくない」という意識であることが分かった。VUCAの時代を生きてきた彼らは、不確定要素をできる限り排除し、就職後を“ネタバレ”したいと考えているようだ。
一方、人手不足により企業の採用意欲は引き続き高く、2026年卒採用は売り手市場となることが予想される。学生が就職後の将来に対して抱える不安を理解し、それに寄り添った自社開示が採用成功のポイントと言えるのではないだろうか。