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ワーケーション体験記~東京から行きやすい、秩父で1泊2日~

ワーケーションとは

そもそも「ワーケーション」とは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」をかけ合わせた造語であり、近年のテレワーク利用者の増加により、にわかに脚光を浴びるようになってきている。一般社団法人日本テレワーク協会ではワーケーションを4つの類型に分類し、その目的や効果を説明している。

① 地域で働くワーケーション
テレワークの「場所を有効活用する」という定義に、地域(都市部、地方部)という分類を適用する。地方ならではの環境で一定期間働くこと。事業創造、プログラム開発、企業合宿など場所を変えることで成果を高めることや、オフィスの移転先、移住先のお試しなどの利用用途も想定される。
② 地方移転促進のワーケーション
企業などがより高い成果、従業員の確保や採用、地域ならではの協業、事業継続などそれぞれの目的で、オフィスを地方に設置ないしは分散すること、またはそのトライアル。
③ 移住・定住促進のワーケーション
移住や定住を希望する個人などが、二地域居住などを通じて、働きながら地方での生活の場を持つこと、ないしはそのトライアル。
④ 休暇取得促進のワーケーション
個人などが平日を含め長期休暇を取得できるよう、便宜的にテレワークを実施すること。
出典:一般社団法人日本テレワーク協会


近年は②若しくは③を目的として、内閣府をはじめとした政府関係者や各地方自治体が各地にテレワークオフィスを立ち上げ、熱心にワーケーションのPRを行っている。一部の地域では都心部からの移住体験とテレワークを組み合わせたプチワーケーションの誘致もある。
かくいう自分も実際にワーケーションを体験したことがなかった。今回は法政大学梅崎教授から秩父で実施する社会人大学院生とのワーケーション体験に参加してみないかとお誘いをいただき、参加してみた次第である。

今回のワーケーションの目的

今回ワーケーションに参加するにあたり、自分自身で以下の効果を得られるのかを検証してみようと、事前に簡単な計画を立ててみた。

① 地域で働くワーケーションとして、場所を変えることで業務の成果を高めることは可能か
筆不精の自分がこのワーケーション体験中に1本コラムを執筆しきれるかをゴールとした。

② 休暇取得促進のワーケーションとして、今後平日を含めた休暇を取得できるか判断
今回は趣味のゴルフとかけ合わせ、1泊2日の予定を組んでみた。今後、外部でも仕事が可能かを検証してみることにした。

③ 梅崎ゼミに所属する方々との交流の中で、新たなアイデアを生み出すことができるか
異業種の方々との交流を通じて、新たな取り組みアイデアを想起できるかを検証してみる。


上記を目的として、2022年10月下旬に秩父に参集した。

ワーケーション1日目

朝8時から秩父にある某ゴルフ場に赴き、「1人ゴルフ」という初対面の方々が当日集まってプレーするゴルフを堪能した。山間部のコースを全て徒歩でのゴルフだったため、足がつりそうになるぐらい体力を消耗し、午後の仕事に支障をきたすのではないかと心配しながらゴルフ場から秩父市内に移動。秩父の名店「珍達そば」でお昼をいただいた後、今回お世話になるコワーキングスペース「働空間 」にチェックインし、約3時間コラムの執筆を行った。コワーキングスペースは初めて利用してみたが、Wi-Fi環境も整っていて 、社内PCも十分活用できたため、非常にスムーズに業務を行える。日常とは異なる環境の中、良い集中で業務を行え、コラムの執筆も順調に進めることができた。「働空間」の料金はドロップインというその日だけ利用する料金プランを選択したのだが、半日(3.5時間)で1,800円、1日で2,200円とさほど高いものではない。これで1日利用できるのであれば、地方に旅行に行って、そのまま当該地域のコワーキングスペースでテレワークで業務を遂行することもできそうだ。

西武秩父駅前
【写真1】西武秩父駅前
働空間のコワーキングスペース
【写真2】働空間のコワーキングスペース

夜からは梅崎ゼミの社会人大学院生の方々と「働空間」を運営する代表の方々などを交え、秩父名物のホルモン焼きを堪能しながら、さまざまな情報交換や意見交換を行った。中でも興味深かったのは出浦社長のお話しだ。出浦社長は秩父で内装関係の会社を経営されていたのが、秩父発展のためにコワーキングスペースの運営会社や、古民家を改装して宿泊施設やコワーキングスペースとして利用できる会社を立ち上げ、内装会社と併せて3社の経営をされている。市と協力して市内で地方移住イベントを実施するなど、都心からのテレワーク利用者受け入れや、地方移住者の誘致などを行っておられる。その甲斐もあって、秩父への移住者の増加や、地方移住の話題でメディアに取り上げられるといった結果に繋がっているそうだ。また、多くの他府県の職員の方々が地方移住誘致の成功事例として、視察に来られることも増えているとのことだった。今後の課題としては、移住された方々との関係性を深められるよう、何らかのコミュニティ運営を検討されているらしい。

地方の人口流出は大きな社会課題ではあるが、地元を想う人々の活動が、実際に成果を上げておられる話を伺えたのは、大変参考になった。このように当該地域の方々と交流できるというのも、ワーケーションの醍醐味であろう。実際、「働空間」には秩父で事業をやられている方々の簡単な紹介文と名刺が貼られている。このように地域の方々との交流をつなぐ役割も担っており、地方活性化や人材交流に一役買っているようだ。

夜の会場
【写真3】夜の会場
「働空間」の入口に掲示されている地元の方々の紹介文
【写真4】「働空間」の入口に掲示されている地元の方々の紹介文

その後も秩父のディープなスナックに場所を移して、秩父に関するさまざまな話を語らいながら、深夜に解散となった。宿泊は「働空間」の別棟にある「ハタラコリビング秩父サテライト」という元ホテルの建物をリノベーションした簡易宿泊とコワーキングスペースが同居する施設に宿泊させてもらった。カプセルホテルのような仕様になっており、1泊3,800円と格安で宿泊できた。その日は朝方の歩きゴルフの疲れもあって、すぐに寝落ちしてしまった。

「ハタラコリビング秩父サテライト」の外観と内部
【写真5・6】「ハタラコリビング秩父サテライト」の外観と内部

ワーケーション2日目

宿泊施設をチェックアウト後、宿泊施設のすぐ裏にある秩父神社に参拝し、周辺を散策。普段の仕事ならば朝の散策などは行わないが、その地域の歴史や成り立ちを知ることができるなど、新鮮な体験だった。朝食をどこで食べるか探していたところ、秩父鉄道と西武鉄道が駅舎を共同運用している「芝桜駅・御花畑駅」の前にある立ち食いソバ屋を発見。天ぷらそばをただいた後、再び「働空間」に集合し、各自でワークを行った。私は前日に調子にのってホルモンを食べすぎたせいか、若干おなかを壊してしまった関係で、少し早めに失礼することとなった。

秩父神社
【写真7】秩父神社
駅前の立ち食いソバ屋
【写真8】駅前の立ち食いソバ屋

当初目的の検証

この1泊2日のワーケーション体験で当初立てた目標を改めて検証してみたい。

① 地域で働くワーケーションとして、場所を変えることで業務の成果を高めることは可能か
筆不精の自分がこのワーケーション体験中に1本コラムを執筆しきれるかをゴールとした。
結果:達成
コラムの内容が現場体験記という書きやすさもあったが、日常と異なる夕暮れの山々の風景を眺めていると、気分がリフレッシュされる効果を感じた。また締め切りを設定し、やりきることで普段明確なゴール設定が苦手な自分でも、すんなりと仕事を完遂することができた。

② 休暇取得促進のワーケーションとして、今後平日を含めた休暇を取得できるようになるか
今後平日の有給とかけ合わせ、外部でも仕事が可能かを検証。
結果:休暇の取得は可能
外部のテレワークオフィスでも職場と変わらぬ作業が行えた。敢えて言えば、データを見る際に複数のディスプレイがあるとより作業効率を上げられたと思えた。実は、後でお聞きしたら、「働空間」でもディスプレイの貸し出しを行っていたそうで、次回からはディスプレイをお借りするようにしたい。

③ 梅崎ゼミの大学院生の方々との交流の中で、新たなアイデアを生み出すことができるか
異業種の方々との交流を通じて、新たな取り組みアイデアを想起できるかを検証してみたい。
結果:新たなアイデアだしができた
今回参加されていた梅崎ゼミの社会人大学院生やOBの方々との交流を通じて、新たな調査課題が見いだせた。ここでの詳細説明は行わないが、普段中々交流する機会の無いない方々との対話は自身の刺激にもなるし、新たな発見にもつながった。今後、ゼミ生の方々を含め、人事労務の課題について深く掘り下げる知己を得たことは大きな収穫だった。

ワーケーション体験を通じての感想

今回の経験を経て、改めてワーケーションを含めた職場の地理的な制約からの解放は、さまざまな可能性を秘めていると感じた。ワーケーションや地方移住で専門的な知見を有する人材が各地方に分散すれば、当該地域の活性化につながるし、地域課題の解決に繋がるアイデアが生まれるかもしれない。
従業員を持つ経営者の視点でみても、社員のウェルビーイングや健康管理の充実など、職場満足度の向上につながる効果も期待できる。昨今は海外でオフィス出勤を義務付ける企業なども出始めているが、一律に元に戻すというより、さまざまな出社形態を容認する方が、社員とのエンゲージメントを高めることができるのではないだろうか。以前の調査結果では社内評価の高い人ほど、職場環境を自分で選択したいという傾向が高かった。今後の人材確保という観点でも、柔軟な人員配置や、職場環境選択の可能性を考慮した制度設計も必要になるであろう。【図1】

【図1】「直近での職場での評価×地方移住の意向」マイナビライフキャリア実態調査
【図1】「直近での職場での評価×地方移住の意向」マイナビライフキャリア実態調査

私自身、今後も何度かワーケーションにトライしてみたいと思える良い体験だった。これから地方移住やを考えている方や、ワーケーションにちょっと興味のある方にも、試しに一度体験してみることをおすすめしたい。

今回、その機会をいただいた梅崎教授をはじめ梅崎ゼミのみなさま、出浦社長ほか「働空間」のスタッフのみなさまに謝辞を述べ、締めの言葉としたい。有り難うございました。

キャリアリサーチLab所長 栗田 卓也

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