マイナビ キャリアリサーチLab

Vol.1「コロナ禍における外国人労働者雇用実態」
ゼロからわかる外国人労働者市場~実態から未来予測~

杠元樹
著者
株式会社マイナビグローバル 代表取締役社長
MOTOKI YUZURIHA

渡航制限の緩和により、途絶えていた外国人観光客の入国も一部再開され、インバウンドも復活の兆しを見せ始めました。技能実習生や特定技能外国人の成田空港での定番ともいえる入国シーンもコロナ禍前のようにみられるようになりました。

改めて注目を浴びる外国人採用ですが、今後を考える上での疑問は、「これから外国人労働者はコロナ禍前のように激増するのか」、そして「2019年に鳴り物入りで登場した在留資格『特定技能』は日本の労働力不足や外国人労働者問題を解決する良い制度となり得るのか」の2点にしぼられたかと思います。

結論として少なくともこれから数年間は「外国人労働者は確実に増加」し、また「特定技能がその主役を担う可能性が高い」と考えられますが、その先はネガティブな要素も多く不透明であるのも事実です。外国人労働者市場の現在と未来予測について、各ステークホルダー視点(求職者/現地送り出し機関/日本の人材紹介会社/雇用事業主)を交えながら数回にわたって考察していきます。

まず初回Vol.1ではコロナ禍における外国人の雇用実態を改めて整理してみたいと思います。

「雇っている事業所数も労働者数も増加」ただし、「伸び率は停滞」

「コロナ禍で外国人労働者は減っているよね?」とよく聞かれますが、結論としてはガチガチの入国制限期間中でも「外国人労働者を雇っている事業所数も増加」「国内で就労している外国人労働者数も増加」ただし、「伸び率は停滞」しています。

厚生労働省が毎年公表している「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、2021年10月末時点での労働者総数は1,727,221人であり、過去最高数値を更新しています。これは日本にいる外国人の人数ではなく、「働いている」外国人の人数です。

「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)
[参考-1]外国人雇用事業所数・外国人労働者数(総数)
参照:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)
[参考-1]外国人雇用事業所数・外国人労働者数(総数)


外国人を雇用する事業所数は前年比6.7%増と、前年(10.2%増)からは 3.5 ポイント減少、労働者数の増加率は0.2%増と前年(4.0%増)からは3.8ポイント低下しています。

事業所数は増加率でみると前年よりは減少しながらも、労働者数の増加率と比べると高く、コロナ禍でも外国人採用の裾野が広がっていることを示していると考えられます。

「日本への入国者」は減少するものの、国内在留外国人の労働者数は増加

次に「入国制限があったのになぜ増加?」という疑問があるかと思います。在留資格別にみると「資格外活動」のうち「留学」は前年比で 38,963 人(12.7%)減少、「技能実習」についても前年比50,568 人(12.6%)減少していますので、「海外から日本」は確かにイメージどおり大きく減少しています。

「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)
[参考-1]外国人雇用事業所数・外国人労働者数(総数)
参照:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)
[参考-5]外国人労働者数(在留資格別)


一方で、前年比で「特定活動」が 20,363 人(44.7%)増加、「専門的・技術的分野の在留資格」は、34,989 人(9.7%)の増加、身分に基づく在留資格33,859 人(6.2%)増加しています。
これはどういうことなのか、在留資格別に解説します。

①特定活動(44.7%増)

「特定活動」は技能実習や留学生が特殊な事情により帰国できない場合の措置としての通称「帰国困難」や、留学生が卒業後も内定を取れず就職活動を続けることができる通称「就職活動」が多く含まれます。

コロナ禍でそもそも航空便がない、航空券が取れない、価格が高騰して買えないなど、状況を考慮した措置がなされました。この特例措置の結果、通常時であれば帰国せざるを得なかった外国人が一定期間日本国内に留まり、かつアルバイト含む労働力として存在することになりました。

②専門的・技術的分野の在留資格(9.7%増)

「専門的・技術的分野の在留資格」はさまざまな就労系在留資格を指していますが、2019年に創設された在留資格の「特定技能」も含まれます。特定技能については次回で詳しく解説しますが、2022年3月末時点で前年比286.8%(64,730人)であることから、「専門的・技術的分野の在留資格」の増加は特定技能が大きな要因であることに間違いありません。

また、その内訳として「上陸時に特定技能の許可を受けて在留する者」すなわち海外から日本へ渡航する外国人は10.1%に留まっているため、多くは日本在留の外国人が在留資格を特定技能に“切り替えて“働いているということになります。

切り替えの多くは元留学生や元技能実習生です。今まで就労系の在留資格を取得するのが難しかった日本語学校や専門学校の留学生は、特定技能の試験に合格すれば特定技能で日本企業への就職が可能になりました。実習修了とともに帰国していた多くの技能実習生も、特定技能に切り替えることで引き続き日本での就労が可能となりました。
※特定技能制度について(外国人採用サポネット)

③身分に基づく在留資格(6.2%増)

身分に基づく在留資格とは「永住者」「日本人配偶者等」「永住者の配偶者」「定住者」を指します。身分に基づく在留資格には他の在留資格にあるような職種や業種などの就労制限がありませんので、雇用側にとっては採用しやすい人気の在留資格です。

在留数(働いているかどうかに関わらず日本に在留している人数)は2020年3月末~2021年3月末の間に0.2%しか増加していないため、「身分に基づく在留資格」をもつ外国人の働く人数が増えたことを意味します。

ちなみに、ペルー(8.0%増)、フィリピン(3.4%増)、ブラジル(2.9%増)の順で対前年増加率が高く、元々この3ヶ国は身分に基づく在留資格の比率の高い国です。


まとめると、

  1. 入国管理局の措置として、帰国することが困難な外国人に対しての救済措置(特定活動)により、通常時には存在しなかった大量の働き手が出現したこと
  2. 特定技能の創設により国内在留外国人の就職手段が増えたこと
  3. 就労制限がなく日本人同様に働くことのできる「身分に基づく在留資格」をもつ外国人の労働者が増えたこと

この3点が、コロナ禍においても外国人労働者が増加した要因だと考えられます。

どんな企業が採用数を増やしているのか?

外国人労働者の就職手段や時間が増えても、求人という機会がないと雇用は増えません。では、企業側の雇用状況はどうでしょうか?

産業別で採用した事業所数の増加率をみると、「医療、福祉」(前年比 19.2%)、「卸売業、小売業」(同 9.2%)、「宿泊業、飲食サービス業」(同 9.2%)の順ですが、全産業別分類で外国人労働者が増加しています。

外国人労働者数の増加率でみると、「医療、福祉」(前年比 33.0%)が突出して高い伸び率を示しています。受け入れる企業側の裾野が広がっていること、またその中でも「医療、福祉」の採用意欲が高いことがわかります。

「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)
[参考-6]外国人労働者数(産業別)
参照:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)
[参考-6]外国人労働者数(産業別)

まとめ

2020年10月~2021年10月末の事実上の鎖国期間(入国制限中)により、海外から日本へ働きに来る外国人は大きく減少しました。

一方で、受け入れる企業側の採用意欲は減退せず、むしろ裾野が広がり多くの産業で外国人労働者が増加しています。特に「医療、福祉」での外国人労働者数が顕著に増えており、外国人雇用への意欲の高さがうかがえます。

国内在留者が時限的に「特定活動」によって増加し、特定技能という新しい手段によりチャンスが増えたこと、この点がコロナ禍でも外国人労働者が増加した要因と言えそうです。

Vol.2では、外国人労働者を押し上げる要因にもなっている「特定技能」の直近状況を中心に、渡航制限緩和後の外国人市場の動向を解説します。


著者紹介
杠 元樹(ゆずりは もとき)
株式会社マイナビグローバル 代表取締役社長

2004年(株)毎日コミュニケーションズ(現マイナビ入社)
「なんでもチャレンジできる」社風により、新卒1年目から企業の採用支援と同時に、「日本人の海外大学留学生」プロジェクトや、外国人の日本留学生企画の企画から販売まで関わる。その後、インバウンド事業の事業部長として、主に中華圏をターゲットにした日本の情報発信メディアを立ち上げた。現在はマイナビグループの中で外国人採用を専門に担う(株)マイナビグローバルを経営し、東南アジア出身の外国人労働者と向き合う。採用支援の立場で日本を代表する大手企業からベンチャー企業まで1000社以上の採用支援を行うと同時に、外国人留学生・旅行者・労働者と国籍・対象は異なりつつも、外国人インサイトに悩み研究する日々を送っている。外国人採用サポネットでも情報発信中。

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