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プロボノとはなにか?インタビューを通して個人・組織の双方の視点からメリットなどを読み解く

片山久也
著者
キャリアリサーチLab編集部
HISANARI KATAYAMA

マイナビキャリアリサーチLabではこれまで、プロボノに関するインタビューを通して、そもそもプロボノとはどのようなものなのか、実施する個人(プロボノワーカー)や受け入れる組織のメリット・デメリットなどを紐解いてきた。

このコラムでは、プロボノを実施する個人とプロボノを受け入れる組織のそれぞれの視点で、インタビューを通してわかった実施する上で必要なこと、求められるものなどをまとめている。

プロボノとは

プロボノとは

まず、プロボノとはなにかを解説する。ここでは、下記のインタビューより抜粋している。

プロボノの定義と発祥

プロボノとは、自らの職業や趣味で培ったスキルや知識を活かして、社会貢献をするボランティア活動のことである。本来ラテン語の「Pro Bono Publico」(公共善のために)が語源とされており、欧米の弁護士が高度な法務スキルを無償で提供したのが最初だとされる。

一般的には、職業上のスキルや知識、人脈以外にも過去に経験してきた趣味や得意分野などを活かして、社会貢献することも含まれている。

プロボノの広がりと背景

プロボノが広がりをみせる背景には、副業や兼業の解禁、WEB会議システムなどのオンラインサービスの発展などがある。これらの要因により、プロボノ活動が以前よりも身近になり、本業以外で社会貢献したいという欲求を持ったビジネスパーソンやシニアなどのニーズにこたえられるようになってきた。

また、ビジネス環境の変化に対応するために、自分の知らない世界に挑戦し、自分のスキルをアップデートする必要があると感じる人も多くなっていることが広がりの要因としてあげられる。

プロボノに参加するメリット

次に、プロボノに関わるメリットをプロボノに参加する個人(プロボノワーカー)と受け入れる側の組織の視点でみていく。

プロボノに参加する個人(プロボノワーカー)の視点

まずプロボノに参加する個人(プロボノワーカー)の視点でみていく。ここでは、下記のインタビューより抜粋している。

プロボノに参加して得られる点は大きく下記の点があげられる。

  • 越境学習やリスキリングの効果がある
  • 自分の会社では得られない価値創造や事業創造の経験を積める
  • 社会に変化や成長をもたらすことができる

越境学習やリスキリングの効果がある

プロボノ活動では、自分の本業とは異なる社会課題に取り組むことで、越境学習やリスキリングの効果を期待することができる。社会人として多様な人との接点や前向きな失敗経験を通じて、リーダーとしてのマインドや視座を高めることができるだろう。

自分の会社では得られない価値創造や事業創造の経験を積める

プロボノ活動では、自分の所属している会社だけでは得られない価値創造や事業創造の経験を積むことができる。これは、人事担当者や上司からも評価につながる可能性があり、活動を通じてコミュニケーション方法やリーダーシップスタイルが変わり、昇進や異動のチャンスが増えることもあるだろう。

社会に変化や成長をもたらすことができる

プロボノ活動は、社会課題を解決しようとしているNPOや企業に自分のスキルや情熱を提供することで、社会に変化や成長をもたらすことができる。その活動の中で、NPOや地域の活動に共感したり、サポーターや連携先として継続的に関わり続けたりする場合もあるようだ。

プロボノを受け入れる組織の視点

次に、プロボノを受け入れる組織の視点からみていく。ここでは、下記のインタビューより抜粋している。

  • 参加する個人(プロボノワーカー)の熱量が現場に伝染し、既存職員(社員)の成長につながる
  • 参加する個人(プロボノワーカー)との関わりで、組織に新たな可能性が広がる

参加する個人の熱量が現場に伝染し、既存職員(社員)の成長につながる

参加する個人(プロボノワーカー)の取り組み内容や仕事の進め方、熱量が現場にも伝わり、受け入れる側の組織の仕事の取り組み方が変わるという声がある。

たとえば、これまで自身のスキルに自信が持てなかった人がプロボノに参加する個人(プロボノワーカー)と関わることで、業務を別の視点からとらえることで成長を実感でき、さらに自分が成長したいという想いにつながることもある。そして、熱意やビジョンに共感し、働き方が変わることもある。

参加する個人との関わりで、組織に新たな可能性が広がる

参加する個人(プロボノワーカー)は、既存のメンバーでは思いつかないような提案をしてくれたり、周りを巻き込んでプロジェクトを推進してくれたりする。

また、専門知識や豊富な経験を持っているので、市場開拓や商品開発などに役立つアイデアやノウハウも提供してくれる。このような関わりを通して、組織に新しい可能性をもたらしてくれるのだ。

プロボノを受け入れる際のポイント

プロボノを受け入れる際のポイント

次に、受け入れる側の組織が参加する個人(プロボノワーカー)を受け入れる際のポイントをみていく。ここでは、下記のインタビューより抜粋している。

プロボノを受け入れる際に組織が重視すべきポイントは下記の点があげられる。

  • プロボノを受け入れる目的を明確にする
  • 参加する個人(プロボノワーカー)との信頼関係を構築する
  • 広い視野を持って提案を受け入れる
  • 人選はチームワークを重視する

プロボノを受け入れる目的を明確にする

受け入れる組織によって目的はさまざまあるが、組織の課題や目指す未来像を参加する個人(プロボノワーカー)に共有し、何のためのプロジェクトなのか、なにをゴールにするのかを明確することで、アウトプットが変わってくる。また、共通の目的・目標を目指すことで受け入れる組織の取り組み方が変わってくる。

参加する個人(プロボノワーカー)との信頼関係を構築する

プロジェクトを始める前に必ず顔合わせをするなどし、受け入れる組織の考え方や想い、志を伝えることで、信頼関係を早く築くことができる。これにより、参加する個人(プロボノワーカー)の熱量にもこたえることができ、期待以上の成果を発揮してくれる。

また、信頼関係が構築できれば、プロジェクトが終了しても、その後のフォローアップや新たな依頼などで関係を継続することができる。さらにネットワークを活用して、新たな人材とのつながりを築くこともできるかもしれない。

広い視野を持って提案を受け入れる

受け入れる組織は、既存のメンバーによる従来のやり方や考え方に固執せずに、参加する個人(プロボノワーカー)の提案を積極的に取り入れることで、足並みを揃えて取り組むことができる。受け入れる組織のメンバーは、これまでにない発想にまずは挑戦する勇気を持つことが重要だといえる。

人選はチームワークを重視する

参加する個人(プロボノワーカー)は、受け入れる組織のビジョンに共感して応募してくれたプロフェッショナルである。チームを編成する際は、それぞれの特性を活かして、テーマに合わせたペルソナ設定やチームとしてのバランスを考慮することが重要である。また、フラットな関係や相互の感謝の気持ちを伝えることも重要である。

まとめ

プロボノは、社会的課題に取り組むNPO法人や企業において、参加する個人(プロボノワーカー)の専門知識やスキルを無償で提供する活動ではあるが、それぞれの視点で得られることも多く、より良い社会を実現するために有効な手段となるといえるかもしれない。

参加する個人(プロボノワーカー)は、プロボノ活動を通じて社会に貢献できるだけでなく、自分自身も成長することにつながるため、VUCAの時代にマッチしているといえるだろう。現在は、実際に現地に足を運ぶだけでなく、オンラインで参加できる場合もあり、地域や時間の制約を受けず、さまざま団体や企業とつながることができる。

また、近年は参加する個人(プロボノワーカー)と受け入れる側の組織をつなぐNPO法人も多く、自分の状況に合わせて、選択することができるようになってきた。自分が所属する組織以外での社会貢献に興味がある、自分自身の今の働き方に迷っている、スキルに不安がある、プロボノに興味がある…といった方は、プロボノと組織のマッチングを促進している団体やサイトを積極的に活用してみてはどうだろうか。

先が見えにくい社会だからこそ、プロボノ活動を通して、自分自身の希望を実現することができるかもしれない。

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