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WEB選考が生まれた背景と時代の流れについて

今回のコラムでは、コロナ禍で一気に拡大したWEB選考での採用アセスメントの特長とその活用について触れていきたい。

はじめに

前回は、採用選考を語る上で大切な臨床心理アセスメントの存在について整理をしてきた。繰り返しになるが、臨床心理アセスメントの考えのベースに、人物の人柄や性格を、生活の場でのふるまいや行為そのものを第三者が観察をすることで、その情報やデータを一定の基準にあてはめて判定・診断することにある。つまり、人を「見る」「観察する」ことを通して「測定する」という考えが根本に流れている。

それが昨今、ヒューマンリソース(HR)の分野におけるテクノロジーも進歩し続けており、リアルな実体験のみで観察するアナログな世界から、さまざまな技術革新によって観察する代替機能が生まれ、人的労力を極力低減していく技術が発展していることはみなさまもご承知の通りだ。

ただし、HRテクノロジーも万能ではない。さまざまな課題がありながらも、WEBを通して人を見極めていく際の問題を回避し制御する技術も同時に日々進歩している状態にある。今回はそんなWEB選考について記載してみたい。

WEB選考におけるさまざまな検査方法について

こうした技術の発展に伴い、採用選考ではどのような手法が展開されているのか。以下、3つに分けて記載する。

WEB適性検査

今現在は、多くの企業で採用選考における適性検査がWEB形式の検査方法によって導入されており、広く普及している。一方、企業に臨む採用選考対象者においては、その攻略方法などをさまざまな情報筋を通して入手・学習して対策を講じている状況にあることから、採用選考におけるWEBの適性検査をクリアしていくことは、必須条件となっている。

中でも前回コラムで紹介した、大手企業の適性検査、具体名を挙げるとSPIや玉手箱といった適性検査に代表されるように、紙媒体での実施から、WEB媒体への移行が進み、こうした流れは選考におけるアセスメントの形式そのものを大きく変える影響を与えたといえる。能力や性格に関する適性などを測定する検査方法。本来の採用選考アセスメントは、直接被験者を「見る」「観察する」「測定する」という状態であるため、リアルな状況下、たとえば一つの会場に被験者を募り、同一の環境下で一斉に選考を行う検査方法であった。そこから現在の主流は、PCやタブレット、スマートフォンを介しWEB上で「測定する」という、場所を限定せず、時間を限定しない選考手法の状態を生み出したといえる。

デジタル面接

また、選考における“面接”という形式も、リアルな面接が当たり前であった状態から、「見る」「観察する」ことをWEBによって実現したオンライン型の面接サービスがすでに多く存在している。選考会場に時間と場所を設定して行う、というこれまでの対面型の面接から、いつでもどのような場所でもアクセスできる選考手法であることから、文字通りエリアを限定せずに広く人材と接触し対面できる手法となっている。

この手法の特長は、選考側と被験者が同時に時間を合わせて面接を行う手法以外に、互いが時間を合わせずに実施する、ということも可能となっている。つまり、被験者の面接可能なタイミングで面接録画を行うことによって、企業の選考側も、可能なタイミングでその内容を確認することができる。質問内容があらかじめセットされていることにより、自動的に仮想の面接が可能となっている。全国の地域に多店舗展開している企業など、広域な範囲で人材と出会い、選考をしていきたい企業にとって、とても有効な手法といえる。

オンラインゲーム検査

更に、近年ではオンラインゲームを通して人の行動特性を判断するという検査手法も生まれてきている。そこでは、社会性や認知(スタイル)行動の特性などを測るゲーム形式のツールとなっている。与えられた課題に対してゲームを解いていくわけであるが、ゲームの難易度に対する対応能力や、問題そのものをクリアできるスピードによって被験者の能力や可能性を得点化している、という仕掛けになっている点はもとより、回答結果の視野や認識のレベル・理解度によって、人物の社会性なども測定しているのが、もっともユニークな特徴の一つといえよう。【図1】

3つのWEB関連の検査方法

そもそもゲーミフィケーションとは、「楽しさ」「興味」「目的意識」などを与えることによって被験者の熱中度や成果の有無を測定する、という仕掛けとなっている。そのため、目的・課題を提示し、それらを解き明かしていくプロセスを可視化し、結果のフィードバックを迅速に行う手法である。ある一定の難易度や測定指標をクリアすることで、被験者の成果のレベルを可視化する、ということになる。更に、被験者間の競争相手のレベルやクリアスピードなども可視化することで、両者の比較が行われることになる。

ただ、すべての被験者にとって、一律に魅力的なインパクトを与えるテーマ設定というのは難しいとされることや、まだ研究の科学的妥当性については議論が分かれているといった状態である。とはいえ、特に重要なことは、すでにゲーミフィケーションという概念が広がり、選考手法の一つとして広がり始めていることは、とても興味深い動きであると共に、人の特性をどうあぶりだしていくのか、その捉え方や測り方の視点が広がってきていることは、注目すべきであろう。

新たな検査方法の探求が人間にもたらすものとは

更にAI(※1)の技術が進歩していく中で、面接の質問を自動的に選び出して確認する、という取り組みや、質問の難易度を自動的に変化させていくなど、AIのロジック開発によって、選考の合否そのものを判定し判断しようとする考え方も存在している。ただ、人の選考そのものをAIに委ねるという考えは、どこまで機械任せにして良いものなのか、という倫理的な問題や求職者の納得感も得られづらいため、一気にこうした動きが加速する、という状況にはまだ至っていない。医学の世界にもあるように、さまざまな症状などから病気の可能性をAIによって検出し、その最終判断は人間側が行う、というように、新たな分野や役割連携による可能性は広がってきてはいる。
※1:AIとは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略称のことで、人間の知能をコンピューターを用いて人工的に再現したものを意味する

また、試験的ではあるが、被験者や選考側が映像機能を備えたカメラを所持し、そこで繰り広げられる会話や目線、反応や行動の様などを通して、その人物の特長を分析していこうとする企業も存在する。加えて、健康器具のように、時計や指輪などの形式で体に密着させ、その電気信号などで酸素濃度や血流、血圧や脈拍などから、本人がストレスを感じているのか、リラックス状態なのかを計測することで、社員の心身面をケアしようとする取り組みも広がり始めている。

こうした動きは、情報に対峙する人の「認識」と「行動」をデジタル化し、そこから特性を分析しようという取り組みと考えられる。これは、人が物事を「認識」する、【知覚】⇒【記憶】⇒【理解】⇒【評価】という一連のサイクルを代替している、といわれている。言い換えると、五感で捉えた情報をデータ化して翻訳したり、記憶として覚えたりした上で、その内容を吟味・租借をし、良い悪いを判断・評価する、という一連のサイクルをデジタル化し、そこから人物の特性を割り出そうとする取り組みである。【図2】

認知・情報のデジタル化

また、ゲーミフィケーションからの特性分析にも、こうした考え方が取り入れられていると考えられる。人が相手と対峙する中で、ある瞬間の情報を捉えて理解し、どのようなレベルの評価をして判断や行動を起こすのか、その一連のサイクルを認知視野や理解度を構造的に整理し、より人の内面世界に近づこうとする取り組みといえる。ちょっとしたしぐさや目線、反応などから、人の内面世界の輪郭が可視化できる時代が、もうすぐそこまできているのかもしれない。

新たな時代の検査方法と選考について

世界をおびやかしたコロナにより、人との距離の取り方やコミュニケーションの在り方、働き方そのものも大きく変化した昨今、改めて、人を選考していく活動そのものはどのように取り組んでいくべきか、大きな岐路にきているといっても過言ではない。

ただ、時代の流れが大きく変化している中でも、変わらずに重要なことは、日本固有の文化からみた、人の選考の在り方を見つめていくことではないだろうか。その大きな考え方の一つに、人を見極め判断していくための、最適な手法選びということであり、こうした検査方法や技術を上手に組み合わせていくことにあると考えられる。

更に、WEBに関わる検査方法が広がったことにより、より早い選考段階で活用し、見極めていくことは更に有効性を増していると考えられる。一昔前の採用選考といえば、企業規模の大小に関わらず、選考段階の前半でリアルに会って人の抽出や選考を行い、後半で適性検査やWEB選考を実施し、判断材料の補助ツールとして導入するという形態が主流であった。現代においては、WEB選考に関わる検査手法の技術的進歩により、初期段階でWEBでの選考を実施して絞り込みを行った後、リアルな面接を通して人となりを確認する、というWEBとリアルのハイブリッドの選考スタイルが、一つの選考プロセスのスタンダードとなりつつある状況にある。【図3】

WEBとリアルの融合

こうしたことから、新たな手法による、人の「見かた」「観察の仕方」「測定の仕方」が進歩していくのと同時に、これらの技術を有効に柔軟に活用することで、新たな視点による人の見かた、捉え方を取り入れていくことが必要不可欠な時代といえる。と同時に、こうしたデータを蓄積・活用することで、HRテクノロジーとデータサイエンスに基づく、人的資源の活用を実現していくことが、不可欠といえよう。


著者紹介
長瀬 存哉(ながせ・ありか)
HRコンサルタント

1970年東京生まれ。大学卒業後、多種多様な業界の業態開発・商品開発に携わり、人の感性と環境・ハードとの間に融和と相乗効果が生まれる世界を見出し、人の可能性や創造性に関する調査・研究活動に取り組む。そこで、心理学・統計学分野のオーソリティに師事。HR分野の課題解決を通して、適性検査や意識調査・行動調査などの診断・サーベイ・アセスメントの設計・開発・監修を行い、その数は数百種類に上る。その後、取締役を経て独立。現在は、各企業やHRテクノロジーに関するコンサルティング・研修・講演活動を通して、HRの科学的なアプローチによる課題解決に取り組んでいる。

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